◇南岸低気圧による大雪と大雨
月の初めと終わりは、日本海を進む低気圧に向かって南から暖かい空気が入り気温が高くなりました。4日に上層の気圧の谷が通過した後は下層が寒気におおわれるようになり、下旬の前半にかけて気温が低くなりました。このため、月平均気温は3.9℃と平年より0.7℃低くなりました。
一方、カムチャッカの東で上層の高気圧が勢力を強めて停滞し、日本付近で偏西風の蛇行が大きくなりました。この影響で、低気圧が周期的に日本の南を通過しました。特に、8日から9日と14日から15日にかけては本州南岸を低気圧が発達しながら北東へ進み、関東地方では大雪となって積雪が30cmを超えた所が多くありました。日立市役所でも、9日の積雪は13cmになりました。15日は低気圧に伴う暖気が入り、日立市では雨になりました。ただ、寒気との境で雨雲が発達し、市内の総降水量は100〜170mmに達する大雨となりました。この結果、月降水量は188.0mmと平年の3倍を超えました。これは、2月の降水量としては日立市役所観測開始来1985年の193.0mmに次いで2番目に多い記録です。また、月の前半を中心に曇りの日が多かったことから、月の日照時間は154.0時間(平年比89%)と平年より少なくなりました。
2月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 3.9 4.6 月降水量(mm) 188.0 56.3 月日照時間(時間) 154.0 172.1
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 3.3 4.2 中旬 3.2 4.6 下旬 5.4 5.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 44.4 62.9 中旬 56.8 59.5 下旬 52.8 48.4 ※下旬の日照時間の平年値は、各年の2月21日〜28日の合計値の30年平均。
●2月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
最初に述べたように、15日は関東地方南岸を北東へ進んだ低気圧の影響で茨城県から千葉県にかけて総降水量が100mを超える大雨となりました。日立市役所では15日の降水量が142.5mmに達し、2月の日降水量としては1985年2月19日に記録した101.0mmを抜いて観測史上1位の記録となりました。また、昼前には北側の寒気と低気圧に流れ込む暖気との境で雨雲が急速に発達し、1時間降水量30〜50mmの激しい雨が降りました。日立市役所では11時05分に1時間最大降水量32.5mmを記録し、2月の1時間最大降水量としてはこれまでで最も多くなりました。
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※順位は数値の多い方からで、1953年〜2014年の統計
気温の推移をみると、月初めは南から暖かい空気が入り3日には最高気温が15.1℃まで上がりました。しかし、4日の午後から強い寒気が入り、5日の最低気温は-5.4℃まで下がりました。昨年の2月25日にも最低気温が-5.2℃まで下がっており、2年連続して強い冷え込みのあった2月でした。なお、それ以前に日立市役所で最低気温が-5℃未満となったのは、2006年2月4日の-5.5℃です。
その後、下旬の前半にかけて気温の低い日が続いたものの、曇りの日も多かったため冷え込みはあまり強まりませんでした。このため、日最低気温0℃未満の日(冬日)の日数は14日と平年並みでした。また、1月の冬日の日数も平年並みでしたが、12月は冷え込みが弱かったため、この冬(12月〜2月)の冬日の日数は過去5年間の中では最も少なくなりました。
●過去5年間の冬季の気温と冬日の日数(日立市役所)
月平均気温(℃) 年 前年
12月1月 2月 2010 7.5 5.0 4.4 2011 8.5 2.9 5.2 2012 5.6 3.0 3.6 2013 6.1 3.6 4.0 2014 7.2 4.5 3.9 平年値 7.3 4.6 4.6
月最低気温(℃) 年 前年
12月1月 2月 2010 -1.9 -2.2 -3.3 2011 -0.5 -3.1 -2.2 2012 -2.2 -4.2 -4.4 2013 -2.6 -3.3 -5.2 2014 -1.3 -2.9 -5.4
冬日の日数 年 前年
