◇中旬の高温と下旬の低温
月の初めには、先月の下旬から引き続いて本州の南岸沿いを低気圧が通過し、曇りや雨の日が多くて気温も平年を下回りました。6日に深い気圧の谷が通過した後は気圧系が変わり、低気圧と高気圧が交互に通り天気は周期的に変わりました。また、中旬後半から下旬前半にかけては、高気圧が本州の南海上を東進して暖かい南風が入り、気温が高くなりました。しかし、22日から23日にかけて低気圧が本州付近を東へ進んだ後、上層の偏西風の蛇行が大きくなり、寒気を伴った上層の低気圧が偏西風から切り離されて日本付近に停滞しました。このため、24日以降本州付近は寒気におおわれて平年より気温の低い日が続くようになりました。
この結果、上旬の平均気温は平年より0.9℃、中旬は2.7℃高くなりましたが、下旬の平均気温は平年よ0.9℃低くなりました。また、中旬の気温がかなり高くなったことから、月平均気温は7.6℃と平年より0.8℃高くなりました。一方、月降水量は110.5mm、日照時間は186.3時間といずれもほぼ平年並でした。
3月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 7.6 6.8 月降水量(mm) 110.5 103.5 月日照時間(時間) 186.3 181.3
気温の旬変化(℃) 旬 平均気温 旬平年値 上旬 6.6 5.7 中旬 9.3 6.6 下旬 7.1 8.0
中旬後半から下旬にかけての気温の変動は大きく、18日から23日にかけては4月下旬から5月上旬並みの気温、24日以降は2月下旬から3月上旬並みの気温となりました。特に19日は日本海を進んだ低気圧に向かって南から暖かい空気が入り、日立市役所では最高気温が21.6℃まで上がりました。23日にも東へ抜けた低気圧に向かって北西の風がやや強く吹き、フェーン現象が起きて最高気温が15.2℃まで上がりました。一方、シベリアでは20日頃から偏西風の南北への蛇行が強まり、大規模な寒冷渦が形成され始めました。この寒冷渦はゆっくりと南東へ進み、23日には沿海州まで南下してきました。これと同時に、オホーツク海の上空では高気圧が強まり西へ進み始めました。このため、南下してきた寒冷渦は偏西風の流れから切り離されて日本海に停滞するようになり、日本付近は寒気におおわれて気温の低い日が続きました。
つくばにおける09時の上層の気温の推移をみると、23日には500hPaで-14.1℃、850hPaで1.0℃あった気温が、24日には500hPaで-23.7℃、850hPaで-3.5℃まで下がりました。さらに、500hPaの気温は寒気の中心の一つが通過した26日には-34.5℃まで下がりました。その後も、500hPaの気温は-25℃前後、850hPaの気温は-5℃前後といずれも平年より5℃近く気温の低い状態が続きました。この寒気の影響で、日立市役所では24日以降は晴れても日平均気温が5〜6℃、最高気温も10℃前後までしか上がりませんでした。また、26日と27日には上層の寒気の影響で、朝は晴れていても昼頃から積雲が広がり、昼過ぎから夕方にかけてはにわか雨が降りました。
●3月の日立市役所における日平均気温の推移と27日の上層寒気による雲の様子
●3月のつくばにおけ高層の気温の推移(09時)
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(100KB)
地上天気図では、日本付近へ寒気が流れ込んでくる様子ははっきり分かりませんが、500hPa面の高層天気図をみると寒気におおわれてくる様子がはっきりとわかります。シベリアで寒冷渦が形成され始めたのにともない、20日頃からカムチャッカ付近で上層の気圧の尾根が強まってきました。23日になると、偏西風の南北蛇行が大きくなってカムチャッカ付近の気圧の尾根はさらに強まり、西北西へ移動し始めました。
その後も気圧の尾根は強まっていき、27日には上層の高気圧となってオホーツク海に進みました。これに伴い、シベリアから南下してきた寒冷渦は偏西風の流れから切り離され、東へ進むことができずに沿海州付近に停滞するようになりました。寒冷渦は、500hPa面における中心付近の気温が-40℃以下という強い寒気を持っており、この寒気が日本付近に流れ込んできました。上層の高気圧はゆっくりと西へ進み、31日にはシベリア付近まで進んで西から進んできた気圧の尾根とひとつになりました。この気圧の尾根に押される形で、寒冷渦は東西に広がる形になって中国東北区から日本海に停滞し、日本付近は寒気におおわれる状態が続きました。
4月に入ると偏西風の南北蛇行は解消して寒冷渦は日本の東へ進み、気温は急速に上がっていきました。
●参考:19日、23日、27日、31日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
※500hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の500hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。
作成日 2009/04/16
名前 日立市天気相談所