◇寒冷渦の通過に伴い3日連続して強い北東風が吹く
上旬は、本州付近を低気圧が頻繁に通り、曇りや雨の日が多くなりました。中旬に入ると移動性高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。しかし、下旬になると太平洋高気圧が強まり、日本の南に前線が停滞して湿った空気の影響を受けるようになり雨の降る日が多くなりました。この結果、月降水量は167.0mmと平年の110%になりました。また、日照時間は中旬が平年の139%になったものの、上旬と下旬が平年の80%程度しかなかったため、月合計では158.1時間(平年比96%)と平年をわずかに下回りました。
一方、気温の推移をみると、中旬は高気圧に伴う暖かい空気におおわれて気温は平年よりも1.4℃高くなりました。しかし、下旬は南海上の前線に向かって冷たい北東の風が吹くことが多く、気温は平年よりも1.0℃低くなりました。このため、月平均気温は16.3℃とほぼ平年並みになりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 16.3 16.1 月降水量(mm) 167.0 152.5 月日照時間(時間) 158.1 163.9
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 15.5 15.3 中旬 17.2 15.8 下旬 16.1 17.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 43.2 55.8 中旬 66.8 48.1 下旬 48.1 59.9
●5月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温(09時)の推移
※上のグラフの元データ:1105data.xls(エクセル2000ファイル、96KB)
今月も先月に引き続いて偏西風の蛇行が明瞭で、寒気が流れ込みやすい場となりました。特に、14日から18日にかけては本州上まで強い寒気が南下しました。日立市では、寒気の南端がかかってきた14日の午後には雷雲が発達し、あられを伴って一時的に強い雨(日立市役所における14時15分から35分にかけての降水量が20.0mm)が降りました。
また、29日から30日にかけては偏西風から分離した寒冷渦が本州上をゆっくりと東へ進みました。これに位相を合わせて29日の昼過ぎに四国の南へ進んできた台風第2号は、夕方には寒冷渦に取り込まれて消滅しました。しかし、その後は寒冷渦に伴う地上低気圧として東海地方から関東地方の南をゆっくりと東へ進みました。さらに、低気圧の東進に合わせて29日から32日にかけてオホーツク海高気圧が南へ張り出してきました。このため、低気圧の北側では気圧傾度が大きくなり、関東地方の沿岸部を中心に29日から31日にかけて北東の風が強まりました。
29日は、台風の北上に伴って台風の北側に停滞していた前線が関東地方南岸まで北上してきました。このため、前線の北側で気圧傾度が大きくなり、関東地方では夕方から茨城県を中心に北東の風が強く吹きました。日立市役所でも、昼過ぎから北東の風が徐々に強くなり、夜には平均風速が7m/sを超えるようになりました。そして、20時24分には最大瞬間風速19.8m/sの北東の風を記録しました。30日の明け方から昼間にかけて、強い風はいったん収まりました。しかし、上層の寒冷渦が通過した12時頃から再び北東の風が強まり、13時30分には最大瞬間風速21.0m/sの北北東の風を記録しました。その後、夜にかけても平均風速で8m/s、瞬間風速で15m/s前後の風が吹き続けました。
31日の明け方、一時的に風が弱まりました。しかし、オホーツク海高気圧が南下してきた影響で朝から再び北東の風が強まり、14時56分には最大瞬間風速17.2m/sの北東の風を記録しました。低気圧が東へ離れていくのに伴って夕方から風は弱まっていき、夜には強い風は収まりました。今回は、低気圧の動きが遅かったこととオホーツク海高気圧が南へ張り出してきたことから、長い時間にわたって北東の風が強く吹きました。なお、寒冷渦に伴う低気圧による強い風については、2007年5月11日に同じような例があります。このときは、低気圧が茨城県の東へ進んだため、最大瞬間風速28.6m/sの西北西の風を記録しています。
●5月29日から31日の風速(m/s)の記録
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●参考:5月29日から6月1日にかけての風速の推移(日立市役所と水戸:10分値)
●参考:5月29日から6月1日にかけての風速の推移(水戸と鹿嶋及び古河:10分値)
●参考:5月29日から6月1日にかけての海面気圧の推移(日立市役所:10分値)
※上の3つのグラフの元データ:エクセル2000ファイル(353KB)
●参考:5月28日から31日12時の地上天気図(拡大図)
●参考:5月28日から31日09時の500hPa面高層天気図(拡大図)
作成日 2011/05/29
名前 日立市天気相談所