Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:97/04/14
茨城県は、都道府県としは初めての情報発信設備(WWWサーバ)を整備し、昨年七月末からインターネットによる情報発信をスタートさせた。3月末現在でアクセス回数は百万ヒットを超えたという。
インターネットという言葉が、まさに時代の流行語のように繰り返され、このシステムがいわゆる「県政のPRの媒体の一つ」といった狭い範疇で議論されることには大きな抵抗がある。
地方自治におけるインターネットの役割に、私は大きなものを期待している。インターネットは地方=ローカル(Local)を日本の中心にも、世界の中心にも直結させてくれるシステムだからである。
さらに、もっと重要なことは、行政の情報を我が家に直結させてくれるシステムであるという視点である。
新たな地方の可能性を開くインターネットを活用した地域情報基盤整備についての私見を述べさせていただく。
イントラ(Intra)とは、内部を意味する。イントラネットという言葉は、一年ほど前までは、企業や行政官庁の内部で、大型のコンピュータ(ホストコンピュータ)を中心に、端末のパソコンを配したネットワークを意味するものであった。ローカルエリアネットワーク(LAN)と言った方が一般的であったと思う。
その相対にあったものが、インターネットであった。インター(Inter)とは「……相互の」の意味で、ネットワーク同士を結んだ巨大なネットワークで、誰でもがアクセス自由の開かれたネットワークである。
そして、最近の著しいインターネットの普及の中で、大きな地殻変動が起き始めている。
それは、イントラネットでも、インターネットで培われた技術を応用しようという発想である。
その基本となるのが、WWW(ワールド・ワイド・ウェッブ)という仕組みである。
WWWという仕組みを使えば、テキスト(文字)データばかりではなく、写真や動画、音声などのデジタル信号化した情報の全てがやりとりできる。そして、この仕組みの最大の利点は、大型のパソコンを必要としない(設備投資が著しく低く抑えられる)ことであり、共通の言語(HTML言語)により、誰でも簡単に情報発信が可能となることである。
すなわち、今まで各企業や、行政が独自に開発していた部内のシステムをこのインターネットのシステムを盛って構成するという試みである。ごく簡単に言えば、社内にミニ・ミニ・インターネットを作って、仕事の情報をやり取りしようというのがイントラネットなのだ。
さらに、このシステムを本来のインターネットに接続すれば、この企業内のシステムをそのまま全世界へつながったインターネットの一部として機能することになる。
それだけでは社内情報がそれこそ世界中に見られてしまう。そこで、ファイア・ウオール(防火壁)を設け、パスワードなどを使わないと入れないようにし、ハッカーなどの侵入を防ぎ、部内の情報が他人に漏れないようにしている。それが現在のイントラネットの姿である。
イントラネットの利点はそればかりではない、今、大きなブームとなっているインターネットのホームページを企業や行政が発信するためには多大な労力を必要とする。しかし、その割には、売り上げの増加や、広報活動への直接のメッリットが余りあがってこない現状が指摘され始めている。インターネットの恩恵を受けられる人が、まだ一部に限られている現状ではこの傾向は否定し難いものである。しかし、イントラネットが作られておれば、通常の業務で作られた情報を少しの加工をしただけで、最新の情報を発信できるわけである。
イントラネットは、昨年から米国の企業で爆発的に広がっている。日本でも一部の企業や大学で運用が開始されているという。
茨城県の地域情報ネットワークの構築に際してのキーワードは、まさにこの「インターネット」と「イントラネット」であると確信する。
地方における民主主義とは、住民のより多くが納得できる行政を進めることである。
そして、その前提条件として、住民ひとり一人に充分な情報の提供がなされていることが不可欠である。
しかし、その地域の情報は、あまねく住民に知らされているであろうか?
