動燃東海爆発事故アーカイブ

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/MAR/21


異常事態発生連絡書

  1. 件  名
     動力炉・核燃料開発事業団東海事業所 再処理施設アスファルト固化処理施設における火災・爆発事故について(第1報)

  2. 発生日時   平成9年3月11日(火) 10時06分頃

  3. 発生場所   動力炉・核燃料開発事業団東海事業所
             再処理施設アスファルト固化処理施設

  4. 概  況
    (1) 事故発生日
     @ 火災の発生
     アスファルト固化処理施設は,平成9年2月7日から開発運転を実施していた。平成9年3月11日(火)10時06分頃,アスファルト充てん室(R152)のセル換気系に係る温度警報装置が吹鳴していることを制御室(G218)にいた作業員が確認した。ほぼ同時に,ターンテーブル上のドラム缶へのアスファルト充てん状況を監視する,アスファルト充てん室(R152)内のテレビカメラからの画像が,白っぽくなったことを制御室(G218)のテレビモニタで確認した。また,操作区域(G115)の作業員が,アスファルト充てん室(R152)内で火災が発生していることを,操作区域(G115)から目視により確認した。10時12分頃に操作区域(G115)内バルブを手動開により水噴霧して消火作業を行い,10時22分頃に操作区域(G115)から,目視により消火していると判断した。
     10時13分から10時18分にかけてアスファルト固化処理施設の,βダストモニタ(β−4,β−5,β−3,β−6)警報が吹鳴した。10時26分に第三低放射性廃液蒸発処理施設において,局所排気モニタのβダスト警報が吹鳴した。
     10時23分頃にアスファルト固化処理施設の換気系の全ブロワを手動で停止した。また,10時15分頃に設置した現場指揮所の指示(10時32分頃)により,当該施設の作業員は施設外に退避した。
     アスファルト固化処理施設において,βダストモニタが吹鳴したことから,10時45分アスファルト固化処理施設のグリーン区域を立入規制区域,アンバー区域を立入制限区域に設定した。
     11時11分頃に事業所対策会議議長は,モニタリング車の出動を指示し,11時15分頃に再処理保全区域の環境モニタリングを開始した。
     第三低放射性廃液蒸発処理施設にある局所排気モニタの指示値が上昇したため,11時30分に第三低放射性廃液蒸発処理施設及び第二低放射性廃液蒸発処理施設(図−1参照)の全域を立入制限区域に設定した。
     一方,13時34分頃に作業員2名,東海村消防署員1名がアスファルト固化処理施設に入室し,作業員が現場の状況を確認した。その後,15時15分頃に,内部の放射能状況を確認のため,作業員3名がアスファルト固化処理施設に入室した。また,16時57分頃に作業員4名がアスファルト固化処理施設に入室し,この時に制御室(G218)制御盤でセル排気ブロアの起動を試みた。ブロアは,全て起動したが,セル換気系ブロア出口側のダンパが閉となったままの状態であることを確認し,再起動は困難と判断した。
     また,第一付属排気筒の排気モニタの確認の結果,10時14分頃から指示値に僅かな上昇が見られた。なお,施設周辺の環境放射線測定装置(モニタリングポスト,モニタリングステーション等)の指示値に異常は見られなかった。
     A 爆発の発生
     アスファルト固化処理施設において,20時04分頃,爆発音の発生を確認した。その後,施設の窓,扉及びシャッターが破損し,煙が出ていることを確認した。また,第三低放射性廃液蒸発処理施設の扉及び窓が破損しているのを確認した。20時09分,第一付属排気筒の排気モニタ警報が吹鳴した。この時,アスファルト固化処理施設内には作業員はおらず,爆発による直接の人的被害はなかった。
     本社に災害対策本部を,東海事業所に防護活動本部を設置するとともに,環境モニタリングの強化及び施設周辺の状況の確認を実施した。
     23時10分頃から作業員がアスファルト固化処理施設に入室し,状況を確認したところ,アスファルト充てん室(R152)には火災,煙は認められなかったが,施設内の扉,設備,窓等に破損が認められた。第1付属排気筒における排気モニタでは,爆発により一時的に放射能濃度が上昇したが,その後平衡状態に戻ったことを確認した。
     また,事業所敷地内の環境放射線測定装置(モニタリングポスト)における放射線測定結果については,20時40分頃から僅かな上昇がみられたが,21時以降は通常の変動範囲内であったことを確認した。
     3月12日,1時過ぎからアスファルト固化処理施設周辺の汚染状況を調査したところ,アスファルト固化処理施設東側及び南側の道路周辺に,一部汚染が認められたため,2時30分に施設周辺を一時管理区域に設定した。また,5時20分に一時管理区域の範囲を拡大した。
     なお,事業所内外の環境放射線測定装置(モニタリングポスト,モニタリングステーション等)による放射線測定結果は,通常の変動範囲内であった。
     また,3月13日から,一時管理区域の清掃を行うとともに,破損した窓等の閉口作業などの応急的措置を実施した。
    (2) 事故発生日以降
     @ 環境モニタリング
     爆発発生直後にアスファルト固化処理施設周辺(周辺監視区域内)で採取したろ紙,土壌試料及び雨水排水溝の水の一部に事故の影響とみられる有意な値が検出されたが,事業所で実施した環境モニタリングでは有意な値は検出されず,平常の変動範囲内であった。
     一方,第一付属排気筒の排気モニタ,第二及び第三低放射性廃液蒸発処理施設の局所排気口の排気モニタの測定結果についても,12日以降は通常の変動範囲を超える上昇傾向はなかった。
    なお,主排気筒,第二付属排気筒及びその他の局所排気モニタについては,通常の変動範囲内であった。
     A 現場復旧のための準備作業
     アスファルト固化処理施設及びその周辺施設の状況確認と復旧のための準備作業を3月12日から開始した。
       アスファルト固化処理施設では,施設内部の放射線汚染状況の確認,セル換気系のフィルタ交換作業及びアスファルト固化体への水噴霧による冷却を行った。アスファルト固化処理施設及び第三低放射性廃液蒸発処理施設の破損窓の閉口工事を実施した。また,一時管理区域の清掃を実施し,3月16日には一時管理区域を縮小した。

