2003年5月23日、神栖町木崎地区に住み、高濃度のヒ素が検出された井戸水を飲んだために、多大な健康被害を受けた5世帯10名の住民が、「ヒ素汚染による健康被害者の会」を結成しました。 被害者の会の代表(小沢浩さん、青塚美幸さん)は、公明党県本部の代表らと共に、環境省を訪れ、環境大臣宛の要望書を提出しました。 これによると、1.医療費を国が負担すること、2.早急な原因究明、3.今後の生活面への支援、4.住民窓口の一本化、5.情報の全面開示の5点が強く環境省に求められています。 被害者の会の要望に対し、弘友副大臣は6月上旬までに、具体的な被害者支援策を講じると回答しました。また、原因究明も環境省が責任を持って行うことを表明しました。 |
「ヒ素汚染による健康被害者の会」の要望事項 @医療費負担
私ども被害者は、これまで数年間にわたって、健康被害の原因が全く分からないままで、入退院や通院を繰り返し、その医療費や病院に通う交通費などの負担が家計を圧迫。多額の出費を強いられてきました。毒ガスが原因である可能性が極めて高いことが立証され、国の責任がはっきりしてきた現在、国に対して、医療費の負担を要望します。
A早急な原因究明
被害者の多くは、現在もヒ素が検出された集合住宅で生活を送っています。大家さんが上水道を引いてくれましたので、井戸水を使用する恐怖からは解放されたものの、依然として毒ガス「赤筒」などの物的証拠が地中から得られていない状態では、私たちの日常生活に多大なストレスを与えています。特に、家の床下に何らかの物質が埋まっているかもしれない、ということを感じながらの毎日を過ごす辛さは、本当にはかりしれません。国や県、町が一体化した上での原因究明を強く求め、私たちの「普通の生活」を一日も早く取り戻してくださるよう、お願いします。
B今後の生活面等の補償
毒ガスの人体に与えるデータはきわめて少ないもののようです。そのために、子供や一家の大黒柱、家族を守る母親といった、大切な人々の後遺症が、どれほどのものになるのか、全く不明です。健康被害を回復してほしいのはもちろんのことですが、現在の仕事に支障をきたしたり、発育不全や、学校での学習の遅れなど、「将来への漠然した不安」が重くのしかかっています。今後の生活に悪影響が出た場合、その補償も国などに求めていくつもりです。
C窓口一本化
これまでの2ヶ月間、どこに相談してよいのかさえ分からなかった私たちは、不安に不安を重ねる日々を送ってきました。その原因の一つに、対応する行政が一本化されていないことがあると思います。町、県、国、と調査や補償の主体が変わったり、今現在の窓口を見つけるにも苦労する状態でした。また、今は環境省が中心に活動を続けてきておられますが、健康問題では厚生労働省、日本軍の問題については防衛庁などと、省庁間のたらい回しが起きないように、訴えていくつもりです。
D情報開示
どのような調査が行われ、どのような結果が得られているのか、私たちはマスコミの方から教えてもらうことばかりでした。県が報道機関に提示している資料ですら、県から見せてもらったことはありません。全体の状況を正しく把握したいという気持ちは、被害者にとっては当たり前の心情のはずです。今後きちんとした情報が私たちにもたらされるよう、国や県に要望を行います。
●この要望事項は、「被害者の会」が5月23日にマスコミ各社に配付した資料から転載したものです。
●写真:弘友環境副大臣に要望書を手渡しする「被害者の会」の代表