◇上層の高気圧が強く、晴れて暑い日が続く
月を通して日本付近で太平洋高気圧の勢力が強く、晴れて暑い日が続きました。特に、上層の高気圧の中心が本州付近に位置することが多く、高気圧の下降流による昇温の影響が起こりやすくなりました。また、シベリアから中国東北区にかけては気圧の谷場となることが多く、南から南西の風に伴うフェーン現象による気温上昇の影響もありました。下旬になっても本州付近で上層の高気圧の勢力が強く、上旬から下旬にかけての旬平均気温は27.1℃から27.0℃とほとんど下がりませんでした。この結果、月平均気温は27.1℃と平年より2.3℃高く、1994年8月の平均気温26.9℃を抜いて、これまでで最も高くなりました。
気温が上がったため、山沿いでは午後になって雷雲が発生して夕立ちになることが多くありました。しかし、関東地方は上層の高気圧の中心に近かったことから山沿いで発生した雷雲が平野部へ進んでくることも少なく、夕立による雨もほとんどありませんでした。このため、月降水量は7.5mmと1984年8月の3.0mmに次いで少ない記録となりました。また、月の日照時間は230.0時間と平年の127%になりました。
8月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 27.1 24.8 月降水量(mm) 7.5 148.2 月日照時間(時間) 230.0 181.3
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 27.1 25.0 中旬 27.1 24.9 下旬 27.0 24.4
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 83.6 61.7 中旬 50.1 61.0 下旬 96.3 58.6
今年の8月の気温の特徴は、最高気温がそれほど高くならなかった割に最低気温があまり下がらなかったことです。日立市役所における、月最高気温は8月22日に記録した34.7℃で、最高気温が35℃を超えた日はありませんでした。また、日最高気温が30℃以上の日(真夏日)の日数は17日と日数が多い方からの順位では第10位で、最も多かった1999年8月の23日に比べて6日少なりました。一方、日最低気気温が25℃以上の日(熱帯夜)は11日と、1994年の12日に次いで多くなりました。これは、先に述べたように南西の風の吹きやすい気圧配置が多く、フェーン現象による夜間の気温の下がり方が鈍くなったためです。8月の風向頻度を平年と比べてみる、下図のとおり平年であればもっとも頻度の多い北北東から北東の風向がは、平年の半分半部程度しかありませんでした。それに代わって、南西の風向が平年の2倍近くありました。
そしてもう一つ、月の終わりなっても気温が下がらなかったことも、気温の推移の特徴として挙げられます。特に、最高気温は上旬平均30.2℃、中旬平均30.7℃、下旬平均30.9℃と月の終わりほど高くなりました。平年であれば8月2日頃に最も気温が高くなった後、気温は徐々に下がっていきます。そして、月の終わりには月の初めに比べて、最高気温の平均は1℃近く下がります。しかし、今年の場合は、上層の高気圧の勢力が月を通して強かっただけでなく、下旬には中国大陸に気圧の谷が停滞して、本州付近の下層へ南から暖かい空気が入ったため、月の半ば以降の方が気温が高くなりました。
なお、8月19日から21日にかけては西から進んできた上層の気圧の尾根に伴う移動性高気圧が北日本を進み、関東地方には北東の風に伴ってやや冷たい空気入ったため、一時的に気温が平年並みまで下がりました。日立市役所では、14日から18日にかけて連続して最高気温が30℃を超えましたが、19日から21日にかけては30℃を下回りました。19日と20日は雲が多かったこともあって、最高気温はそれぞれ27.7℃、27.2℃と平年を下回りました。しかし、移動性高気圧が東へ遠ざかって太平洋高気圧におおわれるようになった22日には再び南西の風が入るようになり、最高気温は34.7℃まで上がりました。いったん涼しくなった後に再び暑くなったため、より暑く感じられました。
●8月の平均気温の記録
月平均気温
(℃)順位 年 気温 1 2010 27.1 2 1994 26.9 3 1999 26.8 4 1973 26.6 5 1995 26.3 平年値 24.8
月平均最高
気温(℃)順位 年 気温 1 1995 31.2 2 1994 30.9 3 1999 30.6 4 2010 30.6 5 1973 30.5 平年値 28.3
月平均最低
気温(℃)順位 年 気温 1 2010 24.4 2 1999 24.0 3 1994 23.8 4 1973 23.7 5 1985 23.2 平年値 22.0 ※順位は数値の高い(多い)方または少ない方からで、1953年から2010年の統計
●8月の気温日数と降水量の記録
最高気温30℃
以上の日数順位 年 日数 1 1999 23 2 2000 22 3 1994 22 4 1973 21 10 2010 17 平年値 10.6
最低気温25℃
以上の日数順位 年 日数 1 1994 12 2 2010 11 3 1973 9 4 1999 7 5 2007 6 平年値 1.7
月降水量
(mm)順位 年 日数 1 1984 3.0 2 2010 7.5 3 1996 26.0 4 1992 35.0 5 1966 36.6 平年値 148.2 ※順位は数値の高い(多い)方または少ない方からで、1953年から2010年の統計
●8月の日平均、最高気温の推移と風向頻度(日立市役所)及びつくばにおける850hPaの気温の推移
※上記のグラフの元データ:エクセル2000ファイル(103KB)
●500hPa高度の緯度・時間断面図(東経135度線沿い、8月1日〜31日)
5880mの等高度線は、月の初めと中旬の前半を除いて北緯40度よりも北へ広がり、太平洋高気圧の勢力が強かったことを示しています。特に、4日から7日と15日から22日にかけて及び26日から29日にかけては5940mの等高度線が出現し、高気圧の勢力が一段と強まりました。
※網掛けの部分は、高度が5880m以上を表す。
●参考:8月19日と28日の09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
作成日 2010/08/16
名前 日立市天気相談所