第2回茨城県IT戦略会議 議事要旨

1. 日時 : 平成12年12月25日(月)13:30〜15:30

2. 場所 : 庁議室

3. 議事内容:

  会議の冒頭,委員からのERP(統合業務パッケージ)についての説明と,海外における導入事例(カナダ政府,アメリカ・サクラメント州等)が紹介された。

注) ERP (企業資源計画) 【Enterprise Resource Planning】
企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のこと。これを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェアをERPパッケージと呼ぶ。代表的なERPパッケージとしては、ドイツSAP社のR/3、PeopleSoft社のPeopleSoft、データベースベンダとして有名なOracle社のOracle Applications、オランダBaan社のBAAN IVなどがある。


 (1)  電子県庁関係

委員:さきほどERPの説明の中で,中央省庁を参考にするのでなく,一気にグローバリゼーションへと進んではどうかという提案があったが,私も賛成。しかし,日本にそれが根付くのは時間がかかる。8年前にクリントン政権はHPCCの提言を行っており,提言の仕方も上手いものであった。日本は8年の遅れがあり,アメリカの例などを勉強すると,まとまった提案ができるのではないか。

注)HPCC(プログラム)
「1991年高性能コンピューティング(HPC)法」に基づいて、レーガン政権時代の1992会計年度に始まったコンピューティングと通信の分野の研究開発促進プログラム。情報スーパーハイウェイとして有名になった国家情報インフラ (NII:National Information Infrastructure) と共にクリントン政権の政策の目玉となった。

事務局:私が建設省にいたときは,契約関係の部署に所属していた。電子調達の検討はカナダをモデルにしている。海外で委員の説明どおりのことが起こっているとすれば,それが日本に上陸するのは必然。認識を新たにした次第。GIS等にも対応していきたいと考えている。私からの説明は,現実的なものであったが,委員のおっしゃる内容についても視野に入れていきたい。

注) GIS(地図情報システム)【Geographical Information System】
デジタル化された地図(地形)データと、統計データや位置の持つ属性情報などの位置に関連したデータとを、統合的に扱う情報システム。地図データと他のデータを相互に関連づけたデータベースと、それらの情報の検索や解析、表示などを行なうソフトウェアから構成される。

委員:建設省は,ERPを使っているのか?
  
事務局:入札情報の提供と入札そのものについて,ERPのパーツのみ利用している。他の省庁との関係もあるので,建設省だけでやり方を変えるわけにもいかないが,いずれはERPの考え方にしていきたい。
  
委員:電子県庁がどこまで進むかは分からないが,今のうちから,ある程度の人を養成していかないと,2003年に間に合わない。県の対応はどうなっているのか?
  
事務局:国においては,民間から,給与水準を変えることなく人を採用することが可能となったところ。県においても,IT関係についてある程度の職員はいるが,実務を全てやれるわけではない。IT推進の軸は,民間等の人材になってくるのかと思い,検討していきたいと考えている。
  
委員:2週間前,アメリカのブルックリン研究所での電子政府に関する国際ワークショップに参加した。そこでは2つの観点があり,1つ目は効率化,2つ目はサービス向上である。サービスの対象となるcustomersが誰なのか,というのは国によって異なるが,誰に対してのサービスなのかは徹底的に議論する必要がある。アメリカでは,一般市民や企業が対象である。ホームページを使って情報提供を行うにしても,県民のニーズに沿ったものをどれだけ提供できるかが重要。海外でニーズの高い情報は,高い順に,医療,議員当選後の行動,社会保障,行政の効率化,教育関連である。カスタマー・リレーションシップ・マネジメント,すなわち顧客への情報サービスが求められているのであり,そういう視野もほしい。
  
事務局:ITは何のためにやるのか。従来は,サービス向上につながるはずということで議論がなされていたが,問題なのはサービスの内容であり,そういうことについても検討していきたい。
  
委員:資料にも載っているが,市町村への展開も重要である。対応策として,県では研究会を開催しているということだが,是非,県に強力なリーダーシップをとっていただきたい。日本では,国−県−市町村の連携がまだうまくいっていないと思う。国−県の関係も踏まえながら,市町村との関係についても考えていってほしい。研究会には期待している。
  
事務局:市町村合併がますます盛んになっていく時代において,市町村における情報化を進める際に,スタンダード化しないで進めるのは問題。合併後に困ることになる。研究会を通じて,市町村との連携を図っていきたい。
  
