平成11年第1回県議会定例会の開会に当たり、提出いたしました議案等の説明に先立ち、県政運営に関する所信の一端を申し上げます。
第1県政運営の基本方針 激動の世紀とされる20世紀も残すところあと僅か2年となり、21世紀への秒読みが始まるなかで、今、世界も日本も、新しい時代の枠組みづくりに向け、懸命な模索を続けております。
世界の情勢を見ますと、ベルリンの壁が崩壊して早くも10年が経過しようとする今も、地域紛争の頻発や大量破壊兵器の拡散など、依然ポスト冷戦時代の明確な設計図を描けないなかで、本年1月1日には、今世紀世界経済最大の実験と言われる、欧州統一通貨『ユーロ』が誕生し、国際経済体制が大きく変わろうとしております。
一方、国内に目を転じますと、経済のグローバル化や少子・高齢化が予想を上回る速さで進むなか、戦後の日本経済の飛躍的な成長を支えてきた日本型経済社会システムが随所に行き詰まりを見せ、加えて、バブル崩壊に伴う長期に及ぶ景気の低迷により、国内には深刻な閉塞感が蔓延しております。
このため、国においては、経済再生を当面の最優先課題と位置づけ、日本経済を一両年のうちに回復軌道に乗せるため、各般の経済対策を積極的に押し進めるとともに、引き続き金融システムの抜本的見直しや中央省庁の再編など、社会経済システム全般にわたる改革に取り組んでいるところであります。
こうした内外の環境のなかで、県内におきましても、長引く不況の影響により、個人消費の低迷や企業の滅産が続くとともに、雇用環境も依然として厳しい状況で推移しております。
また、長期に及ぶ景気の低迷は県財政にも影響を及ぼし、歳入の大宗を占める県税収入が大幅に落ち込むなかで、県財政は、まさに危機的な状況に立ち至っております。
こうした状況を踏まえ、県といたしましては、当面、経済情勢の変化に機敏に対応し、国の施策とも連携しつつ、景気の一日も早い回復を目指すとともに、行財政改革を強力に推進し、危機的な財政状況を克服することに全力を傾注してまいりたいと存じます。
また、併せて、本格的な地方分権の時代を迎え、県、市町村ともに、分権型社会に的確に対応しうる確固とした行財政基盤を構築していくことが必要であると考えております。
一方、来るべき21世紀に明るい展望を切り開き、郷土茨城をかがやく未来へと発展させ、県民誰もが新しい豊かさを実感できる魅力ある社会を創造していくため、今、新しい時代のいばらきづくりを積極的に進めていくことが求められております。
そのため、社会資本の整備や少子・高齢社会に向けての体制整備などに精一杯取り組んでいきたいと存じます。
ところで、本年は、県の人口が300万人に到達する記念すべき年であります。
今年夏頃に見込まれる県人口の300万人到達を県民とともに祝福するとともに、これを契機として、ますます発展する本県の姿を内外に広くアピールし、県のイメージアップにつなげてまいりたいと考えております。
また、6月には国際交流の拠点ともなるつくば国際会議場がオープンし、さらに本年末には、昨年暮れに開港した常陸那珂港に外国航路用パースが完成するなど、今年は、本県にとって、まさに交流の時代の幕開けとなります。
このような明るい話題を全国に発信することで、郷土茨城の素晴らしさを広く知っていただとともに、社会全体を覆う閉塞感を一日も早く払拭し、元気回復を図る突破口をこの茨城の地から切り開いてまいりたいと考えております。
また、およそ70年にわたって県政運営の舞台となってまいりました現県庁舎から、4月には、いよいよ新しい庁舎に移転いたします。新庁舎を300万県民とともに県政を推進する拠点とし、職員一同初心に立ち返り、県民福祉向上のため邁進してまいりたいと存じます。
予算編成の基本的考え方 次に、県政の当面する重要課題及び平成11年度予算編成に当たっての基本的な考え方について申し上げます。
まず第1に、景気対策への取り組みであります。
景気対策 経済の繁栄は、豊かでうるおいのある県民生活の実現と地域社会の発展にとっての基本であり、景気回復に向けた取り組みは、喫緊の課題であります。
このため、これまで国の経済対策と呼応しつつ、昨年9月と本年1月の2回にわたり、合わせて1、200億円を超える補正予算措置を講じるとともに、各般の経済対策を全庁挙げて総合的かつ機動的に実施していくため、「茨城県緊急経済対策本部」を設置したところであります。
