◇上旬の寒さから一転して中旬、下旬は暖かくなる

 10月は高気圧と低気圧が交互に通り、天気は周期的に変わりました。上旬は、日本付近で偏西風が大きく南へ蛇行し、北から強い寒気が南下してきました。このため、気温は平年より低くなりました。しかし、12日に寒気を伴った上層の気圧の谷が日本の東へ抜けると気圧の場が転換して、日本の南東で上層の高気圧が強まり暖かい空気が入ってくるようになって気温は平年を上回るようになりました。この結果、月平均気温は17.2℃と平年をわずかに上回りました。一方、日照時間は中旬から下旬の前半にかけて南からの湿った空気の影響で雲が広がりやすかったものの、それ以外は晴れる日が多かったため、151.9時間と平年並みでした。また、月の降水量も153.0mmとほぼ平年並みになりました。

10月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 17.2 16.8
月降水量(mm) 153.0 173.3
月日照時間(時間) 151.9 151.2
旬平均気温(℃)
観測値 平年値
上旬 17.1 18.4
中旬 18.1 17.0
下旬 16.4 15.0
旬日照時間(時間)
観測値 平年値
上旬 59.9 43.0
中旬 40.3 49.1
下旬 51.7 59.1

 先に述べたように、3日から4日にかけて偏西風が南へ蛇行し、これに伴って上層へ12月上旬並みの寒気が日本付近へ流れ込んできました。この寒気の影響で、北海道の旭川では3日未明に観測開始以来2番目に早い初雪を観測しました。また、全国的に4日の朝はこの秋一番の冷え込みとなり、関東地方の平野部では最低気温が10℃を下回りました。日立市役所では、4日の最低気温が10.2℃まで下がりました。

 12日に上層の気圧の谷が東へ抜けた後、日本の東から南へ上層の高気圧が勢力を広げ、本州付近は暖かい空気におおわわれるようになりました。特に、15日から16日と22日から23日にかけては北日本を進んだ気圧の谷に向かって暖かい南風が吹き込み、全国的に気温が上昇し、9月中旬から下旬並みの陽気となったところもありました。日立市役所における最高気温も、15日には23.2℃、23日には24.0℃まで上がり、9月下旬並みの陽気となりました。なお、下旬の中頃には深い気圧の谷が通過して一時的に寒気が入り、気温の低くなる日がありました。日立市役所では、27日の最低気温が7.2℃まで下がりました。

 ●10月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaの気温(09時)の推移

10月の日立市役所における日平均気温の推移 10月のつくばにおける500hPaの気温の推移(09時)

 ●10月の日立市役所における日平均気圧の推移とつくばにおける500hPa高度(09時)の推移

10月の日立市役所における日平均気圧の推移 10月のつくばにおける500hPa高度(09時)の推移

 ※上のグラフの元データ:1110data.xls(エクセル2000ファイル、108KB)

 ●参考:10月3日〜7日と18日〜22日の5日平均500hPa高層・偏差図

 上層500hPaにおける上旬と中旬の天気図を比べてみると、大気の流れに大きな違いのあることが分かります。3日から7日の5日平均高度・偏差図をみると、日本付近は偏西風が南へ蛇行して気圧の谷場(網掛けで示される負偏差域)となっています。このため、日本付近へ北から寒気が入りました。一方、18日から22日の5日平均図では、日本の東に上層の高気圧の中心があって西へ張り出し、日本付近は正偏差域となって南から暖かい空気が入りやすくなりました。

500hPa高度・偏差図(10月3日から7日の平均) 500hPa高度・偏差図(10月18日から22日の平均)

 ※実線は等高度線、点線は等偏差値線、陰影域は負偏差を表す。

 日本の南で上層の高気圧が強まった後も、偏西風の蛇行しやすい状態が続きました。偏西風の蛇行に伴う気圧の谷の前面に向かって、南から暖かく湿った空気が入り、西日本の太平洋側を中心に大雨となる時がありました。

 この中で、21日から23日にかけては偏西風から分離した上層の気圧の谷が本州付近をゆっくりと東から北東へ進みました。この気圧の谷の東側では、上層の高気圧の西縁を回る形で南から湿った空気が北上し、21日は東海地方から九州地方にかけての太平洋側で強い雨の降った所がありました。湿った空気の流路は気圧の谷の東進に伴って東へ移動していったため、22日の朝には千葉県から茨城県の沿岸部で強い雨が降りました。千葉県勝浦市では6時10分までの1時間に63.5mmの非常に激しい雨が降りました。また、茨城県鹿嶋市でも5時16分までの1時間に31.0mmの雨が降り、総降水量も100〜150mmに達しました。

 湿った空気による発達した雨雲は、房総半島から茨城県の海岸線に沿って北上していきました。発達した雨雲の中心は東の海上を進んだため、日立市では大雨にはなりませんでした。しかし、発達した雨雲の西端がかかった3時過ぎから9時前にかけてやや強い雨が降り、6時38分までの1時間には21.0mmの降水量を記録しました。雨雲は南から北へ移動していったため、日立市内の降水量は50mm前後で場所による違いはほとんどありませんでした。なお、内陸部における総降水量は大子で19.5mm、常陸大宮市上小瀬で25.0mmと沿岸部の半分程度でした。

 ●10月22日の市内の降水量(mm)

観測地点
日降水量

最大1時間降水量

降水量
日時
日立市役所 49.5 21.0 06時38分
北部消防署 59.5 23.0 07時00分
本山 58.5 19.5 06時00分
西部支所 45.5 14.0 06時00分
諏訪広場 53.5 14.0 06時00分
南部支所 56.0 20.0 06時00分
十王交流センター 58.5 21.0 07時00分

 ●10月22日の日立市役所における降水量の推移とアメダスによる降水量の分布

10月22日の日立市役所における降水量の推移(10分値) 10月22日のアメダスによる降水量の分布

 ●参考:10月22日05時から08時の降水レーダー図

10月22日05時00分の降水レーダー図 10月22日06時00分の降水レーダー図 10月22日07時00分の降水レーダー図 10月22日08時00分の降水レーダー図

 ●参考:10月22日06時00分の降水レーダー図と06時の気象衛星赤外画像

10月22日06時00分の降水レーダー図(拡大図) 10月22日06時の気象衛星赤外画像

 ●参考:10月22日06時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図

10月22日06時の地上天気図 10月22日09時の500hPa面高層天気図

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作成日 2011/11/14
名前 日立市天気相談所