委員:住民サービスとして,障害者に関する項目が1つ欲しい。現在,ユニバーサルデザインなど,誰でも等しく利用できるサービスが求められており,そういう観点もほしい。
  
事務局:これからは,そういう観点が必須だと思っている。
  
委員:結局は,何にためにやるのか,ということで取り組みの優先順位が決まってくる。県民のニーズを把握しておくことが,施策の透明性を高めるために必要。もっとも,いきなり,ニーズは何かと聞いても答えにくいだろうから,県が提案をして,それに対する意見を聞いて,というプロセスを繰り返していくとよい。
  
事務局:県のホームページで議事録の公開を行ったり,県民からの意見を聞いたりしているが,それだけでは足りないだろう。パブリックコメント等も活用して,検討を進めていきたいと考えている。このIT戦略会議についても,中間段階で県民から意見をもらって反映させていきたい。次回は,もう少し具体的な提案をしていきたいと思う。

 (2) 産業振興関係
  
委員:商工労働部と農林水産部の両方に申し上げたいが,どの程度の期間を見込んで,どの程度の成果が出れば,目的を達成したことになるのか,というアウトプットがみえてこない。短・長期的な展望を県に示してもらいたい。私としては,長期的な展望が中心の方がいいと思う。また,日本は,IT関連の教育面で遅れている。インドでは12万人,アメリカでは7万6千人のIT技術者がおり,一方日本では,ソフトウェア関連の技術者は5千人未満ではないか。これからは,IT技術者を確保していくことが必要であり,真面目に検討すべき問題。
  
事務局:農業は,衣食住に関する生命産業であり,なくなることはない。安心や安全が使命だと思っている。農業技術者自らがIT専門家になる必要はない。科学技術により,農業を活性化しようとする動きがあるが,そうしたものを大事にしていきたい。
  
委員:IT利用者は多くても,IT供給者は少なく,人材育成が大事だということである。
  
委員:時代がこうなるからこうする,ではなく,時代をこうしていこう,という人が少ない。だからインドから技術者を引っ張ってこようとしているのであり,日本で人材を育てるのは大変な状況。インドでは,英語がしゃべれること+ITという強みで,人材が大学でどんどん養成されている。日本でも,できれば英語とITをマッチングさせたような大学を作るとか,センター的なところで数万人の養成を図るとか,そういうことをしてもいいと思う。
  
委員:これまでの議論において,@IT企業そのものの振興と,AITを利用しての他産業の振興,の2つの観点があると思う。
今は,首相の掛け声もあり,何でもITということになっているが,@については,なぜIT産業が「茨城県」に来ないといけないかを考える必要がある。そのためには,地域の特徴を活かした,他にはない,茨城県だけのオンリーワンである何かプラスアルファのものを考えていかないといけない。Aに関しては,今は,日本経済全体で見て,IT関連は半導体とその周辺産業しかない。ITは魔法の杖ではないのであり,「自分なら行政サービスにいくら払うか」を冷静に考えてみるとよい。情報公開だからといって,どんな質の情報でも載せればいいというわけではなく,本当に金を払うに値するサービスなのかということが,実際に提供するサービスを考える際の参考になると思う。
  
事務局:個人的には,日本に人材がいないことが最大の問題だと思う。IT教育立国とでも打ち出すくらいのことをやれば,どんどん人が育ってくるのではないか。大学からの教育では遅いかもしれない。
  
委員:茨城県には,爆弾のように突出した有利な点がある。約2千億円かけて開発されるという世界最大の陽子加速器のことが平成12年12月8日付け茨城新聞に掲載されていたが,これはまさにITそのもの。これを利用することを考えなければ,今回のIT戦略会議の意味はない。陽子加速器関連で,茨城に技術者が3千人は呼べるかもしれず,家族まで含めたら大変な人数が誘致できる。外国人の受け入れや国際大学などが茨城県の目玉になるのだから,「フロンティア21構想」も2年で立ち上げないと,インドからの技術者は皆他県に行ってしまう。
  
事務局:国際化基盤や情報化基盤としての役割が検討テーマとして念頭にあったが。
  
委員:ほかにも,3テラバイトの通信網が茨城とアメリカをつないでいるのであり,以上の2点において,茨城県は圧倒的に優位なのである。

事務局:我々としては,県計画等にそって現実的に進めていかないといけない部分があるが,おっしゃるようなことも,1つの契機として重要と思う。
  
事務局:陽子加速器については,研究活動のインフラとして理解していたが,それ自身が産業になるという理解はなかった。
  
委員:確かに認識不足かもしれない。今回の陽子加速器についても,周辺産業の創出等に関しては,間違いなく,周辺の中小企業がやることになる。その際に,そこの企業にIT技術者がいるかいないかで全然違う。最終的に金がどこに落ちるかを見ておく必要がある。
  
