県政情報ロゴ

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp)  最終更新日:1998/Jan/5


98年知事年頭所感

茨城県知事 橋本 昌

はじめに
 皆さん、明けましておめでとうございます。ご家族そろって、健やかに新春を迎えられたこととお慶び申し上げます。私も、知事として二期目の県政がスタートした中で、新たな気持ちで、新年を迎えることができました。

 さて、昨年を振り返ってみますと、長引く景気の低迷や行財政改革、金融機関の経営破綻、地球温暖化防止京都会議の開催など、まさに変革の時代を象徴するような出来事の多い年でありました。

 本県においても、動燃東海事業所の火災爆発事故や原研東海研究所の火災事故が発生するなど多事多端な一年でありました。

 しかしながら一方で、常陸那珂港や北関東自動車道などの整備の進展、鹿島港や日立港における相次ぐ中国航路の開設、大洗港におけるカーフェリーの増便などが進み、年末には、北関東自動車道について新たに施行命令が出されるなど、社会資本の充実に向けて一層の進展をみることができました。

 さらに、本県独自の米の新品種である「ゆめひたち」の誕生、国民宿舎「鵜の岬」の新館完成や、天心記念五浦美術館のオープン、鹿行地区及び県南地区での生涯学習センターの開所など、各種の事業を着実に進めることができましたし、本県が高齢化時代に向けた独自の施策として進めてきた「地域ケアシステム」が全国的にも高い評価を受け、自治大臣表彰を受けるという喜ばしいこともありました。

 改めて、職員の皆さんの日々の努力に感謝いたします。

 ところで、本年は、大河ドラマ「徳川慶喜」の放送、常陸那珂港への第一船入港などにより、本県が全国から大きく注目される年であります。是非とも、茨城県にとっても、皆さん方にとっても、希望に満ちた明るい年にしたいものです。

県政運営の基本方向
 さて、私は、昨年の選挙期間中、県内各地を回り、本県の豊かさや発展可能性の大きさなどを改めて実感し、21世紀は茨城の時代になるとの思いを一層強くしたところであります。

 そして、これからの4年間は、本県の輝かしい21世紀に向けて、新たな発展の基盤づくりや少子・高齢社会への備えを進める大変重要な時期に当たります。

 しかしながら、経済のグローバル化に伴う各国間の競争の激化、金融ビックバンに象徴される規制緩和の進展、世界に例を見ない速さで進行する人口の高齢化などにより、我が国の社会経済システムは根底から変えられようとしており、本県もまた、その大きな変革の嵐の中にあります。

 私は、こうした状況を踏まえ、次のような基本的な考え方の下に県政を進めていきたいと考えております。

 まず、第一は、現下の最重要課題であります行財政改革の推進であります。

 国におきましては、中央省庁の大幅な再編や財政構造改革など、抜本的な行財政改革に取り組んでおりますが、県におきましても、国と同様行財政改革に努め、行政組織の簡素・効率化や財政の自主的な健全化を図ることが急務となっております。

 今後、財政健全化方針や定員適正化計画などを含む新たな行財政改革大綱を年度内に策定し、総力を挙げて行財政改革に取り組んでいくことが必要であります。

 第二は、「愛されるいばらき」づくりに積極的に取り組むことであります。

 少子・高齢社会が間近に迫るなかで、誰もが安全・快適な生活環境の下で、安心して、生きいきと暮らせる社会をつくっていくことは、喫緊の課題であり、全ての県民の願いであります。また、近年、経済の成熟化、余暇時間の増大などに伴って、人々の価値観は多様化し、こころの面での豊かさを求める傾向が一段と強くなってきております。私は、県民の皆さんが毎日の生活の中で、「ものの豊かさ」と「こころの豊かさ」をあわせもった「新しい豊かさ」を実感できる社会をつくっていきたいと考えております。

 また、21世紀は交流の時代と言われており、全国各地、あるいは世界との交流がますます活発化してまいります。本県が、その中で世界に開かれた県として発展していくためには、県土基盤の着実な整備が不可欠であり、特に、陸・海・空の交通ネットワークの整備は、21世紀を茨城の時代とするために、重点的に取り組んでまいらなければならない事業であります。

 さらに、国際化の荒波の中で厳しい環境にある農林水産業や商工業の振興に努め、県全体の均衡のとれた発展と県民の暮らしの向上を図ってまいりたいと思います。

 そして、本県の「かがやく未来」を是非とも実現してまいりたいと考えております。

 第三は、本県のイメージアップであります。

 昨日からは、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」の放送が始まりました。また、11日には、徳川慶喜展示館が千波湖畔にオープンいたします。このドラマの放送により、全国各地から多くの観光客が来県されますとともに、本県の歴史や文化、観光資源などが全国に情報発信されますので、この千載一遇のチャンスを大いに生かしていきたいと考えております。

