◇月初めの猛暑から涼しい月末へと気温の変動が大きくなる
上旬は太平洋高気圧が本州付近へ張り出し、晴れて気温の高い日が続きました。12日に関東地方の南を北上してきた台風第14号が北東へ転向して東へ抜けた後、本州付近は北の高気圧と南の太平洋高気圧との間の気圧の谷に入り、南岸に前線が停滞するようになりました。このため、曇りや雨の日が多くなり気温も平年並みになりました。さらに、22日に日本海を低気圧が東へ進んだ後、北から高気圧が張り出してくるとともに下層へ冷たく湿った空気が流れ込んできたため、気温がかなり低くなって曇りや雨 の日が多くなりました。
上旬は1日から7日にかけて連続して日最高気温が30℃を超えました。しかし、 24日以降は気温が平年をかなり下回るようになったため、月平均気温は25.0℃と平年並みになりました。また、中旬以降天気がぐずついたことから、月の日照時間は131.3時間(平年比76%)と平年より少なくなりました。一方、中旬以降は雨の降る日が多かったものの、日立市では台風の影響がなかったことから月の降水量は88.0mm(平年比60%)と平年より少なくなりました。
8月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 25.0 24.9 月降水量(mm) 88.0 145.6 月日照時間(時間) 131.3 172.7
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 27.9 25.2 中旬 25.3 24.9 下旬 22.0 24.7
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 95.3 60.6 中旬 24.0 54.3 下旬 12.0 57.9
●8月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●8月の日立市役所における風向頻度と日照時間の推移
このように、今年の8月は上旬と中旬以降とで天気が大きく変わりました。風向を見ても、上旬は南から高気圧におおわれて南寄りの風が多くなりました。しかし、中旬以降は天気をぐずつかせる北東の風が多くなったため、月の風向頻度(上のグラフ)は北北東と北東の風向が平年の2倍以上になりました。
日照時間も上旬は平年の1.5倍を超えましたが、中旬以降は平年の半分以下でした。特に、26日から31日にかけて日照時間0.2時間未満の日が続いたため、下旬の日照時間は12.0時間と平年の1/5しかありませんでした。
気温は、月を通すと平年並みとなりました。真夏日(最高気温30℃以上の日)の日数も12日と平年並みでした。しかし、上旬は太平洋高気圧の中心に近かったことから気温が下がりにくくなり、熱帯夜(最低気温25℃以上の日)の日数は5日と平年より多くなりました。ただし、市内の気温の観測結果を見ると、熱帯夜となった日数は十王交流センターで4日、南部支所で1日あっただけで、それ以外の地点では熱帯夜はありませんでした。茨城県内の観測点と比較しても、日立市役所の熱帯夜の日数5日は、土浦、鹿嶋と並んで最も多くなりました。日立市役所と十王交流センターは、南西の風に伴うフェーン現象の影響を受けやすく、気温の下がりにくい傾向があります。
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※真夏日及び熱帯夜の日数の2015年の年合計は、8月31日までの値。
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◇8月の日立市内の気温と降水量
7月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなりました。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある西部支所と本山、標高の高い諏訪広場及び海に近い北部消防署は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は23.7℃で、7月より0.4℃高くなりました。また、水戸の月平均気温は25.6℃と日立市の平均よりも1.9℃高く、7月に引き続いて水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は90.3mmで、7月の平均降水量183.9mmよりも90mm近く少なくなりました。観測地点の間の差は7月よりも大きくなり、最も降水量の多かった十王交流センターの120.5mmに対して、最も少なかった南部支所は66.5mmと1.8倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量90.3mmに対して、水戸の月降水量は44.5mmと半分近い値でした。
●8月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
