小沢一郎が語る

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1996/OCT/8

国民の暮らしを4年間で立て直す

新進党の小沢一郎党首のインタビューから

国民と「5つの契約」結びたい


公明新聞 96年10月6日より転載

 

『選挙の争点』

 『日本の「再生・発展」(新進党)か「衰退・崩壊」の自社さか』

 −−今回の総選挙の最大の争点は何でしょうか。また選挙戦で訴えるポイントを聞かせてください。

 今回の総選挙の歴史的意義は、日本の「再生・発展」という改革の道(新進党)を選ぶか、「衰退・崩壊」という守旧の道(自社さ政権)を選ぶか、にあるといえます。今になって口先ではだれもが「改革、改革」と言っていますから、どれが本物かを国民の皆さんに見極めていただく選挙になると思います。

 今、景気回復とか経済の再建という言葉が盛んに使われていますが、マクロ(大きな)の視点で日本経済がどうだ、貿易収支がどうだと言われているうちはいい。けれども、このままいくと、じわじわと個人の現実の暮らしの中に響いて、生活そのものを崩壊しかねない。雇用も依然として最悪の状態で、失業がもっと増えるかもしれない。ですから、今回の総選挙で私が国民の皆さんに一番訴えたいのは、まだマクロの議論、すなわち、まだ足腰の立つうちに国民生活を立て直すための改革をするのが一番大切な問題だということです。

 −−今回の「政権構想」の中で、単なる選挙公約ではなく、選挙で国民と「契約」を交わすという画期的なスタイルをとったのは……。

 行政改革にしても国民の暮らしをより豊かにするためにやるんです。公共料金の引き下げも、高齢社会時代の不安を解消しようといっているのも、結局は国民の暮らしを守っていくという政治の原点の話です。今これをやらないと取り返しがつかなくなってしまいます。ですから、新進党は「暮らし立て直し政権」をつくって、バブル経済とその崩壊で疲れ切っている国民生活を四年間で立て直します、ということを国民の皆さんと「契約」したい。

 契約は、不履行の場合、法的責任が問われます。総選挙で新進党に過半数を与えてくださり、政権を任せていただくなら、私たちは必ず「契約」を実行します。もし、「契約」を実行しなかった時には、私が責任を取り、政治家を辞め政界を去ります。「契約」のスタイルを取り、このように政治責任を取る決意表明をしたのは、「私たちは必ず実行する」ということを明らかにしたいと思ったからです。

 −−来年度からの十八兆円の大減税の財源はどうするのですか。

 消費税率据え置きと大減税を断行すると一時的に財政が悪化することは避けられません。しかし、経済の活性化、新しい時代に向けての構造改革などを行う中で、税収増が期待できるし、国・地方を通じた二十兆円以上の革命的な行政改革を進めることによって無駄な経費を省くこともできます。政府・与党、そして彼らにくみしている人たちは財政を悪化させるという理由で批判しますが、何もしないでいても、毎年二十兆円以上の国債発行(国の借金)が行われており、このまま無為無策の政権が続けば、結局、減税できない、借金は増える、経済は停滞し、破たんの危険に直面する。その一方、消費税だけはどんどん上がるという悪循環になってしまいます。

 今われわれがやるべきことは、一時のバランス(財政均衡)にこだわらず、思い切った政策を実行することにより、日本経済を将来的に活性化させ、立ち直らせる、それに最大の力を注ぐべきだと思います。行革は本当に困難なことですが、断固やらなければいけないと考えています。

 −−行政改革のタイムスケジュールはどうなんですか。

 今世紀中、総選挙後の新しい任期中に実行することが、すべての「契約」の前提です。行革は、最終的な結果を見るのにもう少し時間がかかる問題もありますが、しかし、行革のための制度、仕組みの導入は、総選挙後の任期中に実行します。

 行革の中身は、中央省庁(現在二十一省庁)を最終的に十省にするとか、国家公務員の削減、特に高級官僚を半分に減らす、特殊法人は原則全廃など新進党の「明日の内閣」の議論の中から、私が考えていた以上の思い切った意見が出てきました。私の長い経験からいっても、高級官僚が五十歳で辞めていくような実態を続ける必要はないし、ノンキャリアの人でも十分に課長、局長をやれる人はいます。今、勤めている人を解雇することなどできませんが、採用を減らすことで対応できます。

