◇2012年5月の雷と大雨の時の地上と上層の天気図及び降水レーダ図
*5月3日の大雨
3日、本州付近で上層の気圧の谷が深まり、寒気が南下してきました。一方、日本の東には勢力の強い高気圧が停滞し、この高気圧の西側を回る形で南東から本州付近へ湿った空気が流れ込みました。この湿った空気と気圧の谷に伴う寒気との境で雨雲が発達し、紀伊半島から関東、東北地方及び北海道の太平洋側で大雨が降りました。気圧の谷の進行が遅かったことから、同じような場所で強い雨が降り続きました。このため、神奈川県から栃木県にかけて総降水量が150〜200mmになった所がありました。東京都大手町では2日から3日の総降水量が158.5mmに達し、2日の降水量121.5mmは5月としては観測開始以来第1位の多い記録となりました。
茨城県北部でも長時間にわたり湿った東よりの風が多賀山地に吹き付ける形となり、山地の東側斜面で降水量が非常に多くなりました。2日15時から4日03時までの総降水量は、北茨城市花園で341.0mm、高萩市大能で321.5mmとなりました。特に3日の大能の降水量306.0mmは観測開始以来第1位の記録、同じく花園の降水量324.5mmは観測開始以来第2位の記録となりました。
日立市内でも、2日15時から4日03時までの総降水量が山間部の本山で246.5mm、西部支所で195.0mmとなりました。本山の3日の降水量239.0mmは、1988年5月の観測開始以降第2位の記録です。一方、市街地の日立市役所では総降水量が84.0mm、最大1時間降水量も9.5mmと強い雨は降らず総降水量も多くなりませんでした。さらに、多賀山地の南端に位置する南部支所では総降水量が43.5mmと本山の1/6の少ない降水量でした。今回の大雨は、地形の影響によって場所により降水量に大きな違いが生じました。
|
|
※順位は降水量の多い方からで、1953年から2012年の統計
※1時間降水量のデータ(0503prec.xls:23KB)
●5月2日15時から4日03時にかけての降水量の推移(本山)と日立市周辺の降水量分布
●参考:5月3日05時00分と08時00分の降水レーダー図
●参考:5月3日07時のアメダスによる降水量と風の分布
●参考:5月3日及び4日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
*5月6日の雷
5日から6日にかけて、寒冷渦が沿海州から本州上へ南下してきました。高度500hPaで中j芯付近の気温が-27℃と、この時季としては強い寒気を伴っていたため、寒冷渦の南東側に当たる本州中部では大気の状態が不安定になり雷雲が発達jしました。特に、関東地方では晴れて南風が入り気温が25℃を超えたため、12時過ぎには茨城県西部から栃木県南部で積乱雲が非常に発達しました。そして、この発達した積乱雲の南端に当たる築西市から桜川市、常総市からつくば市及び真岡市から茂木町にかけて竜巻が発生しました。
この内、北側の雷雲はしだいに弱まりながら北東へ進み、日立市を通過して東海上へ抜けました。しかし、この雷雲の通過に伴い、日立市役所では13時20分過ぎに落雷により停電しまし。また、観測露場では近くへの落雷による異常電流により露点温度計が破損しました。一方、南側の雷雲は盛衰を繰り返しながら北東へ進み、発達した雷雲がかかった水戸市、ひたちなか市、東海村と日立市南部ではひょうが降りました。特に、ひたちなか市から東海村にかけては直径が30mmを超えるひょうが降りました。
その後、栃木県との境で北東から南西方向へ帯状に雷雲が発生し東南東へ進みました。このため、日立市役所では17時頃まで雷が続きました。ただし、日立市役所周辺には発達した雷雲はかからなかったため強い雨は降らず、総降水量も15.5mmと多くはなりませんでした。
|
総降水量 |
|
|
|
日時 | ||
日立市役所 | 15.5 | 7.0 | 6日16時30分 |
北部消防署 | 12.5 | 6.0 | 6日16時00分 |
本山 | 14.5 | 7.0 | 6日16時00分 |
西部出張所 | 20.0 | 7.0 | 6日17時00分 |
諏訪広場 | 13.0 | 6.5 | 6日17時00分 |
南部支所 | 41.5 | 25.5 | 6日15時00分 |
十王交流センター | 16.0 | 6.5 | 6日16時00分 |
日立会瀬 | 15.5 | 7.5 | 6日16時29分 |
水戸(金町) | 44.0 | 27.5 | 6日14時18分 |
※1時間降水量のデータ(0506prec.xls:20KB)
●参考:5月6日12時40分から17時10分にかけての降水レーダー図
●参考:5月29日12時30分と14時30分の降水レーダーズ図
●参考:5月6日13時のアメダスによる気温と風の分布
●参考:5月6日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
*29日の雷雨
27日から29日にかけて、寒冷渦が日本海から北海道へゆっくりと進みました。これに伴って上層へ寒気が入るとともに、寒冷渦の南東側へ南から暖かく湿った空気が入り、大気の状態が不安定となりました。このため、27日にから29日の午後は東北地方から近畿地方にかけての所々で雷を伴った激しい雨が降りました。
特に、29日は北海道付近をゆっくりと東進する寒冷渦の西側を回る形で、上層の気圧の谷が沿海州から西日本へ南下してきたため、本州付近で気圧の谷が深まる形となりました。このため、関東地方では北からの寒気と南からの暖気とがぶつかる形となり、この収束域に沿って雷雲が発達しました。29日の15時ころから、茨城県北部から栃木県南部を通り群馬県南部にかけて収束域が明瞭となり、この収束域に沿って雷雲が発生しました。収束域は夜にかけて南下していったため、雷雲は東北東へ進みながら全体としてはゆっくりと南下していきました。しかし、南下の速度が遅く、収束域に沿って雷雲が次々と発生したため収束域上にあたった地域では雨量が多くなりました。日立市役所では、17時39分からの1時間に45.0mmの雨量を記録しました。また、水戸市金町では19時17分からの1時間に56.0mmの雨量を記録しました。
日立市役所では、雷雲が茨城県中部へ南下していった20時過ぎには雨は弱まりました。しかし、上層の気圧の谷が東へ抜ける30日03時頃まで、1時間に3〜5mmの雨が降り続きました。この結果、日立市役所における総降水量は86.0mmになりました。また、水戸市金町では総降水量が116.0mmになりました。今回の雷雨は、収束域に沿って雷雲が発達したため、帯状に雨量の多い地点が広がりました。
|
総降水量 |
|
|
|
日時 | ||
日立市役所 | 86.0 | 45.0 | 29日18時39分 |
北部消防署 | 80.5 | 39.5 | 29日19時00分 |
本山 | 88.5 | 39.0 | 29日18時00分 |
西部出張所 | 66.5 | 31.0 | 29日18時00分 |
諏訪広場 | 76.0 | 40.0 | 29日19時00分 |
南部支所 | 77.0 | 31.0 | 29日19時00分 |
十王交流センター | 83.5 | 26.0 | 29日19時00分 |
日立会瀬 | 79.5 | 44.5 | 29日18時35分 |
水戸(金町) | 116.0 | 56.0 | 29日20時17分 |
※1時間降水量のデータ(0529prec.xls:21KB)
●参考:5月29日17時00分から20時00分の降水レーダー図
●参考:5月29日17時00分と19時00分の降水レーダー図
●参考:5月29日19時のアメダスによる降水量と風の分布
●参考:5月29日18時の地上天気図と21時の500hPa面高層天気図
作成日 2012/06/15
名前 日立市天気相談所