◇気温が下がらなかった8月

 7月から一転して、日本付近で偏西風が平年より北に偏って流れたことから、太平洋高気圧が勢力を強めて北西へ張り出し本州付近をおおいました。このため、強い日射や下降流による昇温、高気圧周辺の南からの暖かな空気の流入により、晴れて厳しい暑さの日が多くなりました。この結果、月平均気温は26.8℃と平年より1.9℃高くなりました。これは、8月の平均気温としては2010年の27.1℃、1994年の26.9℃に次いで観測史上第3位の高い気温です。また、月を通して晴れる日が続いたことから、月の日照時間は289.2時間(平年比167%)と、平年よりかなり多くなりました。これは、8月の日照時間としては1978年8月と並んで観測史上第1位の多い記録であるとともに、累年の記録でも1978年7月の304.7時間に次いで第2位の記録です。一方、晴れる日が多くて雨がほとんど降らなかったことから、月降水量は8.5mm(平年比6%)と平年よりかなり少なくなりました。

8月の気象観測値
観測要素 観測値 平年値
月平均気温(℃) 26.8 24.9
月降水量(mm) 8.5 145.6
月日照時間(時間) 289.2 172.7
旬平均気温(℃)
順位 観測値 平年値
上旬 25.7 25.2
中旬 28.1 24.9
下旬 26.7 24.7
旬日照時間(時間)
順位 観測値 平年値
上旬 94.7 60.6
中旬 95.2 54.3
下旬 99.3 57.9

 ●8月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

2020年8月の日立市役所における日平均気温の推移 2020年8月のつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

 ●8月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移

2020年8月の日立市役所における日最高気温の推移 2020年7月の日立市役所における日照時間の推移

 ●日立市役所における8月の気象の記録

平均気温(℃)
順位 気温
1 2010 27.1
2 1994 26.9
3 2020 26.8
4 1999 26.8
5 1973 26.6
平年値 24.9
日照時間(時間)
順位 日照時間
1 2020 289.2
1 1978 289.2
3 1985 284.6
4 2012 275.9
5 1975 256.2
平年値 172.7
降水量(mm)
順位 降水量
1 1984 3.0
2 2010 7.5
3 2020 8.5
4 1996 26.0
5 2012 30.5
平年値 145.6

 ※順位は数値の大きい方または小さい方からで、1953年〜2020年8月までの統計。


◇8月の日立市内の気温と降水量

 8月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は日立市役所と十王交流センターがともに26.8℃で最も高くなりました。一方、山間部にある本山は24.7℃と最も気温が低くなりました。山間部にあるもう一つの観測地点である西部支所は、本山よりも標高が低く盆地状の地形も影響して日中の気温が高くなったことから、市内平均よりも気温が高くなりました。市内7地点の平均気温は26.2℃で、水戸の月平均気温27.4℃よりも1.2℃低くなりました。日立市内の平均と水戸との差は、7月と同じになっています。また、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、7月に引き続いて全地点とも水戸より低くなりました。

 一方、月の降水量の市内平均は16.7mmで、7月の平均降水量221.9mmよりも200mm近く少なくなりました。観測地点の間の差は7月よりも大きなり、最も降水量の多かった諏訪広場の31.0mmに対して、最も少なかった南部支所は5.5mmと5.6倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量16.7mmに対して水戸の月降水量は54.0mmと、40mm近く多くなりました。

 ●8月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果

8月の気温(℃)の記録
観測地点 平均
気温
最高気温 最低気温
気温 日時 気温 日時
日立市役所 26.8 37.6 11 13:16 19.6 01 04:04
十王交流センター 26.8 36.8 11 11:45 19.6 01 04:26
北部消防署 26.1 33.9 11 16:10 19.5 01 05:01
本山(中学校跡) 24.7 35.0 11 14:13 17.5 03 05:13
西部支所 26.3 36.5 11 15:27 17.7 03 05:01
諏訪広場 25.9 36.3 11 14:32 19.0 03 05:00
南部支所 26.7 37.7 11 13:51 19.7 03 04:21
上記7地点の平均 26.2 -