12月1月 2月 計 2010 6 13 16 35 2011 1 23 10 34 2012 11 20 15 46 2013 8 17 14 39 2014 3 16 14 33 平年値 6 17 14 37 ※月平均気温の青色で塗った欄は気温が平年以下の月を表す。
※月最低気温の青色で塗った欄は気温が-5℃未満を表す。
◇南岸低気圧による雪(2月8日)
低気圧が本州の南を発達しながら東北東へ進み、8日の午後には八丈島の北を通過して9日の朝には関東地方の東へ抜けました。本州付近の下層には4日夜から寒気が入り気温の低い状態が続いていたことと、低気圧に伴う暖気は沿岸部までしか入らず日中も気温が上がらなかったため、関東地方の大部分の地域では8日未明から9日明け方にかけて雪が降り続きました。このため、関東地方西部から南部では積雪が30cmを超える大雪となりました。日立市役所でも8日5時〜9日4時にかけて雪が降り続き、9日5時には13cmの積雪となりました。
【2月8日の気象概況】 ・6日09時に東シナ海で発生した低気圧は発達しながら本州の南を北東へ進み、8日夕方には八丈島付近を通過して9日夜に は三陸沖に達した。 ・4日午後から本州付近の下層は寒気におおわれていた。つくばにおける8日09時の850hPaの気温は-7.4℃(平年比-3.4℃)。 ・関東地方では、沿岸部を除き気温が0℃前後で推移した。 ・関東地方では、8日の未明から9日の明け方にかけて雪が降り続いたため積雪が多くなった。 ・低気圧が発達しながら進んだため、8日朝から9日未明にかけて北東から北の風が強まった。 |
本州付近の下層には寒気が滞留し気温の低い日が続いていました。つくばにおける高層観測の結果を見ると、高さ1500付近(850hPa面)の気温は、6日以降-8℃前後と平年より4℃近く低い状態が続いていました。低気圧が関東地方に近づいた8日21時には、850hPaの気温は-4.1℃まで上がりました。しかし、低気圧に伴う暖気は房総半島から茨城県の鹿行地方までしか入らなかったため、関東地方の大部分の地域では気温が0℃前後で推移し、8日の未明から9日の明け方にかけて雪が降り続きました。
地表付近の気温が低く推移したことと降雪がまる1日続いたことから、積雪が多くなりました。東京都大手町では最深積雪が27cmとなり、1969年3月12日の30cm以来の大雪となりました。また、熊谷で43cm(1954年1月24日の積雪43cm以来60年ぶりの大雪、観測史上2位)、千葉と前橋では33cm(千葉は観測史上1位、前橋は観測史上3位)の積雪を記録しました。茨城県内ではつくばで最深積雪26cmとなり、観測史上2位の記録となりました。また、水戸では14cm、日立市役所では13cmの積雪となり、神栖市から鉾田市にかけての沿岸部を除いて10cmを超える積雪となりました。日立市役所の積雪13cmは、観測開始以来4番目に多い記録です。
日立市役所における気温の推移を見ると、8日の明け方に雪が降り始めた後、すぐに気温が1.5℃程下がりました。その後、夕方にかけて徐々に気温は上がっていきましたが、15時前までは氷点下の気温が続きました。その後も、夕方から9日4時過ぎに雪が止むまでは、0.5℃前後の気温が続きました。ひたちなか市以南の沿岸部では、低気圧が近づいた8日夕方から夜の初めの間に雪から雨に変わる時間帯がありました。(水戸では19時15分〜20時40分と21時20分〜21時45分はみぞれに変わる。ひたちなか市では19時50分頃から21時00分頃にかけて雨に変わる。)しかし、日立市役所では気温が上がることはなく、最後まで雪が降り続きました。
また、低気圧が発達しながら北東へ進んだため、日立市役所では8日の朝から北東の風が徐々に強くなり、低気圧が最も近づいた9日00時30分には最大瞬間風速24.3m/sを記録しました。低気圧が東へ遠ざかった9日に昼には風は収まりました。
●日立(市役所)と水戸(金町)における積雪の深さ(cm)
日 | 時 | 06時 | 07時 | 08時 | 09時 | 10時 | 11時 | 12時 | 13時 | 14時 | 15時 | 16時 | 17時 | 18時 | 19時 | 20時 | 21時 | 22時 | 23時 | 24時 |
8日 |
日立 | *** | *** | 3 | 4 | 4 | 3 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 2 | *** | *** | *** | 5 | *** | *** | *** |