いわゆるマスコミの発する情報は、国民の大多数に普遍的な内容に偏っている(偏っているという表現は不適切かもしれないが)。国際状況や、国会の審議の内容は、新聞の一面を飾り、テレビのニュースで広く紹介されるが、我が町内の下水道の改修計画を教えてくれるメディアはまずないだろう。新聞の地方版は、多くて2ページ、通常は1ページである。よく漫才のネタにされるが、犬が人に噛みついても記事に取り上げられることはなく、人が犬に噛みつくような非日常的な記事しか掲載されないのである。
地域にすむ住民にとって、当たり前の情報を知らせてくれる機会は余りにも少ない。
そういった意味では、地方行政にあっては、その情報公開の度合いはここ50年来余り変わっていないといっても過言ではないだろ。
地域のローカル紙や県域ラジオ・県域テレビ・ケーブルテレビにその役割を求める声があった。特に、県域テレビの可能性を主張する方も多い。現に、私も県会議員選挙に立候補するときの公約に、県域テレビの実現を考えたこともあった。
しかし、冷静になって考えてみると、県域テレビやケーブルテレビが一日に流す報道番組の時間はどのくらいの長さになるであろうか?ケーブルテレビの多チャンネル形式は別として、最大でも5時間程度であろう。その中で、知りたい情報を全て流すことができるであろうか。
また、最大の悩みがある。地域の問題は、ある地域の人には生計をも左右する重要問題であるが、その他大勢の人にとっては、全く価値のない話題なのである。
先ほどの下水工事のニュースなど隣の町内の人にはまず関心がない問題である。そうなれば、たとえ県域テレビ、ケーブルテレビといっても取材し、報道するニュース価値は余りにも低いものになってしまう。
その上、そんな小さな情報、又は専門的で個人的な情報を報道されても、受け手である住民も困るのである。
オン・デマンド(ON DEMAND)という言葉があるが、このての情報は、まさにオン・デマンド「必要な人が、必要な時に、自由に入手できる情報」でなくてわならない。
この意味で、インターネットはまさにオン・デマンドを実現する媒体である。
なぜ、地域情報の伝達にインターネットが適しているのか実例を挙げてみよう。
インターネットの特徴にハイパーテキストというものがある。
ある人がインターネット上に、次のような論文を掲載したとする。
「インターネットの普及とともに米国では、大きな変化が始まっている。大都市近郊の自治体では、在宅勤務者であるソーホーが増えたため、通勤時の自動車の渋滞がなくなり、予算化していた道路の整備を見直す論議が始まった。パソコンのネットワークが地域の課題に大きな影響を与え始めた実例の一つである」
インターネットを経験された読者の皆さんには、まさに釈迦に説法であるが、この例文の下線部(画面上では、文字の色が変わっていたり、下線が引いてあったりする)を、クリックすることで、それに関連した項目に移ることができる。ソーホーをクリックすると画面は、この言葉を詳しく説明してくれる画面に変わる。
「ソーホー・・・S・O・H・Oとは、[Small Office
Home Office]の略で、オンラインで会社や取引先と結び付く在宅勤務のビジネスマン、個人事業者らを指す。ノースリッジ大地震で、ロサンゼルス近郊のビジネスマンや、個人業者が都心のオフィスに出社せきず、やもおえず在宅での仕事を始めたが、パソコンネットや、電話・FAXなどによって十分にその仕事をやりこなすことが可能であったため、認知された。いま、大きなアメリカビジネスのトレンドとなっている」と、変わるのである。当然同じように、ノースリッジ大地震を、クリックすればより詳細なデータに行き着けるのである。
これがハイパーテキストの環境である。インターネットは、このハイパーテキストの環境で構成されている。一つの論文の詳細を他人の論文にアクセスして教えてくれるのである。この作業をリンクと呼ぶが、これこそインターネットの神髄でもある。このハイパーテキストの発想、リンクの発想があるから、受け手は難しいパソコンの操作から開放され、マウス一つで知りたい情報に至れるのである。(ちなみに、この提案でもよく出てくるWWWという言葉は、World
Wide Webの略であり、直訳すれば「世界中に張り巡らされた蜘蛛の糸」となる。世界中にこのハイパーテキストのリンクの網が張られた状態を指すのである)
