Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1997/12/17
97年12月15日、茨城県議会で報告された同議会行財政改革調査特別委員会の中間報告を掲載いたしました。1兆円を超す県債残高を抱える茨城県にとって、行財政改革は避けては通れない緊急の課題です。行財政改革の方向性を考える上で、基本的な視点を提供する中間報告であると思います。 皆様のご意見を期待いたします。 |
本委員会は、平成9年第2回定例会において「簡素で効率的な行財政運営のあり方に関する諸問題」を調査するために設置され、平成9年7月18日に第1回目の委員会を開催して以来、これまで10回にわたる調査審議を準めてきたところである。
この間、知事をはじめとして、全部局から行財政改革を進めるに当たっての課題とその対応の方向についての説明聴取を行うとともに、国の地方分権推進委員専門委員である東京大学教授神野直彦氏からの意見聴取や、行財政改革に積極的に取り組んでいる大阪府や三重県の状況の調査などを行い、行材政運営全般にわたる改革について精力的に調査審議を重ねてきたところである。
現在、県においては、平成10年度に向けて、予算編成や組織定数等の調整を進めているところであるが、非常に厳しい局面を迎えている県の財政状況を踏まえると、行財政改革は一刻の猶予も許されない状況にある。
このため、中間報告として、これまでの調査事項においてとりまとめた財政の健全化方策等についての提言を行うとともに、今後、さらに調査審議を進める予定である行政機構等の見直しについての考え方を示すものである。
なお、行財政改革を進めていくに当たっては、県民生活及び地域経済への影響に十分配慮するとともに、県民への広報を徹底し、理解と協力を得て、県民の立場に立った改革としていくことが重要である。
近年、社会経済情勢の急激な変化、及び国民生活意識の変化や価値観の多様化などにより、行政の果たすべき役割も大きく変わってきている。これらの新しい時代の要請に的確に対応していくには、国、地方を問わず、行財政運営のあり方について、根本的な見直しをしなければならない状況にある。
国においては、「一切の聖域なし」で、歳出の改革と縮減を進める財政構造改革をはじめとして、行政改革、経済構造改革などの「六つの改革」が進められている。
本県においては、平成7年度に「行政改革大綱」を策定し、今年度までを推進期間として改革に取り組んでいるところであるが、この間においても、社会経済情勢の急激な変化から、行政需要は拡大・多様化し、県税収入の伸び悩みと相まって、財政状況はますます厳しい状況になっている。今後、県民生活の向上に必要な施策を確実に推進し、地方分権の動きにも的確に対応した取り組みを可能にするためにも、行財政運営全般にわたる見直しが急務となっている。
このため、これまでの本県の行政改革の取り組み状況や、国における行財政改革の動向を踏まえ、地方分権の時代にふさわしい「簡素で効率的な行財政運営のあり方に関する諸問題の調査」を行うために、平成9年第2回定例会(平成9年6月19日)において本委員会が設置されたところである。
(参考)国の行財政改革及び地方分権の動き ○財政改革 財政構造改革の当面の目標及び財政運営の当面の方針、さらには各歳出分野における改革の基本方針、平成10年度から平成12年度までの集中改革期間における国の一般会計の主要な経費に係る量的縮減目標などを定めた「財政構造改革の推進に関する特別措置法」が、平成9年12月5日公布施行された。 【財政構造改革の当面の目標】
○行政改革(中央省庁再編等) 行政改革会議から、平成9年12月3日に、内閣機能の強化や新たな中央省庁の在り方などについての最終報告が出された。今後、国においては平成10年の通常国会に中央省庁再編等のための基本的な法律案を提出し、早ければ平成13年1月1日に、新たな体制への移行を開始する予定である。 ○地方分権 地方分権推進委員会から、平成9年10月9日までに4次にわたる勧告が出されている。今後、国において、平成10年の通常国会が終了するまでのできるだけ早い時期に「地方分権推進計面」を作成することとしている。 U.調査方針等 1調査方針 本委員会設置の経緯等から、調査範囲、調査項目及び調査機関についてこのような方針を決定した。 ア.調査範囲
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イ.調査項目
調査項目は、次のとおりとした。
@県行財政運営の現況と課題
A健全な財政運営のあり方
B簡素で効率的な行政機構のあり方
C行財政改革の具体的方策
ロ.調査期間
調査期間は、上記項目の調査が終了するまでとした。
本委員会の審議を進めるに当たっての基本的な視点を次のとおりとして、調査審議を進めた。
