◇上層に寒気が入り、天気のぐずつくときがある
移動性高気圧におおわれやすかったため、例年に比べて晴れる日が多くなりました。しかし、上層の偏西風が日本付近で南へ蛇行し、偏西風から分離した動きの遅い寒冷渦が本州付近をゆっくりと移動することが多くありました。このため、上層の寒気の影響で大気の状態が不安定となり、中旬後半から下旬前半にかけては、天気のぐずつくときがありました。この結果、月の日照時間は135.9時間(平年比110%)と、平年並よりやや多くなりました。一方、本州付近での低気圧の発達が弱く、大雨になることがなかったことから、月降水量は96.0mm(平年比62%)と、平年より少なくなりました。月の前半は南から下層へ暖気が入り、気温が平年を上回る日が続いたことから、月平均気温は20.9℃と平年より1.1℃高くなりました。これは、6月の気温としては観測開始以来第6位の高い気温です。
6月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 20.9 19.8 月降水量(mm) 96.0 155.9 月日照時間(時間) 135.9 123.0
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 20.6 18.6 中旬 20.8 19.8 下旬 21.2 21.0
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 50.9 51.9 中旬 42.5 38.3 下旬 42.5 32.8
●6月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●6月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
◇6月の日立市内の気温と降水量
6月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は日立市役所と最も南に位置する南部支所が共に20.9℃で一番高くなりました。反対に、山間部にある本山は最も気温が低くなりました。市内7地点の平均気温は20.2℃で、水戸の月平均気温21.5℃よりも1.3℃低くなりました。水戸と日立市役所の気温差は、5月とほぼ同じでした。なお、日立市内7か所の観測地点における平均気温は、5月に引き続いて全地点とも水戸より低くなりました。
一方、月の降水量の市内平均は116.3mmで、5月の平均降水量110.6mmとほぼ同じでした。観測地点の間の差は5月とほぼ同じで、最も降水量の多かった本山の156.5mmに対して、最も少なかった南部支所は90.5mmと1.7倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量1164.3mmに対して、水戸の月降水量は89.0mmと20mm近く少なくなりました。
●6月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
6月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 20.9 27.1 08 13:12 14.5 01 04:53 十王交流センター 20.8 27.4 08 13:04 14.3 01 04:37 北部消防署 20.3 25.4 08 13:35 14.5 01 04:50 本山(中学校跡) 18.5 26.8 08 11:50 11.7 01 05:00 西部支所 20.2 29.0 08 12:35 12.6 02 02:44 諏訪広場 19.8 26.6 08 13:46 13.2 01 04:57 南部支所 20.9 27.5 08 11:21 14.8 18 04:28 上記7地点の平均 20.2 - -
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日立会瀬 20.8 26.5 08 13:14 14.6 01 04:49 水戸(金町) 21.5 28.8 08 11:18 15.0 18 04:37
6月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 96.0 42.5 04 11.5 04 18:52 十王交流センター 135.5 72.5 04 18.5 04 18:42 北部消防署 117.5 54.0 04 19.0 04 18:55 本山(中学校跡) 156.5 73.0 04 15.0 04 18:48 西部支所 126.0 45.5 04 15.0 04 18:32 諏訪広場 92.0 33.0 04 9.5 04 19:04 南部支所 90.5 27.0 04 9.5 04 19:27 上記7地点の平均 116.3 - -
- - 日立会瀬 99.0 36.0 04 10.5 04 19:12 水戸(金町) 89.0 28.0 04 7.5 04 20:02
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇平均気温は高かったものの、最高気温は上がらなかった
最初に述べたように、今年の6月は偏西風が日本付近で南へ蛇行し、この影響で太平洋高気圧の北への張り出しは弱くなりました。ただ、月の前半は下層へ温かい空気が入ったため、月平均気温は20.9℃と最近10年間では昨年(2020年)の21.1℃に次いで高い気温となりました。しかし、太平洋高気圧の張り出しがなかったことから、月の最高気温は27.1℃(6月8日)までしか上がりませんでした。これは、6月の最高気温としては1995年6月の25.3℃以来の低い気温でした。
また、その年に日最高気温が初めて30℃以上となる日(真夏日初日)の平年の日は6月28日ですが、今年は6月30日現在、まだ真夏日となった日はありません。なお、2015年以降は真夏日初日が平年より早い年と遅い年が、交互に現れることが続いています。
●月平均気温の順位と過去7年間の気温の記録(日立市役所)
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※6月30日現在、日立市役所では2021年の真夏日を観測していない。
※月平均気温の順位は高い方からで、1953年〜2021年6月までの統計。
●参考:2021年6月8日と2020年6月10日15時の地上天気図と21時の500hPa面高層天気図
昨年(2020年)6月10日と今年6月8日の月最高気温を記録したときの気圧系の様子を比べてみると、上層の偏西風の流れが大きく異なっていました。2020年6月10日は、偏西風が北緯40度線以北を流れており、日本付近では北に蛇行して気圧の尾根となっていました。これに伴って、大陸から進んできた下層の暖気塊が、北日本から東日本へ流れ込みました。また、上層の気圧の尾根の東進に伴って、高気圧が日本海から関東地方の南東へ進み、北日本から東日本をおおいました。このため、9日、10日と全国的に気温が高くなりました。
特に10日の関東地方では、南西の風がやや強く吹くいて晴れたため、内陸部を中心に最高気温が30℃を超えました。関東地方各地の最高気温は、栃木県佐野で35.0℃、群馬県桐生で34.9℃、茨城県大子で34.8℃など、86地点中57地点で最高気温が30℃以上となりました。茨城県内でも、上記大子の他、古河で最高気気温33.9℃、笠間で33.1℃を記録するなど、14観測点のうち北茨城と龍ヶ崎を除く13地点で最高気温が30℃を超えました。また、7地点で今年の最高気温(2020年6月30日現在)となりました。
一方、今年の6月8日は偏西風が日本付近で大きく南へ蛇行して北40度線より南を流れ、北日本から東日本は上層の気圧の谷となっていました。これに伴なって、北からの寒気が本州上に入り、東北から関東地方では午後に雷雨となった所がありました。
8日の関東地方の沿岸部では東寄りの風が入って、気温はあまり上がりませんでした。一方、内陸部では晴れて風が弱かったことから、最高気温が30℃を超えた所がありました。関東地方各地の最高気温は、埼玉県鳩山で33.1℃、東京都練馬で32.9℃、群馬県上里見で32.8℃を記録するなど、86地点中35地点で最高気温が30℃以上となりました。茨城県内でも、土浦と龍ケ崎で最高気温30.9℃、古河で30.7℃を記録するなど、14観測点のうち5観測点で最高気温が30℃を超えました。
●参考:2021年6月8日と2020年6月10日の気象衛星可視画像と水蒸気画像
作成日 2021/07/14
名前 日立市天気相談所