◇オホーツク海高気圧の勢力が強く、気温の低い日が多くなる
上旬は前線が本州の南に停滞し、北から高気圧におおわれて晴れる日が多くありました。中旬に入るとオホーツク海高気圧が出現して冷たく湿った北東の風が入り、曇りや雨の日が多くなりました。中旬の後半には一時的に太平洋高気圧の勢力が強まり、この西の縁に沿って台風第4号が沖縄の東を北上しました。台風は四国の南を北東へ進んだ後、和歌山県南部に上陸し、本州中部を縦断して三陸沖へ進みました。下旬に入るとオホーツク海高気圧が勢力を強めて北日本から東日本をおおおい、晴れる日が続きました。
気温の推移をみると、上旬と台風が通過した中旬の終わりに気温が平年を上回るときがあった以外は、オホーツク海高気圧から吹き出す冷たい北東風の影響を受けて気温が低くなりました。このため、月平均気温は18.2℃と平年より1.0℃低くなりました。また、月の日照時間は166.9時間と平年の147%になりました。一方、台風第4号の影響で19日から20日にかけて86.0mmの降水量があったことから、月降水量は164.0mmと平年並みになりました。
6月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 18.2 19.2 月降水量(mm) 164.0 165.1 月日照時間(時間) 166.9 113.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 18.4 18.3 中旬 18.1 19.3 下旬 18.0 20.1
上層の大気の流れを見ると、引き続き偏西風の蛇行が大きくシベリア付近に気圧の尾根が停滞することが多くありました。このため、オホーツク海高気圧が発達して北東の風が入りやすい気圧配置が続きました。6月の風向頻度を平年と比べてみると、下図に示すように今年の6月は北東の風が平年の2倍以上の頻度で現れています。偏西風の蛇行は2011年12月頃から大きくなり、寒気の入りやす気圧配置が多くなりました。このため、2011年の12月から4月にかけて5か月連続で月平均気温が平年より低くなりました。5月も偏西風の蛇行が大きい状態が続きましたが、上旬を中心に下層へ暖かい空気が入ったため月平均気温は平年より高くなりました。しかし、6月は日本の東海上の下層に寒気が滞留して冷たい空気が入りやすくなり、再び月平均気温は平年より低くなりました(下表の月平均気温の推移を参照)。
下層への寒気の流入に伴い、中旬前半と下旬には平均気温が5月中旬並みとなる日が3日から4日続きました。さらに、冷たい北東風の影響で最高気温も上がらず、日最高j気温が25℃を超える夏日は3日しかなく、同じく30℃を超える真夏日は1日もありませんでした。なお、今年になって初めて夏日となったのは6月17日で、日最高気温は28.3℃でした。これは平年(5月9日)よりも1か月半遅く、日立市役所観測開始以来2番目に遅い記録です。
●今年の日最高気温(℃)と夏日初日の記録
日最高気温 順位 気温 月日 時刻 1 28.5 06/20 08:06 2 28.3 06/17 15:35 3 25.6 06/21 11:16 4 24.7 06/18 14:21 5 24.5 06/04 09:36
夏日初日 順位 年 月日 気温 1 1984 06/19 27.4 2 2012 06/17 28.3 3 1976 06/08 25.1 3 1968 06/08 26.0 5 1975 06/06 25.2 ※順位は数値の高い方及び月日の遅い方から
●2011年6月から2012年6月の平均気温の推移
年 2011年 2012年 月 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 月平均
気温
(℃)観測値 20.6 25.0 25.3 22.9 17.2 12.8 5.6 3.0 3.6 6.6 11.3 16.5 18.2 平年値 19.2 23.0 24.9 21.8 16.8 11.9 7.3 4.6 4.6 7.2 12.1 16.1 19.2 平年差 +1.4 +2.0 +0.4 +1.1 +0.4 +0.9 -1.7 -1.6 -1.0 -0.6 -0.8 +0.4 -1.0 ※観測値欄の青色の背景は、平年よりも気温が低い月を表す。
●6月の日立市役所における日最高気温の推移と風向頻度
※上のグラフの元データ:1106data.xls(エクセル2000ファイル、87KB)
●参考:6月25日15時の地上天気図と21時の850hPa面高層天気図
※850hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。観測地点における上段の数値はその地点の850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。また、網掛けの範囲は、気温と露点温度の差が3℃以下(空気が湿っていることを表す)の場所を表しています。
