◇上層に寒気が入りやすく雷が多かった
月の初めはオホーツク海高気圧の勢力が強く、冷たい北の風が入って気温が低くなりました。このため、上旬の平均気温は13.8℃と平年より1.2℃低くなりました。その後は、日本の南で高気圧が強まり、下層へ暖かい空気が入るようになって気温は平年より高くなりました。この結果、月平均気温は17.2℃と平年より1.1℃高くなりました。ただ、上層では偏西風の南北への蛇行が大きく、周期的に寒気が入ったため気温の変動が大きくなりました。また、大気の状態が不安定になって雷の発生が多くなりました。
中旬は高気圧におおわれて晴れる日が多かったものの、下旬に入ると本州南岸に前線が停滞し頻繁に低気圧が通過して曇りや雨の日が多くなりました。このため、月の日照時間は168.4時間(平年比96%)と平年並みになりました。一方、月降水量は178.0mmと平年の111%になりました。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 17.2 16.1 月降水量(mm) 178.0 160.6 月日照時間(時間) 168.4 174.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 13.8 15.0 中旬 18.5 16.0 下旬 19.0 17.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 38.5 56.5 中旬 96.1 53.1 下旬 33.8 65.1
●5月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
◇5月11日の雷
今年の5月は、上層の寒冷渦が日本付近を通ることが多く、大気の状態が不安定になって雷のなる日が多くありました。日立市でも、10日、11日、16日、19日、28日に雷がありました。しかし、日立市を通過した雷雲は、いずれも規模が小さく、降水量も10日の雷雨で7mmの雨量があった以外は、1mm以下でした。11日の雷雲の様子を、地上と気象衛星から見比べてみたのが、下の写真です。
「A」の写真は、雷雲が真上を通過しているときのもので、雷雲の底を写しています。この雷雲が通過する前、15時20分から30分にかけて、北西方向に雷光と雷鳴がありました。また、15時40分から16時05分にかけて、にわか雨が降りました。このときの雷雲を気象衛星から見た写真が、「C」の写真です。(「D」の降水レーダー図で見るとおり、雷雨の中心は日立市の北を進んでおり、日立市役所における降水量は0.0mmでした。)
気象衛星「ひまわり」は、衛星の自転を利用して地球を北極から南極にかけて走査し、約25分で1枚の画像を撮影します。通常の観測では、毎時32分に北極から撮影を開始するため、日本付近を撮影する時刻は、毎時40分頃になります。したがって、「C」の写真の日本付近の撮影時刻は15時40分頃で、「A」の写真の撮影時刻とほぼ同じ時刻になります。
「C」の写真の矢印部分が、「A」の写真の雷雲になります。この後、雷雲は東へ進み、16時過ぎには東海上へ抜けました。このときの雷雲の様子が、「B」の写真です。日立市役所の上空は晴れています。しかし、気象衛星の写真で見るとおり、西側にはもうひとつ細長い雷雲が残っています。この雷雲の影響で、17時過ぎから19時にかけて、再び弱いにわか雨が降りました(この時も、降水量は0.0mmでした)。
●地上と気象衛星から見た雷雲及び天気図(5月11日)
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◇5月19日の雷
19日は東北地方を上層の気圧の谷が東へ進み、これに伴って寒気が本州上へ南下してきました。雷雲は、通常それほど規模の大きなものはなく、数kmから数十kmの帯状の形のものがよく見られます。しかし、5月19日の雷雲は上層の寒気の南へ入り込む形が11日に比べて鋭かったため、寒気の先端で雷雲が急速に発達しました。
「G」の気象衛星可視画像で見ると、東京湾の北に円形状に大きく発達した雷雲が見られます(「H」降水レーダー図も参照)。雷雲が非常に発達しているため、雷雲の頂上が圏界面に達し、巻雲となって偏西風に流され東へ広がっている様子が見られます。このときも、日立市には雷雲の強い部分はかからなかってため、16時から17時にかけて降水量1mmの弱いにわか雨が降っただけでした。
なお、雷雲は速い速度で南東へ移動していったことと規模が小さかったことから、発達した雷雲がかかった所でも降水量は多くなりませんでした。茨城県内のアメダス観測地点で降水量が最も多かったのは、筑波山の10mm(16時〜17時)でした。
●気象衛星から見た雷雲と天気図(5月19日)
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更新日:2000/06/22
訂補日:2014/03/19
名前 日立市天気相談所