-

-

-

日立会瀬 26.7 36.4 11 12:57 19.7 01 04:44
水戸(金町) 27.4 37.6 11 13:23 20.3 03 05:24
8月の降水量(mm)の記録
観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量
降水量 降水量 日時
日立市役所 8.5 5.0 13 5.0 13 18:23
十王交流センター 13.5 4.0 31 3.5 31 19:50
北部消防署 11.0 8.0 31 7.5 31 19:54
本山(中学校跡) 17.5 5.5 31 5.0 13 17:56
西部支所 30.0 17.0 13 16.5 13 17:39
諏訪広場 31.0 28.5 13 28.5 13 18:11
南部支所 5.5 4.5 13 4.5 13 18:32
上記7地点の平均 16.7 -

-

- -
日立会瀬 12.0 10.0 13 10.0 13 18:18
水戸(金町) 54.0 31.5 13 25.0 13 19:53

 ※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。


◇暖気におおわれ、最低気温の高い日が続く

 今年の7月は日本の西側で偏西風が南へ蛇行することが多く、本州付近では西谷の場となる気圧配置が続きました。このため、太平洋高気圧は日本の南を西へ張り出し、高気圧の縁を回る湿った空気が南西から流れ込みやすく、月を通して曇りや雨の日が続きました。しかし、8月に入ると一転して偏西風は日本付近で北へ蛇行するとともに、平年より北を流れるようになりました。これに伴って、太平洋高気圧が北西へ張り出し本州付近をおうようになりました。中旬に入ると大陸からも高気圧が入り出してき、本州付近は背の高い高気圧におおわれ、強い日射や下降流による昇温、高気圧周辺の南からの暖かな空気の流入により、気温がかなり高くなりました。

 関東地方では南西の風が吹きやすかったため、内陸部を中心に最高気温が35℃を超えるようになるとともに、夜間から朝にかけても気温が下がりにくくなって最低気温が25℃を超える(熱帯夜)地点が多くなりました。7月から8月にかけての関東地方における熱帯夜の地点数の日推移をみると、7月は熱帯夜となる地点はほとんどありませんでした。しかし、太平洋高気圧が強まった8月5日以降は熱帯夜になる地点が20地点を超えるようになりました。特に、10日から18日にかけてと27日から30日にかけては、全観測地点の半数近い40地点近くで熱帯夜となりました。

 日立市役所でも、8月10日から20日にかけてと27日から30日にかけて熱帯夜となる日があり、月合計で12日の熱帯夜となる日がありました。これは、8月の熱帯夜の日数としては1994年と並んで観測史上最も多くなりました。なお、日最低気温の月平均は24.0℃で、2010年の24.4℃に次いで観測史上2番目の高い記録でした。2010年は、8月下旬になっても気温が下がらなかったため、月平均気温は今年よりも高くなりました。

 なお、今年の8月はこれまでに比べて気温の下がり方が鈍く、最低気温の高い日が多くなりました。8月29日には最低気温27.0℃を記録し、2007年8月16日に記録した26.9℃を抜いて、観測史上最も高い日最低気温となりました。また、日最低気温の高い方から第5位までの記録の中に、8月29日を含めて28日、17日、12日の4日が入りました。

 ●参考:2020年7月と8月の500hPa高度・偏差図

 ※実線は等高度線、破線は等偏差線で陰影域は高度の負偏差を表す。

 ●2020年7月から8月の関東地方における熱帯夜の地点数の推移

 ●日立市役所における8月の気温の記録

月平均最低気温(℃)
順位 平均気温
1 2010 24.4
2 2020 24.0
3 1999 24.0
4 2019 23.9
5 1994 23.8
平年値 22.1
熱帯夜の日数
順位 日数
1 2020 12
1 1994 12
3 2010 11
4 2019 10
5 1973 9
平年値 1.5

