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 最終更新日:2003/Nov/30

日立電鉄 鉄道部門の平成17年3月廃止を表明
70年を越す市民の足に黄色信号

日立電鉄大橋駅の秋景色:クリックすると大きな写真をご覧になれます  日立電鉄は、日立市鮎川町と常陸太田市山下町を結ぶ鉄道として、70年以上にわたって通勤や通学に欠くことのできない交通機関として親しまれてきました。
 2003年10月23日に、会社側より「平成17年3月31日をもって日立電鉄線を廃止する方向で関係機関と話し合いたい」との見解が公表されました。利用者や沿線住民から存続を望む声が多く寄せられ、他の公共交通機関が不便な大沼地区の住民からは、署名運動等の動きも起きています。
 会社側の説明によると、日立電鉄線を廃止する最大の理由は、「鉄道の基本的使命である安全運行を、今後も維持することが、日立電鉄の現状の経営力では出来ない」ということです。

安全運行を維持することが、現状の経営力では出来ないことが廃止理由

 日立電鉄線の橋脚・橋桁で70年以上経過していつものが72%。随道は約50年、車両は約42年経過しています。近代化がされていない木製の枕木が約57%、信号ケーブルが約36年経過等、設備の老朽化が進み、安全運行を今後維持して行くためには車両を除いても今後年間2億円前後の設備投資が必要と見込まれています。国、県の近代化設備補助を利用することにより、日立電鉄の負担が年間1億円前後としても、鉄道収入の30%前後を設備投資に向けなくてはならないことになります。一民間企業として、年間売上の3割を設備投資しなくてはならない事業は、事業として成立せず、日立電鉄グループのバスやタクシーなど他の業態から資金を投入しても、この投資額を負担できる状況出はなくなってしまいました。
 鉄道部門は昭和3年の開業以来、広く市民の通勤や通学の足として利用されていましたが、自家用車の普及、沿線事業所の従業員の減少等の事情により、年間旅客数は昭和36年の717万人をピークに減少を続け、平成14年には177万人と、全盛期のわずか1/4となりました。(下段の表とグラフを参照してください)
 これにより鉄道部門の収支は、昭和63年から赤字を続けてきましたが、公共交通機関の役割を果たすため、他部門の収益を投入しながら、鉄道の運行を続けてきたのが実情でした。
 この間に、3回の運賃値上げを行い、全線ワンマン化、駅務員無配置化などの合理化を進めてきました。また、呑電・ビア電など各種イベント列車、各種チケット類の発行等により売上高の確保にも、全力を挙げてきました。しかし、鉄道部門の赤字を補ってきた他部門も、昨今の経済不況の中で、苦戦を余儀なくされ、昨年度の決算では、日立電鉄グループとして債務超過となり、今後の鉄道運行が不可能との判断をしたものです。

  一般 通勤定期 通学定期 輸送人員 運輸収入
H4 91万人 229万人 75万人 396万人 5億7,100万円
H5 90万人 224万人 75万人 389万人 5億9,800万円
H6 69万人 217万人 76万人 380万人 5億9,100万円
H7 84万人 190万人 76万人 349万人 5億4,800万円
H8 82万人 169万人 71万人 322万人 5億0,700万円
H9 78万人 150万人 65万人 292万人 4億8,600万円
H10 74万人 141万人 60万人 275万人 4億7,100万円
H11 70万人 117万人 54万人 241万人 4億2,000万円
H12 67万人 102万人 51万人 220万人 3億9,000万円
H13 65万人 92万人 48万人 204万人 3億6,100万円
H14 65万人 66万人 47万人 177万人 3億2,600万円
参考:日立電鉄オフィシャルHP日立電鉄ファン日立電鉄私的案内頁

井手よしひろ県議ら松場社長から現状説明を受ける

 2003年11月26日、井手よしひろ県議は地元県議と共に、日立電鉄本社(日立市旭町1-19-1)に、同社の松場卓爾取締役社長を訪ね、2005年3月(平成17年3月)をめどに廃止を検討している鉄道部門の現状について、詳細の説明を受けると共に、存続の可能性に対して種々意見交換しました。
 松場社長は、「鉄道の基本的な使命である安全運行を今後とも維持することが、現在の日立電鉄の経営力では出来ないと判断せざるを得ません。橋脚・橋桁など70年以上経過したものが全体の7割以上。常磐線をアンダーパスする隧道は50年を経過。車両は42年を経過しています。毎年の安全運行を維持するための設備投資が、1億円を超し、鉄道収入の3割前後を占めます。この投資にグループ全体でも耐えられる状況ではありません。また、行政からの補助金を期待して、営業を継続することの出来る範囲も超えていると考えています」と、廃止を決断した理由を説明しました。
 井手県議らは、今後とも十分に住民に対する説明責任を果たしながら、善後策を協議していくことを確認しました。

公明党日立支部が日立電鉄存続を要請

 井手よしひろ県議と公明党日立支部長額賀俊彦市議、同副支部長助川吉洋市議は、2003年10月30日、日立電鉄(株)本社を訪ね、経営企画室長瀬谷光昭取締役、鈴木政明経営企画室次長に対して、日立電鉄の存続を要請するとともに、鉄道事業の現状を聴取しました。
 日立電鉄は、日立市鮎川町と常陸太田市山下町を結ぶ地域住民の足として、通勤や通学に欠くことのできない交通機関として親しまれてきました。
 10月23日に、2005年3月(平成17年3月)を目処に、廃止する方向で関係機関と話し合いたい、との会社側の見解が公表され、利用者や沿線住民から存続を望む声が多く寄せられています。特に、他の公共交通機関が不便な大沼地区の住民からは、署名運動等の動きも起きています。
 こうした意見を背景に日立市と常陸太田市は、日立電鉄並びに県に対して存続を求める要望書を10月28日に提出しました。井手県議も、県の企画部企画課からのヒアリングや市担当者との意見交換を行ってきましたが、今回直接、日立電鉄への要請を行いました。瀬谷経営企画室長は、「日立電鉄の鉄道部門は昭和3年の開業以来、単体ではほとんど黒字を計上したことがなかった。安全に対する設備投資が過大で、懸命の効率化にも限度がある。ある時代はバス部門が、その後は不動産部門やリース部門など、社内の他部門の収益で、鉄道部門の赤字をカバーしてきたのが現実である。現状では、年間売り上げ3億円の内、2億円程度が設備改善に必要である。昨年度は、経常損益で8000万円の赤字を計上し、今年は上半期で5000万円の赤字となっている。県や国などから設備近代化の補助金を1億円強頂いてはいるが、輸送の安全を確保するのが、財務的に限界にきている。2005年3月(平成17年3月)をもって、鉄道部門を廃止することを具体的に提案させていただいた」と、現状について説明しました。
 井手県議らは「市民の貴重な足である日立電鉄を何としても守りたい。県内には鹿島鉄道の前例もあるので、沿線自治体や県が知恵を出し合って、存続をバックアップしていきたい」「会社側としても、できるだけ詳細なデータを提出していただき、住民が納得する結果を導きたい」などと話しました。
 


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