来年度予算の編成に当たりましても、厳しい財政状況の中ではありますが、財政の健全化に配慮しつつ、社会資本の整備をはじめ、中小企業対策、雇用対策などを中心に、出来る限りの予算措置を講じたところであり、先の1月補正予算と一体的に捉え、いわゆる15か月予算の考え方の下、年度間で切れ目のない執行を図り、当面の景気回復に最善を早くすこととしております。
今後とも、景気の動向や国の対応に十分留意しつつ、全庁挙げて適切かつ効果的な施策の推進に努め、県内経済の一日も早い回復に向けて全力で取り組んでまいりたいと存じます。
第2は、行財政改革及び地方分権の推進であります。
行財政改革及び地方分権の推進 少子・高齢化の進行など、社会情勢が大きく変化するなかで、新しい時代に対応しうる確固たる行財政基盤を構築していくため、行財政改革は待ったなしの最重要課題であります。
このため、昨年策定いたしました新たな「行財政改革大綱」に基づき、全庁一丸となって行財政改革に取り組んでいるところであり、平成11年度予算の編成や組織・機構の見直しに当たりましても、引き続き大綱に沿って着実にその推進を図ることといたしました。
財政の健全化につきましては、全ての事務事業について、徹底した見直しを行い、歳出の節減合理化に努めたところであります。
また、組織・機構の見直しにつきましては、本年4月から本庁部局を再編し、現行の8部1局を7部体制にするとともに、課についても現行の81課を74課に再編するほか、職員数につきましても、平成10年度の400人余に続き、平成11年度においても、教職員を含め約270人を削減するなど、行政運営の一層の簡素・効率化に努めてまいります。
一方、地方分権につきましては、昨年5月に閣議決定された「地方分権推進計画」を受け、現在開会中の通常国会において、500に近い関連法律の改正が予定されており、いよいよ実施の段階となってまいりました。
真の地方分権を実現するためには、その財政的基盤である自主税財源の充実強化や、分権の主たる担い手である市町村の行政運営体制の確立が不可欠であります。
こうした観点から、今般、「自主税財源充実研究会」からの報告を踏まえ、新たな法定外普通税として、核燃料等取扱税を創設することといたしましたほか、市町村の自主的な合併につきましても、今後とも積極的に支援してまいりたいと存じます。
第3は、少子・高齢社会に向けた福祉、医療体制の充実であります。
少子高齢化対策 少子・高齢化の進行は、労働力人口の減少など社会経済活動全般に大きな影響を与えるおそれがあり、国を挙げて早急にその対策に取り組んでいく必要があります。
こうしたなか、少子化対策につきましては、本県では、従来から延長保育や妊産婦医療対策などで全国に先駆けた独自の助成制度を導入するなど、積極的に取り組んできたところでありますが、来年度から、新たに認可外保育施設に対する助成制度を創設するなど、女性が働きながら安心して子育てのできる環境づくりを一層推進してまいります。
一方、介護保険制度がいよいよ平成12年度からスタートいたしますが、県といたしましては、実施主体である市町村の体制整備に万全を期するとともに、今後必要となるマンパワーの育成や施設整備などに力を注いでまいりますはか、本県独自の制度として高い評価を受けている地域ケアシステムと介護保険制度との連携を図ってまいります。
医療面につきましては、介護保険制度の柱の一つとなる療養型病床群の整備や老人訪問看護制度の推進を図るとともに、災害時における医療の確保や救急医療の充実強化、医療施設の不足する地域における中核的病院の整備など、県民が安心して暮らせる医療体制の一層の充実を図ってまいります。
第4は、安全で快適な生活環境の整備であります。
環境対策 近年の大量生産・大量消費型の社会経済システムは、大量の廃棄物を生み、地球規模での環境問題を顕在化させております。美しい地球環境を守り、次の世代に引き継いでいくことは、我々に課せられた責務であり、県民一人ひとりが日常生活と環境との関わりについて認識を新たにし、環境に配慮した行動を実践していく必要があります。
このため、「茨城県環境基本計画」に基づき、行政、事業者、県民が一体となって、環境への負荷の少ない資源循環型社会を目指した取り組みを進めているところであります。
