茨城県のダイオキシン対策

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「神話の終焉」の著者から3つの指摘
渡辺正先生から直接メールをいただきました。

 私のHPの記事「ダイオキシンの毒性は神話か?」(http://www.jsdi.or.jp/~y_ide/030729dai_top.htm)を読んでいただき、「ダイオキシン 神話の終焉」の著者のお一人である渡辺正東京大学生産技術研究所教授より、直接メールを頂戴しました。私のような素人にまで、大変ご丁寧なメールをいただき恐縮するばかりでした。
 渡辺先生は、「このような本(ダイオキシン神話の終焉)がなぜ当時でなかったのか」、「慢性毒に対する記述があまりにも少ない」、「現時点で具体的な被害が出ていなくても、しっかりとした対策を立てることは行政の義務」との私のHPの記述に沿って、ご自身のご見解を述べられています。
 このページでは、渡辺先生のご了解をいただいた上で、メールの主要部分を公開させていただきます。
 なお、私は、現時点で渡辺先生のご見解を、全て納得しているわけではありません。特に、2点目、3点目については、もう少し専門家の中での議論の集約を待つべきだと思っています。読者の皆さまの更なるご批判・ご意見をよろしくお願いいたします。

このような本がなぜ当時でなかったのか?

渡辺先生の見解: 
 まず、「このような本がなぜ当時でなかったのか‥‥疑問にさえ感じました」とお書きです。少なくとも私どもの場合、「ダイオキシン法」のできた1999年ごろは、騒ぎに大きな違和感を覚えながらも、納得できるデータ・知見がなかったせいで、確信をもって発言できなかった、というのが真相です。2000年あたりから、環境試料の膨大な分析結果や、ヒト摂取量の経年変化データ(国内外)、摂取源の大部分はかつての農薬の不純物だろうとする結果(益永・中西グループ)などが出てきて、違和感が具体的な数字で裏づけられたのはようやく2001年ごろのことでした。「今さら何を言うか‥‥」というふうに非難する方もいますけれど、「狂乱時代」にはまだ真実が見えなかったのです。

慢性毒に対する記述があまりにも少ないのでは?

渡辺先生の見解:
 次に、「慢性毒に対する記述があまりにも少ない」とお書きです。某NGOの方々や、毎日の小島記者などもそう指摘されましたが、だいぶ誤解があるようですので、ご説明申し上げます。
 ご承知のとおり、「慢性毒性」の件は拙著の第3章で扱いました。慢性毒性につきましては「ヒト体内量」がほぼ唯一の論点ですから、その点は類書にないレベルまで踏み込み、今後は 3〜4ng/kg だと考えればよいことを明らかにしたつもりです。
 それをもとに、何か懸念すべき疾患などがあるとすれば、それは以下4点のすべてを満たすものだということになります。

  • 全身平均のヒト体内濃度が数 ng / kg レベルで発症する疾患であること(小島記者は「通常の人の体内に存在するダイオキシンの10倍程度の少量でも、‥‥」と書きましたが、体内量が通常の10倍にもなる場面は、よほど異様な食生活を想定しないかぎり、ありえません)。
  • 動物実験の結果なら,ヒトに当てはめてよい根拠があること。
  • 過去30年間に(体内濃度も摂取量も減ってきたため)発症率が順調に下がってきている疾患であること。
  • エストロゲン作用による疾患ではないこと(下記[補足]参照)。
 要するに、上記4条件に当てはまる「慢性毒性」の症例が何ひとつ見つからないため、各論的なことを書きようはなかったわけです。
 小島記者にはこうした点につき6月6日付で当方からの質問状をお送りしました。しかし以後2ヶ月、何ひとつお答えは頂戴しておりません。

[補足]慢性毒性のうちエストロゲン(女性ホルモン)作用は、少なくとも日本人の場合(摂取量とエストロゲン活性を考えると、大豆のゲニステインの数十分の1から数百分の1と見積もれるため)、まったく問題にならないし、ゲニステインが健康にプラス効果を持つなら(そう語る間接証拠はたくさんあります)、ダイオキシンは「そのプラス効果を少し増やしている」ことになります。本件につきましては、拙著と同じシリーズで7月に出た『環境ホルモン――人心を「攪乱」した物質』をお読みください。

現時点で具体的な被害が出ていなくても、しっかりとした対策を立てることは行政の義務

渡辺先生の見解:
 貴HPには「現時点で具体的な被害が出ていなくても、‥‥」とお書きです。これも拙著を批判される方々の常套句ですけれど、摂取量と体内量が快調に減っているわけですから、これから何かが出る可能性は「ますますありえない」と考えるべきではないでしょうか?
 また、「EU や米国などではこうやっている‥‥」といった発言もしばしば聞こえてきますが、海外の動向にとらわれず、日本国としてきちんと優先順位を考え、税金の無駄づかいを抑えるべきだろうと考えています。


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