井手よしひろ
常磐新線沿線の伊奈・谷和原丘陵特定区画整理事業用地から発見された廃棄物に関して、企画部長並びに生活環境部長、土木部長にお訪ねします。
この問題は、昨年2月、常磐新線伊奈・谷和原駅を中心とする沿線の総合的開発が進められている「伊奈・谷和原丘陵部地域」におきまして、大量の廃棄物が発見された問題であります。
県では、ことの重大さを認識し、工事を一時中止し、他の区域にも廃棄物が埋められていないか、総合的な調査を実施しました。
その結果、調査をした8ヶ所の区域すべてで廃棄物が不法に投棄されていた事が判明致しました。
その面積は、少なくても5.7haにおよび、深さは15mに及ぶとのことでした。
そしてこの撤去には、30億円近い費用が見込まれていると一部新聞には報道されております。
私もこの質問にあたって、去る10月10日に現地調査を行い、特に、不法投棄がもっとも広範に行われた谷和原村東楢戸地区を半日かけて重点的に調査致しました。
現場に立ってまず驚いたのは、不法投棄の規模の大きさであります。調整池の工事で掘り出され、野積みされている土砂は草が生い茂っているものの、その間からは、建設用のコンクリートパイル、コンクリート管、鉄筋、木片、タイル片などの建設残土や、瓶、缶、ビニールなどの不燃ゴミなどあらゆる種類のゴミが顔を覗かせておりました。長靴や、安全グツのような靴でないと、立ち入りも危険ではないかと思われるほどでございました。
そこで、企画部長にお伺い致します。
この5.7haにおよぶ不法廃棄物は、重金属や健康に害を及ぼす有害化学物質の心配はないとのご答弁でした。はたして、この8ヶ所以外に廃棄物が不法投棄された場所は、本当にないのでしょうか?
企画部長
地元住民等に聞き取り調査を行って、ボーリング調査(24ヶ所)並びにサウンディング調査(218ヶ所)を行いました。この8ヶ所以外には、不法投棄はないと思われます。
井手よしひろ
次ぎに、その撤去費用の問題であります。
マスコミ報道では、「この廃棄物は、区画整理の事業主体である県が撤去するが、撤去費用は20〜30億円が見込まれ、そのツケが県民に回ってくるのではないか」との報道がなされております。
不法投棄の撤去費用は、まず、廃棄物を投棄した者に求めるべきであり、次には、その土地の所有者に求めるべきであります。
この点について、県の見解と処理財源をどの様に対応いくのか、お伺い致します。
企画部長
不法投棄した者や、廃棄物が埋設している土地の地権者に費用負担を求めていくほか、特別会計の中で、事業の効率的執行に一層努め対応してまいります。
不法投棄を知りながら県に土地を売った地主には、土地評価の下がった分の負担を求める。
不法投棄を知っていた借地をしている地主には、減歩率の強化を求める。
一般地権者の減歩率変更は考えていない。
廃棄物の処理のために、一般財源を投入することは考えておりません。
井手よしひろ
なぜこのような大量の不法投棄を、県が土地を購入したり、借地するときに発見できなかったのか疑問です。
事業用地の決定、買収にいたる経緯を具体的に明確にご説明ください。
企画部長
事業用地の決定、買収の経緯について説明します。
伊奈・谷和原丘陵部土地区画整理事業の区域設定にあたりましては、常磐新線のルートと併せて検討を進め、四つの視点から区域選定をおこなっております。その視点は、
- 伊奈・谷和原の両町村にまたがる区域
- 駅から半径1kmで、概ね10分で歩ける範囲である300ha程度の面積が確保できる区域
- 家屋などの支障物件が少ない区域
- 農振農用地が少ない区域
の四つであり、地元町村とも協議し、昭和63年に設定したものです。
今回、調節池の造成工事中に廃棄物が発見された谷和慮村の器機飛地内においては、昭和61年6月と平成元年4月に不法投棄事件が発生しましたが、いずれの事件でも、廃棄物の撤去といった行政指導がおこなわれたことから、影響はほとんどないと判断し、区域に含めたものであります。
また、用地買収については、平成元年五月から平成四年三月までの三か年をかけて実施しております。
