日立の街角ニュース

 Copyright 井手よしひろ (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:97/08/06


フェージング現象を追う

茨城のUHF中継網

テレビが突然プツリ、原因は「フェージング現象」。
県央・県北一帯に深刻な影響を与える。

 日立市で、放送中のテレビが突然途切れたり、画像が大きく乱れる現象が起きている。この現象は、水戸市など県央・県北の一帯で発生しているという。特に97年7月21日の17:00〜20:00の間、7月29日の21:30〜23:30の間は、受信状態が著しく悪化し、民放の各局がほとんど受信できない状態に陥った。受信状態が極めて悪くなるため、テレビ受像器の故障や電波妨害ではないかと勘違いし、家電販売店やNHKに問い合わせる視聴者が多数出た。

 原因は、「フェージング現象」と呼ばれる電波障害で、大気中の電離層の状況によって、様々な電波が重なり合い、波の強さが大きく変化する現象。太陽の活動の活発化により、電離層が厚くなり電波を反射しやすくなる事によって発生すると言われている。また、気温上昇で、電波が曲がりやすくなることも原因の一つであり、例年、梅雨から秋□にかけて発生する事が多い。携帯電話やAMラジオに影響を及ぼすこともある。

 地元新聞(茨城新聞7月31日付)の報道によると、「水戸市や日立市など県央・県北の一帯で最近、放送中のテレビの画像や音声が突然途切れたり、乱れるトラブルが断統的に続いている。郵政省・関東電気通信監理局によると、原因は大気状態の異常で、在京放送局から日立市の中継所へ送信されるVHF電波が乱されているためだ。「フェージング現象」と呼ばれる電波障害で夏場には珍しくないが、「今年は前例のない深刻な状態」(同管理局)。放送局は「相手が未知の大気状態だけに、抜本的な解消策は当面見当たらない」と頭を抱えている」と伝えている。

 今回深刻な被害が出ているのは、日立市・風神山の中継所を経由するUHFエリア。県南地域は、東京タワーからのVHF電波を直接受信しているため、被害は起こっていない。

 日立風神山中継所は、県内向けUHFの基幹局である。東京タワーから発信されたVHF電波は、筑波山の宝鏡山局で中継され、SHF電波に変調され風神山中継局に送られる。風神山中継局より、水戸・岩瀬、笠間、大洗、御前山、奥久慈男体山、北茨城、十王などの中継局に送信される仕組みになっている。

 今回、障害を受けたのは、東京ターワーと筑波宝鏡の間、または筑波宝鏡〜日立風神局間のいずれかであり、現在民放幹事局であるTBSを中心に調査が進められている。

 従来は日立風神局は東京よりのVHFを直接受信し、中継していた。その当時は、こうした深刻なフェージング現象は起こった記録はない。

 しかし、昨年8月受信状態をより良くするため、距離が半分程度である筑波宝鏡局を中継して電波を受信することとなった。

 東京から直接受信するルートと筑波を中継するルートは、電子的により状況の良い方にスイッチが切り替わるシステムになっている。今回、このスイッチングがうまく作動せず、受信障害を深刻にした。29日は、TBSでは、筑波経由直結に固定したが受信状態が回復せず、11時半過ぎに、東京から直接受信する方式に切り替えたところ回復したという。

風神山中継所  一連の電波障害について、TBSは、大気状態の影響によるフェージング現象とみている。ただ、同現象の発生メカニズムは十分には鮮明されておらず、今年の本県の大気状態や気象状況との関連は説明できない、としている。TBSでは、29日以降専門家を風神局に派遣して有人による監視を続けた。システムの運用によってフェージング現象を少しでも避けられるよう対策を講ずるという。

 井手県議は、8月1日にNHK水戸放送局を訪れ、永田眞副局長、横堀保営業部副部長、五十嵐政清技術部副部長らから茨城県のUHF放送網やフェージング現象等の説明を聴取した。その後、風神山の中継所を現地調査し、有人監視を続けていたTBSの専門家から説明を受けた。

 

日立中継放送局
(日立市・風神山山頂)
風神山中継局
東京の民間放送局5社が共同で設置している中継所。通常の作業は全て電子化、自動化され無人で運用されている。また、直接各家庭に電波を送るだけではなく、水戸・岩瀬、笠間、大洗、御前山、奥久慈男体山、北茨城、十王など県央、県北などのいわば孫中継局に中継する業務も行っている。日立・常陸太田・水戸・ひたちなかを中心に17万世帯以上にUHFでのテレビ電波を中継する拠点中継局である。
使用放送局:日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京
幹事放送局:TBS
(問い合わせ先:03-5571-3751)
送信アンテナ:4ダイホール8段4箇
送信アンテナ高:地上33m
送信出力:画像100W、音声25W
開設:昭和39年6月
改修:昭和62年2月

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