茨城県の平成14年度の包括外部監査の結果が、2003年2月26日開催された県議会に報告されました。 14年度の外部監査は、県の支出の1/3近くを占める職員の人件費について監査が行われました。 人件費の支出については、法令や、条例、規則に基づき適正に処理されているとしました。 その上で、早急に改善に取り組むべき課題を16項目にわたり、指摘しました。 今回の外部監査の指摘は、井手よしひろ県議が、当選以来一貫して指摘し続けている内容です。 県の財政硬直化の中で、早急に取り組まなくてはならない内容です。
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監査報告概要
2003/2/26包括外部監査の結果報告書及びこれに添えて提出する意見
外部監査の概要《事件選定の理由》
茨城県の人件費について茨城県の危機的財政状態は、現在も継続しており、平成15年度に約800億円そして平成16年度も約900億円の歳入不足が見込まれている。
義務的経費である人件費の負担は、平成13年度において歳出額の31.9%、金額ベースで実に3,526億6,309万円であり、また、県のラスパイレス指数は、平成14年4月1日現在で103.4(全国で6番目に高い順位)になっている。
このような状況に鑑み、人件費が義務的経費であったにしても経常的歳出に占める影響が大きいことに着目し、@県の人件費の予算執行が適正に行われているか、A県職員の定員管理が適正に行われているか、B国の水準を上回る人件費の支出が行われていないか、C人件費の削減・抑制の措置がとられているか、D退職手当制度が適正に運用されているか、E県の財政に大きな影響を与える可能性がある退職手当の財源確保が適切に行われているか等、人件費(給料及び諸手当)に対する検討の必要性を認めた。包括外部監査の結果に添えて提出する意見
茨城県として早急に取り組むべき課題については、次のとおりである。(1)特別昇給の見直し
特別昇給には、定数内特別昇給と定数外特別昇給がある。特別昇給の種類、適用基準等は、複雑・多岐にわたっているが、その運用について一部見直しが必要な点もある。すなわち、激変緩和措置が長期化しているものや社会経済状況に合致しないものが一部見られた。
(2)55歳昇給停止制度の早期導入
このような運用が行われると人件費の負担増のみならず、退職手当の負担増にもつながるものである。例えば、国に比較して有利になっている退職者に対する特別昇給の影響を試算した場合、平成13年度で約2億7千万円の負担増となっている。国に比較して有利となっている退職日における県独自の特別昇給1号について見直すことが必要であり、定年・勧奨退職者に対する退職年度(4月1日又は退職承認後)における特別昇給1号についてもその必要性を見直すべきである。また、今後は、特別昇給制度の趣旨に沿った運用が図られるよう留意する必要がある。
国においては、平成11年度に55歳昇給停止制度が導入され、経過措置期間が終了する平成17年度から完全実施される。県が採用している58歳昇給停止制度を継続しなければならない積極的理由がない以上、早期に国に準じた55歳昇給停止制度を導入することが必要である。
(3)特殊勤務手当の見直し
一定の条件下で比較した場合、58歳昇給停止制度と55歳昇給停止制度の給与負担に与える影響額(負担増額)は、制度完成時との比較で約1億9千万円であり、今後県職員の高齢化が加速していくことから単年度の影響額(負担増額)も拡大することになる。また、影響は給与にとどまらず退職手当にも影響し、制度完成時との比較で約2億9千万円の負担増となっている。
制度改正の先送りは、給与及び退職手当の負担増にもつながるため、55歳昇給停止制度の早期導入と導入時における適正な経過措置の期間設定が必要である。
特殊勤務手当は、勤務の特殊性(著しく危険、不快、不健康または困難その他著しく特殊)に着目して支給される手当である。特殊勤務手当の中には、@勤務の特殊性を再検証する必要がある手当、A国において類似する特殊勤務手当があるが、その支給条件・支給額が県の方が有利な手当等が散見される。多種・多様にわたる特殊勤務手当について、整理、見直しを実施することが必要である。
(4)勤務評定制度の見直し
現行の勤務評定制度は、任用には利用されているが、昇給の判定にはほとんど利用されていないなど、人事制度全般に活用できる制度になっていない。勤務評定制度を全般的に見直すことが必要である。
(5)教育職員の昇給短縮の見直し
