IT村・北海道西興部村の挑戦 全国発の光ファイバー網を全戸整備 農業や福祉など様々に活用 |
IT(情報技術)を生かした“むらづくり”に挑戦――。北海道西興部村(にしおこっぺむら)はこのほど、高速・大容量・双方向通信の光ファイバー網を全世帯に敷設しました。住民の自宅まで光回線を引き込むFTTHの全戸整備は、自治体としては全国に先駆けての事業です。これらの拠点施設「IT夢」(アトム)も2001年冬にオープンしました。
光ファイバー網によるCATV(ケーブルテレビ)では、一般の放送に加えて、映像リクエストシステムによる放送も楽しめます。これは、好きな村の行政情報や過去に放送された村営CATV番組を選択し、専用チャンネルで見られるシステムです。テレビ番組は2002年3月からの議会中継も含めると32チャンネルが用意されました。
さらに、電子メールやインターネットへの接続も無料でできるようになりました。緊急放送用の端末機も据え付けられました。
西興部村は、オホーツク海から西に入った山あいの小さな村で、人口は、北海道の市町村では一番少なく、2002年1月末で651世帯1266人です。西興部村は1989年、テレビの難視聴地域対策として、同軸ケーブルによるCATV網を全世帯に敷設しました。村営CATV局の番組放送も同時にスタートさせました。しかし、雪でケーブルが傷むなど設備の再構築が迫られたため、双方向性などの利点を考慮、光ファイバー網によるシステムに全面的切り替えました。
これらは国のモデル事業として実施されたもので、総事業費はマルチメディア館「IT夢」の建設費も含めて約14億円です。
光ファイバーの活用は、家庭内だけに止まらず、産業や福祉の分野でも積極的に展開されています。
例えば、村内の酪農家など全20戸で、牛舎監視システムも導入されています。分娩牛の監視など、酪農家の負担を軽減させるのが目的です。牛を見張るのは、高さ約1メートルのステンレス製の円柱上に透明なドームをかぶせた、SF映画さながらのロボットです。無線で送信されてきた牛舎内の映像・音声を、自宅のパソコンで確認できます。カメラは遠隔操作での可動式でズーミングも可能です。ライトも点灯し、夜間の監視にも威力を発揮します。光ファイバー網で村内どこからでもパソコンでチェックできるのが特長となっています。
光ファイバーは、福祉の現場でも活躍しています。一人暮らしや既往症を持つお年寄りの家庭に対しは、「バイタルセンサー」という健康管理機器が設置されています。この装置を使って血圧を測定し、データを役場の保健師に送信します。脈拍や体重も同様に送信します。そして、相談ボタンを押すと保健師がTV電話で応対することができます。「顔を合わせて健康状態などを話せるので安心します」と利用者の評価は高いようです。役場などへの緊急連絡システムも搭載し、2003年からは住居内に、光ファイバー網を利用した安否確認センサーも取り付けられる予定です。
さらに、村はパソコン購入代金への7割補助事業を実施しています。IT講習にも力を入れ村民をバックアップしています。インターネットや通信機器を活用して自宅などで働く「SOHO」の事業者の誘致にも積極的に取り組んでいます。
このIT化を進める上で課題となっているのは、お年寄りなど情報弱者へのフォロー体制です。現在、西興部村の高齢化率は、30.5%と高いことから、細かな配慮や指導体制の強化が望まれています。恵まれたIT環境を行政に十分に反映する職員の育成も大きな課題です。
北海道西興部村(にしおこっぺ・むら):
http://www.ohotuku26.or.jp/organization/nisiokoppe/nisiokoppe.html
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