平成11年12月22日
条例第19号
目次
前文
第1章 総則(第1条〜第6条)
第2章 環境の保全及び創造に関する施策の基本方針(第7条・第8条)
第3章 環境の保全及び創造のための基本的施策(第9条〜第25条)
第4章 環境審議会(第26条)
第5章 雑則(第27条・第28条)
附則
日立市は、阿武隈山地と太平洋に囲まれた自然環境に恵まれたまちである。先人たちは、これらの自然の恵みの下で生活を営み、住みよいまちを築き上げる努力を続けてきた。
しかしながら、今日の社会経済活動は、利便性の向上と物質的な豊かさをもたらした一方で、資源やエネルギーを大量に消費することなどにより、環境汚染や自然破壊など環境への影響を増大させ、人類の生存基盤である地球環境を脅かすまでに至っている。
私たちは、安全で快適な生活を営むために健全で豊かな環境の恵みを享受する権利を有するとともに、その環境を将来の世代に引き継いでいく責務を有する。
私たちは、生態系の一部として存在し、限りある環境から多くの恵みを受けていることを自覚し、人と自然との共生を適切に確保するとともに、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な社会を構築していくため、市民、事業者及び市が連携し、協力し合って、良好な環境を創造していく社会を目指すことを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに、市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、現在及び将来の市民が健全で豊かな環境の恵みを享受するとともに、人類の存続の基盤である限りある環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、人と自然とが共生できるような多様な自然環境が体系的に保全されるように行われなければならない。
3 環境の保全及び創造は、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な社会が構築されることを目的として、市、事業者及び市民の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われなければならない。
4 地球環境保全は、市、事業者及び市民が自らの課題であることを認識して、それぞれの事業活動及び日常生活において積極的に推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するため、必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前2項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たっては、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前3項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に積極的に協力する責務を有する。
(市民の責務)
第6条 市民は、基本理念にのっとり、日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に積極的に協力する責務を有する。
(施策の基本方針)
第7条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、これを総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 人の健康を保護し、及び生活環境を保全し、並びに自然環境を適正に保全するように、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素を良好な状態に保持すること。
(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保を図るとともに、森林、緑地、水辺等における多様な自然環境を地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全すること。
(3) 人と自然との豊かな触れ合いを保つとともに、身近な緑や水辺などに恵まれた生活環境の確保、地域の特性が生かされた良好な景観の形成及び歴史的文化的資源の保全を図ること。
(4) 資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量を推進することにより、環境への負荷の低減を図ること。
(5) 地球環境保全の推進を図ること。
(環境基本計画)
第8条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な目標及び施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、市民の意見を反映することができるように必要な措置を講ずるものとする。
4 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ日立市環境審議会の意見を聴かなければならない。
5 市長は、環境基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第9条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全及び創造について配慮しなければならない。
(規制等の措置)
第10条 市は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講ずるものとする。
(1) 公害を防止するために必要な規制の措置
(2) 自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
2 前項に定めるもののほか、市は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制及び指導の措置を講ずるように努めなければならない。
(環境影響評価の推進)
第11条 市は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全に関する協定)
第12条 市は、環境の保全上の支障を防止するため、事業者又は開発行為を行おうとする者と環境の保全に関し必要な協定を締結するように努めるものとする。
(経済的措置)
第13条 市は、事業者及び市民が自ら環境への負荷の低減のための施設の整備その他の環境の保全及び創造に資する措置をとることを助長するため必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるように努めるものとする。
(環境の保全に関する施設の整備の推進)
第14条 市は、環境への負荷の低減のための施設及び公園、緑地その他の快適な生活の確保のための施設の整備を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(資源の循環的な利用等の促進)