水戸 | - | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 7 | 7 | 6 | 7 | 7 | 6 | 4 | 4 | 6 | 8 | 9 |
※日立における積雪の観測は08時〜21時。
日 | 時 | 01時 | 02時 | 03時 | 04時 | 05時 | 06時 | 07時 | 08時 | 09時 | 10時 | 11時 | 12時 | 13時 | 14時 | 15時 | 16時 | 17時 | 18時 | 19時 |
9日 |
日立 | *** | *** | *** | *** | 13 | 13 | 12 | 12 | 12 | 11 | 10 | 9 | 9 | 9 | 8 | *** | *** | *** | *** |
水戸 | 10 | 12 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 | 13 | 11 | 10 | 10 | 9 | 9 | 9 | 9 | 9 | 9 |
※日立における積雪の観測は04時〜15時。
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※大子、鉾田、下妻は9日05時の値
※日立市役所の最深積雪の記録は、1953年1月1日〜2014年2月28日までの統計。
地点 | 最大平均風速 | 最大瞬間風速 | ||||
風向 | 最大値 | 日時 | 風向 | 最大値 | 日時 | |
日立市役所 | 北北東 | 13.6 | 9日00時14分 | 北北東 | 24.3 | 9日00時30分 |
南部支所 | 北東 | 11.2 | 8日21時52分 | ** | **.* | **** |
会瀬 | 北北東 | 10.9 | 9日00時12分 | 北北東 | 21.0 | 8日23時37分 |
水戸 | 北北東 | 13.3 | 8日21時54分 | 北北東 | 21.5 | 8日22時06分 |
※水戸では風向風速計の凍結により、9日01時40分〜07時40分まで風向・風速を欠測。
●2月8日から9日にかけての気温と風速の推移(日立市役所:10分値)
※上のグラフの元データ:140208da.xls(エクセル2000ファイル、867KB)
●2月8日から9日にかけての気圧の推移(日立市役所:10分値)と9日朝の様子
●2月8日21時のアメダスによる気温と風の分布
●2月8日21時の地上天気図と850hPa面高層天気図
◇南岸低気圧による大雨と大雪(2月15日)
13日21時に南西諸島で発生した低気圧は本州の南海上を北東へ進み、しだいに 発達しながら15日昼頃に関東地方沿岸を通過した後、夜には福島県沖へ進みました。本州付近の下層には寒気が滞留し、気温の低い状態が続いていました。さらに、低気圧の前面を北上する暖気の影響で本州南岸に前線が形成されたため、関東地方では低気圧が近づく前の14日の明け方から広い範囲で雪が降り出し、15日の昼過ぎにかけて降り続きました。このため、内陸部では積雪が60cmを超える大雪となりました。一方、茨城県では低気圧に伴う暖気が入り、15日未明から雪が雨に変わりました。さらに、昼前には暖気の影響で雨雲が発達して激しい雨が降り、沿岸部を中心に総降水量が100mmを超える大雨となりました。日立市内でも、総降水量が100〜170mmに達しました。
【2月15日の気象概況】 ・13日21時に南西諸島で発生した低気圧は北東へ進んだ後、紀伊半島の南から北北東へ進み、15日昼前には千葉県を通過して夜には福島県沖に達した。 ・本州付近の下層には寒気が滞留し、気温の低い日が続いていた。つくばにおける14日21時の850hPaの気温は-5.6℃(平年比-2.3℃)。 ・関東地方では、沿岸部を除き気温が0℃前後で推移した。 ・低気圧の接近前に本州南岸に前線が形成され、関東地方では14日の明け方から雪が降り出して15日の朝から昼まで雪が降り続いたため積雪が多くなった。 ・低気圧に流れ込む暖気と北側の寒気の境で雨雲が発達し、茨城県から千葉県にかけては激しい雨が降り総降水量が100mmを超えた。 ・低気圧と北側の高気圧との間で気圧傾度が大きくなったことと低気圧が沿岸を通過したことから、14日朝から15日夕方にかけて風が強く吹いた。 |