実例を紹介しよう。Bさんは、仕事から帰り、軽く晩酌を済ませた。明日は、県議会議員の投票日である。まだ誰に投票知るか決めていない。おもむろに、パソコンのスイッチを入れ、候補者のWWWにアクセス。環境問題や産業振興・福祉への考え方等をのぞいてみる。難しい言葉があっても、ワンクリックでより詳しい説明の画面に移行できる。インターネットの振興をうたっていたので、リンクを辿ってみると、県議会のホームページにアクセスした。4年間の議会での質問内容が、一目瞭然である。これでやっと、候補を選ぶ材料ができた。(インターネットと日本の公職選挙法との関連は別の項目で説明する)
もう一つ、具体的な例を挙げてみよう。インターネットにはサーチエンジンといわれるシステムがある。インターネットには幾千ものWWWが存在し、その一つひとつが独自の情報を発信している。例えば「イントラネット」の情報を今必要とする人がいたとしよう。彼は、夜中の十一時でも、朝の6時でも良い。日曜日でも、元旦でもいいのである。パソコンに向かい、サーチエンジンに接続する。
サーチエンジンの検索した言葉を入力する窓に「intranet」と、入力する。30秒程すると約250のWWWの一覧が表示される。現状では英語表示である。
彼は、簡単な説明を読み、その一つにマウスを合わせ、クリックする。すると、情報は、アメリカのテキサス州のある企業にアクセスした。
その企業のWWWからは、イントラネットに関する、最新の詳細な情報が得られた。
この間、NTTの番号案内でも、一回30円かかるが、接続に特別な料金は一切かからない。(接続するための電話料金とプロバイダーの経費はもちろん掛かる)
インターネットの草創期である現在でも、英語さえ理解できれば、世界の情報を確実に掌中に収められる。
こうした、状況をわが国の地方自治体の中でも実現させるべきである。
Aさんの母親が突然倒れ、在宅の福祉サービスを受けたいとする。
家庭で、役所の窓口で、プライベートに使用しては上司に注意されるかもしれないが、職場のパソコンで、サーチエンジンに「在宅福祉」と入力する。自分が住む町の名前も合わせて入力しよう。
すると、在宅福祉サービスのメニューが表示される。「昼食の配達サービス」の項目を選び、クリックする。曜日や、内容を選択し、登録をする。もちろんパソコン上で、サービスの申し込みを市役所にすることができる。
しばらくすると、電子メールが市役所から届く。「何月何日から昼食の宅配サービスを開始します」。といった具合である。
この二つの例は夢物語ではない。少なくても、ここ10年で構築しなくてはならないシステムである。
いつでも、誰でも、どのような情報でも、引き出せてこそ、真の情報公開である。
官僚や行政担当者、そして一部の議員が情報を独占する時代は代えなくてはならない。地方自治体の情報開示の方策としての、インターネット活用システムを作ることにより、真の地方民主主義、地方分権を育てることができる思う。
インターネットとイントラネットの項で述べたように、イントラネットをインターネット対応で整備することのメリットは多い。ここでは、行政改革の立場からそれを検証してみたい。
まず、縦割り行政の弊害を是正することができるという利点がある。
現在、茨城県では、いくつものデータベースが各部署毎に稼働している。衛生部の管轄では、健康科学センターが健康データベースや統計案内データベース。福祉部は、福祉施設データベースやボランティアデータベース・福祉制度データベースを福祉情報センターが統括している。農業総合センターでは、文献・統計・気象情報のデータベースを有している。
工業技術は、工業技術センターのデータベースに蓄えられ、生涯学習センターでは、生涯学習ボランティアの情報が集められている。
こうしたデータベースを一カ所で検索することは、現状では県庁内でもできない。その操作方法も、一つづつ違い、全てのデータベースを操作することができる職員は果たしているだろうか。
一つの端末から全ての情報が得られるメリット、統一された操作環境から得られるメリット。こうしたメリットは縦割り行政の敷居を次第に低くしていくのである。
行政改革に果たす役割の二つ目は、その投資額の低さである。
専用のLANを構築することなくネットワークを構成できるイントラネットは、投資額が飛躍的に少ないといわれている。昨年来、話題となっているウィンドゥズ95対応のパソコンであれば、電話回線を利用すればモデムを接続するだけで、ほとんど追加投資なしで端末機としては活用できる。ネットワークを整備する費用が大幅に圧縮できるのである。