また、従来要綱に基づいて実施しておりました環境影響評価制度につきましては、本年6月から施行される環境影響評価法との整合性を図りつつ、制度の実効性を確保するとともに、より県民に開かれたものとするため、条例による制度に改めることとし、今定例会に「茨城県環境影響評価条例」を提案しているところであります。
このほか、近年大きな社会問題となっております、ダイオキシン問題や産業廃棄物の不法投棄に係る対策の充実強化に努めますとともに、本県の貴重な財産である霞ケ浦の水質浄化に引き続き取り組むなど、郷土茨城の豊かな自然環境を21世紀に継承し、県民が安心して暮らせる環境づくりに努めてまいります。
第5は、活力あふれる産業社会づくりであります。
活力あふれる産業社会 農林水産業を取り巻く情勢は.担い手の減少、高齢化に加え、米輸入の関税化への移行や新しい農業基本法制定に向けた農政改革大綱の決定など、大きな変革期を迎えております。
県といたしましても、こうした情勢の変化に的確に対応しつつ、生産性の高い農業経営体の育成や産地間競争に打ち勝つ園芸県づくりを進めるとともに、林業の担い手育成やつくり育てる漁業の一層の推進を図るなど、若い人が将来にわたって魅力とやりがいを持てる、活力ある農林水産業の確立を目指してまいります。
また、県内の中小企業は、経済のグローバル化や規制緩和に伴う価格競争の激化などに加え、長引く不況の影響により、一段と厳しい経営環境にあります。
こうしたことから、中小企業の円滑な資金調達を支援するため、融資制度の拡充を図るとともに、新製品・新技術の開発や受注・販路の拡大について支援を行うなど、創造性や自立性に富み、競争力のある足腰の強い中小企業を育成してまいります。
第6は、21世紀に向けた社会資本の整備であります。
社会資本の整備 郷土茨城を「かがやく未来」へと発展させていくためには、その基盤となる、陸・海・空の広域的な交通ネットワークの整備を積極的に推進していかなければなりません。
昨年は、常陸那珂港に待望の第一船を迎え入れた記念すべき年となりましたが、このほか、北関東自動車道をはじめとする3本の高速道路や常磐新線の整備、さらには百里飛行場の民間共用化などが着実に進展しております。
今後とも、交流の時代といわれる21世紀を茨城の時代とするため、県土発展の基盤となる社会資本の整備に積極的に取り組んでまいります。
第2予算 次に、予算について申し上げます。
本県の予算編成の前提となる国の予算は、現下の厳しい経済・金融情勢を踏まえ、当面の景気回復に全力を冬くすとの観点から編成されたところであり、一般会計予算の総額は81兆8601億円、対前年度比5.4パーセントの増、また、政策経費であります一般歳出についても、対前年度比5.3パーセントの増と、積極型の予算となっております。
また、地方公共団体の予算編成上の指針であります地方財政計画をみますと、歳出のうち公債費等を除いた地方一般歳出が、対前年度比1.8パーセントの増、このうち地方単独事業については前年度同額となっており、財政の健全化を図りつつ、地域の実情に即して事業の重点的かつ効果的な実施に努めることとされております。
次に、本県の平成11年度当初予算について申し上げます。
まず、来年度の財源見通しであります。歳入の中心であります県税収入につきましては、平成10年度において、景気の低迷による企業収益の悪化、個人消費の不振などから、予算計上額を245億円程度下回る見込みとなっておりますが、来年度は、恒久的減税の影響もあり、法人2税や自動車取得税、軽油引取税などを中心に、今年度の見込みをさらに約140億円程度下回るものと予想され、全体としては、対前年度当初予算比で10.9パーセントの減と見込んでおります。
特に、法人2税につきましては、約850億円と見込まれ、ピークであった平成3年度の約1500億円に比べ、実に約650億円も下回ることとなります。
こうした地方公共団体の大幅な財源不足に対応し、国において、地方交付税の増額や財源対策債の増発などによる地方財政対策が溝じられ、本県においても交付税の増などが見込めますものの、一般財源総額としては、ほとんど伸びは期待できない状況となっております。
こうしたことから、今回の予算編成におきましても、一般財源基金を、338億円取り崩し、所要の財源を確保したところであります。