低気圧は14日の明け方には沖縄の東にあり、関東地方からは離れていました。しかし、本州付近に滞留する寒気と低気圧の前面を北上する暖気の影響で本州南岸に前線が形成されたため、関東地方では低気圧が近づいてくる前の14日の明け方から広い範囲で雪が降り出しました。ただ、関東地方では東寄りの風に伴って雪雲は南部から西部に広がり、茨城県にはまとまった雪雲はかかりませんでした。このため、14日の茨城県内では夕方にかけて雪が降ったり止んだりしたものの、降水量としてはほとんどありませんでした。それに対して、南部から西部にかけては雪が降り続くとともに気温も朝より低くなっていったため、積雪が増えていきました。18時の積雪は東京都大手町で4cm、千葉市で6cm、横浜市で14cm、内陸部の熊谷市では19cm、前橋市では13cmになりました。
夜に入り、低気圧が近づいてくるにつれて低気圧を取り巻く雪雲がかかってきました。このため、雪の降り方が激しくなり積雪は一気に増えました。低気圧は15日の朝から昼にかけて千葉県から茨城県を通過していきました。このため、関東地方の南部から西部では朝にかけて強い雪が降り続き、積雪はさらに増えました。各地の最深積雪は前橋市で73cm、熊谷市で62cm、宇都宮市で32cmと、いずれも観測史上1位の値となりました。低気圧の北上に伴って暖気が入ってきたため、雪は明け方から昼にかけて東部からしだいに雨に変わっていきました。なお、茨城県では早めに暖気が入ってきたため、沿岸部では積雪になりませんでした。
日立市役所では、15日3時頃まで弱い雪が降り続きました。ただ、降水量が少なかったことと気温が1℃前後と8日に比べて2℃程高かったことから積雪にはなりませんでした。3時を過ぎると低気圧の北側に広がるやや発達した雨雲がかかり始めるとともに、気温が5℃近くまで上がりました。このため、雪は雨に変わり降り方も強まりました。さらに、低気圧の中心が近づいてきた10時頃から、低気圧に流れ込む暖気と北側の寒気の境で雨雲が急速に発達し、11時頃にかけて1時間降水量30〜50mmの激しい雨が降りました。低気圧の動きが比較的遅く、未明から昼前にかけて雨が降り続いたため総降水量も多くなりました。市内の総降水量は100〜170mmに達し、2月の1日の降水量としてはこれまでで最も多くなりました。なお、これまでの2月の日最大降水量の記録は、1985年2月9日の101.0mmです。
また、低気圧と北側の高気圧との間で気圧傾度が大きくなったことから、低気圧が近づいてくる前の14日10時頃から徐々に北東の風が強まり、夜遅くには平均風速が10m/sを超えるようになりました。低気圧の中心が近づいた朝から昼前にはさらに風が強まり、11時05分には最大平均風速13.8m/sの北北東の風を記録しました。なお、最大瞬間風速は08時08分に記録した北東の風24.7m/sです。これらは、2月9日の南岸低気圧による強い風と同じ程度の風速でした。低気圧が東海上へ進んだ夕方には風は収まりました。ただし、日立市役所では夜遅くには北西の季節風がやや強く吹き出しました。
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※大子、下妻は15日05時の値
※14日の日立市内の降水量は、各地点とも0mm。
地点 | 最大平均風速 | 最大瞬間風速 | ||||
風向 | 最大値 | 時刻 | 風向 | 最大値 | 時刻 | |
日立市役所 | 北北東 | 13.8 | 11時05分 | 北東 | 24.7 | 08時08分 |
南部支所 | 北東 | 12.9 | 10時05分 | ** | **.* | **時**分 |
会瀬 | 北北東 | 12.8 | 08時08分 | 北北東 | 25.7 | 08時30分 |
水戸 | 北北東 | 17.5 | 06時32分 | 北北東 | 28.2 | 06時27分 |
●2月14日から15日にかけての気温と風速の推移(日立市役所:10分値)
※上のグラフの元データ:140215da.xls(エクセル2000ファイル、878KB)
●2月14日から15日にかけての気圧の推移(日立市役所:10分値)と降水量の推移(諏訪広場:1時間値)
●2月15日09時40分と10時40分の降水レーダー図
10時〜11時過ぎにかけて、寒気との境で雨雲が帯状に発達し北北西へ進む。
●2月15日09時のアメダスによる気温と風の分布
千葉県北西部を中心として風が反時計回りに吹いており、この東側では気温が高くなっています。
●2月15日09時の地上天気図と850hPa面高層天気図
作成日 2014/03/12
名前 日立市天気相談所