2.4Gbpsの光ファイバ網を県が整備、全国で2番目
いばらきブロードンドネットワーク稼働
茨城県庁2階県民ホール
2003/4/7、Fuji FinePicsF410で撮影。PhotoShopで解像度変更後、色調調整。2003年4月1日からサービスを開始した県の高速大容量通信網「いばらきブロードバンドネットワーク(略称・IBBN)」のオープニング・セレモニーが開催されました。
冒頭挨拶に立った橋本昌知事は「IBBNで本県は本格的なブロードバンド時代を迎える。全国トップレベルのIT社会を茨城に実現したい」と語りました。(以下全文要旨)
会場には2台の大型テレビが据えられ、アクアワールド大洗のイルカショーを従来回線(ISDN)とIBBNを使って生中継。高速大容量通信による鮮明で自然な映像の魅力を実演しました。
また、会場では、IBBNを使って日製水戸病院(ひたちなか市)とリリー文化学園(水戸市)とを結んだテレビ対談も実演しました。
日製水戸病院は、患者の胸部断層データをIBBNを使って、日製日立病院に送り診断するシステムを整備します。
リリー学園長は、「画像や音声を取り込んだネット用教材を作成できたら」など、ブロードバンドの可能性に期待が寄せられました。
井手よしひろ県議らが提案したいばらきのIT化構想が、提案から3年を経て実現しました。
いばらきブロードバンドネットワークオープニングセレモニー知事挨拶要旨
本日、「いばらきブロードバンドネットワーク オープニングセレモニー」を開催いたしましたところ、多くの皆さんにお集まりいただき、ありがとうございます。
「いばらきブロードバンドネットワーク」は、本県のIT戦略を進めるうえでの基盤として、県内全市町村とともに整備を進めてまいり、今月1日から、本格的な運用を開始したところでございます。
このネットワークは、全国トップレベルの2.4ギガビットという高速・大容量で情報のやりとりを可能とするもので、これにより、まさに本県は本格的なブロードバンド時代を迎えることになったわけであります。
本県では、ITの飛躍的な進展に対応し、県民誰もがITを利用できる環境の実現をめざし、平成13年度に「茨城県IT戦略推進指針」並びにアクションプランを策定し、「県民・企業など誰もがうれしいと感じるITネットワーク社会」を目標に、現在、各般の施策を推進しているところでございます。
なかでも、いばらきブロードバンドネットワークは、その基盤として位置づけているものであり、これを積極的に活用し、県民の皆様が高速インターネットを通じて、音楽配信やオンラインショッピング、ファッション情報など、民間の様々な情報サービスを受けられるようにしてまいります。また、行政といたしましても、スポーツ施設予約システムを皮切りに、県域公共図書館ネットワークや原子力防災情報ネットワークなど、双方向性・即時性に配慮した情報サービスの提供に取り組んでいくことにより、ブロードバンドの普及と情報サービスの利用拡大を図ってまいりたいと考えております。
このため、ブロードバンドネットワークを企業など民間の方々に無償で広く開放することし、昨年12月から公募を開始したところでございますが、100社を超える県内外の企業の方から相談を受け、このうち、具体的に利用したいとの申込みは30社を超え、すでに利用を開始、あるいはまもなく利用を開始するところが10社ほどという状況でございます。
こうして民間の方々に積極的に利用していただくことは、本県のIT戦略の目標実現に向けた取り組みを加速するものであり、大変心強く感じている次第でございます。今後、市町村とも緊密な連携を図りながら、ブロードバンドネットワークを様々な分野において活用し、サービスの一層の充実に努めてまいりたいと考えております。そして、全国でもトップレベルと言われるようなIT社会を、この茨城において実現してまいりたいと考えております。
さて、本日は、アクアワールド大洗からのライブ中継や、いばらきブロードバンドネットワークを利用したテレビ対談を皆様に御覧頂き、ブロードバンドの素晴らしさを、つぶさに実感して頂きたいと存じます。
最後にいばらきブロードバンドネットワークが多くの県民の皆様に利用されますことを祈念いたしまして、簡単ではございますが、開会に当たりましての御挨拶といたします。
<参考資料>読 売 新 聞(2003/4/2地方版)「いばらきブロードバンドネットワーク」(IBBN)
生活変える新通信手段 IT立県への起爆剤に!