一般的には、用地買収をする際には現況調査や補償物件調査を実施するのが通常でありまして、伊奈・谷和原丘陵部地区においても、これらの調査を実施して買収をおこなっており、当該箇所を買収する際にも現況調査を行い、周辺と同じ高さの平坦な土地であることを確認して買収をおこなったものであります。
井手よしひろ
今回の撤去費用は、総額750億円の事業費の内、5%程度にのぼる計算となります。景気や土地価格の低迷、常磐新線自体の開通の遅れ、その金利負担等々、この土地区画整理事業自体の事業計画を抜本的に見直しする必要があると思いますが、その見直しの必要性と時期について土木部長に質問します。
土木部長
土地区画整理事業の事業計画の見直しについては、常磐新線の開通時期の変更、宅地の需要動向等社会情勢の変化もあり、今後、地元と協議のもと、見直しが必要になるものと思われます。
なお、廃棄物関連としましては、ゴミが埋まっている土地の減歩率の強化や、撤去の費用など、明確になった段階で、検討することになります。
井手よしひろ
昭和61年に不法投棄をして検挙された首謀者S氏から、県は、区画整理事業用の土を16万7000立米購入しております。
このS氏は、問題の土地に平成2年頃から大量の残土を保管しはじめました。
そして、平成5年に区画整理事業が確定し、結果的にこの土地は、事業区域に指定されたわけです。県は、事業を進める支障になるこの残土を2億7000万円あまりで買い上げております。「補償した」と表現した方が正確ではありますが、結果的には、不法投棄の張本人から多額の買い物をしたことになったわけです。
県民感情からすると、どうしても納得できることではありません。こうした残土補償の経過について土木部長からご説明下さい。
土木部長
当該土砂の置かれていた土地は、従前より業者が建設用販売土砂の置き場として、借上げていたものであります。
県が区画整理の造成工事を行うにあたり、置かれていた建設用土砂が工事に支障となることから、補償をしたものであります。
補償した土砂につきましては、当地区の工事にあたっては盛土材が必要であつたこと、また、移転補償と比較した結果、買い取り補償をした方が安価であつたことから、品質を確認の上、買い取り補償を行い、地区内の盛土用土砂として活用いたしました。
井手よしひろ
公共事業を発注する行政としては、その処分が適正に行われたことを、最終段階まで確認するシステム作りが必要だと考えます。
たとえば、産業廃棄物処分で行われているような数枚の伝票を確認することにより、廃棄物の経路を確認するようなマニフェスト方式の拡大運用を図るなどして、建設残土の処分を確認することも方策の一つと考えられるのではないかと思います。土木部でのご検討をお願いいたします。
この土地は、昭和61年と平成元年の2回にわたって、不法投棄が発見され、業者が廃掃法違反で摘発されているイワク付き土地です。
昭和61年の不法投棄に関しては、同年6月に関係者3名が逮捕され、62年には行政処分が下されております。更に、平成元年の不法投棄に当たっては、平成2年に行政指導が行われました。
こうした2度にわたる不法投棄と行政指導の経緯の中で、この土地から不法に廃棄された廃棄物が、なぜ完全に撤去できなかったのか?県民の一人として大いなる疑問を抱くものです。完全撤去を指導できなかった理由について生活環境部長にお尋ねします。
生活環境部長
昭和61年と平成元年の不法投棄については、委員ご指摘のとおり、いずれも警察によって検挙された事件であり、行政指導したところですが、全量撤去には至らなかったものであります。
その理由についてですが、廃棄物処理法で撤去を命令できるのは、有害産業廃棄物が投棄されるなど「生活環境の保全上重大な支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるとき」に限られ、この不法投棄の場合は、投棄された物が建設廃材などであり、罰則が伴う撤去命令ができなかったため、行政指導で対応致しました。
行政指導にあっては、相手方が従わない場合は、強制力がないため、完全撤去ができなかったものでございます。
井手よしひろ
今回の不法投棄問題は、あまりにも大きなツケを県民に回したことになりました。
2度とこのような結果とならないよう、不法投棄を防ぐ仕組みを作らなくてはならないと思います。
