◇月を通して曇りや雨の日が多くなる
7月の終わりから8月初めにかけては、オホーツク海高気圧におおわれて雲が広がりやすく、気温も低くなりました。6日から8日にかけて、台風第5号が近畿地方から北陸地方を縦断し、一時的に気温が上がりました。しかし、9日に台風から変わった低気圧が秋田沖で消滅した後、本州南岸が気圧の谷場となりやすくなるとともに北からオホーツク海高気圧が張り出してきました。このため、関東地方では曇りや雨の日が多くなりました。下旬に入ると、一時的に太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近をおおい、晴れて気温が高くなりました。この結果、月平均気温は24.3℃と平年より0.6℃低くなりました。また、月を通して晴れる日が少なかったことから、月の日照時間は64.2時間(平年比37%)と平年よりかなり少なくなりました。一方、湿った空気や台風第5号の直接の影響を受けることがなかったことから、月の降水量は65.0mm(平年比45%)と平年より少なくなりました。
8月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 24.3 24.9 月降水量(mm) 65.0 145.6 月日照時間(時間) 64.2 172.7
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 24.4 25.2 中旬 23.1 24.9 下旬 25.3 24.7
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 22.6 60.6 中旬 14.6 54.3 下旬 27.0 57.9
●8月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●8月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
今年の8月の平均気温は、2009年8月の23.4℃以来9年ぶりに平年の気温を下回りました。ただ、2009年8月の場合、前半はオホーツク海高気圧の張り出しと気圧の谷の影響で今年と同様に天気がぐずつきました。しかし、後半は大陸からの移動性高気圧におおわれて晴れて乾燥した天気となったため、今年とは異なり日照時間は平年近くまで戻りました。
また、今年の8月は天気がぐずついた割には降水量が少なくなりました。過去9年間の8月の中では、太平洋高気圧の勢力が強く、晴れて気温の高い日が続いた2010年と2012年に次いで降水量が少なくなりました。
●過去9年間の8月の気象観測値の比較
観測要素 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 平年値 月平均気温(℃) 23.4 27.1 25.3 26.3 25.8 24.9 25.0 25.6 24.3 24.9 最高気温(℃) 30.4 34.7 35.6 33.1 35.1 36.3 33.7 36.2 32.7 - 真夏日の日数(日) 1 17 10 17 14 15 12 10 7 11.2 夏日の日数(日) 25 31 26 31 30 26 24 31 24 24.4 降水量(mm) 217.0 7.5 83.0 30.5 103.5 161.0 88.0 348.0 65.0 126.8 日照時間(時間) 158.3 230.0 186.2 275.9 226.8 189.2 131.3 173.1 64.2 172.7
◇8月の日立市内の気温と降水量
8月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなりました。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある西部支所と本山、標高の高い諏訪広場及び海岸に近い北部消防署は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は22.9℃で、7月より0.8℃低くなりました。なお、水戸の月平均気温は24.9℃と日立市の平均よりも2.0℃高くなりました。また、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、7月に引き続いて全地点とも水戸より低くなりました。
一方、月の降水量の市内平均は67.7mmで、7月の平均降水量117.4mmよりも50mm近く少なくなりました。観測地点の間の差は7月とほぼ同じで、最も降水量の多かった本山の94.0mmに対して、最も少なかった西部支所は59.0mmと1.6倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量67.7mmに対して水戸の月降水量は123.5mmと、60mm近く多くなりました。これは、19日に水戸で雷雨により17時08分までの1時間に35.0mmの激しい雨が降ったためです。
●8月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
8月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 24.3 32.7 23 12:07 17.6 31 10:27 十王交流センター 24.0 32.4 23 12:15 17.6 31 10:24 北部消防署 22.5 30.2 23 12:12 16.2 31 10:51 本山(中学校跡) 21.1 30.0 23 12:45 14.6 03 05:18 西部支所 22.5 32.0 09 10:16 15.2 03 05:15 諏訪広場 22.3 32.3 23 13:15 15.4 31 10:27 南部支所 23.8 33.6 23 13:15 16.9 31 10:48 上記7地点の平均 22.9 - -