また、歳出につきましては、こうした厳しい財源状況を見通し、予算編成に先立って事務事業の見直しに取り組んできたところであります。その結果、一般行政施策につきましては、16パーセントの削減を図るとともに、県単公共事業につきましても、15パーセントの事業費の縮減を図ったところであります。
一方、国補公共事業につきましては、一日も早い景気回復に資するため、国の内示が見込まれるものをベースに、前年度同額を措置いたしたところであり、来年度予算の前倒しとして行った先の1月補正と合わせた、いわゆる15か月予算ベースでは、約26パーセントの伸びとなっております。
こうした景気回復への取り組みをはじめ、少子・高齢社会に向けた福祉・医療対策の充実など、当面の課題に対応する施策につさましては、厳しい財政状況のなかで、あらゆる工夫を重ねつつ財源の重点配分を図ったところであります。
この結果、平成11年度一般会計予算の総額は、1兆769億7200万円となり、前年度当初予算に比べ、4.1パーセントの減となっております。
また、特別会計は17件で、総額1494億4400万円となり、27.7パーセントの増、企業会計は5件で、総額953億8200万円、3.3パーセントの減となっております。
なお、債務負担行為は、一般会計で新規51件、特別会計で新規7件、企業会計で新規5件であり、その内容は、建設工事の請負契約などであります。
次に、平成11年度の主な施策について申し上げます。
まず第1は、誰もが健やかに暮らせるやすらぎに満ちた社会づくりについてであります。
少子・高齢社会・男女共同参画社会への対応 まず、高齢社会への対応といたしましては、1年後に迫った介護保険制度の円滑な導入を図るため、介護保険事業者の指定や介護保険審査会の体制整備を図るはか、市町村において本年10月から開始する要介護認定事務や介護保険事業計画の策定を支援するなど、実施に向けた準備に万全を期してまいります。
また、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイの在宅福祉三本柱の拡充を図るとともに、一層の利用促進に努めてまいります。
少子化対策といたしましては、引き続き延長保育、預かり保育や放課後児童クラブの整備に対する助成を行うとともに、新たに、保育内容からみて認可保育所と同じような役割を担っている一定規模以上の認可外保育施設を対象に、児童の健康珍断に要する経費を助成してまいりますほか、保護者の社会的事由により、家庭保育が困難な病気回復期の児童を一時的に預かる事業を行う市町村に対し助成してまいります。
男女共同参画社会の実現に向けた取り組みといたしましては、本年6月に、東アジア地域の女性行政上級担当官を招聘して「いばらき国際女性会議」を開催し、国際レベルで女性問題についての情報交流、相互理解を深め、男女共同参画への県民意識の高揚を図ってまいります。
福祉コミュニティの形成と福祉サービスの充実
地域福祉の推進につさましては、福祉・保健・医療の連携による総合的なサービスを提供する地域ケアシステムを引き続き推進してまいりますとともに、多様化する県民の福祉に係る相談ニーズに的確に対応するため、中央児童相談所など4つの相談機関を統合し、新たに福祉の総合相談センターを設置することとし、当面、現在の本庁舎を整備し利用してまいります。
また、一人暮らしの痴呆性高齢者などが、地域で自立した生活が送れるよう、新たに、県社会福祉協議会が設置する権利擁護センターに助成してまいります。
障害者福祉の推進につきましては、昨年大成功裡に終了したゆうあいピック茨城大会を契機として、障害者スポーツへの関心をさらに高めるとともに、県民の知的障害者への理解を一層促進するため、ゆうあいスポーツ大会を開催することといたしました。
また、県立福祉施設の再編整備につきましては、その役割や機能の見直しを検討するとともに、老朽化の著しい内原厚生園につきまして、移転改築に向けた基本設計を行ってまいります。
健康づくりと保健・医療の充実 次に、医療体制の充実についてであります。
介護保険制度に対応するため、療養型病床群へ転換する病院等に対し融資や助成を行うとともに、新たに、在宅福祉の柱となる老人訪問看護ステーションの施設・設備の整備に対する県単の助成制度を創設してまいります。
また、災害時における県民医療の確保を図るため、基幹災害医療センターとして指定された水戸赤十字病院の施設整備を支援するとともに、救急医療の一層の充実を図るため、県内4番目となる、茨城西南医療センター病院の救命救急センターの整備に対し助成してまいります。