 同時に、今年は常磐線全線開通100周年に当たりますので、今月から三月にかけて、テレビCMによる本県の紹介や、常磐線と水郡線にSLを走らせるなど、JR6社とタイアップしたデスティネーションキャンペーンを実施してまいりたいと考えております。

 また、本県のイメージアップのためには、県民一人ひとりが、いばらきの良さを積極的にPRしていくことが大切でありますので、職員の皆さんにも、茨城の宣伝に精一杯努めていただきたいと考えております。

県政運営の課題
(1)行財政改革の推進

 次に、県政運営の課題について申し上げたいと思います。

 まず、第一は先ほども申し上げましたように行財政改革の推進についてであります。

 本県の財政状況は、今まさに危機的状況に直面していると言ってよいほど厳しい状況にあります。このままの状況で推移するとすれば、平成10年度以降、毎年、1000億円前後の財源不足が生じる見込みであり、早急に行財政改革を進め、21世紀に向けて確固たる行財政基盤を確立していく必要があります。そのためには、まず、我々自身が、行財政改革に対する認識を新たにし、内部体制を簡素で効率的なものとするよう最大限の努力をし、その上で、事務事業の見直し等に取り組んでいかなければなりません。

 昨年末には、皆様方にご理解をいただき、本庁次長級以上の3月期末手当の据え置きなど人件費の抑制を図ったところですが、さらに、福祉部と衛生部、農林水産部と農地局のあり方についての検討や、一般行政職員の計画的な削減などを進めていかざるを得ないと考えております。

 また、平成10年度の予算編成に当たっては、これまでの全ての事業を聖域なく見直すとともに、大規模事業の先送りなど厳しい対応が必要な状況にあります。

 今後、県議会の「行財政改革調査特別委員会」でのご審議や民間有識者による「行政改革推進懇談会」のご意見などを踏まえ、今年度内に新たな行財政改革大綱を策定してまいる考えであります。

(2)茨城型の福祉社会づくり

 次に、少子・高齢社会に備えた福祉・医療体制の確保についてであります。

 高齢者の誰もが安心して生活できる介護体制の整備を進めるため、昨年12月に、介護保険法が成立し、平成12年度からこの法律に基づく介護制度が実施されることとなりました。

 県といたしましても、この制度の本格的な実施に向け、在宅サービスや施設サービスを支えるマンパワーの確保、施設の整備などに努めるほか、介護サービス計画の作成に当たる介護支援専門員の養成や、市町村が試行的に行う要介護認定、介護サービス計画の作成に対する支援などを積極的に進めてまいります。

 なお、本県においては、地域ケアシステムが県内全市町村107カ所において導入され、素晴らしい成果を上げております。今後、介護保険制度との調整を図るなどして、本県独自の手厚い介護システムをつくってまいりたいと考えております。

 また、少子化は、労働力人口の減少をもたらし、ひいては日本社会の活力の低下など社会経済活動全般に大きな影響を与えるものであります。従って、国や県、市町村、企業などが最重点課題として、総合的な少子化対策に取り組んでいくことが必要であります。県としては、従来の0歳児医療費の無料化を3歳未満乳幼児まで拡大するとともに、「大好きいばらきエンゼルプラン」に基づき、延長保育や休日保育、低年齢児保育などの保育事業の充実、児童館や放課後児童クラブの整備などを進めております。県独自の補助制度の導入により延長保育を実施している保育所の数は、平成5年の20園から平成9年には110園へと大幅に増えております。また、私立幼稚園における預かり保育については、昨年、国補事業に加えて、県単の補助事業を導入した結果、平成8年度まで42%であった実施率が、平成9年度には82%に上昇し、大半の幼稚園で実施されるようになりました。引き続き、女性が仕事を持ちながらでも、安心して子どもを生み育てられる環境づくりに力を入れてまいりたいと考えております。

 医療面では、県民誰もが、いつでも、どこでも、安心して医療サービスが受けられる体制づくりを進めていく必要があります。中核的な医療施設が不足している行方地域における総合病院の建設や、筑波メディカルセンターにおける地域がんセンターの整備を進めるとともに、低利の融資による支援を行いながら療養型病床群の整備を促進していきたいと考えております。また、県立医療大学付属病院と市町村保健センターをTV会議システム等で結び、リハビリの訓練などをテレビ画面を通じて、遠隔地でも行えるよう、地域リハビリテーション事業にも取り組んでまいります。

