<なぜ、介護予防か>
日本は今、超高齢社会への道を歩みつつあります。高齢者の急増を「大変、やっかいなこと」と考える向きが多いですが、公明党は「めざすべき社会」を、元気な高齢者が多い社会、健康寿命をより延ばす社会という「高齢者いきいき社会」にしたいと考えています。 そのためには、高齢社会を支える大きな柱の一つである介護保険制度について、「介護予防に力点を置く」という視点が極めて重要になると考えます。 事実、ここ数年、軽度の要介護者(「要支援者・要介護1」)の認定数が急増しています。また、こうした軽度の要介護者の重度化が進んでいます。特に軽度の要介護者の重度化は、本来、介護サービスは高齢者の生活機能、身体機能の維持・改善が目的であるにもかかわらず、結果として身体機能の改善に結びついていないことが大きな要因といわれています。いまこそ、要介護者の増加や悪化を防ぐため、介護予防の充実を図らなければなりません。 一方、介護予防と関連して「疾病予防・健康増進」という視点からの取り組みも重要です。中でも生活習慣病は近年、増加の一途をたどっており、それが脳卒中などを惹起し、要介護状態発生の起因ともなっています。さらに、女性の生涯を通じた健康増進を図ることも不可欠です。 こうした観点から公明党は介護予防・疾病予防・健康増進を一体的なものととらえ、具体的に下記の施策を提案いたします。 |
T 進んで防げば、はつらつ人生≪介護予防≫ 1、「介護予防10カ年戦略」の策定
国は「介護予防10カ年戦略(仮称)」を策定し、政府一体となった取り組みを進めます。「介護予防・健康増進」を医療、保健、介護の重点分野に位置付け、計画的な基盤整備、設備の配備、人材の育成を進めます。
2、「介護予防10カ年戦略」の目標
・この「介護予防10カ年戦略」によって、高齢者人口に占める要介護者比率の減少(3割減)をめざします。(平成15年12月現在約15.5%を、10年間で10人に1人を目標に)
※(参考)要介護者〇平成15年12月 約376万人
・5年後に、この「戦略」が効果的に実施されているかどうかについて、その対費用効果も含め、適切な見直しを行うものとします。3、「介護予防10カ年戦略」の主な取り組み
(1)介護保険に新たな介護予防サービスの創設
介護保険制度における要支援や要介護1の方、要介護状態になるおそれのある虚弱の方々(約100万人)を対象に新たな介護予防サービスを創設します。(2)介護予防サービス拠点を“歩いて行ける”場所に整備
地域において、歩いて行ける介護予防サービス拠点を以下の目標で整備します。
(第1段階)平成20年度までに、中学校区に一つ(約1万カ所)整備します。
(第2段階)平成23年度までに、小学校区に一つ(約2万3000カ所)整備します。(3)筋トレなど効果のある介護予防プログラムの開発と設備の配備
・筋力トレーニングなど、効果のある介護予防およびリハビリプログラムを開発します。
・トレーニング機器等を早急に整備します。また、地域における水中運動用の温水プール等の施設を活用し、介護予防の取り組みを推進します。
・一人一人の高齢者の特性に合わせた介護予防の取り組みをサポートする人材(健康スポーツ医、健康運動士など)を介護予防サービス拠点に配置します。(4)総合型地域スポーツクラブの推進と高齢者健康メニューの追加
・総合型地域スポーツクラブを推進し(5年間で全市区町村、10年間で全中学校区約1万カ所)、その機能を活用して、高齢者がスポーツに親しみやすい環境づくりを進めます。
・高齢者健康づくりのメニュー、筋力トレーニングの機能を充実するための機器の整備と人材の配置を進めます。(5)高齢者リハビリテーションの見直しと充実
・高齢者の態様に応じたリハビリテーションプログラム(脳卒中モデル、骨関節疾患モデルなど)を開発し、実施します。
・地域におけるリハビリテーション提供体制を整備します。
・高齢者の態様に応じたリハビリテーションが実施できるよう各種専門職を育成し、配置します。(6)痴呆性高齢者のサポート体制の整備
・痴呆性高齢者グループホームをはじめ、小規模多機能サービスなど痴呆性高齢者のサービス拠点を、平成20年度までに中学校区に一つ(約1万カ所)整備します。
・痴呆に関する研究、研修を推進するとともに、痴呆介護の専門職(医師、保健師、介護福祉士など)を育成、配置します。
・痴呆の早期発見、相談、診断体制を整備します。(7)市町村における具体的取り組み
・「介護予防事業」の位置付け
市町村は介護保険事業計画の中に「介護予防事業」を位置付け、事業の推進を図ります。・介護予防モデル地域の指定
介護予防の先進的な取り組みをしている市町村を、介護予防モデル地域として指定し、その取り組みを普及します。・「介護予防連絡協議会」の設置
市町村に「介護予防連絡協議会」を設置し、医療機関、介護事業所、社会福祉協議会や民生委員、教育・スポーツ関係者、地域の自治組織等の関係者との連携と介護予防事業計画への住民の参画を図ります。
U 健康第一! 元気な暮らし≪健康増進・疾病予防≫ 1、健康増進・疾病予防対策の戦略的推進
(1)生活習慣病対策
・EBM(効果的な老人保健事業メニュー)による老人保健事業のメニューの総合的な見直しを進めるとともに、休日・夜間検診体制等の整備を進めます。
・市町村や医療保険保険者等の共同による生活習慣病予防の取り組みを進めます。
・保健師やIT(インターネット)等を活用した、実効性ある生活習慣病予防のプログラムの推進を図るための手法の開発や、モデル事業の取り組みを進めます。
・「まちの保健室」事業など民間団体による取り組みを推進します。
・禁煙プログラムの普及等たばこ対策を推進します。
・生活習慣病予防のための「食育」を推進します。(2)脳卒中対策
・@EBMによる超急性期医療の普及Aストロークケアユニット(脳卒中治療管理室)の緊急整備Bリハビリテーションの充実(超早期リハ・回復期リハ・老人保健施設の活用の拡大)を図ります。(3)骨関節疾患対策
・老人保健事業における骨粗しょう症検診のあり方等を見直し、その充実を図ります。2、女性の健康増進策の推進
(1)「女性のがん」への挑戦
〇乳がん対策
・がん検診の受診率の向上を図るとともに、各地域でマンモグラフィが利用できるよう平成16年度に新たに500台(現在、既設のものと合わせて計2000台)整備し、身近な地域で検診ができるようにします。〇子宮がん対策
・子宮頸がん検診における若年者の受診率の向上等、がん検診の充実を図ります。〇がん患者の第3次予防の充実
・手術後から再発可能性のある期間のケア体制の充実を図ります。(2)「ウーマン・ヘルス・プロモーション・プラン」の策定
女性の生涯を通じた健康増進・ケアの推進を図る「ウーマン・ヘルス・プロモーション・プラン(仮称)」を策定し、推進します。具体的には以下の諸施策等を進めます。
〇女性に特徴的な疾患の予防
〇女性専門外来の設置の推進
〇骨粗しょう症対策の充実(再掲)
〇休日・夜間検診体制の整備
〇ジェンダー医学の研究の推進
〇国立成育医療センターに「ウーマン・ヘルス・プロモーション・プラン(仮称)」の全国的な推進のため、女性専門外来を充実し、情報提供や研究等を推進します。
〇市町村の保健センターや保健所において、女性が相談しやすい相談窓口の設置を進めます。