第6回茨城県IT戦略会議 議事要旨 |
1.日時 : 平成13年11月7日(金)10:30〜12:10
2.場所 : 庁議室
3.議事:
(1)茨城県IT戦略会議 西野議長あいさつ議長: 会議開催にあたって,一言ごあいさつ申し上げます。
当IT戦略会議も,昨年10月に設置されて以来,本日が7回目の会議となりました。
その間,ITを取り巻く環境も絶えず変化を続けており,ITバブルの崩壊もありましたが,今年1月には政府からe−Japan戦略が打ち出されるなど,電子政府や電子自治体への取組も確実に進展しております。
このような中で,当会議として,県民・企業など誰もが「うれしい」と感じるITネットワーク社会づくりを目標に,県民生活・産業・行政など様々な分野におけるITの活用方策について検討を進めてまいったわけでございます。
各委員の皆様や県執行部のご協力を得まして,近来稀に見る活発な会議を行うことができたと自負しておりまして,将来のあるべき姿をある程度明らかにすることができたと思います。
本日の会議は,最終報告書をとりまとめる最後の会議でございますので,これまでの議論の総括として,各委員からは忌憚のないご意見をいただきたいと存じます。
また,今後,当戦略会議が提言する内容が,茨城県のIT戦略の基礎として活かされることを期待し,すべての県民・企業が元気で住みよい豊かな社会の実現にいくばくなりと貢献できれば,幸いでございます。
以上,簡単でございますが,最終会議冒頭のあいさつといたします。
(2)最終報告書(案)配布、事務局より説明。
(3)協議内容
(@) 最終報告書の内容について
議長: これまで私たちが議論してきた内容については,概ね反映されていると理解しておりますが,ご意見がありましたらお願いします。
委員: 報告書については,異議なし。国のe−JAPAN戦略よりはるかにましである。
委員: ビジュアル的に見やすいものになっている。
委員: 非常によくできた報告書だと思っている。ただ,私の感じたことを1つ言わせていただければ,これからは「情報主導社会」になるのであり,なるべく多くの人にインターネットを使ってもらう必要がある。今の状況は,iモードに見られるように,個人が情報を使っているといえるかもしれないが,まだ財布代わりでしかない。10年ほど前から,身の回りのものが情報に入れ替わる時代がくると考えていたが,情報銀行,情報ストックマーケットなどはまだない。今後は,信頼性・安全性の確保がますます重要になってくるだろう。また,情報を作るサイトがまだまだ不足している。例えば,ネジ製造企業であれば,そこのサイトへ行けばネジのことが何でも分かる,というようなサイトはまだない。ネジ1つとっても色々な情報が必要なはず。こうした点について,もっとしかるべき方法論があってもいいのかな,という感想を持った。
委員: 事務局が大変熱心に,委員からの意見を反映してくれた。漏れなく全て網羅されているといえる。その反面,ポイントがどこにあるかが薄れているという気がするが,その点については後で議論させてもらいたい。
委員: 内容としては,すばらしいものができた。ただ,ITを活用した社会がこれから出現してくると,住民はどういう姿勢で取り組んでいくべきなのか,住民である我々自身の問題として考えていかなくてはならない。
委員: 私も,大変よくできた報告書だと思う。これをどう実行していくかについて,議論していきたい。
議長: 委員の皆様方から,概ねこれでよろしい,という意見をいただいたので,これを「茨城県IT戦略会議最終報告書」として決定したいと考えますが,いかがでしょうか?