ア.県財政の健全化が急務である。従って、大胆に既存の事務事業や組織機構を見直す必要がある。
(見直しの基本的な視点)
イ.少子・高齢化の進行や県民ニーズの多様化など、社会環境の急激な変化及び地方分権の進展に対応し得る積極的な県行財政運営のあり方を検討する必要がある。
(検討の基本的な視点)
1.財政運営の現況と課題
(1)現況
(2)課題
今後、急速に高齢化が進行することが予想され、本格的な少子・高齢社会を目前にしている。このような中にあっても、引き続き県勢発展の活力を維持していくためには、早急に財政の健全化を図り、21世紀に向けて確固たる財政基盤を確立する必要がある。
このため、明確な目標、期間、手法等を定め、早急に財政健全化に向けての取り組みを始める必要があり、次のとおり提言する。
なお、最近の経済状況を見ると税収等の一層の低迷も懸念され、その場合には一層厳しい財政健全化方策が必要となる。
特に、当面平成10年度予算編成においては、これまで中期的な収支見通しとして事故の前提としてきた名目経済成長率3.5%の達成は極めて難しい状況となっていることから、今後の地方財政対策等の動向を注視しつつ、さらに強力な歳出抑制等の措置を講ずる必要がある。
ア.財政健全化目標
一般財源基金からの繰り入れに依存せず、単年度収支がおおむね均衡する財政構造の実現を目指すことを目標とすべきである。
この目標を達成するためには、歳出の徹底した合理化を図るとともに、あわせて県債の累増を極力抑制し、公債費の圧縮に努める必要がある。
イ.財政健全化推進期間
財政健全化は、平成15年度(2003年度)までを目標としつつも、できるだけ早い時期に達成すべきものである。
なお、平成10年度から平成12年度までの3年間を集中改革期間とし、重点的に財政健全化に取り組むべきである。
財政健全化を実現するためには、数値目標を含めた明確な指針を策定し、改革を進める必要があることから、財政健全化を目指す期間内で収支見通しの試算を行い、可能な限りの数値目標を設定した。以下、手段・手法及びその数値、目標を示す。
ア.事務事業の見直し(補助金の整理合理化を含む)
財政健全化推進期間中を通じ、官・民の役割分担などを基本的視点としつつ、ゼロベースの考え方にたち、事務事業の必要性、合理性、緊急性などを検討の上、徹底した見直しを行うべきであり、また執行に当たっても、ムダを省き、能率的・効率的に行っていく必要がある。
特に補助金については、漫然と継続することなく、社会経済情勢め変化やり官・民及び県・市町村の役割分担の観点を踏まえ、積極的な見直しを行うほか、類似補助金等の整理統合・メニュー化などを進めるべきである。なお、サンセット方式の導入についても検討を進めるべきである。
これらの見直しを進めることによって、平成10年度の既存の一般経費については、対9年度比で15%を上回る削減を図るとともに、平成11年度以降についても、引き続き、思い切って抑制すべきである。
なお、各分野において、施策の重点化、効率化を図ることにより、その効果を高めることに努め、真に求められる県民ニーズに的確に対応していく必要がある。
イ.義務的経費の抑制
財政運営の弾力性を確保する観点から、人件費、公債費などの義務的経費の抑制に努めるべきである。
人件費は歳出総額の30%以上を占めており、事務事業の見直しに合わせたマイナス2%シーリングや、組織機構の簡素・効率化などを徹底することにより、引き続き一般行政部門職員数の削減を図るとともに、児童・生徒数の減少に伴う教職員配置の適正な定数管理を行い、極力その総額の抑制に努めるべきである。
なお、職員数の抑制に当たっては、明確な目標を設定した、中期的な定員適正化計画を早急に策定すべきである。
公債費については、近年県債の発行が急増した結果急激に増加している。
このため、償還方法の変更による、公債費負担の平準化に努める必要がある。
ウ.公共事業の抑制
国補公共事業については、「財政構造改革の推進に関する特別措置法」に基づき、平成10年度の国の公共事業予算は対9年度比で7%以上の削減が見込まれ、また11年度及び12年度もそれぞれ前年度を下回ることとされているため、事業の重点化を図るとともに、その事業効果などを十分吟味した対応をしていく必要がある。
県単公共事業については、財政健全化推進期間中に、概ねその投資の水準を、バブル経済崩壊後における景気対策を実施する以前の水準にまで引き下げ、適正な規模とすべきである。
そのためには、明確な数値目標を設定し、県単公共事業予算を思い切って抑制すべきであり、平成10年度は対9年度比で15%を上回る削減を行うとともに、平成11年度以降も計画的に削減すべきである。
なお、公共投資は重点的、効率的に実施するとともに、公共工事建設コストの縮減を図るなど、より効果・効率的な社会資本整備を進める必要がある。