教育庁において特別昇給として実施されている昇給短縮については、特に枠外特別昇給が他の都道府県と比較しても、本県における他の職と比較しても、妥当性は認め難く、早急に見直し、削減を図ることが必要である。
(6)期末手当・勤勉手当の見直し
また、給料表枠内で実施されている昇給短縮についても、他の都道府県との給与水準の均衡を図りながら、見直すことが必要である。
民間の賞与に該当するものとして期末手当及び勤勉手当がある。勤勉手当については、職員本人の勤務成績に応じて成績率を定めて支給すべきものである。しかし、勤務成績優秀者については、県警本部において運用されているのみである。(4)勤務評定制度の見直しにも関連するが、勤務成績を適正に勤勉手当に反映させ、職員のモラール(士気)の向上につなげることが必要である。
(7)教育職員の職務専念義務免除研修の見直し
完全学校週5日制が導入され、文部科学省からも勤務時間の有効活用や研修の充実を図ることが求められている。これを受けての高教第700号の趣旨に則り、職務専念義務免除研修については、その計画・報告の適正化を図るとともに学校管理者が適切に管理することが必要である。
(8)教育庁の外郭団体への職員派遣の見直し
教育庁の外郭団体である財団法人茨城県教育財団及び財団法人茨城県体育協会等へ派遣職員数が多いことから、その在り方及び適正化について、見直すことが必要である。
(9)在勤地の見直し
旅費の支給基準となる在勤地については、昭和29年に「人事委員会による別段の定めがされるまでの間」としての経過措置が設けられ、約50年間が経過している。旅費条例制定当時の市町村を単位に在勤地が判定される結果、現状にそぐわないものとなっている。在勤地の取扱いについては、条例の規定のとおりに運用すべくすみやかに見直すことが必要である。
(10)警視の級格付けの見直し
公安職の警視の級格付けをみると、警視である課長級の職員が、国より有利になっているほか、行政職と比較しても有利な格付けとなっている。
(11)長期勤続退職者に対する調整措置の見直し
また、10級に在職する職員の割合をみても、本県は全職員の1.7%(平成14年4月1日現在)を占めており、全国でも第2位と高い位置にいる。
県においては、県警本部と人事委貞会とが公安職の任用及び給与に関する協議を進め、段階的に見直しが行われているが、すみやかに期限を定め是正する必要がある。
国においては、国家公務員の退職手当について民間企業の実態を踏まえ支給水準を見直すこととし、平成15年度から退職手当の支給水準を引き下げる法改正を予定している。
(12)復職時調整の見直し
県においても、国に遅れることなく、調整率の引き下げ等長期勤続退職者に対する調整措置を見直すことが必要である。
退職日に病気休職等からの復職を発令する際に実施している号給の調整は、公務傷病等による休職等相当の理由が認められる場合に限るなど、見直すことが必要である。
(13)早期勧奨退職制度の拡充
県職員の年齢別職員分布は、30歳台後半から40歳台後半の年齢層が多く、若年層が極めて少ない状況になっている。このような状況を改善し、人件費負担の平準化、職員の年齢構成の適正化を図るためにも、特定の年齢層に対する早期勧奨退職条件を有利にするなど、国の制度にこだわらず、早期勧奨退職制度利用者を拡大するための方策を講じるなど見直すことが必要である。
(14)警察官の退職時昇任・昇格の見直し
警察官に対し定年退職時に昇給を伴う昇任・昇格が実施されている。警察官に対する退職時の階級昇任は、全国的に実施されてはいるが、退職手当の増嵩を伴う退職時の昇格については、見直すことが必要である。
(15)退職手当計上の適正化
公営企業会計等における退職手当の計上については、本来負担すべき部門において適正額が負担計上されなければならない。企業局及び県立病院においては、適正な会計結果を開示するためにも、すみやかに退職手当の負担・計上方法を見直すことが必要である。
(16)退職手当基金設置の必要性
退職手当額支給のピークを迎える平成28年度には、退職手当の負担は約482億円となり、退職手当額400億円台も平成22年度から平成34年度の長期にわたることが想定されている。また、単年度の要準備高も平成12年度では約128億円と高額になっている。
退職手当は将来必ず負担しなければならないコストであって、その負担を先送りすることは、将来の県民にその負担を強いることになる。したがつて、厳しい財政状況下であっても、退職手当基金を設置することが必要である。また、財政難から基金の積み増しが困難な場合においては、不足額を開示していくことが必要である。