◇中旬から気温が高くなる
上旬は、高気圧と低気圧が交互に通過して、天気は数日の周期で変化しました。中旬に入ると、日本の南で太平洋高気圧が勢力を強めて本州付近まで張り出すとともに、モンゴル付近から華中にかけてが上層の気圧の谷場となり、本州付近の上層では西南西からの流れが続くようになりました。このため、本州付近には暖かく湿った空気が入るようになり、曇りや雨の日が続きました。23日に寒冷渦が北日本を東へ進んだ後、再び天気は数日の周期で変化するようになりました。中旬に天気がぐずついたものの、上旬に晴れる日が続いたことから、月の日照時間は164.9時間(平年比96%)と平年並みになりました。一方、本州付近での低気圧の発達が弱く大雨となる日がなかったことから、月降水量は114.0mm(平年比72%)と平年より少なくなりました。気温は、時々寒冷渦が進んで来て気温が下がるときがあったものの、南から暖かい空気におおわれる日が多く、月平均気温は17.6℃と平年より1.0℃高くなりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 17.6 16.6 月降水量(mm) 114.0 158.7 月日照時間(時間) 164.9 172.0
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 16.6 15.5 中旬 17.8 16.3 下旬 18.3 17.8
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 71.3 56.9 中旬 34.0 54.3 下旬 59.6 60.8
●5月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●5月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
◇5月の日立市内の気温と降水量
5月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は日立市役所と最も北に位置する十王交流センター及び最も南の南部支所が共に17.6℃で最も高くなりました。反対に、山間部にある本山は気温の低い方になっています。なお、市内7地点の平均気温は16.9℃で、水戸の月平均気温18.1℃よりも1.2℃低くなりました。4月と比べると、水戸と日立市役所の気温差は大きくなっており、水戸の方が暖候期へ向けての気温の上昇が大きいことを示しています。なお、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、全地点とも水戸より低くなりました。
一方、月の降水量の市内平均は110.6mmで、4月の平均降水量217.5mmより100mmほど少なくなりました。観測地点の間の差は4月とほぼ同じで、最も降水量の多かった本山の144.0mmに対して、最も少なかった南部支所は87.5mmと1.6倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量110.6mmに対して、水戸の月降水量は101.5mmとほぼ同じになりました。
●5月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
5月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 17.6 26.0 28 11:27 6.4 03 04:51 十王交流センター 17.6 26.0 28 10:16 6.3 03 04:14 北部消防署 17.2 25.2 17 14:50 6.4 03 03:30 本山(中学校跡) 15.1 24.8 09 11:41 2.9 03 02:54 西部支所 16.7 27.4 14 12:51 3.9 03 05:02 諏訪広場 16.5 25.7 28 11:38 4.6 03 04:57 南部支所 17.6 25.3 28 12:21 6.1 03 04:31 上記7地点の平均 16.9 - -
- -
日立会瀬 17.6 26.2 28 11:32 5.6 03 04:43 水戸(金町) 18.1 28.7 09 12:49 6.5 04 04:53
5月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 114.0 19.0 27 13.0 02 15:09 十王交流センター 108.0 23.5 21 6.5 21 10:49 北部消防署 108.5 22.5 21 6.5 21 10:45 本山(中学校跡) 144.0 25.5 21 8.0 02 14:55 西部支所 102.0 19.0 27 6.0 21 10:40 諏訪広場 110.0 20.5 27 5.0 21 10:45 南部支所 87.5 20.5 27 4.5 31 22:20 上記7地点の平均 110.6 - -