 ※順位は数値の大きい方または小さい方からで、1953年〜2020年8月までの統計。

 ●8月の日立市役所における日最低気温の推移と月平均最低気温の年推移

 ●日立市役所における日最低気温(℃)の記録

順位 最低気温 年月日 時刻 気象概況
1 27.0 2020/08/29 03:52 上層から下層が暖気におおわれる
2 26.9 2020/08/28 05:12 上層から下層が暖気におおわれる
2 26.9 2020/08/17 05:41 下層が暖気におおわれるとともに西北西の風によるフェーン現象
2 26.9 2007/08/16 05:10 上層の高気圧が強まり、下層へ暖気が降下してくる
5 26.7 2020/08/12 04:34 下層への暖気の流入
6 26.6 2019/08/09 01:22 北海道の低気圧に吹き込む南西の風によるフェーン現象
6 26.6 1997/08/10 05:08 日本海の低気圧に吹き込む南西の風によるフェーン現象

 ※順位は気温の高い方からで、1953年から2020年8月31日までの統計。


◇8月29日、日最低気温27.0℃と観測史上最も高い気温を記録

 26日、台風第8号が東シナ海から黄海を北上し、27日には朝鮮半島へ上陸して中国東北区へ進みました。その後、日本のすぐ東で太平洋高気圧が勢力を強めて、本州付近へ張り出してきました。台風の持ち込んだ暖気と高気圧による下降気流の影響で、27日から30日にかけて本州付近では気温の高い状態が続きました。特に、関東地方では28日の午後から南風が入るようになったため、28日の夜から29日の朝にかけて気温が下がりませんでした。つくばにおける高層観測の結果を見ると、高さ1500m付近(850hPa面)の気温は27日09時の18.8℃から29日09時には21.2℃に、5500m付近(500hPa面)の気温も27日09時の-3.6℃から29日09時には-0.4℃まで上がり、上層から下層にかけて暖気におおわれたことを示しています。

 この暖気の影響で、29日の関東地方各地の最低気温は、東京都羽田で28.1℃、千葉県千葉で27.8℃、東京都江戸川臨海で27.7℃など、86地点中43地点で最低気温が25℃以上の熱帯夜となりました。茨城県内でも、日立会瀬で26.5℃、鹿嶋で26.1℃、土浦で26.0℃を記録するなど、14観測点のうち5地点で最低気温が25℃以上となりました。

 日立市役所における気温の推移を見ると、27日の夕方から南西の風に変わったため、28日朝にかけて気温はあまり下がらず、26℃前後で推移しました。さらに、28日の夜から29日の朝にかけては南西の風がやや強く吹いたため、28日よりも気温は下がらず27℃前後で推移しました。29日の夜になっても気温は28℃までしか下がらなかったため、29日の最低気温は03時52分に記録した27.0℃になりました。これは、2007年8月16日に記録した26.9℃を抜いて、観測開始以来最も高い最低気温です。

 日立市役所以外の地点では、十王交流センター、北部消防署及び諏訪広場でも日最低気温が25℃以上になりました。一方、山間部の本山と西部支所では最低気温が25℃未満となりました。南部支所は、明け方に西寄りの風が一時的に弱まったことから、最低気温は24.6℃とわずかに25℃を下回りました。

 ●8月29日の気温(℃)

地点 日平均気温 最高気温 最低気温
気温 平年値 気温 時刻 平年値 気温 時刻 平年値
日立市役所 29.4 24.5 32.3 09:32 28.3 27.0 03:52 21.7
十王交流センター 29.5 33.2 08:45 26.6 01:37
北部消防署 28.9 31.5 12:13 26.2 05:22
本山(中学校跡) 27.5 33.6 13:29 24.3 03:43
西部支所 28.3 35.3 14:09 22.5 05:38
諏訪広場 28.6 32.5 13:18 25.9 04:07
南部支所 28.9 33.2 12:15 24.6 05:34
日立会瀬 29.1 32.5 09:58 26.5 04:22
水戸(金町) 30.4 24.6 36.4 14:52 28.9 25.2 05:23 21.3
つくば 29.5 24.9 35.3 13:49 29.5 24.8 05:01 21.2

 ※日立会瀬、水戸(金町)、つくばは、気象庁の観測地点。

 ●8月28日から29日の気温の推移(10分値)

 ●8月28日から29日の風向と風速の推移(日立市役所:10分値)

 ●参考:8月29日03時のアメダスによる気温と風の分布

 ●参考:8月29日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図


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作成日 2020/09/14
名前 日立市天気相談所