中旬の後半に、日本の南で太平洋高気圧が一時的に勢力を強めました。このため、12日にカロリン諸島で発生した台風第4号は初めの内は西へ進みました。しかし、フィリピンの東へ達した15日の昼頃から向きを北へ変えて太平洋高気圧の西の縁を回るように沖縄の東を北上しました。そして、19日に四国の南へ進んできた台風は、17時30分頃に和歌山県南部に上陸しました。その後、東海地方、関東地方西部から北部を通過して20日の朝には宮城県沖へ進みました。台風の東側を回る形で南から暖かく湿った空気が流れ込んだたことから、四国から東海地方にかけての太平洋側で総降水量が300mmを超える大雨となった所がありました。関東地方の西部と北部の山間部でも総降水量が200mを超えました。
風は、南海上の高気圧との間で気圧傾度が大きくなったことから、東海地方や関東地方の沿岸部、伊豆諸島を中心に風速20m/s以上の非常に強い風が吹きました。日最大風速は、東京都三宅村坪田で29.3m/s、東京都江戸川区江戸川臨海で26.1m/sなど6月としての極値を更新しました。日最大瞬間風速では、千葉県千葉で38.1m/s、神奈川県横浜で35.6m/sなど風速が30m/sを超える所がありました。
日立市でも、南からの湿った空気が入り19日の昼から20日の未明にかけて雨が降りました。特に、台風が近づいた19日21時から20日01時にかけては、1時間に10〜20mmのやや強い雨が降り続きました。ただ、台風の規模が小さく、台風を取り巻く雨雲もそれほど発達していなかったことと、台風の移動速度が時速60〜70km/hと速かったことから総降水量は多くなりませんでした。日立市役所における総降水量は86.0mm、市街地における総降水量も40〜110mmでした。昨年9月21日に台風第15号が同じような経路を進みましたが、そのときと比べると約2/3の降水量でした。一方、南東からの風が吹き付ける形となった茨城県北部の多賀山地の東斜面では降水量が他に比べて多くなりました。北茨城市花園では総降水量が286.0mm、高萩市大能でも243.0mmとなりました。また、日立市内でも山間部の本山では総降水量が178.5mmと市街地の2倍近い降水量になりました。
先に述べたように関東地方南部では南東の風が強く吹きましたが、日立市では台風が近づいてきても風はあまり強まらず、19日の夜まで平均風速で3〜6m/sの南東の風が吹き続けました。しかし、台風が進路を東よりに変えて茨城県北部通過した02時過ぎには風向が南西に変わって一時的に風が強まり、02時07分には最大瞬間風速20.5m/sの南西の風を記録しました。その後、風は急速に弱まり、台風が宮城県沖へ進んだ05時前ぎにはやや強い風は収まりました。なお、日立市役所における気圧の推移グラフをみると、20日01時53分に最低気圧986.9hPaを記録しており、台風はこの時間に最も日立市の近くを通過したものと思われます。
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総降水量 |
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日時 | ||
日立市役所 | 86.0 | 24.5 | 19日22時57分 |
北部消防署 | **.* | **.* | 20日**時**分 |
本山 | 178.5 | 34.5 | 20日01時00分 |
西部出張所 | 116.0 | 26.0 | 19日23時00分 |
諏訪広場 | 90.0 | 21.0 | 19日23時00分 |
南部支所 | 47.0 | 12.0 | 19日23時00分 |
十王交流センター | 107.0 | 25.0 | 19日23時00分 |
日立会瀬 | 79.5 | 22.0 | 19日22時55分 |
水戸(金町) | 85.5 | 20.0 | 19日23時28分 |
※総降水量は19日13時から20日05時までの合計
●日立市役所における気象観測記録(6月20日)
最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 |
10.7 | 南西 | 02:33 | 20.5 | 南西 | 02:07 | 986.9 | 01:53 |
●6月19日〜20日の風速、風向、降水量及び気圧の推移
上のグラフの元データ:120619da.xls(エクセル2000ファイル、607KB)
●6月19日17時30分と23時30分の降水レーダー図
●参考:台風第4号の経路図
●参考:6月19日21時の地上天気図と気象衛星赤外画像
作成日 2012/07/19
名前 日立市天気相談所