平成13年10月県議会一般質問 公明党の井手義弘です。
はじめに、米国における同時多発テロ事件で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、いまだ行方の分からない被害者の方々と、ご家族、関係者の皆さまに対し、心よりのお見舞いを申し上げるものであります。実は、私の高校、大学時代の先輩が、出張先のボストンから帰路、今回の同時テロ事件の犠牲者となりました。その娘さんが、「テロの犯人は憎くて憎くてしょうがない。しかし、それ以上に報復攻撃によって、多くの犠牲者が出るのはとても悲しいことです。父は、そんな悲しみの拡大を望んでいないと思います」と語ったと伝えられています。国際社会が団結して、テロを絶対に許さない体制を作ることは大切です。そしてそれ以上に、文化や宗教の壁を越えた対話が今こそ必要であると感じます。ある詩人が「憎悪の劫火には、対話の洪水を」と訴えました。このことばを、私どもは、アメリカ、イギリスなどによる報復攻撃が始まったこの時にあたり、今一度、深くかみしめるべきだと思います。
さて、今回の一般質問では、茨城県のIT戦略を中心に、橋本知事並びに関係部長、教育長、警察本部長に、質問をさせていただきます。明確なご答弁を期待いたします。
橋本知事におかれましては、三期目に見事な得票で当選されました。厳しい財政状況の中、県民の声に謙虚に耳を傾けながら、着実に県政を推進されてこられました知事の実績が高く評価されたものと、心から敬意を表します。
今、国では2003年までに世界最高水準の「電子政府」を実現することを目指したe―japan計画が官民一体となって進められています。このe―japan計画は、行政分野の単なる情報技術活用を目指すものではありません。情報通信技術を手段として活用することによって、21世紀型社会を支える新たな行政システムを作り出すことに本来の目的があります。
知事は常々、茨城県の将来像を「陸・海・空の交通ネットワークや高度情報通信基盤が確立され、人・物・情報の一大交流拠点が形成される。それらを活用し、産業の振興や雇用の場の確保が図られるとともに、医療・福祉・環境や教育などの施策も一層充実している…そんな元気で住みよい地域社会に茨城をしたい」と語られています。
たしかに、百里飛行場やつくばエキスプレス、北関東自動車道をはじめとする高速道路網など、茨城県の発展を支える交流基盤の整備は着実に進んでおります。
しかし、21世紀のIT社会の基盤を支える情報通信基盤整備は、他県に比べて進んでいないのが現状でないでしょうか。
私は、平成6年の初当選以来、最初に所属した総務企画委員会で、当時としては画期的なパソコンでの情報公開を提案するなど、情報通信基盤の整備とそれを活用した県行政の効率化や産業の活性化を強く訴えてまいりました。それから7年が経過し、今年こそ茨城県のIT戦略構築の正念場であるとの認識から、福岡県、岡山県、高知県などの先進県。同じく北九州市、岡山市、横須賀市、太田市などの先進自治体、県内の教育機関や研究機関を精力的に訪問し、調査を重ねてまいりました。
その調査の結果を短く紹介させていただきますと、
岡山県では、平成8年から『岡山情報ハイウェー構想』を立ち上げ、自前で光ファイバー網の構築を進めてきました。本年3月には、基幹回線の接続が完了しました。これによって、県庁と県内9か所の地方振興局間やほとんどの市町村とを結んだ高速・大容量の光ファイバー網が完成しました。
高知県は、平成9年より、国や他県に先駆けて先進的な情報化の取組みである「情報生活維新・こうち2001プラン」を推進してきました。そして、平成10年11月には、光ファイバーによる『高知県情報スーパーハイウェイ』を開設しました。現在は、高知県内の市町村と広域事務組合の61のすべて、小中高等学校565校、県庁の出先機関144、また13ある道の駅がネットワーク化されています。
福岡県では、『ふくおかギガビットハイウェイ構想』を進めています。『ふくおかギガビットハイウェイ構想』では、2.4ギガという高速大容量の光ファイバー幹線で、県内主要都市7市を結びます。東京や大阪などへは、50メガ以上の専用線で接続することにしています。
こうしたハード面の整備とともに、いずれの先進自治体でも、IT基盤を活用した具体的なサービスの充実が図られ、産業の活性化に顕著な実績が示されています。
例えば、高知県では、防災情報を一元的に集約した防災ポータルサイトを開設したり、県民税やゴルフ場利用税の申告などに『高知県情報スーパーハイウェイ』を活用しております。