- - 日立会瀬 114.0 21.0 27 8.5 02 15:14 水戸(金町) 101.5 20.5 27 11.0 02 16:02
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇中旬後半から下旬前半にかけて天気がぐずつく(15日〜23日)
14日に移動性高気圧が日本海から関東地方の東へ進んだ後、日本の西側で上層の偏西風が南へ蛇行するようになり、本州の上層では西南西からの流れが続くようになりました。さらに、日本の南で太平洋高気圧が北へ張り出すようになり、高気圧の縁を回る湿った空気が西南西からの流れに沿って本州付近へ流れ込んできました。このため、15日以降は曇りや雨の日が続くようになりました。さらに、21日から23日にかけては寒冷渦が日本海から北日本を通過して北海道の東へ進んだため、寒冷渦に伴う寒気の影響で大気の状態が不安定となり、雨の降りやすい天気が続きました。24日以降は偏西風が本州付近を西から東へ流れるようになり、天気は周期的に変化するようになりました。
全国的に天気がぐずついたことから、沖縄と三陸沿岸の一部を除いて、全国的に月の日照時間は平年より少なくなりました。特に、北日本と東日本の日本海側では、平年よりかなり少なくなりました。また、西日本では停滞した活発な前線の影響で、降水量が平年よりかなり多くなりました。一方、関東地方から東北地方の太平洋側では、前線の影響が少なく、本州付近での低気圧の発達が弱かったことから、月の降水量は平年並みから少なくなりました。
過去7年間の観測結果を見ると、最近の日立市の5月は晴れて好天の続く年が多く、月の日照時間が平年を下回ったのは2016年、2018年及び2021年の3回でした。一方、月の日射量が平年を下回ったのは、2011年5月の515.4MJ/m2以来10年ぶりでした。例年、5月に天気がぐずつくときは北からオホーツク海高気圧が張り出してきて、冷たく湿った北東の風が入って下層雲が広がります。このため、気温が低くなる一方で、薄い下層雲のため日射が少し出ます。
それに対して、今年の5月は太平洋高気圧が一時的に北へ勢力を張り出すとともに、日本の西側が上層の気圧の谷となって、上層で西南西からの流れが強まり暖かく湿った空気が流れ込んで天気がぐずつきました。このため、気温が高くなるとともに、下層だけでなく中層から上層まで雲が広がって日射が少なくなりました。
●5月の降水量と日照時間の平年比及びつくばにおける500hPa面高度の推移
今年の5月のつくばにおける500hPa面高度は、中旬に5800m前後まで上昇し、一時的に太平洋高気圧が強まったことを示しています。
※気象庁の「5月の天候」から
●5月14日から23日の天気概況(日立市役所)
日 | 天気 | 日照 (時間) |
降水量 (mm) |
14 | 曇り 昼前から夕方 晴れ | 11.1 | 0..0 |
15 | 曇り | 0.3 | - |
16 | 曇り 朝から昼 晴れ 昼過ぎから時々雨 | 6.1 | 0.5 |
17 | 雨 夜時々曇り | 0.0 | 1.0 |
18 | 曇り時々雨 | 0.0 | 4.0 |
19 | 曇り時々雨 夜 曇り | 0.0 | 5.5 |
20 | 曇り 夕方から雨 | 3.4 | 6.5 |
21 | 雨 昼前から夕方 時々曇り | 0.0 | 17.0 |
22 | 雨 昼過ぎから夕方 曇り | 0.0 | 15.5 |
23 | 明け方まで雨 朝から曇り時々晴れ | 4.6 | 1.5 |
●最近7年間の5月の日照時間と全天日射量の記録(日立市役所)
年 | 日照時間(時間) | 不照日数 (日) |
全天日射量(MJ/m2) | ||
月の日照時間 | 平年比(%) | 月の日射量 | 平年比(%) | ||
2015 | 230.5 | 134.0 | 4 | 703.9 | 128.8 |
2016 | 165.9 | 96.4 | 8 | 602.1 | 110.2 |
2017 | 175.7 | 102.1 | 9 | 595.7 | 109.0 |
2018 | 153.6 | 89.3 | 6 | 566.8 | 103.7 |
2019 | 259.9 | 151.1 | 2 | 687.2 | 125.8 |
2020 | 180.8 | 105.1 | 7 | 558.2 | 102.2 |
2021 | 164.9 | 95.9 | 7 | 522.9 | 95.7 |
平年値 | 172.0 | − | 5.8 | 546.4 | − |
●5月の関東地方における不照地点数の日推移
●参考:5月14日、18日及び22日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:5月14日から22日の15時の気象衛星可視画像
15日から22日にかけて、関東地方には雲がかかり続けた。
作成日 2021/06/14
名前 日立市天気相談所