さらに、平成7年に開学した県立医療大学につきましては、本年3月に、初の卒業生を送り出すこととなりますが、今後の本格的な高齢社会に対応しうる高度医療のスペシャリストを育成する必要があることから、新たに大学院を設置することとし、平成13年度の開学を目指して準備に着手いたします。
なお、本年5月には、筑波メディカルセンター病院に県内で3番目となる地域がんセンターがオープンする予定となっております。
第2は、ゆたかさを実感できる安全快適な生活環境づくりについてであります。
県民主体の地域社会づくりと環境の保全 快適で生きがいのある地域社会づくりを進めるためには、県民一人ひとりが地域の様々な課題に自主的に取り組んでいくことが必要であります。特に、最近、特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)の制定等もあり、県民の間にボランティアをはじめとする社会貢献活動に対する関心が高まってきております。
このため、引き続き、大好きいばらき県民会議の活動を支援するとともに、新たに、ボランティア活動などに係る情報収集・提供や相談機能を有し、交流の場となる県民交流サロンを設置し、市民団体等の地域活動を支援してまいります。
霞ケ浦の水質浄化につきましては、下水道の整備などの生活排水対策や工場・事業場の排水対策に取り組み、計画的、総合的に水質保全対策を進めるとともに、引き続き、産学官の共同研究事業により、新たな水質浄化技術の研究開発に取り組んでまいります。
また、(仮称)霞ケ浦環境センターにつきましては、立地場所の選定を受け、今後の事業推進に向けた所要の調査等を行うほか、研究内容等について検討を進めてまいります。
快適な生活環境施設の整備 県民推もがゆたかさを実感できる快適な生活を送るためには、生活関連道路や上・下水道などの基礎的な社会資本の整備が不可欠であります。
生活道路につきましては、引き続き交通危険箇所や不能区間の解消、道の駅の整備などを進めるほか、身近な市町村道の整備に対し助成してまいります。
生活排水対策につきましては、生活排水ベストプランに基づき、地域の特性に応じて、下水道や農業集落排水施設等の効率的な整備を進めているところでありますが、本年夏頃には、鬼怒小貝流域下水道が、県内6か所目の流域下水道として供用を開始いたします。 また、市町村が行う公共下水道整備に対する助成につきましては、厳しい財政状況のなかで、本年度と同額を確保し、その促進に努めてまいります。
次に、最近大きな社会問題となっております産業廃棄物の不法投棄対策でありますが、昨年実施した「WASTE(ウェイスト)・クリーンアップ茨城大作戦」での大きな成果を踏まえ、警察官を含む体制の整備を図ることとし、新たに不法投棄対策室を設置するほか、出先の監視班やボランティア監視員についても増員を図り、発見通報、監視指導体制のさらなる充実強化を図ることといたしました。
また、ダイオキシン対策につきましては、来年度から、県公害技術センターに分析測定機器が導入されますので、引き続き環境調査や産業廃棄物処理業者の焼却炉に係る排ガス調査を実施し、県民の不安解消に努めてまいりますとともに、ごみ処理広域化計画に基づき、市町村ごみ焼却施設の集約化を進めてまいります。
さらに、最近社会的に大きな関心を呼んでいる、いわゆる環境ホルモンにつきましては、科学的に未解明な部分が多いところでありますが、県といたしましても、その実態を把握するため、県内の河川・湖沼について調査を実施してまいります。
また、都市化の進展により失われつつある平地林を保全するため、新たに、市町村が計画的に行う森林整備に対して助成してまいります。
安全で豊かな県民生活の確保 昨年夏の記録的な大雨による水害は、改めて我々に災害に対する備えの大切さを教えてくれたところであります。水害から県民の生命と財産を守るため、那珂川をはじめとする直轄河川の事業促進を図るとともに、県管理河川の計画的効率的な改修を推進してまいります。特に、那珂川につきましては、抜本的な災害防止対策を短期間で集中的に実施することから、既に1月補正予算においてその一部を措置いたしたところでありますが、今後も国直轄事業として、築堤工事や堤防補強工事などを進め、早期完成を目指して整備を促進してまいります。