- -
日立会瀬 24.8 32.1 23 11:49 19.6 31 10:37 水戸(金町) 24.9 35.7 24 12:56 17.9 03 05:19
8月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 65.0 16.5 15 9.5 08 02:45 十王交流センター 70.0 17.5 15 11.5 08 03:02 北部消防署 65.5 18.5 15 9.5 08 02:58 本山(中学校跡) 94.0 31.0 08 27.5 08 02:43 西部支所 59.0 26.5 08 25.0 08 02:43 諏訪広場 60.5 13.5 19 11.5 08 02:38 南部支所 60.0 18.0 15 14.0 19 16:54 上記7地点の平均 67.7 - -
- - 日立会瀬 64.5 15.0 15 9.0 08 02:40 水戸(金町) 123.5 70.0 19 35.0 19 17:08
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇日照時間が、観測開始以来2番目に少なくなる
今年の8月は、日本の南海上で太平洋高気圧の西への張り出しが平年に比べて強くなりました。一方で、北への張り出しは平年に比べて弱く、北日本から東日本では前線や湿った気流の影響を受けやすくなりました。特に、台風第5号が7日に四国の南を通過し、近畿地方から北陸地方を縦断して日本海へ進み、9日に秋田沖で消滅した後、本州南岸が気圧の谷場となり小さな低気圧が頻繁に通過するようになりました。また、7月の終わりから東シベリア付近で偏西風が北へ蛇行するようになり、ブロッキング高気圧が発生して気圧系の動きが遅くなりました。これに伴って、地上ではオホーツク海高気圧が発生し、北日本から東日本の太平洋側では北東からの冷たく湿った空気が入りやすくなりました。
これらの影響で、日立市では上旬から中旬にかけて曇りや雨の日が多くなりました。19日に上層の気圧の谷が関東地方を通過した後、日本の南で太平洋高気圧が強まり本州付近をおおうようになりました。このため、日立市でも気温が上がり晴れ間が広がるようになりました。しかし、高気圧の北への張り出しが弱く、偏西風が本州上まで南下することがあり、湿った空気の入りやすい状態が続きました。このため、晴れても1日の日照時間が6時間を超えることがありませんでした。
オホーツク海高気圧の張り出しが強かったことから、日立市では北東の風の吹く割合が多くなりました。平年の8月における風向頻度において、北北東から東北東の風の割合は30%、南南西から西南西の風の割合は23%です。それに対して、今年の8月の風向頻度は、北北東から東北東の風の割合が59%、南南西から南西の風の割合は7%と、北東系の風の割合が平年の倍近くありました。
月を通して曇りや雨の日が多くなったことから、月の日照時間は64.2時間(平年比37%)と平年よりかなり少なくなりました。これは、日立市役所観測開始以来1998年8月の63.3時間に次いで2番目に少ない記録でした。また、全天日射量も368.5MJ/m2(平年比)と観測開始以来1993年8月の351.2MJ/m2に次いで2番目に少ない記録となりました。
●8月の日立市役所における風向頻度分布と日照時間の年推移
●8月の日照時間(時間)と全天日射量(MJ/m2)の記録
日照時間 順位 年 日照時間 1 1998 63.3 2 2017 64.2 3 1953 67.3 4 1988 75.2 5 1993 82.6 平年値 172.7
不照日数 順位 年 日数 1 1953 14 2 1993 12 3 2017 9 3 2015 9 3 1991 9 3 1964 9
全天日射量 順位 年 最低気温 1 1993 351.2 2 2017 368.5 3 1998 370.7 4 1991 387.9 5 2001 428.6 平年値 501.0 ※順位は数値の少ない方または多い方からで、1953年〜2017年の統計
オホーツク海高気圧が張り出した11日と太平洋高気圧におおわれた23日の天気図と気象衛星画像を比較すると、上層の大気の流れの違いが明らかです。11日の高層天気図では、太平洋高気圧は沖縄の南にあって西へ張り出しています。一方、日本付近では偏西風が南北に蛇行し、本州付近の上層では西南西からの流れとなって湿った空気が入りやすくなっています。これに対応して、地上ではオホーツク海高気圧が北日本から東日本へ張り出すとともに、関東の南から西日本にかけて気圧の谷場となっています。
それに対して23日の高層天気図を見ると、東シナ海に上層の高気圧があって西日本から東日本をおおっており、本州付近の上層では西北西からの流れとなっています。これに対応して、地上では高気圧が西日本から東日本へ張り出すとともに、関東地方以西の太平洋側を中心に晴れて気温が高くなりました。ただ、通常の夏型の気圧配置と異なり、高気圧の北側を回り西から湿った空気が流れ込んだため、東北地方の日本海側から北陸地方にかけて雲が広がりました。
●参考:8月11日10時の気象衛星可視画像
●参考:8月11日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:8月23日10時の気象衛星可視画像
●参考:8月23日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
作成日 2017/09/11
名前 日立市天気相談所