 いずれにいたしましても、人生80年時代といわれる今日、誰もが、健康で生きがいを持って充実した人生が送れる社会づくりを進めていきたいと思います。

(3)地球環境の保全

 次に、地球環境の保全についてであります。

 昨年12月に地球温暖化防止京都会議が開催され、温暖化ガス排出削減に向けた目標が決定されたところであります。地球環境を守ることは、かけがえのない環境を私たちの子孫へ引き継いでいくための緊急の課題であり、このためには、県民一人ひとりが日常生活と環境との関わりについて認識を新たにし、環境に配慮した行動を早急に実践していく必要があります。

 本県では、昨年3月に「茨城県環境基本計画」を策定し、行政、事業者、県民の役割分担のもとに、環境への負荷の少ない資源循環型社会を目指した取り組みを進めているところです。さらに、今年度内に「茨城県環境保全率先実行計画」を策定し、県自らが率先して環境保全に向けた取組みを実践していく考えであります。

 特に、ごみ焼却施設から排出されるダイオキシンについては、ダイオキシンの除去に効果のある施設整備を行う市町村に対する県費助成を行うとともに、関係法令の改正を踏まえ、排出基準の遵守等についての指導を行っているところであります。今後は、市町村に対しては、今年度中に策定する「廃棄物広域共同事業計画」に基づき、ゴミ処理の広域化を指導するとともに、事業者に対しては、「ダイオキシン排出削減計画」の策定指導や技術的支援を行うなど、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、霞ヶ浦の水質浄化につきましては、第三期の「霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画」にもとづき、生活排水対策や面源負荷削減対策などを推進するとともに、「霞ヶ浦環境センター」の整備や、「地域結集型共同研究事業」により、茨城方式ともいうべき新しい河川浄化システムの開発などに努めてまいります。また、昨年10月には、アルゼンチンで行われた第7回世界湖沼会議において、湖沼環境の保全のための調査研究を行う開発途上国の研究者等を支援することを目的に創設した「いばらき霞ヶ浦賞」を授与し、高い評価をいただいたところであります。

 昨年、事故の発生した原子力施設の安全確保については、今後は、事故時に限らず、平常時においても、随時、事業所に立ち入り、施設の安全管理や廃棄物の保管状況などについて調査確認することとするとともに、放射線監視体制の強化や事故時の初動体制の充実強化、原子力防災計画の見直しなどを進めてまいります。

(4)21世紀に向けた社会資本の整備

 次に、21世紀に向けた社会資本の整備についてであります。既に申し上げましたように、今、県の財政は大きな危機に直面しておりますが、本格的な少子・高齢社会が到来する前に、陸・海・空の交通ネットワークなど県土の骨格をできるだけしっかりとつくっておく必要があります。

 まず、北関東自動車道については、東水戸道路と友部インターチェンジの間は、平成12年度の開通をめざして工事が進められているところでありますし、友部インターチェンジから岩瀬インターチェンジ間の約18キロメートルについても、昨年末に施行命令が出されましたので、一日も早い完成に向けて整備を促進してまいります。

 また、常陸那珂港については、北埠頭の埋立工事の促進や港湾用地の分譲を進めるなど、北関東自動車道と一体的な整備を進め、本年末には北埠頭の内貿埠頭に、また、来年には外貿埠頭に第一船が入港できるよう整備に努めてまいります。

 首都圏中央連絡自動車道につきましては、常磐自動車道と国道6号の間の用地買収に着手する予定であり、東関東自動車道水戸線についても引き続き調査を進め、早期事業化を国等に働きかけてまいります。

 さらに、常磐新線については、車両基地の造成や小貝川橋梁工事、鉄道本線の用地買収を進めているところでありますが、引き続きつくば地区において都市計画決定に向けた関係者との調整を進めるなど、平成17年度開業を目指して事業の促進を図ってまいります。

 一昨年、第七次空港整備五箇年計画に位置付けられた百里飛行場につきましては、運輸省及び防衛庁と協議を進めるとともに、アクセス道路など周辺整備の検討を進め、民間共用化の早期実現に向けて取り組んでまいります。

 こういった交通基盤の整備にあわせて、茨城中央工業団地などの造成やつくば国際会議場の整備、さらには、マルチメディア関連企業の集積などをねらいとしたメディアパークシティ構想の推進など、新たな発展の基盤づくりを着実に進めてまいります。

 一方、情報化の進展に対応し、県内のどの地域からも均一の電話料金でインターネットが利用できるよう15のアクセスポイントの整備を行うとともに、インターネットを活用した県政情報の提供などにも努めているところですが、さらに、今後の情報化推進の基本となる高度情報化推進計画の策定を進めるとともに、新県庁舎における行政事務の高度化・効率化をねらいとした情報通信ネットワーク基盤(LAN)の整備や県民情報センターの整備など、急速に進む情報化社会への対応を推進してまいります。