また、一昨年に発生した動燃東海事業所の火災爆発事故を踏まえ、今般、県防災会議において、避難計画の整備などを盛りこみ、原子力防災計画が改訂されたところでありますので、今後は、この計画に基づき、具体的な対応の手順を示すマニュアルを整備するほか、緊急時の通信連絡等に係る訓練を実施するなど、より実効性のある原子力防災体制を確立してまいります。
さらに、県南地区の防災活動拠点となる、常総広域総合防災センター(仮称)の整備に対し助成を行うとともに、昨年制定された被災者生活再建支援法に基づき設置される基金に拠出し、大規模な自然災害により著しい被害を受けた場合に、県民の生活再建を支援することとしてまいります。
また、災害時に、衛星通信等を活用して迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行うための防災情報ネットワークシステムが、新県庁舎に併せて完成し、本年4月から稼働いたします。
安全な交通社会づくりといたしましては、新たに、シートベルト着用の推進を図るため、広報・啓発、指導取締り、効果測定を繰り返し行う、シートベルト着用100パーセント県民運動を展開してまいります。
第3は、個性と創造性に富むこころ豊かな人づくりについてであります。
学校教育の充実 学校教育につさましては、国の教育課程審議会の答申を踏まえ、新しい教育課程への円滑な移行を図るための実践研究を行い、児童生徒一人ひとりの個性を生かす、ゆとりある教育を推進するはか、各分野で優れた技術や専門的な知識を有する社会人を講師として活用するなど.地域社会と連携した教育にも力を入れてまいります。
また、少子化、核家族化など子どもを取り巻く環境が大きく変化する中で、不安や悩みを抱える児童生徒が増えつつあります。このため、スクールカウンセラーや心の教室相談員の活用を図るほか、新たに、子どもたちが電話等で24時間いつでも気軽に悩みごとを相談できる体制を整備するとともに、家庭教育学級の開催や体験活動の充実など、学校、家庭、地域が一体となった取り組みを進め、心豊かでたくましい児童生徒の育成に努めてまいります。
次に、障害児教育の推進でありますが、職業自立に必要な知識、技能、態度等を身につけることを目的に整備を進めてまいりました水戸高等養護学校が、本年4月に開校いたします。また、特殊教育語学校において、最近、障害の重度化、重複化により、体温調節の困難な児童生徒が増加していることに鑑み、現県庁舎の冷房施設を転用し、全校について冷房化を進めることといたしました。
次に、私学教育の振興につきましては、引き続き、私立高等学校等の経常費に対する助成を拡充するはか、新たに、小規模な専修学校、各種学校が行う、一般県民を対象とした生涯学習講座の開設について助成してまいります。
生涯学習とスポーツ、文化の振興 生涯学習の推進につきましては、心の豊かさを求める県民ニーズに対応するため、県内4か所の生涯学習センターを核として多様な学習機会の提供に努めてまいりますとともに、老朽・狭隘化が著しい県立図書館について、当面県議会議事堂の転用により対応することとし、平成13年には開館できるよう整備を進めてまいります。
スポーツの振興につきましては、2002年ワールドカップの開催に向けて、引き続きカシマサッカースタジアムの増築工事を進めるはか、本年4月には、大会運営の主体となる日本組織委員会茨城支部が設立される予定となっておりますので、組織委員会とも十分連携しつつ開催準備を進めてまいります。
また、同じ年に本県で開催されるインターハイにつきましては、メイン会場となる笠松運動公園陸上競技場の改修や水泳プールの整備を進めるとともに、競技会場となる市町村体育施設の整備に対し引き続き助成してまいりますほか、先般設立いたしました準備委員会を中心に、開催に向けた準備を進めてまいります。
文化活動の推進につきましては、既に45万人以上の方が入館し、好評を博しております天心記念五浦美術館において「横山大観展」などを開催するとともに、近代美術館や自然博物館などの企画展の充実を図ってまいります。さらに、笠間芸術の森公園内に、来年4月の開館に向けて(仮称)茨城県陶芸美術館の整備を進めるなど、芸術・文化に親しめる環境づくりを推進してまいります。
第4は、新しい魅力と活力あふれる産業社会づくりについてであります。