エ.大規模建設事業の見直し
総事業費が概ね10億円以上の別表4に掲げる事業については、個別に、社会経済情勢の変化等を踏まえ、事業の緊急性、効果、内容・規模等についての再点検を早急に実施し、事業費の縮減を図るとともに、集中改革期間中はできるだけ事業期間の延長や、着工の先送りなどの措置を講ずることによつて、歳出の抑制に努めるべきである。
なお、再点検に当たっては、施設等の完成後の管理運営、利活用見込みなどを十分精査、検証する必要もある。
オ.歳入の確保に向けての取り組み
租税負担の公平性の確保の観点から、県税滞納額の縮減を図るとともに、未利用財産の有効活用など蕨入の確保に努めるほか、使用料や手数料などについても受益者負担の適正化の観点から不断の見直しに努める必要がある。
ア.財政収支見通しの作成、公表
財政健全化を進めるに当たっては、経済状況の変化を踏まえた、中期的な財政収支見通しを立て、計画的に取り組んでいく必要がある。
また、財政の健全化を図る上では、県民の理解と協力が不可欠であるため、財政運営の現況とあわせ、財政収支見通しを公表すべきである。
イ.評価システムの導入など
今後、ますます増大する行政需要に的確に応えていくには、一つひとつの施策を効果的・効率的に行っていくことが重要である。このため、その効果・効率性を点検し、各部局自らの評価だけではなく、客観的に「評価」するシステムについての検討を進める必要がある。
また、各部局にわたる政策課題に効果的・効率的に対応していくには、各部局を横断するマトリックス方式など政策課題ごとに総合的な調整を行っていくシステムの導入にづいても検討を進める必要がある。
行政機構等の現況と課題
(1)現況
2.行政機構等の見直し
財政健全化が急務となっている現状を踏まえるとともに、本県を取り巻く社会経済状況の変化を的確に捉え、新たな県民ニーズにも対応し得るような簡素で効率的な行政機構等の再編・整備が必要である。
このため、これまで次のような課題について調査審議を行い、その見直しの考え方を示すものである。
なお、引き続き今回考え方を示す課題を含め行政機構等全般にわたっての調査審議を行うものである。
○政策形成・総合調整機能の充実強化
地方分権の進展に伴い、自主的・自立的に政策を立案・形成するとともに、一つ一つの事務事業が明確な目標に向かって、全庁一体的に、かつ効果・効率的に執行できる体制の整備・確立が急務であり、従って政策形成・総合調整機能の一層の充実強化が必要であると考えられる。
また、県民ニーズの多様化、さらには行政課題の複雑化などにより特定の部局のみでは対応しきれない行政分野が増大していることから、横の連携の一層の強化を図る必要があると考えられる。
○福祉、保健、医療部門の連携の強化
今後の少子・高齢社会に向けて、また平成12年(2000年)にも予定されている介護保険の導入に向けて、福祉サービスと保健・医療サービスを総合的、効率的に提供する体制の整備などが求められている。このためには、老人福祉と老人保健や児童福祉と母子保健、心身障害者福祉と精神保健福祉、看護婦、介護福祉士等の人材育成、社会福祉法人と医療法人の指導・監督などの分野において連携を一層強化する必要があると考えられる。
ア.福祉部と衛生部
福祉、保健、医療に係る施策等の企画立案、調整等を担う福祉部及び衛生部については、できるだけ早い時期に統合する必要があると考えられる。
イ.福祉事務所と保健所
市町村、施設等の指導・監督などを担う福祉事務所及び保健所については、県民の利便性を考慮し、再編統合を含めそのあり方を検討する必要があると考えられる。
○農政部門の充実強化
近年の農業を取り巻く情勢は、担い手の減少や高齢化に加え、ガット・ウルグァイ・ラウンド合意の実施など、大きな変革期を迎えている。このような中、農業生産体質の一層の強化を図るため、農政の総合的推進体制を整備する必要があると考えられる。
ア.農林水産部と農地局
農政の企画立案、調整等を担う農林水産部及び農地局については、できるだけ早い時期に統合する必要があると考えられる。
イ.農業総合センター地域農業改良普及センターと土地改良事務所
営農指導を担う農業総合センター地域農業改良普及センターと土地改良事業の実施、指導を担う土地改良事務所の連携を一層強化する必要があると考えられる。
○公の施設
ア.県立社会福祉施設
近年の民間社会福祉施設の整備充実に伴い、官・民の役割分担の視点から、県立社会福祉施設のあり方を見直す必要があると考えられる。
なお、民間施設と機能的に競合する県立施設にあっては、入所者の処遇に配慮し、民間に委託するなどの措置を講ずる必要があると考えられる。
イ.産業技術専門学院
社会経済情勢の変化や民間専修学校等の充実に伴い、訓練裸程・科目の見直しを含め、再編整備を進める必要があると考えられる。
○その他