更に、インターネット対応型イントラネットには大きなメリットがある。それは、設備を漸進的に整備できるという事である。専用LANの環境では、原則的にその設備は一挙に立ち上げる必要がある。こうしたシステムを全庁的に整備するとするならば、その投資額は莫大なものになろう。しかし、インターネット対応システムの場合は、できたところから、少しずつ進めていけばよいのである。WWWという統一方式で運用されたシステムであるから、その基本さえ忠実に再現していけば、臨機応変にシステムの拡張が可能となる。
現状の各部署毎のシステムは約5年周期で更新されている。したがって、各システムが更新時期に至ったときに、インターネット対応型に改変すればよい、単年度主義の自治体にとって、このメリットは大きいのである。
こうした、メリットにより行政改革の切り札としてのインターネットシステムの導入は是非とも実現させなくてはならない。
県が有する既存の情報ネットワーク上のデータを、より多くの県内企業が利用できるようにすることで、技術力、経営ノウハウ、人材紹介などの支援が可能となる。
また、県内企業の優れた商品、技術などを全世界に紹介するとができる。反対に、全世界からの情報を容易に入手することができるようになる。
様々な行政官庁への許認可申請や報告資料提出などをインターネット上で可能とすれば、民間企業の事務効率を飛躍的に向上させることになる。
また、こうした間接的なメッリトとともに、これから大いに発展が期待されるインターネット関連のプロバイダー事業者・ソフト業者への直接的なメリットも大きい。
とにかく著しい国際化の波は、規制緩和の大きな追い風を受けて茨城の地域経済に打ち寄せるであろうことは確実である。アメリカのメーカーが、EUの国の設計の商品を、中国の原材料を使って、製品を東南アジアで作り、最終的に茨城で販売する。といった国際的分業は日常茶飯事となる。
逆をいうなら、東京という今までの一極集中の都会から離れた地域であっても、世界という視野から見るならば、デジタル化された情報の距離で見るならば、世界の中心となっても何ら不思議ではない時代の到来である。
地方における情報基盤の整備では大先輩の大分県のニューコアラに、「地域に情報コンセントを」というレポートが掲載されていた。言葉の意味する内容は少し違うかもしれないが、「インターネットは地域情報のコンセント」と形容したニューコアラの発想には大いに感服した。
電気のコンセントと同じように、水道の蛇口と同じように、地元の企業が自由に使える低料金・定額の情報の出入り口を整備をすることは、地方自治体の責任なのである。
インターネットは、瞬時にして全世界の情報に接することができる。もし、子どもたちがその情報に触れれば、より深く、広い情報を自らの手で収集できる感激を知ることとなる。
まさに、教室は世界の窓口となるわけである。
更に、そうした情報の多くは英語を使ってやりとりされる。生きた英語教育がそこでは行われるだろう。インターネットでは、チャットと呼ばれる即時性のある電子メールのやりとりも可能である。「こんにちは、日本の茨城県から発信しています」と、送信すれば、相手は「今晩は、ここアメリカのコロラド州では、深夜1時です」と返信してくる。こうした会話を楽しむこともできる。もちろん、英語で行われるわけであるが。更に、インターネットテレフォンは、インターネットを介しての音声電話や、テレビ画像電話をも可能にしようとしている(もちろん国際電話のような料金は必要としない、インターネットの接続のための市内通話料金とプロバイダー費用だけで通話できる)。英語の専任教師を教室に迎えることになる。
インターネットは、遠隔地の授業にも役立つであろうし、その双方向性は、教室から全世界に情報を発信することもできるようにする。
教室で拾得するであろう、インターネットに使用する言語(HTML言語)は、パソコンの機種に依存しない、インターネット対応型データベースが世界標準となれば、学校での授業の成果が、そのまま社会で通用する。学校で使っていたワープロが、社会に出たら全く役立たないといった時間と習得の労力の無駄遣いは限りなく解消されるであろう。
まさに、インターネットは青少年の世界への眼を広げる大きな武器となるに違いない。
インターネットの優れた特性に、誰もが簡単に情報の発信者となれるということが挙げられる。
私は、あくまでも自分の住む郷土茨城、その中でも日立という地域にこだわっての情報をインターネットを使って発信しはじめた。日立に新しくできたインターネット接続業者(プロバイダー)と契約をし、「井手よしひろのホームページ」を開設したのだ。そのURL(インターネット上の住所にあたつるもの)は「http://www/jsdi.or.jp/y~ide/index.htm」。これを入力すれば、全世界から私のホームページにアクセスできる。