8月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 25.0 33.7 05 10:55 18.3 26 03:05 十王交流センター 24.7 33.6 05 15:34 17.8 26 03:24 北部消防署 23.2 30.5 01 13:17 16.6 26 03:05 本山(中学校跡) 22.2 33.7 05 13:51 15.1 26 02:37 西部支所 23.8 34.5 05 14:37 16.0 26 01:13 諏訪広場 22.6 34.2 05 14:15 15.3 26 02:39 南部支所 24.3 35.8 05 13:05 18.4 29 04:56 上記7地点の平均 23.7 - -
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日立会瀬 25.0 33.2 06 09:22 17.1 07 03:06 水戸(金町) 25.6 36.5 05 13:22 19.1 29 05:11
8月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 88.0 37.5 26 11.0 13 06:45 十王交流センター 120.5 46.0 26 10.5 13 06:28 北部消防署 106.5 39.0 26 12.0 13 06:53 本山(中学校跡) 94.5 37.0 26 16.0 13 06:12 西部支所 79.0 27.5 15 25.0 15 19:40 諏訪広場 77.0 31.0 26 12.5 13 06:35 南部支所 66.5 23.0 26 17.0 13 06:38 上記7地点の平均 90.3 - -
- - 日立会瀬 80.5 36.0 26 11.0 13 06:39 水戸(金町) 44.5 14.5 17 6.0 26 09:27
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇上旬の猛暑から下旬は一転して涼しくなる(5日と29日の比較)
上層の大気の流れを見ると、上旬と中旬以降で大きく変化しました。7月中旬から8月上旬にかけては、太平洋高気圧が本州付近へ張り出し、偏西風が北緯40度線付近まで北上したため、日立市では晴れて気温の高い日が続きました。特に、8月上旬は大型の台風第13号が北緯20度線を西北西へ進んだ影響で上層の高気圧の勢力が強まるとともに、高気圧の中心が関東地方の南へ移動してきたため、高気圧からの下降流による昇温が起こって一段と気温が高くなりました。関東地方で最高気温が35℃以上となったのは、5日が36地点、6日が45地点、7日が53地点でした。また、最低気温が25℃以上となったのは、5日が35地点、6日が37地点、7日が33地点でした。
日立市役所では、7月31日から最高気温が連日30℃を超える日が続きました。また、4日の昼過ぎからは南西の風が入るようになって気温が下がらなくなり、5日から7日にかけて3日連続して最低気温が25℃を超えました。日立市役所で3日連続して最低気温が25℃を超えたのは、2011年8月16日から18日にかけての3日連続の記録以来です。日立市は海に面しているため、南西の風によるフェーン現象が起こらなければ最低気温が25℃を上回ることはほとんどなく、連続して3日も25℃を超えたのは珍しいことです。日立市役所以外の地点では、十王交流センターが日立市役所と同じような気温の変化を示し、最低気温も5日から7日にかけて25℃以上となりました。一方、その他の5地点では最低気温が25℃以上となることはありませんでした。なお、最高気温は北部消防署が他地点に比べて低くなった他は、日立市役所と同じ程度まで上がりました。
10日には寒冷渦が沿海州へ進んできて動きが遅くなり、15日にかけて日本海をゆっくりと東へ進みました。これに伴って太平洋高気圧の勢力が南へ後退し、気温は平年並みに戻っていきました。その後も中国東北区に寒冷渦が停滞し、日本付近では西谷の気圧配置が続きました。23日に台風第16号が関東地方の南を北東へ進んだ後、華北から沿海州で寒冷渦が停滞するとともに北の高気圧が勢力を強めて北日本から東日本へ張り出すようになりました。これに伴って、北から下層へ冷たい空気が流れ込んできたため、関東地方では気温が低くなりました。特に、29日は日中も気温がほとんど上がらず、日立市役所における最高気温は20.8℃と10月中旬並みの気温となりました。
●8月5日と29日の日立市内と水戸における気温の観測結果
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※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
●8月の日立市役所における日最高気温と日最低気温の推移
●8月5日〜6日の気温の推移(10分値)
●8月28日〜29日の気温の推移(10分値)
●参考:8月5日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
500hPa面高層天気図を見ると、上層の高気圧の中心が関東地方のすぐ南にあり、偏西風は北緯40度線より北を流れている。
●8月5日13時のアメダスによる気温と風の分布
●参考:8月29日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
500hPa面高層天気図を見ると、上層の高気圧は南へ後退し、寒冷渦が沿海州に停滞して偏西風は北緯40度線より南を流れている。
●8月29日13時のアメダスによる気温と風の分布
作成日 2015/09/14
名前 日立市天気相談所