◇雪の多かった2月
1日に本州南岸を低気圧が東進した後、上旬は強い寒気が南下して冬型の気圧配置が続き、乾燥した冬晴れとなり気温も低くなりました。中旬になると前線を伴った低気圧が頻繁に本州南岸を通過し、曇りや雨または雪の日が多くなりました。今年は地表付近へ北から冷たい空気が入ることが多く、日立市では雨ではなく雪の降る日が多くなりました。下旬の前半は移動性高気圧におおわれるとともに南から暖かい空気が入ったため、晴れて気温が上がりました。しかし、月の終わりになると再び本州南岸を低気圧が通過するようになり、天気がぐずつきました。
上旬から中旬にかけては平年より気温の低い日が多くなりました。特に中旬は雪の降る日が多く、日中も気温がほとんど上がらない日があり、旬平均気温は平年より2.2℃低くなりました。下旬になると一転して南から下層へ暖かい空気が入るようになり、暖かい日が続いたため旬平均気温は平年より3.9℃高くなりました。この結果、月平均気温は4.4℃と平年並みになりましたが、気温の変動が多い月でした。一方、月降水量は91.0mm(平年比147%)と平年より多くなりました。また、中旬と月の終わりに天気がぐずついたことから日照時間は126.3時間(平年比73%)と、平年よりかなり少なくなりました。これは、2月の日照時間としては市役所観測開始以来4番目に少ない記録でした。さらに、中旬以降冬型の気圧配置となることがなく雨や雪の降る日も多かったために月平均湿度は70%となり、2月の平均湿度としては市役所観測開始以来最も高くなりました。
2月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 4.4 4.4 月降水量(mm) 91.0 61.8 月日照時間(時間) 126.3 173.0
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 3.7 3.9 中旬 2.3 4.6 下旬 7.8 4.8 ●2月の日照時間と平均湿度の記録
日照時間(時間) 順位 年 日照時間 1 1990 91.3 2 1959 113.2 3 1969 113.9 4 2010 126.3 5 1989 127.6 平年値 173.0
平均湿度(%) 順位 年 湿度 1 2010 70 2 1990 69 3 1959 67 4 1989 65 4 1969 65 平年値 56 ※順位は数値の小さい方または大きい方からで、1953年から2010年の統計
●1月から2月にかけての日立市役所における日平均気温と日平均湿度の推移
※上のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(110KB)
1月は低気圧が日本海を通ることが多く、関東地方では降水量が少なくなりました。しかし、1月の終わりから低気圧が本州付近から本州の南を通るようになりました。今年は例年と異なり、低気圧の接近に伴って北から地表付近へ寒気が入ることが多く、雪の降る日が多くなりました。2月の雪が降った日を見ると、下表のように上層の寒気の影響でにわか雪の降った5日を除くと、いずれも南岸低気圧または気圧の谷に伴う冷たい北東風の流入で雪が降りました。この内、1日と11日及び28日は降り始めは雨でしたが、低気圧が近づくとともに北から寒気が入ってきて気温が下がり、途中から雪に変わりました。
北から寒気が入ってきたことから、水戸よりも日立市役所のほうが雨から雪に変わる時刻が早く、積雪も深くなることが多くなりました。特に、18日は16日に通過した気圧の谷に伴う寒気が残っていたため、降り始めから雪となりました。低気圧は陸地から離れて進み、関東地方の大部分の地域では降水量も少なく積雪にはなりませんでしたが、茨城県の沿岸部では比較的降水量が多くなり、日立市役所では18cm、水戸では15cmの積雪深を記録しました。この18cmの積雪深は、日立市役所観測開始以来2番目に深い記録です。
●日立市役所と水戸(金町)における積雪の深さ(cm)
地点 | 04時 | 05時 | 06時 | 07時 | 08時 | 09時 | 10時 | 11時 | 12時 | 13時 | 14時 | 15時 | 16時 |
日立市役所 | *** | *** | *** | *** | 14 | 15 | 18 | 10 | 6 | 3 | 2 | 1 | - |
水戸 | - | 3 | 5 | 7 | 9 | 11 | 12 | 7 | 4 | 2 | - | - | - |
※日立市役所における積雪の観測は08時以降です。
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※11日、13日、16日は降雪時間帯が夜間のため最深積雪は観測していません。表の値は、翌日9時の積雪深です。
※市役所積雪深順位は、1953年から2010年の統計で値の大きい方から。
※上表の他に、12日にも一時的に小雪がちらつきました。したがって、2月の雪日数は10日となります。
●2月17日から18日気温の推移と降雪の様子(市役所からかみね公園を見る)
南岸低気圧は、上表の他に15日と27日にも通過しましたが、両日とも地表付近への寒気の流入がなかったため雪ではなくて雨が降りました。雨から雪に変わった11日、雨が降り続いた15日、雪が降り続いた18日の天気図を比較してみると、地上天気図では3日とも関東地方の南(いずれも八丈島付近を通過)を低気圧が東または東北東へ進んでおり、大きな違いはありませんでした。
一方、つくばにおける気温の高度分布をみると、この3日の間には大きな違いが見られました。11日は低気圧の前面に南から暖かい空気が入り、700hPa付近を中心に0℃以上の気温となりました。しかし、下層は北から寒気が入り0℃未満の気温となっていて、時間とともに700hPa付近の気温も低くなっていきました。このため、関東地方では降り始めは雨でしたが、夕方以降北部から雪へ変わっていきました。
15日は低気圧がやや発達しながら進み、850hPa面高層天気図の+6℃の等温線で示すように南からの暖かい空気が関東地方まで入り、下層(850hPa以下)では気温が0℃以上になりました。このため、関東地方の平野部では雨が降り続いて雪に変わることはありませんでした。
18日は低気圧の発達が弱く暖気の北上がなかったため、850hPa面高層天気図の+6℃の等温線は八丈島の南にありました。このため、中層から下層にかけて気温は0℃未満となりました。特に、925hPaの気温が示すように地表付近の気温は3日の内で最も低くなりました。関東地方では、17日の夜からの18日の昼前にかけて雪が降りました。低気圧が発達しなかったために降水量が少なく、平野部ではうっすらと白くなった程度でした。しかし、茨城県の沿岸部では他の地域に比べて降水量がやや多くなったことと、北東の冷たい風の影響で気温が0℃未満になったことから、日立市から水戸市にかけて降雪量が多くなりました。
関東地方では、気温のわずかな違いによって雨になったり雪になったりしますが、今年の2月は例年に比べると低気圧の接近に伴って北から地表付近へ冷たい空気が入りやすく、雪になる日が多くありました。
●参考:つくばの指定気圧面の気温観測データ(℃)
日時 | 1000hPa | 925hPa | 850hPa | 700hPa | 500hPa |
11日21時 | 0.6 | -1.6 | -3.3 | 0.2 | -14.2 |
15日21時 | 3.4 | 0.3 | 0.4 | -2.5 | -19.2 |
18日09時 | -0.8 | -3.2 | -3.5 | -10.1 | -27.2 |
●参考:11日、15日、18日の地上天気図と850hPa面高層天気図(10分毎の気温の推移と6時間ごとの地上天気図)
※850hPa面高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。観測地点における上段の数値はその地点の850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。また、網掛けの範囲は、気温と露点温度の差が3℃以下(空気が湿っていることを表す)の場所を表しています。
作成日 2010/03/12
訂補日 2014/03/05
名前 日立市天気相談所