このホームページを作るためのことばが「HTML」と呼ばれる。作り方は、そんなに難しくはない、ゴールデンウィークを挟んだ一週間で全くゼロの状態から、本を読みながらホームページを開局することができた。まさに、家庭から全世界への窓口を開くことができたのである。
このホームページに、どうやってこのURLを知ったのか、10日余りの内に113件のアクセス(ヒット)があったのである。まさに、驚きであった。
同じ驚きを茨城に済む全ての人が味わえるわけである。
永年こつこつと調べ上げた郷土史の研究を発表するホームページを作る人もいるであろう。
趣味の短歌や和歌を全世界に紹介することもできる。
ボランティアの情報も載せられる。
就職活動もすでに個人のホームページ上で行っている学生もあると聞く。
高齢社会の中で自分史の作成が静かなブームと聞く。せっかくの自分史である、インターネット上で発表してみたらどうだろうか。出版の費用は、ずっと少なくて済むし、ずっと多くの人に読んでもらえるかもしれない。
町内会の回覧板も変わるかもしれない、生活リズムの多様化から隣近所ともなかなか意志の疎通ができない場合も多い。回覧板が、電子メール化されれば、一瞬にして水戸市全体であろうとも、茨城全県であろうとも、大事な情報をもれなく伝えることが可能となる。
インターネットは、その誕生当初から、情報を流す人の実名が明示されてきたという特徴がある。新聞でのペンネーム、匿名記事や、パソコン通信でのハンドルネームでのやりとり、といったものは原則あり得ないのである。こうした、実名主義は、地域のネットワーク形成において、その責任を明確にし、健全なコミュニケーションづくりに貢献すると確信する。
インターネットは、まさに高度情報時代に対応した地域のコミュニケーションツールである。
インターネットを中心に、新たな地域コミュニティーづくりが始まる可能性は高い。
また、非常時の利用も先の阪神大震災のその有効性が実証された。そもそも、インターネットの誕生の歴史を見ると、戦争という非常事態で、ある情報のラインが途絶しても、情報の流れを止めないですむシステムとして考案され、発展してきた経緯がある。
地震等の巨大災害に対して、被災者の状況や避難場所の紹介、緊急物資の状況等、時々刻々と情報を送ることができる非常時のコミュニケーション方法としても不可欠な存在である。
インターネットの活用のメリットを「情報公開」「行政改革」「産業振興」「教育振興」「新たなコミュニケーションツール」の5つのポイントから概観してきた。
茨城県の地域情報基盤整備の基本は、インターネットを中核のおいた県並びに関連機関、そして市町村のイントラネットの整備であることを、理解していただけると思う。
それでは、その整備をどのように進めるべきか、以下8点にわたり、具体的な提案をさせていただきたい。
それぞれの提案を、以下もう少し詳細に述べてみたい。
本年3月に、県が委嘱した「茨城インターネット研究会」の提言がまとめられた。
これによると、県民が、安価で定額のアクセス料で、県内どこからでもアクセスできるインターネット網の整備が提案されている。そしてその母体として、「茨城県高度情報推進協議会(仮称)」の設立を求めている。具体的には、
この提言を踏まえて、更に必要であろうと思われる内容を追加提案すると、
既存の県関連のデータベースは、
企画部関連で「茨城県インターネット情報サービス」。
衛生部が、「茨城県保健情報システム」(茨城県健康科学センター)。
福祉部、「茨城県福祉情報システム」(茨城県福祉情報センター)。
農林水産部、「茨城県農業技術情報ネットワークシステム」(茨城県農業技術情報センター)
商工労働部、「茨城テクノインテリジェンスシステム」(茨城県工業技術センター)と
「中小企業情報システム」(茨城県中小企業情報センター)
教育庁関連では、「茨城県生涯学習情報提供システム」(水戸生涯学習センタ)
等が現在稼働している。
いずれも独自に運営されており、操作性も統一されていないのは先に述べたとおりである。
概ねいずれのシステムも、5年を目処に更新されており、順次インターネット対応にシステムを更新する必要がある。
本年度は、「茨城県福祉情報システム」(茨城県福祉情報センター)と「茨城テクノインテリジェンスシステム」(茨城県工業技術センター)が更新期を迎えており、新しい情報発信の形態を目指しての更新作業が望まれる。
