第1回茨城県IT戦略会議 議事要旨

1. 日  時 : 平成12年10月26日(木) 10:00〜12:00

2. 場  所 : 庁議室

3. 出席者 : 茨城県IT戦略会議委員,茨城県高度情報通信社会推進本部(IT推進本部)本部員

4. 会議の内容

(1)橋本知事挨拶要旨

 皆さんご承知のように、インターネットを中心とする情報通信技術、いわゆるITの飛躍的発展を背景として、私達は今、かつての産業革命に匹敵すると言われる「IT革命」の時代を迎えております。
 ITは、今後の社会経済発展の原動力であり、二十一世紀における我が国の繁栄を持続するための鍵を握っているといっても過言ではありません。
 国においては、IT革命の恩恵をすべての国民が享受できますよう、IT立国の形成を目指して、今年七月には内閣総理大臣のもとにIT戦略本部とIT戦略会議を立ち上げ、現在、IT国家戦略の検討を進めるとともに、IT基本法案を今臨時国会に提出し、早期の成立を目指しているところでございます。
 また、今年度の補正予算や来年度の当初予算に向けましても「IT革命の推進」を最重点項目として、国をあげての取り組みがなされております。
 本県におきましても、急速な情報化の進展にあわせ、平成9年1月には既に、市外局番が異なる地域ごとに、インターネットアクセスポイントを整備しますとともに、昨年3月に策定いたしました県の高度情報化推進計画のもと、積極的に「豊かな情報交流空間の創造」に向け、各分野における施策を進めてきているところであります。
 特に、常磐新線沿線開発地区等におきましては、地域情報化の先導的プロジェクトとして、未来型の情報都市を構築する「つくばスマートコリドール構想」を進めているところでございます。
 また、最近のIT革命のめざましい展開に対応いたしますため、去る10月6日に、これまでの「茨城県高度情報化推進本部」を「茨城県高度情報通信社会推進本部」へ名称変更し、専門部会を充実しますとともに、各部局に「部局IT推進委員会」の設置や各部局のIT施策を担当する「IT企画員」を配置するなど、庁内の推進体制を強化したところであります。
 さらに、IT革命への対応に必要な施策を重点的に推進するため、来年度の予算編成に当たりましては、「新世紀いばらき重点枠」といったものを設けているところでございます。
 しかし、IT革命への対応は、幅広い分野からの取り組みが必要でございますので、この度、外部有識者の方々のご意見・ご提言を頂戴することを目的に、IT戦略会議を設置させて頂きました。
 国の方でもIT戦略会議が開かれている中で,県といたしましても特色を出しながら,IT戦略会議を進めていけるよう,委員の皆さん方には、幅広い角度からご意見や具体的な施策の提案を頂戴したいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 最後になりますが、本県は、二十一世紀の早い時期には、陸・海・空の交通基盤の整備やつくば・常陸那珂を中心とする都市整備、県内各地における新規産業の立地などが急速に進展し、我が国の発展をリードする「茨城の時代」が来るものと確信しております。
 このような中にあって、ITにつきましても、全国に先駆けて、本県独自の特色ある戦略を展開して参りたいと考えておりますので、皆さんの力強いご協力を賜りますよう、お願い申しあげまして、簡単ではございますが、ごあいさつとさせて頂きます。



(2) 西野議長挨拶要旨

 一言ごあいさつをさせていただきます。
 ただいま皆さんのご推薦によりまして,議長を務めることになりました西野でございます。よろしくお願い申し上げます。
 皆様申し上げるまでもなく,ITという言葉がマスコミに取り上げられる日がないくらい今や社会全体としてITに対する関心が高まっている時期でございます。私ども民間におきましても,社会経済構造が大きく変革するITの問題については最大の関心事でございまして,これから積極的に取り組まなければならない問題でございます。
 このような中で,橋本知事さんの積極的なリーダーシップによりまして,このような戦略会議を設置し,県を挙げて豊かな県民生活を実現するためにIT対策に取り組まれておることはまことに適切なご判断かと僣越ですが存じ上げております。
 また,先ほど知事さんのごあいさをお聞きしながら,私どもといたしましても,できる限りのご協力を申し上げてまいりたいと考えております。
 多少蛇足でございますが,地元におりまして,このIT関係で感じていることが4,5点ございますが,簡単に申し上げますと,1つは,県内の都市部,あるいは突出した一部地域と郡部の地域格差がかなり顕著になってきているということがございます。それから,市民サービスとか中小企業の窓口に今後なります市町村の基盤の遅れということがだんだん鮮明になってきております。
 また,政策決定者とIT担当者におこる世代間のギャップのほうも最近顕著になってきたのかなと思っております。
 それから,産業振興の対象になっております県内の中小企業,あるいは零細企業,ここでの基盤づくりというのがパソコン等の導入は進んでおりますが,全体としてかなり遅れが目立ってきているということ,それから最後に,人材の育成と,特に教育分野でのIT化の問題というか,限界というのがまた一つあるのではないかということもだんだん認識されてきておりまして,今後,委員の皆様とそれぞれご豊富な知識,経験を仰ぎながら,積極的にご意見,ご提言を賜って,こういう問題も含めて実りある会議にしていただきたいと思いますので,よろしくご協力をお願いします。
 以上,簡単でございますが,議長のごあいさつとさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。