  5. 被ばく線量当量の状況
     火災発生時に,アスファルト固化処理施設及び第三低放射性廃液蒸発処理施設から退避した作業員,爆発時にアスファルト固化処理施設周辺及び第三低放射性廃液蒸発処理施設内にいた作業員について,ホールボディカウンターを用いて合計112名の測定を実施した結果,37名に微量の放射能が検出されたが,摂取量は最大でも法令に定める基準値以下(134Cs:年摂取限度の約9700分の1,137Cs:年摂取限度の約2100分の1)であり,これによる預託線量当量はいずれも記録レベル(2mSv)未満であった。

  6. 原因と対策
     3月11日に,本社に理事長を本部長とする災害対策本部,東海事業所に所長を本部長とする防護活動本部を設置し,現場の状況把握に努めている。
     現在のところ,火災・爆発の原因は不明であるが,徹底的な原因調査を行い,その結果に基づき所要の対策を講ずることとする。
     事故の原因究明については,事故現場の応急処置が整いつつあることから,3月16日に「原因究明及び再発防止対策立案に専従する班」を災害対策本部に設置し,さらに学識経験者からご指導・ご助言を頂き,徹底的な原因調査を開始した。
     なお,原因と対策については,明らかになり次第報告する。

  7. 今後の対応
     火災・爆発により,施設からの放射性物質の漏洩があったため,施設及び事業所内外の環境モニタリングを継続して実施する。
     事故による設備への影響,施設内の汚染の状況については,現在調査中である。

  8. 添付資料(以下は動燃事業団のホームページにリンクしています)

    図−1  再処理施設建家配置図
    図−2  アスファルト固化処理施設 1階平面図
    図−3  アスファルト固化処理施設 2階平面図
    図−4  第三低放射性廃液蒸発処理施設 3階平面図
    資料−1 事故発生直後の主な経緯
    資料−2 アスファルト固化処理施設の概要及び当日の運転状況
    資料−3 アスファルト固化処理施設建家及びセル換気系について
    資料−4 被害等状況図
    資料−5 環境モニタリング
    資料−6 爆発後の措置

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