◇秋を呼び込んだ台風第15号
上旬後半から中旬にかけては、太平洋高気圧におおわれ晴れて暑い日が続きました。特に、中旬は日本海に前線が停滞して南から暖かい空気が入ったため、旬平均気温は24.1℃と平年より2.4℃高くなりました。しかし、下旬になると太平洋高気圧が後退して2個の台風が関東地方の南東海上北東へ進み寒気を引き込んだため、気温は平年を下回るようになりました。この結果、月平均気温は22.0℃とほほ平年並みになりました。
また、秋雨前線の影響がなく、台風の影響を受けた下旬の前半を除いて高気圧におおわれる晴れる日多くなりました。このため、月の日照時間は180.0時間と平年の139%になり、9月としては1975年に次いで多くなりました。反対に、月の降水量は92.5mm(平年比47%)平年より少なくなりました。
9月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 22.0 21.6 月降水量(mm) 92.5 197.8 月日照時間(時間) 180.0 129.8
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 23.6 23.2 中旬 24.1 21.7 下旬 18.2 19.8
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 56.2 48.4 中旬 76.4 41.2 下旬 47.4 40.2
●9月の降水量と日照時間の記録
降水量(mm) 順位 年 降水量 1 1962 32.7 2 1961 72.1 3 1984 84.0 4 1992 86.0 5 1963 88.6 8 2003 92.5
日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 1975 204.1 2 2003 180.0 3 1992 174.1 4 1972 172.2 5 1981 170.5
●9月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける850hPa気温の推移
●9月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
20日から21日にかけて、台風第15号が本州南岸を北東へ進みました。この台風の影響で、本州の太平洋岸では北東の風が強まるとともに、下層を中心に冷たい空気が北から引き込まれ、気温が急激に下がりました。19日から23日にかけての気温の推移をみると、下のグラフのようになっています。19日の日中は、晴れて南西の風が吹き、気温が上がりました。14時28分には、日最高気温30.1℃を記録しています。20時前には、風向が北東に変わるとともに気温がしだいに下がり始めました。20日は1日中気温が下がり続け、夜中の24時には16.0℃まで気温が下がりました。1日半で14℃気温が下がったことになります。
台風通過前後の気温の日変化を比べてみると、15日から19日にかけては20℃から30℃の範囲で日変化をしていました。一方、24日から30日にかけては15℃から24℃の範囲で日変化をしており、ほぼ5℃近く日平均気温に違いがあります。これを、日平均気温の減少率からみると、約1か月季節が進んだことに相当し、台風によって一気に秋が深まったということができます。
台風通が沖縄付近にあった19日09時の上層850hPa面(高度約1500m)の気温をみると、東北地方南部より南では15℃から18℃と南からの暖かい空気におおわれていました。気象衛星の水蒸気画像で見ると、日本海側に沿って、白い雲の帯があり、南側の暖かい空気と北側冷たい空気の境目になっていることがわかります。
一方、台風が本州の南海上へ進んできた21日09時の850hPa面の気温をみると、東北地方から九州地方にかけて4℃から9℃と、冷たい空気が広い範囲に流れ込んでいることが分かります。21日09時の気象衛星の水蒸気画像で見ると、暖かい空気と冷たい空気の境目を示す白い雲の帯は台風と一緒になり、本州付近は西から暗黒色の領域に入って冷たい秋の空気におおわれてきたことを示しています。
●9月19日から23日にかけての気温の推移(1時間値)
●参考:9月19日と21日09時の地上天気図
●参考:台風通過前の気象衛星水蒸気画像と高層天気図
2003年09月19日09時の気象衛星水蒸気画像 | 2003年09月19日09時の850hPa高層天気図 |
2003年09月22日21時の気象衛星水蒸気画像 | 2003年09月23日09時の850hPa高層天気図 |
※850hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
◇二つの台風が関東の南を進み、北東から北西の風が強く吹く
下旬に入ると太平洋高気圧の勢力が弱まり、22日は台風第15号が、30日には台風第16号が関東地方の南東海上を北東へ進みました。台風第15号は房総半島の南東180kmの海上を、台風第16号はさらに遠く離れて房総半島の南東650kmの海上を進みました。しかし、台風の北または西側に高気圧があって、台風との間で気圧傾度が大きくなったことから、関東地方では沿岸部と伊豆諸島を中心に北寄りの風が強く吹きました。
日立市役所では、台風第15号による最大瞬間風速は22日に22.1m/s、台風第16号による最大瞬間風速は30日に23.5m/sとほぼ同じ強さの風が吹きました。ただ、台風第15号の場合は、九州の南から関東地方の南へ台風が進んできたことから、台風が近づいてくる前の21日未明から瞬間風速で10m/s前後の北東の風が吹き始め、22日の17時にかけて風の強い状態が続きました。一方、台風第16号の場合は、30日の2時過ぎから14時頃にかけて北西の風が強まり、風の強い状態は半日程度しかありませんでした。
なお、日立市の場合は台風よりも低気圧により強い風の吹く場合が多くあります。今年の場合も、3月2日に発達する南岸低気圧により強い風が吹きました。日立市役所では、最大瞬間風速29.9m/sの西北西の風と最低気圧981.6hPaを記録し、今回の台風によるものより風が強く、気圧も低くなりました。
●9月22日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 10.2 | 北北東 | 10:10 | 22.1 | 北北東 | 10:01 | 1006.5 | 04:52 |
南部支所 | 10.5 | 北東 | 09:04 | 20.6 | 北北東 | 09:57 | - | - |
水戸(金町) | 6.2 | 北北東 | 10:00 | 16.4 | 北北東 | 09:58 | 1006.5 | 04:34 |
●9月30日の風と気圧の記録
地点 | 最大風速(m/s) | 最大瞬間風速(m/s) | 海面気圧(hPa) | |||||
風速 | 同風向 | 同時刻 | 風速 | 同風向 | 同時刻 | 最低気圧 | 同時刻 | |
日立市役所 | 10.9 | 西北西 | 05:16 | 23.5 | 北西 | 03:14 | 1004.3 | 03:14 |
南部支所 | 9.2 | 北北西 | 09:07 | 17.9 | 北西 | 09:23 | - | - |
水戸(金町) | 6.4 | 北西 | 04:40 | 16.4 | 北西 | 09:49 | 1005.2 | 03:35 |
●9月21日〜22日と29日〜30日の風速、風向及び気圧の推移
●参考:台風第15号と第16号の経路図
●参考:9月22日と30日09時の地上天気図
作成日:2003/09/27
訂補日:2015/06/27
名前 日立市天気相談所