第15条 市は、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用並びに廃棄物の減量及び適正処理に関し、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全及び創造に関する教育等の推進)
第16条 市は、環境の保全及び創造に関する教育、学習の振興並びに広報活動の充実により、事業者及び市民が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに、これに関する活動を行う意欲を増進させるため、必要な措置を講ずるものとする。
(市民等の自発的な活動の促進)
第17条 市は、市民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「市民等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動の促進を図るため、必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第18条 市は、前2条に定める事項を推進するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況並びに環境の保全及び創造に関する活動の事例その他の環境の保全及び創造に関し、必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。
(調査の実施)
第19条 市は、環境の状況の把握、環境の変化の予測に関する調査その他の環境を保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査を実施するものとする。
(監視等の体制の整備)
第20条 市は、環境の状況を把握し、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定等の体制の整備に努めるものとする。
(事業者の環境管理等の促進)
第21条 市は、事業者がその事業活動に伴う環境への負荷の低減について効果的に取り組めるように、事業者が自ら行う環境管理(環境の保全及び創造に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成、体制の整備等をいう。)及びこれに関する監査等が促進されるように必要な措置を講ずるものとする。
(市民等の意見の反映)
第22条 市は、環境の保全及び創造に関する施策に、市民等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
(市民等との協力)
第23条 市は、市民等と協力して、環境の保全及び創造を推進するために必要な措置を講ずるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第24条 市は、広域的な取組が必要とされる環境の保全及び創造に関する施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。
(地球環境保全に関する国際協力)
第25条 市は、国、他の地方公共団体及び市民等と連携し、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
(環境審議会の設置等)
第26条 環境の保全及び創造に関する基本的事項を調査審議するため、日立市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、市長が委嘱又は任命する委員20人以内をもって組織する。
3 審議会の委員の任期は、2年とする。ただし、欠員を生じた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 審議会は、第1項に規定する調査審議を行うために必要があるときは、関係者の出席を求めて意見若しくは説明を聴き、又は関係者から資料の提出を求めることができる。
5 審議会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
6 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、市長が規則で定める。
(年次報告)
第27条 市長は、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関して講じた施策を明らかにした年次報告書を作成し、これを公表しなければならない。
(個別条例の制定)
第28条 この基本条例の施行に必要な個別条例は、別に定める。
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(日立市環境をまもる基本条例の廃止)
2 日立市環境をまもる基本条例(昭和49年条例1号)は、廃止する。
(経過措置)
3 この条例の施行の際現に日立市公害対策審議会規則(昭和49年規則第62号)
第2条の規定により委嘱又は任命された日立市公害対策審議会の委員である者は、この条例の施行の日に、第26条第2項の規定により、審議会の委員として委嘱又は任命されたものとみなす。この場合において、その委嘱又は任命されたものとみなされる者の任期は、同条第3項の規定にかかわらず、同日における日立市公害対策審議会規則第3条の規定により委嘱又は任命された日立市公害対策審議会の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。
(日立市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
4 日立市特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年条例第24号)の一部を次のように改正する。
別表附属機関の項中「公害対策審議会」を「環境審議会」に改める。
(日立市公害防止条例の一部改正)
5 日立市公害防止条例(昭和49年条例第36号)の一部を次のように改正する。
第1条中「日立市環境をまもる基本条例(昭和49年条例第1号)」を「日立市環境基本条例(平成11年条例第19号)」に改める。
第4条及び第5条を次のように改める第4条及び第5条 削除
(日立市緑の保全と緑化の推進に関する条例の一部改正)
6 日立市緑の保全と緑化の推進に関する条例(昭和52年条例第4号)の一部を次のように改正する。
第1条中「日立市環境をまもる基本条例(昭和49年条例第1号)」を「日立市環境基本条例(平成11年条例第19号)」に改める。
(日立市空き缶等の散乱の防止に関する条例の一部改正)
7 日立市空き缶等の散乱の防止に関する条例(平成6年条例第2号)の一部を次のように改正する。
第1条中「日立市環境をまもる基本条例(昭和49年条例第1号)」を「日立市環境基本条例(平成11年条例第19号)」に改める。
(日立市飼い犬のふん害の防止に関する条例の一部改正)
8 日立市飼い犬のふん害の防止に関する条例(平成10年条例第2号)の一部を次のように改正する。
第1条中「日立市環境をまもる基本条例(昭和49年条例第1号)」を「日立市環境基本条例(平成11年条例第19号)」に改める。