(3) 委員からの意見等

委員:検討事項の中に,「ITを活用したデータの整備」がない。日本にはそういうデータ整備がないので,茨城県が先駆けて検討して欲しい。「電子県庁の構築方策について」に含まれるのかもしれないが。

事務局:事務局で整理していきたい。

委員:各分野別のデータはないか?

事務局:出せるデータがあれば,出していきたい。

委員:電子県庁の項に,「事務の効率化」が載っていない。県庁内の仕事そのものの効率化が必要ではないか。また,茨城県を全国に先駆けて魅力ある県にしていくためには,IT戦略会議のスローガンが必要。トータルなスローガンとしての目標が欠けているので,何を検討すればいいのか散漫である。

事務局:御指摘のとおり。課題として挙げたようなことを色々とやっていくうちに効率化していくことを目的としてはいるが……

知事:県では分野が色々分かれており,1つの分野だけを取り上げるわけにはいかない。つくば情報交流空間整備構想を打ち出しており,そうしたことも踏まえながら,茨城県が日本の中で遅れないようにしていきたい。

委員:アメリカでは,ほとんどの官公庁で,「業務削減率○%」といっている。

知事:色々と検討していきたい。

委員:現状と課題のみで,対応(案)が書かれていない。対応(案)について議論するのではないのか?

事務局:今後の対応については,委員からの意見等を踏まえて検討していくこととしたい。

委員:電子県庁の構築について,資料でいわれているようなことは,日立製作所などに頼めばすぐにでも出来ること。標準化の問題など,技術以前の問題の調整に時間がかかるだろうが,システムそのものは,お金さえかければすぐにできる。
 私の会社(ソフトバンク・テクノロジー)では,稟議は全て電子化されている。それは,そうでないと決裁しないことにしているから。
 情報通信基盤にこだわることが重要である。E-コマースの育成を支援する等の施策は県でなくてもできることだが,行政しかできないのは基盤整備である。つくばで基盤を1年間ただで利用させるなどすれば,優れた人材が集まり,1年後には産業の振興により,一時の損失を取り戻すことができるかもしれない。
 もう1つは予算の問題がある。予算の割り振りは,過去のしがらみやパワーの配分によるところが大きいと思うが,思い切って理論的に配分していかないと。
 ちなみに県庁にはSEは何人いるか?

事務局:県職員にはいない。アウトソーシングで何人か駐在してもらっている。

委員:アウトソーシングもいいが,発注者側としての職員の意識も重要だ。

委員:市町村での担当者のレベルは,HPを開設して新着情報を自分たちで更新できる程度にまでようやくなってきた。
 インターネットの最大の利点は双方向性であるが,ネットいばらきにはそれがない。茨城県内の5市町村が,独自サーバーを設けてネットいばらきを退会したと聞いている。どういう形でレベルアップしていけるかを盛り込んでいけたらいいと思う。

委員:日本一の電子県庁になったというためにはどういうデータをそろえればいいのか,検討する必要がある。また,(パソコンが)一人一台になったといっても,それが使われなければ意味がない。電総研では,10年前に総務系にPCを導入したが,あまり使われなかった。研究系でも10%〜20%は使わない人がいた。それでどうしたかというと,SEを2名雇って使えない人に手取り足取り教えていった。また,総務系で使われなかったのは,印鑑の問題があったので,全ての文書の見直しを行い,本当に印鑑が必要なものとそうでないものに分類していった。その結果,今は外部との契約以外は全て電子決裁になっている。やはり,内部から自分たちが変えていくんだという意識をもたないとなかなか変わらない。