新たな国際環境変化に対応した農林水産業の振興 まず、農業についてでありますが、引き続き農地の流動化と大区画化を一体的に行うほ場整備事業を促進し、農業経営の規模拡大や効率化を進めてまいります。
また、中山間地域における個性ある農業を確立するため、新たに、地域特性を生かした農作物の導入開発や産地化への取り組みに対して助成を行い、農業所得の増大と地域の活性化を図ってまいります。
園芸の振興につきましては、生産量や販売額等の10パーセントアップをねらいとする、園芸日本一「10アップ運動」を引き続き全県下で展開してまいりますとともに、新たに、大型連棟ハウスの整備など周年生産・出荷体制の確立に向けた施設化、機械化を積極的に支援してまいります。
畜産の振興につきましては、八郷町への移転整備を進めてまいりました畜産試験場の研究棟が、いよいよ11年度中に完成いたしますので、21世紀に対応できる畜産技術開発の拠点にふさわしい試験研究体制の確立を目指してまいります。
林業の振興につきましては、昨年設置いたしました林業労働力確保支援センターを中心に、林業の担い手確保・育成や新規就業の促進を図ってまいりますほか、奥久慈地域の自然や産業の特性を生かし、林業の活性化を図るための基幹林道となる奥久慈グリーンライン林道の整備を引き続き推進してまいります。
水産業の振興につきましては、栽培漁業センターを中心とした、アワビやヒラメなどの種苗生産・放流などによる栽培漁業や漁業者自らが実践する資源管理型漁業の定着化などにより、つくり育て管理する漁業をより一層推進してまいります。
さらに、激しい産地間競争に打ち勝つため、統一キャッチフレーズ「うまいもんどころ」を活用しながら、首都圏量販店におけるPRや有名百貨店での物産展の開催などにより、本県の優れた農林水産物のイメージアップと統一的な売り込みに力を入れてまいります。
工業の高度化と商業の振興 次に、商工業関係でありますが、県内中小企業を取り巻く現下の厳しい経営環境に鑑み、特に資金需要の多い中小企業パワーアップ融資の融資枠の拡大を図るなど、引き続き中小企業の円滑な資金調達を支援してまいります。
また、国際競争の中で生き残れる高い技術を持った企業を育成するため、テクノエキスパートによる技術指導を行うほか、マネジメントエキスパートの派遣や、首都圏における取引先の開拓を支援する受注・販路拡大エキスパートの活用などにより、経営・販売面の支援を行ってまいります。
さらに、不況の影響を強く受けている県北臨海地域や我が国有数の石材産地である筑波西部地域につきましては、特定産業集積活性化法に基づく各種支援を行い、地域産業の活性化を推進してまいります。
商業の振興につきましては、賑わいと活力のある商店街づくりを積極的に推進するため、引き続き、店舗の外観改装、街路灯設置などの景観整備や空き店舗の活用などを支援するとともに、中心市街地活性化法に基づく市町村の計画づくりに助成を行うほか、新たに、商業地域活性化の中心的役割を担う街づくり機関を支援するため、中心市街地商業活性化基金を創設し、事業資金の助成を行うとともに、街づくりの推進力となる人材の育成を図ってまいります。
観光の振興についてでありますが、昨年は、NHKの大河ドラマ「徳川慶喜」の放送による効果もあり、多くの方々に茨城の豊かな歴史や文化を紹介し、本県のイメージアップを図ることができました。本年は、こうした効果を生かしつつ、光圀公没後300年、斉昭公生誕200年の記念すべき年に当たる平成12年に向けて、水戸黄門をテーマとした観光キャンペーンの展開などについて準備を進め、いばらきの魅力ある観光資源のPRと一層の誘客に努めてまいります。
また、新たに、県物産協会が行う観光土産品等の通信販売制度の創設などに対し助成を行い.県産品の販路拡大に努めてまいります。
人材の育成と雇用 産業の活力を支える人材の育成につきましては、県内7か所の産業技術専門学院において職業訓練を実施しますとともに、国の雇用活性化総合プランに基づき、中高年齢の離職者等を対象とした各種専門学校等への委託訓練の定員を増員するなど、離転職者の再就職や在職者の技術・技能の向上を図ってまいります。
また、雇用情勢は、有効求人倍率が過去最低水準で推移するなど依然として厳しい状況にありますので、緊急求人開拓推進貞を全職業安定所に配置するほか、求人意向アンケートや新規学卒者合同面接会を行うなど、きめ細かな雇用対策を講じ、雇用の場の確保を図ってまいります。