そこで、不法投棄の防止策について生活環境部長に提案をさせていただきます。
10月1日付で、県警本部から併任で警察官を廃棄物対策課に配置させたと伺っております。不法投棄に機動的な対策を講ずるためには、有効な手法であると思います。
廃棄物が捨てられてしまってからでは、その処理に大変な費用と時間が掛かります。
水際で阻止する体制整備がなんといっても必要だと思います。
しかし、実情をお伺いいたしますと、この廃棄物対策課には、いざというときに赤色灯を回して現場に駆けつけられるような不法投棄パトロールカーが配備されていないと聞き及んでいます。このような車両の配置は、不法投棄撲滅への最低条件であると思います。
更に、無線や衛星携帯電話などの通信機材の配備も不可欠であります。
法的な判断がその場では難しい場合には、高性能のビデオ撮影機の備えも必要だと思います。政令指定都市のなかには、夜間でも撮影できる暗視カメラの装備さえ持っているところがあると聞いております。
不法投棄への速やかな対応のために、緊急車両、通信機器、ビデオカメラ等の配備についていかがお考えでしょうか。
生活環境部長
不法投棄への速やかな対応を図るための緊急車両等の配備についてですが、不法投棄現場から本庁や警察署との連絡体制を確保するための携帯電話の導入、現場写真を本庁に直ちに電送できるデジタルカメラの導入などを検討し、機動性の確保に努めて参ります。
井手よしひろ
早速通信機器やデジタルカメラ等への前向きのお答えをいただきました。
しかし、肝心なパトロ−ル車両については、今後の課題ということでしょうか、ご返事はいただけませんでした。行財政改革の大命題の元、来年度の予算編成については、厳しい査定が行われることと予想されます。
今回問題として取り上げている不法投棄の問題は、絶対に不法投棄は見逃さないとの、県の毅然たる姿勢を示す必要があります。
その意味では、廃棄物対策担当と県警本部との連携、廃棄物対策の機動力向上の2本柱の確立が是非とも必要です。
かさねて、緊急車両の配備はご検討いただきますことを要望いたします。
また、こうしたハード面の整備ともにソフト面の整備もご検討いただきたい。
不法投棄は、夜中や土曜・日曜といった役所が休みの日に行われることが多いのが実情です。
現在、県では、不法投棄110番を実施していますが、夜中や、土日は留守番電話とのことです。24時間、365日不法投棄情報を受け付ける体制を整備する必要があると考えます。
また、早期発見の体制を充実させるために、知事部局をはじめとして、市町村、警察だけに止まらず地域に密着し、機動力と公正さをもつ他の組織、例えば消防等との連携が必要であると思います。
生活環境部長
24時間、365日、不法投棄情報を受け付ける体制の整備についてですが、県では、不法投棄の通報窓口として不法投棄110番を設置しているところであり、この活用について、ポスターなどでPRに努めて参ります。
また、警察本部では.24時間体制で、110番通報に対応しておりますので、休日・夜間等でも、緊急の場合には、警察本部に直接つながる110番通報をお願いするよう広報して参ります。
次に、早期発見体制の充実についてですが、市町村に設置を指導している「不法投棄監視員制度」の充実・強化に努めるとともに、他の機関の協力を得ることなども検討し、更に「土地管理者(地主)」や「県民」に対して不法投棄の防止について啓発を行い、早期発見・早朝通報体制を強化して参りたいと考えております。
井手よしひろ
次に、衛生部長に県立医療大学付属病院の現状と難病対策について伺います。
昨年12月に開院した付属病院は、県民から多大の期待を受けております。リハビリテーションという時代の要請に応えるその使命は非常に大きなものがあります。
まず、開院以来の病床の稼働率並びに、入院待ちの患者数の推移についてお伺いいたします。
衛生部長
県立医療大学付属病院につきましては、お陰様を持ちまして、リハビリテーション専門病院として、順調に運営されつつあります。
まず、お尋ねの病床稼働率でございますが平成8年度が平均で、約47%、平成9年度上半期平均で、約70%となつております。