知事:中央省庁では,ずいぶん早く電子化が進んでいるようだが。

委員:私も,総務庁などに出向いて,必要性等をずいぶんと説明した。
 まともなSEを雇うにはかなりの人件費がかかるし,いいSEは非常に少ない。育成のための大学を作る県もあるようだが,そうでないやり方もあるのではないか。

知事:茨城県でも,SEをもってくればいい。

委員:第1回の会合ということもあり,考え方について話をさせてもらう。今,国も地方もITで大騒ぎをしているが,冷静に考えればITは所詮道具にすぎない。この道具を使って何をやるかが問題。一般国民から見ると,電子政府になると何が嬉しいのか良く分からない。その辺の嬉しいメニュー集を示していくようなことも考えるといいかもしれない。覚悟をもって望めば相当のことができるのではないか。
 県庁の電子化が成功するためには,4つの原則があると思う。
@ 利用者から見て何が嬉しいのかを明らかにする。県民から見て何が嬉しいのかを1つ1つ詰めていくこと。
A 茨城県の競争力を高めていく努力が必要。自己満足に終わってはいけないが。
B シームレスの原則。別に縦割り行政でも構わないと思うが,利用者の視点に立ったときに,国,県,市町村といった別々の組織がシームレスであるかのように見えるといい。
C 透明性の原則。岐阜県では,予算作成の初期段階から外部に公開している。

委員:私は中間管理職で,ITの専門家ではないので,県民としての立場から,感想を言わせてもらう。
@ 電子県庁の構築にはかなりの費用がかかるので,なぜやるのかをはっきりさせる必要がある。
A やるからには,利用者から見てワンストップでいくようなサービス提供であるべき。先ほどの発言にもあったように,シームレスでいくことが必須。県としては,国と市町村の間をつなぎながら,利用者の役に立つように調整していくことが求められる。
B 効率化の観点が必要。ネットワーク社会では,情報のやりとりの仕方そのものが変わっていく。その場合,仕事のルールを変えることができるのは上の役職の方々であり,ITでどこをどう変えるのか,しっかり意見をもつことが必要。

委員:茨城県がIT先進県であるというためには,市町村とつながっていないといけない。やはり,利用者をいかに獲得していくかが重要。例えば,情報格差のあるモデル地域を選定し,そこの住民にはパソコンを無償で貸し出し,ネットいばらきと無償でつなぎ,こんなことができるんですよ,と教えるとか。

委員:まず外向きの話としては,県庁のHPへのアクセスが月にたったの88万件とはずいぶん少ない。世代を分けてアクセス人数を確保する必要があるのではないか。月に300万件のアクセスを目指す努力をすべきである。とにかく見てもらうことが必要で,コンテンツはあとからついてくる。
 内向きの話としては,せっかく委員になったのだから,どこか視察に行きたい。クイーンランド州とか。海外の先端例を,次回までに整理してくる。これからは,県も1つの企業としてやっていかないと厳しい。いずれ,自治体の統合が起こるだろう。
 日本の県庁で,ERPを知っている人はほとんどいない。お金を使うのなら世界標準のシステムを導入していかないと,ばらばらのシステムの寄せ集めになってしまう。5年後には収支を表に出せるようなシステム構築を目指していかないといけない。

注) ERP (企業資源計画) 【Enterprise Resource Planning】
企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。これを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェアをERPパッケージと呼ぶ。代表的なERPパッケージとしては、ドイツSAP社のR/3、PeopleSoft社のPeopleSoft、データベースベンダとして有名なOracle社のOracle Applications、オランダBaan社のBAAN IVなどがある。

 もう1つは,規制緩和の推進が必要である。電子調達の実現など。
 最後に,細かいことを言わせてもらえば,資料に通し番号を振ってほしい。こういうところから,効率化が始まる。

委員:なぜ電子県庁を構築するかというと,決裁のスピードが重要だから。世界の先端例を調査して,検討していきたい。

委員:茨城県高度情報化推進計画を策定するときも,従来の仕事のやり方はIT化にそぐわないという意見がずいぶん出た。国との整合性をとって,仕事のやり方を変えていかないといけない。県職員が楽になる方向を目指さないと,変革はうまくいかない。

