Q12:ホームヘルパーの質的充実は図れるのか?

 Copyright Yoshihiro IDE (e-mail:y_ide@jsdi.or.jp) 最終更新日:1998/Feb/11


タンの吸引はなぜ出来ない。一回2時間で何が出来る。
茨城県におけるホームヘルパーの不足は、深刻なものがあります。平成8年の実績で平成11年の老人保健計画の目標に対する達成率は1/3に過ぎません。その上、市町村が採用を予定するヘルパーの人数を足しても57.6%にしか達さないという深刻な状況です。
 参考:茨城県の老人保健計画達成の状況

 その上に、そのヘルパーの資質や派遣の体制にも数々の問題を抱えています。

 介護保険制度の根幹とも言うべきホームヘルパーの充実は、深刻かつ重大な問題となっています。

ここが問題!!

たん吸引は代われず 家族の疲れ増すばかり

「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症」の患者の場合は、筋力の低下、萎縮から呼吸まひに陥る難病で、腕も足も動かなくなり、呼吸も人工呼吸器が「命の綱」となってしまいます。 在宅での介護の場合は、24時間ヘルパーの支援がどうしても必要になります。
 しかし、その際一番要望が多いのが「たんの吸引をヘルパーさんにしてもらいたい」ということです。しかし、市町村の福祉担当は、「医療行為に当たるのでヘルパーは手が出せません。もし、善意で行為に及んだ場合、事故が起きたら、責任が問われるのは自治体です」。との返事。ヘルパーさんが来てくれても、外出もできない。ゆっくり休養もとれない、そのため、心身の疲れが取れないという悪循環が続いているのです。

床ずれの治療も「禁じ手」

 寝たきりの男性Aさん(75)。脳血管障害で両手足が硬直して、床ずれがひどくなってしまいました。背中などに4カ所。大きいのは直径7センチ、深さ5センチほどで、赤くただれ、骨が見えるほど。
 Aさんの妻は、介護疲れによる腰痛で、おむつ替えもできない状態です。
 「血行をよくすれば治るかも」と考えたヘルパーのB子さんらは、ある病院で効果があったという「お茶がら湿布」を試してみました。お茶がらを煮た汁でしぼったタオルを、傷口の周囲に置き、両手で軽く押し続けます。タオルが冷めると、取り換える。一時間半も続けると、血の膿がにじみ出てきます。それを妻がふき取り、乾かして薬を塗りました。体位交換なども組み合わせ、湿布を1日おきに続けると、3週間後、肉が盛り上がり始め、5カ月ほどで完全に直りました。
 以来、B子さんらは、床ずれを訴えるお年寄りの症状に応じて工夫をこらし、おかげで病院で出来た床ずれが、在宅で治すことができるようになりました。
 しかし、これはヘルパーの仕事としては「禁じ手」なのです。

摘便・浣腸も御法度

 独り暮らしの男性(78)が、半月以上も自力で排便できず苦しんでいた。ヘルパーC子さんがおむつをはずすと、コチコチの硬い便が出かかっている。見かねて指でかき出すと、おなかは栓が抜けたようにすっきりしました。ところが、それを聞いた医師は「摘便は医療行為。なぜ119番しないか」とCさんを強く叱責しました。
 床ずれの手当てやタンの吸引、摘便のほか、ヘルパーが禁じられている医療・看護行為はたくさんあります。
 血圧測定、服薬、かん腸、下剤や経管栄養食など、体に何かを入れたり出したり、症状を判断したりすることは全て医療行為となります。
 手が使えない人に、代わって目薬をさすこともできません。体調の目安となる血圧も、「高い、低い」と、結果を告げてはいけないのです。

散髪もヘルパーさんがやると違法行為になる

 医療行為だけではなく、理容・美容でも「禁じ手」が数多くあります。
 髪を洗って乾かし、クシを入れて、衛生上カットするのは問題ありませんが、散髪、化粧、マニキュア、香水などは法令に違反するとされています。

週2回2時間の派遣は出来て、週1回4時間の派遣はどうして出来ない

 ヘルパーさんの資格の問題もさることながら、その運用の問題も大きい。
 現在の措置制度の中では、一回のヘルパーの派遣単位は2時間となっており、それ以上の長時間のサービスは受けられない。
 家事の手伝いなどの単純なヘルプであっても、2時間でどれだけのことが出来るのか、4時間と6時間とまとまった介護のを受けることへの要望は高まっている。


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