事務局:正直言ってそういうことは意識していなかったが,今のお話で認識した。これらの意見も取り込んで考えていきたい。
  
委員:IT技術者がいるかいないかで企業の運命が左右されることになる。
  
事務局:産業専門学院においてこれまで低いレベルでのIT技術者養成をやっていたのを,来年からは,労働省との調整がついて高度な人材育成教育をやっていけるようになった。しかし,それでもまだ足りない。
  
委員:北大では,学生がベンチャー企業を起こしたりしている。筑波大でも方針を学生に示して,そういうことをさせてもいいのではないか。
  
事務局:県と国の間には壁があり,国立大学には口を出しづらい部分がある。
  
委員:つくばに来て思ったことは,つくばは県から浮いている感じだということであった。
  
委員:北大と筑波大では,環境の違いもある。北海道では,人はあまり本州に行きたがらず,地元で就職しようとする風土がある。
  
委員:小中高の段階からIT教育をやっていかないといけないが先生が足りない。情報というカテゴリーはこれまでなかった。先生になりたい学生がいても,茨城県で採用してもらえるとは限らない。その辺から検討していく必要がある。また,日本人だけではとても人が足りず,外国人をどんどん受け入れていかないといけない。極端な話,積極的に帰化させるくらいでもいい。中国の人は本国に帰らない場合が多く,そういう優秀な人を何とか日本に留めていけたらいい。
  
事務局:学生の能力が発揮できるシステムであって欲しい。中小企業にITのエキスパートを派遣したくても人がいない。できれば学生を使いたいとも思うが。
  
委員:なぜ,IT関連の県立大学ができないのかが不思議である。
  
委員:日本の若者は超安定志向であり,なかなか起業したがらない場合が多い。
  
事務局:アメリカも,70年代はそうだった。それが,企業の倒産が相次いだりして,今はベンチャー志向が多くなっている。そういうわけだから,筑波大でもあきらめずにやってほしい。
  
委員:岩手は500億円もかけて県立大学を作っている。
  
委員:日本の大企業においては,優秀だが企業の役に立っていない人がたくさんおり,そういう人たちをIT専門家に育てていって活用したらいい。
  
事務局:県としても,県立大学は以前から作りたかったのだが,唯一実現できたのは医療大学である。
  
委員:茨城県にそういう県立大学がないから,私は岩手の大学院まで通っている。卒業生は全員県庁に採用される。政策を勉強していない人が県庁に入るなんて考えられない。
  
委員:皆さんの議論を聞いていて,これまで漠然としていたことがはっきりしてきた。これまでの議論を整理すると,次の観点に分けられる。@IT企業へのアプローチとして,人材育成の問題がある。外国人が住みやすい魅力的な環境をどう作っていけばいいのか。県としては,税制面での優遇措置などが考えられるのではないか。AITを使っての一般企業へのアプローチとして,市町村が,どういう街にしていきたいのかをはっきりと示していることが必要。陽子加速器は1つの目玉であり,他の地域でも,こういうものを核として,情報産業,バイオ産業等の構想を掲げるとよい。B今いる企業や住民に対するアプローチとして,ITを使って何ができるのか,ITを使って何が解決できるのか。それには,やる気のある企業がどのくらいあるかが重要であるが,その辺の調査資料はあるか? 
  
事務局:資料にある。
  
委員:企業側にそれなりの意識はあるということか。そうすると,具体的に県は何ができるのかが問題になってくる。許認可等の環境面での整備が必要である。最後の1つは企業誘致である。
  
委員:自社においては,人材の確保が問題となっている。優秀な人を確保するにはどうしても東京まで求人を出さねばならず,月60〜80万かかるのは非常に負担である。また,その次の段階として,確保した人を,事業が本格的に稼動するまで半年から1年くらい抱えておくだけの資金がない。どうやって,せっかく来てもらった優秀な人材を留めておくか,悩むところ。2年前から外国の人の採用も考えているが,それでも資金面で難しく,下手すると,すぐよそに引っ張っていかれてしまう。人材の流通を支援するシステムや,人材を確保している間の資金面での支援などがあるといいと思う。そうすれば優秀な学生をもっと採用できる。そういうことも検討していきたい。
  
委員:ITの教育に関しては,県民にどう協力を求めるかが重要である。子供への投資は,時間はかかるが確実なものである。県民にボランティアを求める体制があってもいい。私のところでは,社員が非常勤講師等で出向くこともあり,そのような形で協力する用意はあるので,ぜひそういうシステムを作って欲しい。
  
 (3) その他

   次回は2月23日(金)13:30〜となった。