◇偏西風の蛇行が大きく、荒れた天気が多くなる
上旬と下旬を中心に、高気圧におおわれて晴れる日が多くありました。しかし、上旬の終わりから中旬にかけては寒気を伴った上層の低気圧(寒冷渦)が頻繁に本州付近を通過し、曇りや雨の日が続きました。このため、月降水量は228.0mmと平年の166%になり、4月の降水量としては観測開始以来3番目に多い記録となりました。一方、月の日照時間は179.8時間と平年並になりました。
気温の変化を見ると、月半ばに低気圧の前面に向かって南から暖かい空気が入り気温の高い日があった他は、平年並みからやや低い日が続きました。特に、下旬は平年より2℃以上水温の低い状態が続いている東海上からの北東風が入り、気温が平年より2℃近く低い日が続きました。このため、月平均気温は11.6℃と平年より0.4℃低くなりました。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 11.6 12.0 月降水量(mm) 228.0 137.5 月日照時間(時間) 179.8 175.0
4月の降水量(mm) 順位 年 降水量 1 1990 246.0 2 1999 230.5 3 2008 228.0
4月の日最大降水量(mm) 順位 年 降水量 1 2008 113.5 2 1971 97.8 3 1999 96.5 ※順位は降水量の多い方からで、1953年から2008年の統計
●4月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
今月は日本付近で偏西風の南北への蛇行が大きくなり、寒冷渦が頻繁に本州付近を通過しました。特に1日と8日及び18日は、寒冷渦に伴う地上低気圧と西または北側にある高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、西北西または北から北東の風が強まり、平均風速で10m/s、瞬間風速で20m/s前後の風が吹きました。この影響で、いずれの日もJR常磐線では列車の遅れや運休が発生しました。
3月31日に本州の南を北東へ進んだ低気圧は、寒冷渦の前面を北上しながら急速に発達し、1日の9時には三陸沖で中心気圧が1日9時には中心気圧が952hPaまで下がりました。このため、北日本から東日本にかけては気圧傾度が大きくなり、北海道や東北地方の太平洋側を中心に、瞬間風速が30m/sを超える強い風が吹き荒れました。関東地方でも、昼前から夕方にかけて北西の風が強く吹きました。
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7日から8日にかけては寒冷渦が本州中部を東南東へ進み、これに伴う地上低気圧が東海地方から関東地方の南海上を東へ進みました。地上低気圧は1日ほどには発達しませんでしたが、北側から張り出す高気圧との間で気圧傾度が大きくなり、関東地方南部では瞬間風速で30m/sを超える北東の風が吹き荒れました。日立市でも8日の朝から北東の風が強まり、9日の昼にかけて平均風速で7〜10m/s、瞬間風速15〜20m/sのやや強い北東の風が強く吹きました。
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17日から19日にかけて、再び寒冷渦が本州中部を東へ進み、これに伴う地上低気圧が関東地方の南岸を東へ進みました。寒冷渦に伴う地上低気圧は8日のときほどには発達しませんでしたが、低気圧が関東地方の近くを通過したことと北側から張り出す高気圧との間で気圧傾度が大きくなったため、関東地方では北東の風が強く吹きました。日立市でも18日の昼過ぎから北東の風が強まり、日立市役所では、18日20時19分には最大瞬間風速23.4m/sの北北東の風を記録しました。寒冷渦の動きが遅く、19日も関東地方の東海上にあってゆっくりと東へ進んだため、日立市では19日の昼頃まで平均風速で7m/s前後のやや強い北東の風が吹き続けました。
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18日の寒冷渦は動きが非常に遅く、17日の夜に日本海へ進んできた後、19日の朝にやっと関東地方の東へ進みました。寒冷渦の前面に広がる発達した雨雲は関東地方の南を東北東へ進み、伊豆半島や伊豆諸島の一部で1時間に50mm前後の強い雨が降りましたが、関東地方の平野部では強い雨の降ることはなく、総降水量も50から80mm程度と多くはなりませんでした。しかし、茨城県北部の沿岸部では、寒冷渦の東側から吹き込む湿った空気が南北に走る多賀が山地にぶつかる形になり、雨雲が同じ場所で発生し続けました。寒冷渦の動きが遅く、17日に夕方に降り始めた雨は19日の明け方まで続きました。特に、18日の朝から夜にかけては1時間に10mm前後の雨が降り続いたため、総降水量は150〜210mmに達しました。
茨城県北部の総降水量の分布を見ると、水戸市やひたちなか市などの平野部での総降水量は60mm前後でした。また、多賀山地の西側に当たる常陸太田市の小中や水府、中野、常陸大宮市の小瀬などでも60mm前後の降水量でした。さらに西側の大子町では50mm前後と少ない降水量でした。これに対して、多賀山地の東側に当たる北茨城市から日立市北部にかけては、総降水量が150〜210mmに達しました。日立市内の総降水量の分布を見てみも、多賀山地の南端に当たる南部支所では74.5mmの降水量でしたが、北部の十王交流センターでは165.0mmの降水量になり2倍以上の差がありました。今回は地形の影響が大きく、地域によって総降水量に大きな差が生じました。
●4月17日から19日にかけての降水量の推移(十王交流センター)と総降水量の分布
●参考:4月18日9時から21時にかけてのウィンドプロファイラの時間・高度断面図(水戸)
作成日:2008/05/13
訂補日:2013/06/03
名前 日立市天気相談所