PCB入り変圧器74,000個 |
FujiFinePix4700Zで撮影。
PhotoShop6.0で、解像度を変更、自動レベル補正、アンシャープフィルターを使用しました。
茨城県猿島郡境町大歩の東京電力新古河資材置き場に、PCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む絶縁油を使用した使用済み変圧器が、74000個も屋外に保管されています。
東電によると、この資材置き場は1990年1月に境町と建設に関する協定を締結し、4月からPCBを含む絶縁油を使った変圧器の搬入を開始しました。
1992年の廃棄物処理法の改正で、保管管理状況を自治体に報告する義務がある特別管理産業廃棄物にPCBが指定されたのに、東電は報告を怠っていたことがわかっています。東電は96年にPCBの無害化処理方法を開発。99年の4月、特別管理産業廃棄物の保管場所として、同資材置き場の届け出を行い、置き場の前に「PCB汚染物質保管場所」の看板を掲示しました。
その看板を99年6月頃、ごみ不法投棄の監視パトロール中にこの看板を発見し、2000年、住民団体「伏木北部環境を守る会」が東電に説明を求め、東電から変圧器が70,000個余りあることが初めて説明されました。
「雨ざらし状態で保管して、PCBの流出の可能性はないのか」などと不安が高まりました。
東電は、住民や町に、安全に管理していることを強調し、「将来PCBの処理施設が完成するまでは、一時的保管場所として使用したい」と理解を求めました。しかし町当局は、「管理が法律に適合しているからといって、必ずしも安全ではないことは、臨界事故や雪印の事件で明らか。現状では、変圧器を野ざらしで管理するなど、危険性は払しょくできていない」として、早急な全面撤去と、新規持ち込みの中止などを要求していました。
2001年1月 境町と東電が協定書調印
年が明け、東京電力側は、2007年3月末までに全量撤去することで町と合意し、1月12日、保管に関する協定書に交わしました。
協定によると、来年3月末までは暫定措置として、町は東電による使用済み変圧器の搬入を認める。東電はこの間の搬入分を同6月末までに搬出する。
さらに、PCBの地下浸透防止対策や、年4回以上の水質、土壌検査を東電が実施することを明記。町、東電と地域住民の代表で構成する協議会も設置する。としています。
町役場で行われた調印式には、橋本正士町長、東電茨城支店の山口学支店長らが出席。橋本町長は「協定書は地元住民の意向を最大限に尊重したうえで、当事者間で合意に達したもので、町議会と地元住民の了解も得たもの」と述べました。当初は、新規持ち込みの禁止と即時全量撤去を要求していたが、2007年3月までとしたことについては、「PCBの無害化処理に要する日時を勘案した」とし、新規持ち込みを認めたことについては、「代替施設の確保を考慮した」と説明しました。
来年3月末以降の変圧器の保管場所について、東電側は「県内の候補地の検討を行っている最中」とし、PCB処理施設については「出来るだけ早く建設したい」としています。
一方、即時全量撤去を求めている「伏木北部環境を守る会」は、「協定内容は不満。今後は、町、東電と住民代表で構成される協議会で、地域住民の意見を主張していきたい」と主張しています。
PCB処理の法的な枠組み整備と早期処理、そして保管場所などの情報公開が必要
井手よしひろ県議は、2001年3月20日現地の実地調査を行いました。
休日であったため、所内の立ち入りは出来ませんでしたが、東電新古河変電所に併設された資材置き場の入り口からは、PCB入り変圧器の保管状況を手に取るように見ることが出来ます。背伸びをして撮った写真が掲載の写真です。
変圧器の様子をよく見てみると、すでに表面の腐食が見られる物もあり、しっかりとした管理体制が望まれます。
PCB(ポリ塩化ビフェニール)は、1881年、ドイツの科学者らによって合成され、化学的安定性や不燃性、絶縁性などに優れ、大量に生産されました。わが国でも1954年に生産が始まり、高圧トランスや高圧コンデンサーを中心に、盛んに使われてきました。
ところが68年に起きたカネミ油症事件でPCBの毒性が表面化し、72年には製造中止、回収、保管が義務づけられ、74年成立した「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」で、製造・輸入・使用が禁止されました。
PCBが大量に使われているのは高圧のトランス(変圧器、1台当たりのPCB約100キロ)、コンデンサー(蓄電器、同数10キロ)で、最近の調査では39万台もあります。そのうち、未報告のものが約1万5000台、紛失したものが1万1000台もあることが分かっています。
つまり、境町の保管場所には、約7400トンのPCBが保管されていることになりますし、全国の2割近くの量が置かれていることになります。
政府は、その無害化処理を保管事業者に義務づける「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案」を2001年2月20日、衆議院に提出し、早期成立をめざしています。また、同法を円滑に運用するため、「環境事業団法の一部を改正する法律案」を同時に提出しました。
特別措置法案は、PCBを使ったすべての廃棄物を対象に、保管義務者に対して保管状態の届け出と無害化処理を義務づけることを柱に、(1)国がPCB廃棄物処理基本計画を策定(2)都道府県は国の基本計画に即した処理基本計画を策定する(3)PCB廃棄物について保管・処分状況の都道府県知事への届け出義務と、事業者への一定期間内でのPCB廃棄物処理を義務づける(4)処理命令違反に対し、3年以下の懲役あるいは1000万円以下の罰金を科罰則規定(5)国・都道府県の立ち入り検査権を認める――などが盛り込まれています。
PCBは人体への毒性や内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)としての働きもあり、極めて有害な物質で、世界中で無害化処理が進められています。
ところが、わが国のPCB処理は一部の民間企業による焼却処理を除き、ほとんど行われませんでした。このため、2010年までに処理が終わる予定になっている欧米などの先進諸国に比べ、手つかずの日本は、PCB処理では世界で最も遅れた国になっています。
PCB処理の法的な枠組み整備と早期処理、そして保管場所などの情報公開を強く主張します。
(東電と境町、住民団体との協議の課程は、読売新聞の記事を参考にさせていただきました)