日本では年間1,000〜1,500人程度、骨髄移植を必要とする患者さんがいます。しかし、実際の骨髄バンクを介した移植は年間約700例で、希望しても移植を受けられない患者さんが大勢います。骨髄バンクのドナー数が十分ではないこと、コーディネートに時間がかかり、移植を待てない場合があることなどの理由があります。このような患者さんが、移植を受けることができる新しい治療法として、さい帯血移植が進められてきました。 さい帯血バンクは、骨髄バンクのような「ドナー登録」の制度はありません。さい帯血バンクで協力をお願いしている産科病院で出産予定の妊産婦の方で、さい帯血の提供に同意して下さった方からさい帯血を採取させていただきます。 骨髄バンクでは、ドナーの血液検査を行って白血球型を登録します。さい帯血バンクでは、出産の時にさい帯血を採取し、その時点でさい帯血そのものを凍結保存します。移植を希望する患者さんは、凍結保存されているさい帯血の中から自分に合ったものを選択します。そのため、たくさんのさい帯血を凍結保存しておくことが必要です。 骨髄バンクでは、ドナーとのコーディネートが必要なため、移植の実施までにはかなりの時間を要します。これに対し、さい帯血はすでに凍結させてあり、コーディネートの必要がありませんから、移植までの期間が短縮されます。骨髄移植を希望する患者さんの中には、病気の進行が切迫して、コーディネートを待つことが難しい場合もあります。このような患者さんにとっても、さい帯血により、移植を受けるチャンスが得られることになります。 また、さい帯血移植の長所は、ドナーに対する負担が全くないと言うことです。骨髄移植の場合は、ドナーが入院して、全身麻酔を使って骨髄から骨髄液を採取しなければなりません。それだけにドナーに対する負担が過重になります。 |
骨髄移植とさい帯血移植の特徴を比較すると以下の表のようになります。
|
骨髄バンクとさい帯血バンクの利用者である患者さんは同様な疾患の方々であり、移植を行う医療機関も同じです。 しかし、バンク事業そのものは全く異質な業務の流れを持っています。対象となるドナーも採取方法も提供に至る流れも、業務に携わる人の業務内容も全く異なります。 さい帯血バンクネットワーク発足から3年以上経過した平成15年4月、ようやく「骨髄バンク・さい帯血バンク共同事業協議会」が設置され、両者の連携を図る議論がスタートしました。議題の主なものは「検索システムの一本化」「患者相談窓口」「国際協力」などです。 両バンクの患者さんのために有機的な連携がとれるよう、一層の努力が求められています。 |