 

『言葉は同じ「行革」でも現政権には意思も力もない』

 −−中央省庁の再編については、橋本首相も半減する考えを唐突に言い出していますが。

 自社さ三党の連立政権は既に二年半たっています。「行革は内閣の最大の優先課題」と繰り返し言いながら、衆参両院で絶対の多数を持っているのに、なぜ今までやらなかったのか。なぜ新進党のいう省庁再編案を一顧だにせず、多数で廃案にしたのか。なぜ今、選挙前になってそんなことを言うのか。行革審などで省庁の再編その他の構想はなされており、あとは政治の判断と決断だけなのに、なぜ、また一年もかけて検討しなければならないのか。全く理解に苦しみます。ですから、言葉は同じでも新進党と現政権とは全く考えが違う。彼らには、それを実行する意思も力もありません。

 

国民との5つの契約

 日本の経済は厳しい試練に直面し、国民の間に将来への強い不安が広がっています。21世紀に向けた構想を明示し、責任を持って改革を実行する政治が求められているのです。
 今こそ、国民や民間の持つ潜在的な活力を引き出して、日本経済をよみがえらせ、国民の暮らしを守らなければなりません。
 新進党は「暮らし立て直し政権」をつくり、バブル経済とその崩壊で疲れ切っている国民の暮らしを4年間で立て直します。
 政治の原点である国民の暮らしの立て直しから始めることで、国民の政治不信を払拭し、国民と政治との一体感を回復します。併せて、経済・社会再建の突破口を開き、21世紀に向けた新しい国づくりを軌道に乗せます。
 そのために、新進党は今回の総選挙を通じて国民と五つの契約を交わし、それを「暮らし立て直し政権」で必ず実行します。

 『契約1』
 『消費税は3%に据え置き、さらに所得税・住民税の半減を中心として、来年度から18兆円の大減税を実施します』
 

  •  所得税・住民税を現行の半分に減らします。
  •  法人関係税は、現在の50%から40%に引き下げます。
  •  地価税の廃止を含め、土地税制を簡素化します。

 『契約2』
 『大胆な行政改革、地方分権、規制撤廃を断行し、国と地方の経費を20兆円以上減らします』  
  •  中央省庁をまず15省庁に整理し、最終的には10省に再編成します。国家公務員は約25%削減します。なかでも高級官僚は半分に減らします。
  •  特殊法人は原則として全廃し、どうしても必要なものだけを時限立法で存続させます。
  •  郵政、林野、交通など、国、地方とも現業部門を抜本的に改革します。
  •  地方自治体に対する国の補助金を全廃し、その財源はすべて地方に一括して交付します。
  •  全国3300の市町村を300程度に統合して、真の地方分権の担い手とします。
  •  国・地方の規制を撤廃し、民間の自由で活力ある経済活動を積極的に活用します。
  •  国民の生命と暮らしを守るため、行政全体を通じて危機管理体制を確立します。

 『契約3』
 『公共料金を2〜5割引き下げます』
  電気、ガス、水道、電話、郵便、交通などの公共料金を引き下げ、今世紀中に国際的水準にします。

 『契約4』
 『年金、介護を保障し、老後の不安を解消します』
 

  •  民間活力を生かした介護制度を確立します。
  •  公的年金の給付を将来も安定的に保障します。
  •  年金生活者などの預貯金が目減りしないよう金利水準を是正します。

 『契約5』
 『官僚依存を排し、政治家が責任を持つ政治を実現します』
 

  •  国会の審議は官僚による答弁をやめ、議員同士が討論する仕組みに改めます。
  •  副大臣・政務次官制度を導入し、政治家が政府の政策決定に責任を持つようにします。
  •  首相官邸の機能を強化します。民間人を首相補佐官に起用する仕組みをつくります。
  •  国会議員の定数を2割削減します。
 

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