◇上旬から中旬にかけて暑い日が続く
上旬は一時的に前線や低気圧の影響で曇りや雨の日もあったが、南から高気圧におおわれて晴れる日が多く気温も高くなりました。上旬の終わりから月の半ばにかけては、本州付近で勢力を強めた太平洋高気圧におおわれ、晴れて暑い日が続きました。しかし、18日以降は日本付近で偏西風の南北への蛇行が大きくなるとともに太平洋高気圧が南へ後退し、替わってオホーツク海高気圧が張り出してきたため、気温が下がるとともに曇りや雨の日が多くなりました。また、太平洋高気圧の西縁を北上してきた台風第6号は、19日の夜に四国付近まで進んできた後は太平洋高気圧の後退に伴って向きを大きく変え、22日の朝にかけて本州の南を南東へ進みました。
気温の推移をみると、上旬から中旬にかけては太平洋高気圧におおわれて下層へ南から暖かい空気が入り、気温は高くなりました。上旬の平均気温は25.6℃、中旬の平均気温は26.8℃といずれも平年より4℃近く高くなり、日立市役所観測開始以来最も高い記録となりました。下旬になると、一転してオホーツク海高気圧が南へ張り出してきて冷たい北東の風が入るようになり、旬平均気温は22.8℃と平年より1.5℃低くなりました。この結果、月平均気温は25.0℃と平年よりも2.0℃高くなりました。
また、上旬から中旬にかけて晴れる日が多かったため、月の日照時間は201.2時間と平年の平年を上回り、平年の155%になりました。一方、降水量をみると中旬の終わりまでは降水量の少ない日が続きました。しかし、太平洋高気圧が後退した19日には、台風第6号の東側を回る湿った空気が入り129.0mmの大雨が降りました。さらに、27日から31日にかけては、蛇行する偏西風に伴って西から湿った空気が入り新潟県から福島県南西部で大雨となった影響で、日立市でも10〜20mm/日の雨が続きました。このため、月の降水量は215.5mmと平年の133%になりました。
7月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 25.0 23.0 月降水量(mm) 215.5 162.5 月日照時間(時間) 201.2 130.2
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 25.6 21.5 中旬 26.8 23.0 下旬 22.8 24.4
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 65.8 35.8 中旬 89.7 36.6 下旬 45.7 57.7
例年であれば、7月上旬から中旬にかけては梅雨の期間に当たるため曇りや雨の日が多く、気温はそれほど高くなりません。しかし、晴れる日が続いた場合には、盛夏時よりも日射が強いため気温が高くなります。上旬の平均気温が高い方から2番目の1998年の場合、今年と同様に7月上旬は太平洋高気圧の勢力が強まり、前線は北日本まで北上して全国的に高温となりました。しかし、中旬以降は太平洋高気圧の勢力は弱まり、前線が本州南岸から南海上に停滞することが多くなりました。このため、北日本から東日本では顕著な低温となり日照も不足しました。日立市役所における中旬の平均気温は、19.2℃と平年よりも3.7℃低くなりました。
一方、中旬の平均気温が2番目に高かった2001年の場合も、7月は太平洋高気圧におおわれ晴れて高温、少雨となりました。しかし、8月に入るとオホーツク海高気圧が張り出してきて冷たい北東の風が吹き、雲が多く気温の低い日が続くようになりました。7月の平均気温は25.9℃と日立市役所観測順位第1位の暑さになったのに対して、8月の平均気温は23.5℃と平年よりも1.5℃低くなりました。
●7月の旬平均気温(℃)の記録
上旬平均気温 順位 年 気温 1 2011 25.6 2 1998 25.2 3 1972 25.1 4 2001 25.0 5 1978 24.9 平年値 21.6
中旬平均気温 順位 年 気温 1 2011 26.8 2 2001 26.6 3 2002 26.2 4 1955 26.0 5 1981 25.6 平年値 23.0
下旬平均気温 順位 年 気温 1 1988 19.1 2 2003 20.4 3 1982 20.7 4 1993 21.5 5 1965 22.7 5 2006 22.7 7 2011 22.8 平年値 24.4 ※順位は数値の高い方または低い方からで、1953年から2011年の統計
●7月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける850hPa気温(09時)の推移
※上のグラフの元データ:1107data.xls(エクセル2000ファイル、109KB)
10日と21日の高層天気図を比べてみると、上層における大気の流れが大きく異なっていたことが分かります。10日の500hPa高層天気図をみると、上層の太平洋高気圧の中心は関東地方の東にあって広く本州付近をおおっており、本州の上層では南西から南の風が吹いています。また、地上天気図を見ると日本海に前線が停滞しており、本州付近では南から暖かい空気が入りやすい気圧配置となっていました。
一方、21日の500hPa高層天気図をみると、上層の太平洋高気圧は日本の南へ後退しし、沿海州から日本海は西から進んできた気圧の尾根になっています。また、日本の東には寒冷渦があり、日本付近では大気の流れが南北に大きく蛇行しています。地上天気図を見ると、オホーツク海高気圧が南へ張り出し、北日本kら東日本の太平洋側には冷たい北東の風が入る気圧配置です。この後、26日から27日に一時的に南の高気圧が強まり気温が上がった他は、8月3日までオホーツク海高気圧からの冷たい北東風が入り平年よりも気温の低い日が続きました。
●参考:7月10日と21日の09時の地上天気図及び500hPa面高層天気図
この上層の大気の流れの変化に対応して、19日夜に四国付近まで北上してきた台風は向きを東から南東へ変え、22日の午前中にかけて日本の南を南東へ進みました。このため、日立市では台風の直接の影響はありませんでした。しかし、19日は台風の東側をを回る形で、南から暖かく湿った空気が関東地方から四国地方の太平洋側に流れ込みました。関東地方では、この南からの湿った空気と北からのやや冷たい空気との間に局地的な前線が形成され、前線に沿った茨城県から栃木県、埼玉県、神奈川県にかけて雨雲が発達して降水量が多くなりました。
日立市では、9時過ぎから12時にかけて湿った空気により雷雲が発生し、雷を伴って一時的に強い雨が降りました。その後、14時頃から南風と北風の収束に伴う局地的な前線が形成され、茨城県北部から栃木県、埼玉県、神奈川県にかけて帯状に雨雲が発達しました。この雨雲は北東へ進みながら、全体としてゆっくりと北上していきました。日立市では、この前線に流れ込む発達した雨雲の一部がかかった16時から17時過ぎにかけてと、前線の雨雲の一部がかかった18時から19時過ぎにかけて、1時間に30mmを超える激しい雨が降りました。日立市役所では、15時55分からの1時間に38.5mmの降水量を、また16時12分からの10分間には17.5mmの降水量を記録しました。夜になると南風が関東地方北部まで入るようになり、局地的な前線は解消しました。これに伴って発達した雨雲も北へ抜け、21時以降は強く降ることはありませんでした。
●7月19日の市内の降水量(mm)
観測地点 日降水量 最大1時間降水量 降水量 日時 日立市役所 129.0 38.5 16:55 北部消防署 137.0 34.5 17:00 本山 135.0 30.5 19:00 西部出張所 86.0 17.0 19:00 諏訪広場 115.0 22.5 17:00 南部支所 106.0 28.5 17:00 十王交流センター 145.0 33.5 17:00 ※本山の08時から10時の降水量は欠測。
●7月19日の日立市役所における降水量の推移(10分値)と16時30分の降水レーダー図
●参考:7月19日17時のアメダスによる降水量と風の分布
●参考:7月19日15時の地上天気図と台風第6号の経路図
作成日 2011/08/17
名前 日立市天気相談所