(「異議なし」の声)
議長: ありがとうございました。
(A) 早急に取り組むべき事項について
議長: 県ではこの報告書を受けて,指針とアクションプランを策定し,IT施策を具体化していくと聞いておりますが,今日はせっかく知事さん以下県幹部の方々がおそろいなので,特にどの施策を優先的に実施していくべきであるか,また,施策を実施していく上での留意事項につきまして,ご意見をいただきたいと思います。
委員: まず,私の専門とする情報通信インフラについて,情報通信技術はものすごいスピードで発展しており,インフラも次々に更改していかないといけない。将来への拡張性を意識したインフラ作りが必要である。また,安全性・確実性が大事である。企業ならある程度のリスクも覚悟でやれるが,行政にはリスクをできるだけ避けてもらいたい。システムには生みの苦しみがあるのであり,リスクを負って新規のシステムを作るよりも,確実なシステムを使うのが望ましい。安全についても,第7章で個人情報保護とセキュリティについて書いてあるが,こうしたことについても万全を期してほしい。セキュリティポリシーを策定・公開・守っていく,ということをきっちりやってほしい。
委員: 先週,県庁でe−ラーニングシステムのデモをやらせてもらった。2.4Gbpsのブロードバンドを引いた場合,今のままでは,私の試算では,基盤の0.02%しか使われないことになってしまう。中学校の先生が1日100人,1Mbpsずつ使っても,まだまだ使い切れない。情報コンテンツが,質的不足以前に量的に不足している。このままでは,情報通信基盤を引いたはいいがほとんど使われない,という状況になってしまう。ラストワンマイル対策について,インターネットサービスプロバイダ(ISP)に任せるのはそれはそれでいいが,例えばCATV会社の8割は赤字であるなど,地方に進出してくる余裕はないのが現状である。このままでは,民間にラストワンマイルをやらせるのは,絵に描いた餅になりかねない。
それと,アクションプランに入れてもらいたいことがある。まず,900ある小中高校に,光ファイバでも無線でも,何でもいいからラストワンマイルを県が何とか引かないと,幹線はできても末端までつながらない,という事態になる。県が補助を出すか,直接引くかしないといけない。是非検討をお願いしたい。これは,いわば情報の流れの下流の問題。
次に,上流としてのコンテンツの問題がある。コンテンツ作りは値段が高くて難しい,と思われている。茨城県のインターネット放送局をよく見ているが,知事の記者会見ですら,外部に制作を依頼しているとのこと。是非,自動的にマルチメディアコンテンツを作るシステムを県で作ってほしい。先日のデモンストレーションでお見せしたように,すでにそうしたシステムはあるので,それをベースに県独自のものを作り,フリーソフトとして自由にダウンロードさせるなどしないとだめである。 こうしたシステムを使うと,しゃべった内容が3分くらいでコンテンツになる。是非,県が市町村の教育委員会を指導して,学校に自らコンテンツ作りをさせてほしい。
また,アカウンタビリティについてであるが,今日の資料の中で,A3版のイメージ図がとてもいい。報告書本体だけを見てもよくわからないが,こういうイメージ図があると,理解を促進することになる。例えば,インターネット放送局で,このイメージ図の適当な個所をクリックすると,該当部分の説明が流れるようなしかけがあると面白い。また,IT推進室という部署もあることだし,この報告書の内容を各市町村に説明するようなキャラバンを組んでもらいたい。
事務局: 全市町村は難しいが,モデル的な市町村を対象にすることは考えている。ただ,同じようなシステムをみんなでばらばらに考えるのはもったいないから,どこかが考えて,それをバーっと広げるのがいいのではないか。
委員: 私としては,各学校で授業をそのまま番組に落としていければいい,と考えている。そうでないと,コンテンツを作る時間がうんとかかってしまう。
委員: 私も同じ意見である。今,各市町村に入れているシステムには,ニュースの自動更新機能が入っているものがかなりあるが,数行のニュース原稿を入力するにも外部に委託しており,これは無駄である。プロでなければ作れないコンテンツにお金をかけるべきであって,誰でもできるようなことは職員でやってしまえばいい。その場でしゃべっている映像を流すだけのようなコンテンツや,即時性が大事なコンテンツは,是非,職員自ら作っていくようにしないとお金がもったいない。素人では無理なコンテンツ作りとの住み分けをきっちりするべきである。情報通信基盤整備とコンテンツ作りは車の両輪であり,片方だけでは誰も求めないが,両方揃えば,あの番組が面白いらしい,それを見たいからブロードバンドを引こう,というように相乗効果となる。また,高校は既に1.5Mbpsの回線を引いており,あとは小中学校が問題。
もう1つ,私はあちこちで講演する機会があるが,最近,自分の話が聴衆の役に立っているかどうか疑問に感じるようになった。話をするときは,1番下のレベルに合わせざるをえないが,ビジネスマンの貴重な時間を無駄にしているのでは?と思ってしまう。ただ,講演会場ではほとんど質問が出ないが,終了後の喫煙所などでは質問が山ほど出る。企業のトップレベルであっても,ITについて聞きたくても人前では聞けない人がまだまだいるということであり,こういったことを気軽に相談できる窓口があるといい。
事務局: 先ほどのコンテンツ作りの件について,人材派遣やアウトソーシングなどの手法でやっていくことも考えられないか?
