◇寒冷渦が頻繁に通過し、低温と曇天が続く
月の初めは高気圧におおわれ、晴れて気温も上がりました。しかし、上旬の終わりから下旬の中頃にかけては本州付近の上層を寒気を伴った低気圧(寒冷渦)が次々と通過しました。このため、関東地方では北東の風が吹きやすく、雲が多くて気温の上がらない日が続きました。ただ、月の初めと終わりに気温が上がったことから、月平均気温は15.7℃とほぼ平年並みになりました。日照時間も168.9時間(平年比97%)とほぼ平年並みでした。一方、日本付近で低気圧の発達が弱かったことから、月の降水量は120.5mm(平年比75%)と平年より少なくなりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 15.7 16.1 月降水量(mm) 120.5 160.6 月日照時間(時間) 168.9 174.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 15.4 15.0 中旬 13.7 16.0 下旬 17.8 17.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 49.4 56.5 中旬 33.2 53.1 下旬 86.3 65.1 ※平年値は、1971年〜2000年の平均
●5月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPa気温の推移
●5月の日立市役所における風向頻度分布と日照時間の推移
◇北東の風による曇り空と低温(13日と20日)
8日から13日にかけてと15日から20日にかけては、本州付近の上層を寒気を伴った低気圧が次々と通過するとともにオホーツク海高気圧が出現し、北日本から東日本にかけて冷たい北東の風が入りました。このため、関東地方では雲が広がり気温の上がらない日が続きました。
8日に中国東北区へ進んできた寒冷渦は、オホーツク海にブロッキング高気圧が形成された影響で動きが遅くなり、13日にかけて日本海から三陸沖へゆっくりと進みました。13日は、寒冷渦の南側にあたる東北地方北部の上層に南東から北西にかけて風向の変わる範囲が発生し、1日中雲の取れない状態が続きました。関東地方でも、地上で冷たい北東の風が吹いている状態のところへ上層に南西の風が入ったため、1日中低い雲がかかり、気温が上がりませんでした。
13日の日立市役所における最高気温は15.0℃で、4月上旬並みの気温でした。寒冷渦が東へ離れた14日は快晴の天気となり、最高気温は19.8℃まで上がり平年並みの陽気に戻りました。
●5月13日の気温(℃)
地点 | 日平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | |||||
平均気温 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | |
日立市役所 | 12.2 | 15.8 | 15.0 | 13:23 | 19.8 | 10.0 | 03:30 | 11.9 |
本山(あかさわ山荘) | 9.7 | - | 12.1 | 14:18 | - | 7.8 | 04:08 | - |
南部支所 | 12.0 | - | 13.8 | 12:59 | - | 10.1 | 02:30 | - |
水戸(金町) | 12.6 | 16.0 | 15.2 | 15:30 | 20.8 | 10.2 | 06:13 | 11.6 |
●5月11日から14日の気温の推移(1時間値)
●5月13日09時の気象衛星水蒸気画像と可視画像
●5月13日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
16日は、黄海とアムール川下流に進んできた二つの寒冷渦が東と南へ進み、18日には沿海州で一つにまとまりました。その後、ゆっくりと南下して19日に山陰沖へ進んだ後、東へ向きを変えて20日には東北地方を通過し、21日には三陸沖へ進みました。寒冷渦の動きが遅かったことから、日立市では16日から18日にかけて天気がぐずつきました。19日の午前中は晴れましたが、上層に寒気が入ってきた影響で夕方から雨が降りました。そして、寒冷渦が東北地方を通過した20日は関東地方の南に気圧の谷が形成され、曇りで昼過ぎにかけて弱い雨が降りました。
また、20日の関東地方では南海上の気圧の谷に向かって冷たい北東の風が入り、気温が上がりませんでした。関東地方では、ほとんどの地点で最高気温が20℃未満となりました。特に、アメダスの気温分布で見るとおり、茨城県の太平洋岸では1日中低い雲が取れず、日中の気温は15℃を下回りました。20日の茨城県内における最高気温は、北茨城で13.2℃、鹿嶋で14.8℃、日立市役所で15.1℃でした。
●5月20日の気温(℃)
地点 | 日平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | |||||
平均気温 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | |
日立市役所 | 12.4 | 16.4 | 15.1 | 01:02 | 20.3 | 11.5 | 23:11 | 12.6 |
本山(あかさわ山荘) | 10.6 | - | 13.1 | 01:29 | - | 9.2 | 23:44 | - |
南部支所 | 12.2 | - | 14.7 | 01:00 | - | 11.3 | 10:37 | - |
水戸(金町) | 12.9 | 16.7 | 15.8 | 14:49 | 21.5 | 11.9 | 23:44 | 12.4 |
●5月21日の気温(℃)
地点 | 日平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | |||||
平均気温 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | |
日立市役所 | 15.9 | 16.5 | 22.5 | 11:36 | 20.5 | 11.2 | 04:54 | 12.7 |
本山(あかさわ山荘) | 14.0 | - | 21.0 | 15:12 | - | 9.3 | 00:00 | - |
南部支所 | 16.2 | - | 22.4 | 12:33 | - | 11.6 | 00:55 | - |
水戸(金町) | 16.7 | 16.9 | 23.7 | 14:34 | 21.7 | 11.8 | 01:58 | 12.5 |
●5月19日から21日の気温の推移(1時間値)
●5月20日09時の気象衛星水蒸気画像と可視画像
●5月20日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●アメダスによる気温、風、天気の分布(5月20日15時)
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風向風速:15時 |
天気(日照):15時 |
アメダス凡例 |
●2002年5月14日から21日にかけての雲の変化(気象衛星ひまわり水蒸気画像)
水蒸気画像は、上層から中層に存在する水蒸気の量を目で見える形で表現することができます。このため、上層の大気の流れを可視化して、渦の存在を推定することができます。下の写真では、矢印の先端部分が、寒冷渦の中心にあたります。
14日に、ひとつ寒冷渦が北海道の南東へ抜けた後、16日にはシベリアから次の寒冷渦が南下してきます。この寒冷渦は、日本海まで南下してきた後、ゆっくりと東へ進み、20日から21日にかけて東北地方を横断し、三陸沖へ進みました。
作成日:2002/06/20
訂補日:2013/06/19
訂補日:2015/11/19
名前 日立市天気相談所