親子で学ぼう・いばらきブロードバンドテレビのように動画や音声のやり取りができる高速回線「いばらきブロードバンドネットワーク」(IBBN)のサービスが1日に始まりました。情報技術(じょうほうぎじゅつ)(IT)の基盤(きばん)となるネットワークは、私たちの暮(く)らしをどう変えるのでしょうか。
直径0.01ミリの通り道
「この細い二本のガラス線が、ネットワークを結んでいるんですよ」。水戸市(みとし)の県庁で、県企画部情報政策課(けんきかくぶじょうほうせいさくか)の須田裕之(すだひろゆき)IT推進室長(すいしんしつちょう)(49)が、かみの毛のような光ファイバーを見せてくれました。線の直径は0.15ミリ。さらに、その線の真ん中の直径0.01ミリの部分が光の通り道です。電話線などは銅(どう)線で、電圧の高低にほん訳された音声などの情報を伝えます。これに対し、光ファイバーは光の点めつを利用します。遠くに行くほど弱くなる電気に比べて、光はより大量の情報(じょうほう)を正確(せいかく)に伝えることができるため、あらたな通信手段(しゅだん)として国内外で整備(せいび)が進んでいます。IBBNでは、4つのリングがネットワークを作っており、光ファイバーの総延長は約800キロになります。
2.4ギガのすごさ
回線の通信速度は、一秒間に0、1という情報の基本(きほん)単位をどれだけ送ることができるかで決まります。IBBNの通信速度は2.4ギガで国内では最高レベルです。ちなみに、ギガはメガの千倍、キロの百万倍を表す単位です。
どれだけ速いのでしょうか。回線を道路に例えると、これまでは一車線しかなかった道が広がり、一万以上の車線ができたようなものです。一挙に一万台の車が通れるようになるのです。
みなさんが電話線などで使っているインターネットで比べてみましょう。比較的速いといわれるISDN(総合デジタル通信網(もう))の通信速度は64キロで、5分ほどの曲を自分のパソコンに取り込むには約10分かかります。ところが、IBBNではわずか0.016秒ですんでしまうのです。要するに、IBBNは約4万倍の情報を一度に伝える能力を持つわけです。こうした従来より速い回線をブロードバンドと呼びます。最近は、通信速度がメガクラスの民間の回線サービスが広がり、ブロードバンドの利用者は800万人を突破(とっぱ)しました。ネットに巨大図書館
では、IBBNはどのように使われるのでしょう。県は、県内の公立図書館をIBBNで結び、本をすぐに探す図書資料けんさくシステムを計画しています。当面は、公立図書館のパソコンしか使えませんが、将来(しょうらい)は、自宅から探すことも可能になります。県内の全図書館にある本は約1000万点で、ネットワークで結べば、巨大(きょだい)図書館が生まれます。
遠く離れた学校同士がテレビ会議などを利用する交流授業もさかんになるでしょう。日立(ひたち)IT市民の会の野地均一(のちきんいち)代表(45)は、「公共施設(しせつ)でIBBNを活用するためのソフト開発が、地域(ちいき)の産業として発展(はってん)する可能性もある」と期待します。
自宅で、美術館(びじゅつかん)の雰囲気(ふんいき)を味わうこともできそうです。県は、美術館や博物館(はくぶつかん)をネットワークで結び、収蔵品(しゅうぞうひん)の情報や展覧会(てんらんかい)のスケジュールを伝える電子美術館を作る計画です。将来は、収蔵品や建物内部の様子を細かく再現するバーチャル美術館もできるかも知れません。岩井市(いわいし)の県自然博物館に展示されている迫力満点(はくりょくまんてん)のマンモスや、水戸市の県近代美術館に収蔵されているモネやルノワールなどの名作の数々が、自分の足で歩き回っているかのように、パソコン上で立体的(りったいてき)に楽しめるのです。
IBBNは83市町村の役場をつなぐ予定で、県は県内の体育館などの公共施設をパソコンで予約できるシステムや、地方税や保険料(ほけんりょう)などの手続きが自宅からも可能になる電子申請(しんせい)システムの開発を計画しています。医療の世界も大きく変わります。病気の名前などの患者(かんじゃ)情報は現在、紙のカルテで管理されていますが、将来はパソコンに打ち込む電子カルテが主流になるといわれます。近くの診療所(しんりょうじょ)で診察(しんさつ)を受け、大病院で手術を受ける場合なども、レントゲンの画像(がぞう)やカルテをIBBNでまたたく間に大病院に送ることができます。難しい手術の場合、専門のお医者さんにレントゲンなどを送り、万全を期すのが当たり前になるかもしれません。
最近、官庁(かんちょう)や企業のコンピューターへの外部からの侵入(しんにゅう)や、コンピューターウイルスが社会問題となっています。IBBNも、回線の一部にウイルスが侵入する危険こそありますが、まんえんすることはありません。須田・IT推進室長は鉄道に例え、「利用者ごとにレールが決まっているのがIBBNの特徴(とくちょう)」と説明します。回線を通る情報は入り口でレールごとに振り分けられるので、ウイルスは広がらないのです。
当面は限られた使用
IBBNを使えるのは当面、市町村役場や公共施設、それにアクセスポイントへの接続料(せつぞくりょう)を払った民間企業にかぎられます。また、2.4ギガの威力(いりょく)を発揮(はっき)するのはIBBNの中だけで、IBBNにつなぐ回線の通信速度が遅ければ、スピードはダウンします。
県民の生活に根付くにはまだまだ時間がかかりそうですが、野地さんは、「IBBNは、IT立県の起爆剤(きばくざい)」と評価します。元々、最先端の研究機関が集中するつくば学園都市(がくえんとし)を抱える本県は、ブロードバンドへの需要(じゅよう)が高いと言われます。つくばギガビットラボの古賀達蔵(こがたつぞう)センター長(67)は、「有効活用をはかるには、研究機関や民間企業、インターネットのプロバイダーなどが使いやすい仕組みを作ることが必要」と指摘(してき)しています。(阿部 文彦)