委員: それもいい。映像は誰が撮っても同じ。例えば,茨城県の観光案内の番組作りなどでは,映像撮影の前段階の,茨城の観光をどうアピールしていくか,の企画部分についてはプロがやっていくべきところだと思う。逆に,映像は,下手に手を加えると雰囲気が壊れるときもある。きっちり企画を立てて,演出を考えて撮影し,リピーターを呼べるような仕掛けがあるといい。
事務局: 高校野球とかのコンテンツを流せば,人気が出そう。
委員: 自分の知っている人が映っていると見る。学校の授業風景を週1回更新するとか。インターネット放送局での知事記者会見の模様も,ずっと聞いていないと話の内容が分からない。インデックスを付けるとか,しゃべっている該当個所の資料を同時掲載することなどが必要。
委員: 言葉に連動して絵が変わる仕組みは既にある。
事務局: うちもそうやらなくちゃ。
議長: 県の方で,このあたりについての考え方は何かありますか?
事務局: 情報通信基盤を整備しても使われないかもしれない,というご指摘は既に何度かいただいている。先日の県議会で議員がIT戦略について質問したとき,各部局長から前向きの発言をしていただいたところ。自動的にコンテンツを作るシステムについては勉強させてもらいたい。ラストワンマイルについては,過疎地域対策の中で検討している。公共施設の中で情報通信基盤をどう使っていくかについては,アクションプランの中で示したい。
委員: 財政的裏づけさえあれば,この提言の内容はすぐにでも実施できる。ただ,できたものをどう使うか,についてあまり議論してこなかった。これからはそこのところを詰めていかないといけない。
事務局: 市町村からの経費負担も大事である。
委員: この章立ては議論の順であって,必ずしも重要度の順ではない。公共事業を担当する立場としては,安全性・信頼性の確保がまず大事である。ラストワンマイルの整備とセキュリティは,公共部門が手を出さないといけないところ。そこから先は,需要に応じてやっていけばいいかもしれない。どういう順番でどういう施策を実施していくかは,正に戦略であり,そういう意味で,我々はまだ戦略を書ききれていない。しかも,1通りのシナリオではいかないだろう。例えば,鉄道を引くと沿線に人が住み始めて,商業地域が発展し,街が活気づき,また鉄道を延ばす,というようなストーリーになる。私としては,次に重要なのは人材確保であり,さらにその次に電子県庁や産業振興が来るのだと思う。当然,市町村からの経費負担も重要であろう。このように,割とジグザグ的に進めていく方法をとるべきではないだろうか。
委員: この報告書は,実現されてこそ意味がある。そのためにアクションプランを作るのだろう。時間的な優先順から言えば,電子県庁が最初に来るのだろう。業務の効率化を実現しながらやっていく,と報告書にはあるが,それは難しいことである。その難しいことをあえて言わせてもらったわけであり,是非ともここのところは実現させてもらいたい。数値目標,標準システム,専門家の意見を聞くなど,いろいろとやり方はあるだろう。
委員: 産業振興の章に「ITコーディネータの派遣」とあるが,先日第1回目の試験では559名合格し,そのうち茨城県に住所があるのは12名であった。こういう人たちを徹底的に活用し,個別・小グループでの相談などをやっていくといい。ITコーディネータは1度合格すれば終わりではなく,ずっと勉強しつづけないといけないのであり,常に新しい情報をもっている人たちである。