第5は、いばらきの発展と交流を支える基盤づくりについてであります。
交通体系と産業基盤の整備 まず、道路網の整備についてであります。
北関東自動車道につきましては、水戸南インターチェンジから常磐自動車道までの約14キロメートルの区間について、平成11年度末には供用開始される予定であり、常磐自動車道から(仮称)友部インターチェンジまでの約8キロメートルの区間につきましても、平成12年度中の供用開始を目指して工事が順調に進められております。
また、国道6号東水戸道路の水戸大洗インターチェンジから(仮称)ひたちなかインターチェンジまでにつきましては、本年7月の供用開始に向けて引き続き整備の促進を図ってまいります。
首都圏中央連絡自動車道につきましては、常磐自動車道から国道6号までの区間において、昨年2月に着手した用地取得が本格化するとともに、他の区間における各種調査も順調に進展してきており、今後とも事業促進に向け、支援をしてまいりたいと存じます。
東関東自動車道水戸線につきましては、昨年12月、茨城町から鉾田町間について待望の施行命令が出されましたので、一日も早い完成に向けて整備を促進してまいります。
次に、港湾の整備でありますが、常陸那珂港につきましては、昨年末の内貿地区の供用開始に伴う第一船入港につづき、本年4月には、週6便の定期航路が開設され、さらに本年末には外国航路用バースの供用開始が予定されております。このため、港湾の利用料金を東京港などの70パーセント程度の水準にするとともに、効率的・機動的な管理運営体制の整備についても積極的に取り組んでまいりますほか、ポートセールスを強化し、日本有数の港として発展させていきたいと考えております。
また、鹿島港につきましては、北公共埠頭の早期供用開始に向け、航路の浚渫や岸壁の整備を進めてまいります。
常磐新線の建設につきましては、地元の方々のご理解をいただきながら、つくば地区の都市計画をできる限り早く決定し、平成17年度の開業に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。
百里飛行場の民間共用化につきましては、国の新年度予算に民間共用化に向けた調査費が計上され、早期事業者手に向けて大きく前進することができたところであり、今後とも、運輸省、防衛庁との協議・調整を図りつつ、共用化が一日も早く実現できるよう、積極的に国に働きかけてまいります。
筑波研究学園都市に整備を進めてまいりました(仮称)つくば国際会議場につきましては、いよいよ本年6月にオープンいたしますが、現時点で既に80件を超える国際会議や国内の学術会議などが決定、若しくは内定しているところであります。本年は、開館を記念して、オープニングイベントをはじめ、県民を対象としたイベントや科学技術をテーマにした各種事業を行い、サイエンスシティつくばにふさわしい国際会議場の誕生を国内外に発信してまいります。
次に、首都機能移転についてでありますが、本年秋頃には、政府の国会等移転審議会において、移転候補地の選定がなされる予定と伺っておりますので、本県の候補地である「茨城中北部地域」が、災害が少なく安全であることや、平坦地が多く、著しい地形の変更を必要とせず、環境にやさしい新都市づくりが可能であること、さらには、東京との連携をとるのに程よい距離にあることなど、本県の優位性を強くアピールし、引き続き県議会や誘致組織と連携しつつ、本県への誘致が実現できるよう積極的な取り組みを進めてまいります。
第3 条例・その他 次に、条例その他について申し上げます。条例は、新たに制定するもの5件、改正するもの16件、合わせて21件であります。
新たに制定する条例は、法定外普通税を創設するための「茨城県核燃料等取扱税条例」などであり、一部改正を行うものといたしましては、県立医療大学付属病院の病床数を増加することに伴う「茨城県立医療大学付属病院の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例」などであります。
条例以外の議案といたしましては9件で、瓜連町と大宮町の境界変更などであります。
以上で説明を終わりますが、なお詳細につきましては、お手元の議案書などによりご審議の上、適切なご議決を賜りますようお願い申し上げます。