 なお、本県のホームページが、都道府県のホームページの中で、全国一のアクセス件数となっており、多くの皆さん方にご利用をいただいておるのは、職員の皆さんの努力の賜であり、嬉しい限りであります。

(5)産業の活性化対策

 次に産業の活性化対策についてであります。

 長引く景気の低迷や経済のグローバル化により、本県農林水産業や商工業はともに大変厳しい状況にあります。

 農林水産業については、担い手の高齢化や輸入農産物の増加と価格の低迷、米の生産調整の拡大など構造的な課題を抱えております。このため、新規就農のための資金制度などを活用して、担い手の育成を進めながら、ほ場の大区画化など生産基盤の整備や機械化・施設化などによる生産性の向上、新品種や新技術の研究開発などに努めてまいります。さらには、生産者や関係団体が一体となった全県的な生産振興運動を進めるとともに、東京都内の量販店と提携した「うまいもんどころ販売コーナー」の設置による販売促進など、激しい産地間競争に打ち勝てる体制づくりに努めてまいりたいと考えております。

 また、中小企業につきましては、現在の厳しい経済状況を踏まえ、経営資金の円滑な調達や新たな受注先の開拓を支援し、経営環境の改善に努めていくとともに、テクノエキスパートの派遣や産学官の共同研究などによる企業の新製品・新技術開発力の向上や、テクノデザインセンターを活用したデザイン開発の促進、さらには、今後成長が期待される新分野への進出の支援などに力を入れ、国際競争の中で生き残れる高い技術力を持った企業を育成していきたいと考えております。特に、中小企業が集積し、産業の空洞化が懸念される県北臨海部や我が国有数の石材産地である筑波西部については、今後、「特定産業集積活性化法」を活用して、地域産業の活性化を推進してまいります。

 商業については、従来の賑わいが失われつつある中心商店街の活性化を図るため、街路灯、駐車場等の共同施設の整備や商店街の景観整備を行うための店舗改造の支援など、まちづくりと一体となった商店街の活性化対策に力を入れてまいりたいと考えております。

職員の皆さんへ
 次に、職員の皆様へのお願いであります。

 先ほども申し上げましたように、県財政は極めて厳しい状況にあり、総力を挙げて行財政改革を実行していく必要があります。職員の皆さん方におかれましても、それぞれの立場で、本県の厳しい財政状況を十分認識され、職員一人ひとりが自らの意識を改革し、事務事業の見直しや経費の節減に積極的に努め、最少の経費で最大の効果をあげられるよう工夫をしていただきたいと思っております。

 また、国においては、本年前半にも「地方分権推進計画」を策定する予定であり、地方分権はいよいよ本格的な実施段階を迎えることとなります。地方の自主決定権が大きくなることにより、地方公共団体における企画立案、調整、実施等の行財政能力がこれまで以上に重要になってまいりますし、地域間競争が一層激しくなってくることが予想されます。

 こうした地方分権の進展に対応し、個性豊かで、活力ある地域社会を築いていくためには、職員の皆さん自らが切磋琢磨し、政策形成能力の向上を図るとともに、自らが主体となって地域を創っていくという意識を強く持つことが必要であります。今後、政策形成能力の向上を図るための研修や、国などとの人事交流、民間企業への派遣などを積極的に進めていく考えでありますが、最も大切なのは皆さん方の心構えであるということを肝に銘じていただきたいと思います。

 次に、県政は生活者である県民のために、県民とともに推進していくことが基本であります。常に、県民サービスの充実という視点にたって、県政を推進していく必要があります。このようなことから、多くの県民の声を聞き、それぞれの地域の実情や課題を的確に把握したうえで、生活者の視点を重視した施策の推進に努めていただきたいと思っております。

 ところで、最近、知事への手紙の中に、職員の勤務態度についての苦言が散見されるようになってまいりました。

 職員の皆さんには、常に県民の立場に立った、親切、迅速な行政を目指すとともに、県民の信頼を損なうことのないよう、一人ひとりが襟を正して、常に節度ある行動を心がけていただきたいと思います。

おわりに
 最後になりますが、大変厳しい財政状況の中ではありますが、今年も茨城の発展に向けて、知恵を絞りながら、一緒に頑張っていただきたいと思います。同時に、県職員である皆さんには、仕事ばかりでなく、地域社会の活動やボランティア活動などにも積極的に参加し、豊かな人生を歩んでいただきたいと思っております。

 お互い、健康に留意しながら、この一年間、元気で活躍されますことを祈念致しまして、年頭のあいさつといたします。


Webメニュー選択画像