◇一時的に真冬並みの寒気が入る

　上旬から中旬にかけては、高気圧におおわれて暖かい日が多くなりました。また、上旬の終わりから中旬の初めにかけては日本の西に上層の気圧の谷がある気圧配置となり、日立市では１週間近く曇りの天気が続きました。その後は中旬末にかけて南から暖かい空気が入り、気温が平年より高くなりました。19日に気圧の谷が通過した後、日本付近には強い寒気が南下してきて冬型の気圧配置が強まり、晴れても気温はあまり上がりませんでした。この結果、月平均気温は12.0℃とほぼ平年並みになりました。

　一方、上旬の終わりから中旬の初めにかけてぐずついた天気が続いたため、月の日照時間は146.1時間と平年より少なく（平年比90％）なりました。しかし、本州付近を通る低気圧が少なく発達も弱かったため、天気がぐずついた割りには降水量は少なく、月降水量は61.0mmと平年の75％しかありませんでした。

11月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温（℃） 12.0 11.8 月降水量（mm） 61.0 81.2 月日照時間（時間） 146.1 161.9

旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 13.5 13.5 中旬 12.9 11.8 下旬 9.4 10.0

　●10月半ばから11月にかけての日平均気温とつくばにおける高層の気温の推移

　19日に低気圧が北海道を通過して寒冷前線が東へ抜けた後、関東地方には下層をを中心に寒気が入ってきました。20日になると、南北に連なる上層の気圧の谷が東経140度線を通過し、上層から下層にかけて一段と強い寒気が入ってきました。つくばにおける高層観測の結果を見ると、高さ5500m付近（500hPa面）の気温は18日09時の4.8℃から20日09時には-31.9℃まで下がりました。また、高さ1500付近（850hPa面）の気温も、19日21時の-1.7℃から20日09時には-5.1℃まで下がり、真冬並みの寒気が入りました。

　このため、20日の日中の最高気温は平野部でも11℃から12℃までしか上がりませんでした。20日の夜には寒気は東へ抜けていきましたが、21日の朝にかけて晴れて乾燥した天気が続いて内陸部では風が弱まったため、放射冷却の影響で21日の朝は各地で気温が氷点下に下がりました。水戸の最低気温は-0.6℃、南部支所の最低気温は-0.2℃と、いずれも今年の秋に入って初めての氷点下の気温となりました。

　一方、日立市役所では20日の夜から21日の朝にかけて西南西の風が平均風速で3〜4m/sとやや強く吹いて弱いフェーン現象が起きたことと関東平野の北側に位置して関東地方の内陸部にたまった冷気の影響を受けにくいことから、20日の夜から21日に朝にかけて気温はほぼ横ばいで推移しました。21日朝の最低気温は5.5℃で、南部支所や水戸に比べて6℃近くも高くなりました。

　21日07時のアメダスによる関東地方の気温分布を見ると、関東地方の南部では南西の風が強く吹いていて気温も5℃以上になっています。これに対して、関東地方の内陸部では北から西よりの弱い風が吹き、気温も0℃前後まで下がっています。関東地方の平野部では、地表付近に寒気が滞留して南から入ってくる暖気が滞留した冷気の上を吹き抜け、気温が上がらないことがあります。今回も、日本海側の寒冷前線に向かって南西の風が入りましたが、関東地方の内陸部では冷気が滞留して暖かい南風が地表付近まで降りてこず、地表の気温が下がりました。（今回と同じように、関東地方の平野部に寒気が滞留して気温の下がり方に違いの生じた現象を、2000年11月、2003年1月、2007年2月の観測日誌に掲載しています）。

　※今年の8月1日以降、11月30日現在の最低気温の低い方からの記録。

　●参考：つくばにおける高層観測の気温（℃）

　●11月20日から21日にかけての気温と風速の推移

　●【参考】11月21日07時のアメダスによる気温と風の分布

　●【参考】11月20日06時の地上天気図と09時の850hPa面高層天気図

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作成日 2008/12/17
名前 日立市天気相談所