さらに、今後整備が計画されている新規の県民情報サービスも、この思想を徹底して行くべきである。
例えば、行政データ共通利用システム(総務部)、消費者行政苦情情報システム(生活環境部)、交通死亡事故総合分析システム(生活環境部)、防災情報システム(生活環境部)、原子力防災安全情報システム(生活環境部)、医療機関情報システム(衛生部)、県立図書館情報システム(教育庁)など。
またすでに、インターネットを活用して情報発信を開始しているシステムに関しても充実を図る必要がある。
例えば、県立医療大学(Ibaraki Prefectural University of Health Science's Home Page:衛生部、すでに稼働中のシステムの充実)、観光情報提供システム(商工労働部、茨城インターネット情報サービスの中で運用中、充実拡大)。
県民に広く行政情報を公開するために、次のようなデータベースサービスも検討すべきである。
茨城県議会のホームページを早急に開設し、順次以下の内容を含む総合的議会情報のデータベースを構築する(整備完成を平成10年度程度とする)。
情報ハイウェー構想で再選をねらう、クリントン大統領は、1月の一般教書演説で「2000年までに全米の各教室にインターネットを接続する」と発表している。先の述べたように、教室でのインターネットの活用は様々な可能性を秘めている。
茨城県においては、平成6年度より、6カ年計画で、「第3次教育用コンピュータ整備計画」がスタートいた。この事業により、県立普通校には、一校当たり42台、一人一台のパソコンが整備されることとなる。昨年秋の一般質問でも、こうした設備更新期にインターネットへの接続を提案したところではあるが、前向きの答弁を得るには至っていない。
将来的には、全ての学校に一人一台で操作できるインターネット対応のパソコンを整備することが必要であるが、その投資額は莫大なものになると試算される。
したがって、当面は一学校あたり一回線のインターネット接続を、実現することを提案する。
そのための具体的方策としては、
こうした施策を緊急に計画・実施する必要性を力説するのもである。
今、平成11年の新県庁舎の完成に合わせて、新たな庁内ネットワークシステムの整備に全力を挙げることが必要である。
その整備手法は、一つの端末から全ての情報が、同じ手順で呼び出すことができる方式とすべきである。
さらに、電子メールシステムや電子決済システムを採用し、行政事務の簡素化、経費の削減に最大限の眼目を於くべきである。
わが国のパソコン通信ネットワークの草分け的存在の「コアラ」から発展したインターネットへの接続サービス「ニューコアラ」(事務局・大分市、会員数約4000人)でホストコンピューターのシステム管理データが壊れ、システムファイル中のインターネット会員約2000人分のパスワードや個人データが消滅するという事件が4月12日起こった。事務局は「故障とは考えられず、悪質な侵入者(ハッカー)によるもの」とみている。「最悪の場合は、個人情報が盗まれ、プライベートな情報が悪用される可能性もある」とし、会員にパソコン通信の画面上で注意を呼びかけ、直ちに会員のパスワードを再登録、速達で発送した。あくる13日には回復した事故ではあったが、インターネットの社会で起こる事故の恐ろしさを垣間見せてくれた。
県庁内・関係機関の内部情報は、個人のプライバシーに関するものや、様々な業務の進行に不可欠な重要な情報が多い。こうした情報が、インターネットから不法に引き出されたり、いわゆるハッカーの進入によりデータやプログラム自体が破壊される危険性がある。また、コンピュータウィルスの感染の問題も深刻な課題である。
このように情報のセキュリティーを確保すること、外部情報(インターネット情報)と内部情報(イントラネット情報)の間のファイアーウォールを堅固にする研究を進めなくてはならない。
公共のインターネット情報システムは、地方自治体のもっとも身近な単位である市町村へのネットワーク無しには完結しない。
市町村の情報システムへの啓蒙、指導体制の強化。人材育成の機関充実。設備補助金制度の創設が是非とも必要である。
また、先導的政策として、県の情報ネットワークの端末を積極的に市役所・町村役場や支所、公民館などに配置し、県内全地域から良質で均一なサービスができるよう配慮することも必要である。
茨城県のホームページ
いばらきのインターネット推進事業のホームページに戻る
井手よしひろのホームページ
ご意見・情報をお送りください(Email y_ide@jsdi.or.jp)