また、入院待ちの患者数は、月々によって異なつておりますが、例えば、一番多かつたのは本年3月末々46人、一番直近の9月未で18人となつておりまして、徐々に解消されてきております。
年/月
病床稼働率
月末待機患者
備 考
96/12
11.2%
18
97/1
34.9%
28
97/2
70.2%
30
97/3
73.8%
46
稼働率待機患者のピーク
97/4
65.0%
43
97/5
67.8%
29
97/6
76.8%
30
97/7
73.6%
31
97/8
72.7%
26
97/9
67.5%
18
(計画した稼働率を下回つている理由)
県立医療大学付属病院は、開院いたしましてまもなく一年を迎えようとしておりますが委員ご指摘のとおり、病床稼働率は計画よりやや下回つている状況にあります。これは新設まもない病院であり、リハビリテーション専門病院としてのスタッフの習熟という面で、まだ十分でない面もあるのではないかと考えております。今後、スタッフの習熟度が増し病院の運営が更に軌道に乗っていくことになれば、稼働率の向上も図られていくのではないかと考えております。
また、病院の病床稼働率をなお一層向上させるためには、臨床経験が豊かな、優秀な医療技術者(理学療法士・作業療法士)を確保していくことも重要でありますので、医療大学で養成しております質の高い医療技術者なども考慮しながら、医療技術者の活用、確保策について検討して参りたいと考えております。
井手よしひろ
私は、目標の病床稼働率を確保するためには、OT、PTなどの専門職の拡充と、看護婦の増員並びに資質向上が不可欠であると思います。
さらに、特別室いわゆる差額ベットなどの病室の改良などが必要だと思います。
昨年12月の福祉衛生委員会の中で、私は、医療大付属病院を難病対策の拠点として整備することを提案いたしました。
厚生省は、今年9月難病患者への一部治療費自己負担を求める代わりに、県毎の拠点病院と協力病院の整備方針を打ち出しました。
国の新たな難病対策事業の柱の一つに、「重症難病患者入院施設確保事業並びに難病医療ネットワーク整備」があります。
私は、この事業に対応して、難病のネットワーク拠点と拠点病院を県立病院に整備することが最も効率的であり、国の整備指針にも合致した方策であると思います。
重症難病患者の入院施設確保事業並びに難病医療ネットワーク拠点整備についてのご所見を衛生部長にお伺いいたします。
衛生部長
難病患者の受け入れ病院の確保についお答えいたします。
議員のご指摘のとおり、国におきまし難病患者に対して何らかの負担を求める方向で見直しを行う一方、重症難病患者への対策の充実を図ることとしております。
具体的には、各都道府県に平成10年度から二次医療圏に概ね1ケ所の割合で、重症患者の受け入れ協力病院を確保し、うち1ケ所を難病対策事業の拠点医療機関としてする方針であることが、先月開催されました全国主幹課長会議で説明があったところです。
県としましても、重症難病患者の受け協力病院等の整備・確保は、患者さん本人だけでなくご家族のためにも是非とも必要であるると考えております。
重症の難病患者さんやご家族にとりまして適切な医療機関が確保できるよう、その選定にあたっては、医療機関の規模、専門性、設備、あるいは交通の利便性等総合的に検討してまいりたいと考えております。
平成10年度 難病特別対策推進事業
重症難病患者入院施設確保事業(難病医療ネットワーク整備)
病状急変時や家庭における看護・介護ができなくなったときの医療提供とその情報ネットワーク作り。
<県>
難病医療ネットワークの運営
<拠点病院>
医療相談実施・入院促進事業・医療従事者の研究、研修・入院受け入れ 県で一ヶ所 <協力病院>
入院受け入れ 二次医療圏毎に1ヶ所 井手よしひろ
以上で私の質問を終了いたします。
今回は、現場の責任者である各部長にご答弁を頂戴しました。
橋本知事におかれましては、ただ今の質疑の内容をご理解の上、厳しい財政状況下ではありますが、県民の生命・財産を守る基本の環境と医療の問題でございます。最終的なご英断をお願いいたしまして、質問を終わります。
ご静聴、ご答弁ありがとうございました。