委員:強大なパワーをもった別組織をプロジェクトとして立ち上げてやっていくといい。決裁やら様々なルールを変えるだけの絶大な力をもった組織が必要。
 先の議論にもあったが,情報通信基盤の問題は重要。その点,茨城県はつくばを持っているということで,すごく有利だと思う。つくばが日本のシリコンバレーになれるチャンスは十分ある。もっとも,シリコンバレーなどと二番煎じの言い方をする必要もないが。つくばバレーという言い方もあまりよくない。とにかく,電子県庁の構築にあたっては,ビジネスライクに他県にシステムを売っていくくらいの気持ちでいけばどうか。日立あたりに協力してもらって。

委員:電子認証は幹部の指紋で行うようにすれば,幹部自らパソコンを使わざるを得なくなる。秘書の指紋ではだめ。幹部本人の指紋でないと。そして,使うことができない幹部には,退陣願うのがいい。

知事:県では,つくばスマートコリドール構想を立ち上げている。新しく住宅地ができることだし,そこで実験をしていけたらいい。NTT−AS研あたりにも協力してもらえたらいい。

議長:電子県庁構想では,内部の効率化や県庁の仕事のやり方をどう変えるかという議論が出ているが,事務局としての考えはあるか?

事務局:その点については,資料5で課題として挙げているところ。今のやり方をどう変えていくのかは,これから検討していく問題。しかしながら,制度面などについては,県だけでは変えられない部分もあり,その点がクリアできないと,単にITを入れました,だけになりかねない。現在は,こうしていこう,という案はまだない。

知事:決裁のルール等の問題については,行革・分権推進室にチェック・検討させたらいい。今は,決裁が上まであがってくるのに時間がかかりすぎる。

議長:この問題は避けては通れないということ。行革・分権推進室にパワーを出してもらうということ。

委員:電総研での文書見直しは,結局,研究者も巻き込んで実施した。当然,研究者からは,なぜ自分たちがこのような事務系の仕事をしなければいけないのかという不満が出たが,「我々研究者が生き残るためには,このぐらいの事務の効率化は図っていかないといけない」と説得した。電総研では1,000件の文書の見直しを行ったが,ずいぶん労力がかかった。県では2,000件の文書があるということだが,大変な労力になることと思う。しかし,どこかの時点でそういう山を越えなければいけない。

知事:建築の設計図などはどのように扱っているか?

委員:それは電子化していない。紙文書のまま。

議長:利用者層をどのように考えればいいのか。

事務局:どこの層にウエイトを置くかは考えていない。施設予約は個人相手が多いだろうし,電子調達は企業相手が多いだろうが。

議長:この辺も検討していく必要がある。

知事:県HPへのアクセス件数月88万件というは,自治体としては多いほう。HPも,「遊ぶ」「学ぶ」などの分野ごとに分類する方向で検討中。県計画もそのような構成で策定中。

委員:映像関係の仕事に18年携わってきているが,最初の頃は金額面でしか他社と比較してもらえないことが多く,企画力が大事だということをずいぶん主張してきた。それがHP制作が盛んになってきたころから,流れが変わってきた。これまでのようにページ数や部数で単純に計算することができなくなってきたためで,ようやく企画コンペ方式が中心になってきた。役所のHPの概念を壊したような企画も少し採用してもらった。明野町HPに,茶髪の「明野ちゃん」キャラクターを採用した例もある。
 茨城県では,県庁HP以外にもっともアクセス件数が多いのは,つくば市のHP。明野町の例では,全国から7千通くらいメールで問い合わせがあり,ものすごい宣伝効果,費用対効果であると町長に喜ばれた。

議長:県民からのメールなどに対するレスポンスについてはどうなっているか?

事務局:県民からのメールやパブリックコメントなどについては,まだなかなか十分な意見が集まらない状況。HPについては,専門の部会を設けており,その中で検討していきたい。

議長:双方向性の問題は避けては通れない。

委員:国民が心配しているのは,セキュリティとプライバシーについてである。例えば,アメリカのホワイトハウスのHPを「Yahoo!」などで検索すると,14,15件出てくる。1件は本物のサイトだが,その他は偽物ということ。通常はそれほど問題にはならないが,偽ホワイトハウスのサイトに偽情報が掲載されたりすると大変。

委員:セキュリティについては,アウトソーシングしてもなかなか期待できない。県庁内部に,そうした問題をきちんと担当する人を確保して欲しい。

議長:今日の意見を事務局で整理していただき,それをもとに次回の議論につなげていきたい。

事務局:次回は,県議会の関係もあり,12月20日頃と考えている。