岡山県は、県内事業者に『岡山情報ハイウェー』を無料開放し、地域の活性化とインターネット環境整備の支援を積極的に行っています。その結果、国土交通省のデータでは、IT事業所の数が、政令指定都市を除くと岡山市が全国トップとなりました。県都水戸市の3倍以上の事業所が、岡山市内には立地しています。
また、福岡県の北九州市では、JR八幡駅前の東田地区の区画整備事業と平行してIT基盤整備を大胆に行いました。その結果、大手の通信事業者のコールセンターが立地し、2000人以上の新しい雇用が創出されました。
いくつかの先進的な事例をご紹介させていただきましたが、都道府県レベルでは紹介した高知、岡山をはじめとして、青森、山梨、三重県など11の県が光ファイバーによる高速大容量の情報通信基盤整備を行っています。更に、福岡、沖縄県など15県が現在整備を進めているところです。
ところで、本県は、日本で最初に「原子力の火」がともった県として有名ですが、もうひとつ、誇るべきに日本初があります。それは、日本で最初にインターネットによる情報発信が行われた県であるということです。日本最初のホームページは、平成4年9月30日につくば市にある旧文部省の高エネルギー研・森田博士によって作られました。現在、その記念すべきコンピュータは、つくば市情報ネットワークセンターに展示されています。本来本県は、情報通信分野でも、全国の先駆けであったわけです。
こうした経緯や先進事例を踏まえて、県では、昨年秋より茨城県IT戦略会議を設置し、内外の学識経験者や専門家を招き、本県の情報通信基盤整備についての具体的な検討を行っております。その中では、県内の主要都市間を結ぶ、国内最高速2.4ギガの光ファイバー網が具体的に提案されております。
また、市民レベルでも、県の情報基盤整備を切望する声が上がっています。この5月には、日立市内の有志により設立された「日立IT市民の会」の皆さんが、わずか2週間で4000名近くの署名を集め、知事に要望者を提出いたしました。
行政をはじめとして、教育機関、福祉・医療機関、そして一般事業者にも広く開放された情報通信基盤整備は、時代の要請であると言っても過言ではありません。
こうした議論をふまえ、知事におかれましては、三期目最初の課題として光ファイバーを利用したIT基盤整備に大胆に取り組む姿勢を示され、早速、今回の補正予算には、3700万円の調査費が計上されました。誠に時期にかなったご決断であると高く評価するものです。
つきましては現時点における、光ファイバーによる情報通信基盤の役割とその整備の方向性について、知事のご所見をお伺いいたします。
井手義弘議員のご質問にお答えいたします。
井手県議からは、これまでもITに関連した数々の先進的なご意見・ご提案をいただいているところでありますが、私も、「元気で住み良い茨城づくり」を実現していくためには、人・モノ・情報の交流を活発にしていくことが重要であり、そのためには、交通ネットワークなどの整備に加え、県内各地域を結ぶ高速情報通信基盤を整備していくことが必要であと考えております。
先のIT戦略会議においても、委員の皆様から「早期の基盤整備が必要」との積極的なご意見を多数いただいたところでございます。
県といたしましては、これを踏まえ、今定例会に補正予算案として提出いたしました「高速大容量情報通信基盤整備促進事業」において、官民の役割を具体的に組合わせた基盤の整備手法や提供方法等について調査し、平成14年度に整備できるよう準備を進めてまいります。
お尋ねの情報通倍基盤が果たすべき役割としては、大きく分けて三つあると考えております。
まず第一に、県内企業のIT化の推進、企業誘致や新産業の創出、更には産学官のネットワーク化による研究開発の推進などにより産業の振興を図るため、低廉な費用で高速通信が可能な環境を提供すること。
第二に、インターネット接続業者に基盤を利用させることにより、採算性の問題から高速インターネット接続サービスが行われてこなかった地域への進出を促進し、県民誰もが等しく高速インターネットを利用できる環境を整備すること。
第三に、県内どこからでも公共施設の予約ができたり、必要な情報が得られるなどの行政サービスの高度化を図るため、県や市町村が電子自治体を推進できる基盤を整備することでございます。
本県ではこれまでも全ての県立高校において高速インターネット接続環境を整り備し、生徒一人一アドレスを実現するなど、全国でも進んだ取組みを行ってきたところでございますが、情報通信基盤について、都道府県で最高レベルの性能と使い易さを兼ね備えたものの実現を目指してまいります。