議長: このIT戦略会議と並行して,産業界でもこれまでIT戦略を検討してきたが,先日,その中間的な方向が示されたので,そのご報告をしたい。まず,経済4団体が持っているポータルサイトの拡大・強化を図るべきであること。次に,構成メンバーである各企業のホームページを早急に立ち上げ,各企業のIT活用能力を高めることが必要であること,である。地域情報や強力な検索エンジンを備えた地域ポータルサイトについては,先行している例を見ても,あまり活用されていない現状である。したがって,1つのポータルサイトを作るよりも,むしろ,経済4団体の各ホームページのネットワークでやっていく方が有効ではないかという結論になった。今後は,各種専門家に相談できる体制を備えた地域ナレッジサイトを立ち上げたい。そのようなサイトであれば,たとえ有料サービスであっても有効であろう。
委員: 調達コストは,Y市の例では,電子化と同時に一般競争入札にすることによってはじめて低減できる。国の一般競争入札の対象はわずか1.4%であるが,一般競争入札の比率を規制緩和等で高めないと,システム費の方が高くつきかねない。費用対効果で割に合わない。こういう実態をみると,国は我々をごまかしてるんじゃないかと思う(笑)。
事務局:物品調達で見ると,随意契約が95%以上で,一般競争入札は0.2%程度。制度そのものを変えないと実効性はない。
事務局:電子入札は全ての形態の入札を対象としている。
委員: 県トータルでみると,電子入札の導入によって,どれだけの削減になるのか。国は360億円の削減と言ってるようだが。
事務局: 公共事業以外では随意契約は残るだろう。
委員: 今は,企業内に資格をもった人材がいるか否かで入札参加者が絞られる時代。特に,APECエンジニアの存在は重要。この事実を知らない中小企業も多く,中小企業の支援策として,ITの導入はもちろんだが,そういうところのサポートが必要である。人材教育と中小企業振興は別物ではない。中小企業を助けようとして電子入札にしたら,入札できなくなった,という事態もありうる。また,私は警察関係のシステムもやってるが,警察のシステムは県ごとに別々でやってるため,県境を越えると犯人を追えない仕組みになっているらしい。是非とも,関東近県での広域連携が必要であり,ブロードバンドを使ってのやりとりが必要である。警察関係についてはあまり議論がなかったように思うが,アクションプランに是非入れてもらいたい。
事務局: この件については,県境を越えたとしても,当然,犯人を追うことは可能である。
(B) 最終報告書の提出
議長: それでは,最終報告書が正式に決定されたので,提出することにいたします。IT戦略会議を代表して,最終報告書を知事にお渡しいたします。委員の皆さんの総意としての報告書です。県におかれましては,今後とも,IT戦略に積極的に取り組んでいかれますよう,よろしくお願い申し上げます。委員の皆様,1年間誠にご苦労さまでした。
(議長より知事に最終報告書を手渡し)
知事: 本日は,委員の皆様には,大変お忙しい中,ご出席を賜り,誠にありがとうございました。いただいた報告書につきまして,私どもも十分に対応してまいりたいと思います。施策の実施に当たりましては,IT戦略会議の後を受け,ご提案のあったIT総合監理委員会(仮称)を設置いたしまして,様々なアドバイスを頂きたいと考えております。委員の皆様方には,引き続きご協力をお願いいたします。最後になりますが,委員の皆様には,これまで,積極的なご意見,ご提案を賜りまして,誠にありがとうございました。簡単ではありますが,お礼のごあいさつとさせて頂きます。
事務局:ありがとうございました。今後の段取りですが,年内を目途に指針を策定し,年度内を目途にアクションプランを策定する予定です。また,知事からもありましたように,IT総合監理委員会(仮称)を今後設置してまいりたいと思いますので,今後とも,よろしくお願い申し上げます。