◇日照時間が、観測開始以来最も少なくなる

　引き続き、日本の南では太平洋高気圧の西への張り出しが強い状態が続くとともに、日本の西側で偏西風が南へ蛇行して本州付近は西谷の場となりました。このため、高気圧の縁を回る湿った空気が南西から流れ込みやすく、前線が本州付近に停滞しました。さらに、偏西風から分離した寒冷渦が頻繁に通過したことから、月を通して曇りや雨の日が続きました。この結果、月の日照時間は22.3時間（平年比17％）と、平年よりかなり少なくなりました。これは、7月の日照時間としては、観測開始以来最も少ない記録です。また、雨の日が多かったことから、月の降水量は197.0mm（平年比121％）と平年よりやや多くなりました。気温は、中旬以降前線が本州南岸から南海上に停滞し、冷たい北東気流が入ったことから、下旬にかけて平年より気温の低い日が続きました。このため、月平均気温は22.1℃と平年より0.9℃低くなりました。

7月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温（℃） 22.1 23.0 月降水量（mm） 197.0 162.5 月日照時間（時間） 22.3 130.2

旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 23.1 21.5 中旬 20.7 23.0 下旬 22.5 24.4

旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 6.1 35.8 中旬 9.9 36.6 下旬 6.3 57.7

　●7月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

　●7月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移

◇7月の日立市内の気温と降水量

　7月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は西部支所所が22.4℃と最も高くなりました。一方、標高の高い本山は20.7℃と最も気温が低くなりました。なお、沿岸部にある十王交流センターから南部支所の月平均気温は21.4℃〜22.1℃で、市内7地点の平均気温の差は小さくなりました。市内7地点の平均気温は21.7℃で、水戸の月平均気温22.9℃よりも1.2℃低くなりました。日立市内の平均気温との差は、6月とほぼ同じになっています。また、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、6月に引き続いて全地点とも水戸より低くなりました。

　一方、月の降水量の市内平均は221.9mmで、6月の平均降水量214.4mmとほぼ同じになりました。観測地点の間の差は6月よりも大きくなり、最も降水量の多かった本山の289.5mmに対して、最も少なかった南部支所は173.5mmと1.6倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量221.9mmに対して、水戸の月降水量は228.5mmとほぼ同じになりました。

　●7月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果

7月の気温（℃）の記録 観測地点 平均 気温 最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 22.1 30.8 02 14:22 16.7 16 00:32 十王交流センター 21.9 30.7 02 14:54 16.7 15 23:59 北部消防署 21.4 30.8 02 14:42 16.4 16 00:22 本山（中学校跡） 20.7 27.5 19 14:08 15.0 15 22:45 西部支所 22.4 29.8 19 14:01 16.5 16 01:37 諏訪広場 21.6 29.8 02 15:12 16.1 16 00:18 南部支所 22.1 31.5 02 15:03 16.6 16 00:13 上記7地点の平均 21.7 - - - - 日立会瀬 22.1 30.6 02 14:35 16.8 16 00:41 水戸（金町） 22.9 31.7 02 13:26 17.0 16 02:40

7月の降水量（mm）の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 197.0 38.0 04 16.0 01 01:17 十王交流センター 223.5 47.5 04 17.0 01 01:53 北部消防署 247.5 50.0 04 17.5 01 01:35 本山（中学校跡） 289.5 60.0 01 26.0 01 01:48 西部支所 229.5 57.0 01 28.0 01 01:43 諏訪広場 192.5 32.5 04 15.0 25 05:55 南部支所 173.5 26.5 04 18.5 25 05:50 上記7地点の平均 221.9 - - - - 日立会瀬 210.0 38.5 04 14.0 25 05:54 水戸（金町） 228.5 48.0 25 39.0 25 05:29

　※日立会瀬と水戸（金町）は気象庁の観測地点。

◇寒冷渦が頻繁に通過し、天気がぐずつく

　初めに述べたように、今年の7月は月を通して日本の西側で偏西風が南へ蛇行し、本州付近は西谷の場が続くとともに前線が本州付近に停滞しました。また、日本の南海上で太平洋高気圧が南西へ張り出し、、高気圧の縁を回って南から湿った空気の入りやすい状態が継続しました。さらに、偏西風から分離した寒冷渦が頻繁に通過し、そのたびに前線の活動が活発になりました。このため、北海道と沖縄を除いて曇りや雨の日が多くなり、月の日照時間は平年より少なくなりました。東日本日本海側、東日本太平洋側、西日本日本海側、西日本太平洋側の月間日照時間はそれぞれ平年比40％、41％、50％、57％となり、7月としては1946年の気象庁の統計開始以来第1位の寡照となりました。特に、寒冷渦の影響を受けやすかった関東地方では、平年比が30〜40％前後の地点が多く、全国の中で最も日照時間が少なくなりました。

　関東地方の中でも、茨城県は日照時間の平年比が20〜30％前後と特に少なくなりました。その中でも、日立会瀬は月の日照時間が24.8時間、平年比が18％と最も少なくなりました。日立市役所の7月の日照時間は22.3時間、平年比17％とさらに少なくなりました。これは、7月の日照時間としてはこれまでで最も少なかった1988年の23.8時間を抜いて、観測史上第1位の少ない記録となりました。また、7月の全天日射量も287.3MJ/m2（平年比61％）と、1982年の観測開始以来最も少ない記録でした。ただ、曇りや雨の日でも一時的に晴れ間の出る日が多かったため、不照日数（日照時間0.2時間未満の日の日数）は15日と、冷夏だった1988年の19日、1993年の18日よりは少なくなりました。

　また、雨の降る日が多かったことから、降水量1mm以上の日数は25日と1988年7月の23日を抜いて、観測史上最も多くなりました。さらに、月平均湿度も91％と1955年7月の89％を抜いて観測史上第1位の記録となりました。なお、月の日照時間と降水量1mm以上の日数及び月平均湿度は、累年でも記録を更新して観測史上第1位の記録となりました。

　●7月の日照時間と全天日射量、降水日数及び湿度の記録

月日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 2020 22.3 2 1988 23.8 3 1993 35.9 4 1998 49.5 5 1990 53.7 平年値 130.2

不照日数 順位 年 不照日数 1 1988 19 2 1993 18 3 2020 15 3 1995 15 5 1974 14 平年値 7.8

全天日射量(MJ/m2) 順位 年 全天日射量 1 2020 287.3 2 1993 319.1 3 1988 340.4 4 2006 348.9 5 1995 383.4 平年値 471.3

1mm以上の降水日数 順位 年 降水日数 1 2020 25 2 1983 23 3 1974 19 4 2003 18 5 2006 17 平年値 12.1

月平均湿度(％) 順位 年 平均湿度 1 2020 91 2 1955 89 3 1993 88 4 2006 87 5 1984 87 平年値 84

　※順位は数値の小さい方及び日数の少ない方からで、1953年〜2020年の統計（全天日射は1981年から）

　●7月の日立市役所における日照時間の年推移と2020年7月の茨城県内の日照時間

　●7月の全国の日照時間の平年比分布

※気象庁の「7月の天候」から

　●参考：2020年7月3日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図及び10時の気象衛星可視画像と09時の水蒸気画像

　3日に華北へ進んできた上層の気圧の谷は動きが遅く、5日にかけて日本海をゆっくりと東北東へ進み、本州の上層では西南西からの流れが続いた。この気圧の谷が北海道の北へ進んだ後、6日には次の上層の気圧の谷が華北へ進んで来て西南西からの流れが続いた。このため、日立市では天気がぐずつき、1日〜9日にかけて1mm以上の降水の日が続いた。

　●参考：2019年7月17日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図及び10時の気象衛星可視画像と09時の水蒸気画像

　16日に寒冷渦が北海道を通過した後、朝鮮半島付近で次の寒冷渦が発生して日本海をゆっくりと東北東へ進み、本州付近では西南西からの流れが続いた。このため、日立市では天気がぐずつき、12日から19日にかけて1mm以上の降水の日が続いた。

　●参考：2019年7月29日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図及び10時の気象衛星可視画像と09時の水蒸気画像

　28日に中国東北を南下してきた寒冷渦が29日から31日にかけて沿海州から日本海をゆっくりと東へ進んだ。本州付近では西南西からの流れが続いたため、日立市では天気がぐずつき、25日から31日にかけて1mm以上の降水の日が続いた。

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作成日 2020/08/14
名前 日立市天気相談所