◇寒冷渦が頻繁に通過し雷が多かった
引き続き偏西風の蛇行が大きく、寒気が南下して大気の状態が不安定になる日が多くありました。このため、雷や激しい雨の降る日があり、月降水量は299.0mmと平年の196%になりました。これは、5月の降水量としては観測開始以来3番目に多い記録です。また、上旬は動きの遅い低気圧の影響で日照時間は平年より少なくなりました。しかし、中旬から下旬にかけては移動性高気圧におおわれて晴れる日も多くあったため、月の日照時間は195.4時間と平年の119%になりました。
一方、気温の推移をみると、4月の終わりから下層へ暖気が入るようになり、5月の上旬の気温は平年よりも1.3℃高くなりました。その後、中旬から下旬にかけては北東の風とともにやや冷たい空気が入るようになり、気温は平年並みになりました。この結果、月平均気温は16.6℃と平年より0.5℃高くなりました。月平均気温が平年を上回ったのは2011年11月以来です。また、2011年12月から2012年4月にかけて5か月連続して気温が平年を下回ったのは、1995年12月から1996年4月以来のことです。
5月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 16.6 16.1 月降水量(mm) 299.0 152.5 月日照時間(時間) 195.4 163.9
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 16.6 15.3 中旬 16.0 15.8 下旬 16.8 17.1
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 49.4 55.8 中旬 73.8 48.1 下旬 72.2 59.9
●5月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPa気温の推移
5月の日立市役所における降水量の記録を見ると、先に述べた月降水量の記録の他に5月29日に記録した1時間最大降水量45.0mmは、5月年は観測開始以来第1位の記録となっています。また、山間部にある本山は市街地に比べて降水量がかなり多くなりました。月降水量299.0mmは、1988年5月に本山で観測を開始して以来5番目に多い記録です。さらに、3日の日降水量239.0mmは観測開始以来2番目に多い記録となっています。
●日立市役所における5月の降水量の記録
5月の降水量(mm)
順位 年 降水量 1 1965 335.2 2 1979 334.0 3 2012 299.0 4 1953 296.4 5 1977 280.2
5月の1時間最大降水量(mm)
順位 年月日 時刻 降水量 1 2012/05/29 18:39 45.0 2 2006/05/28 10:02 39.5 3 1977/05/15 17:40 38.0 4 1997/05/25 00:32 36.5 5 1979/05/15 02:40 29.0 ※順位は降水量の多い方からで、1953年から2012年の統計
●本山における降水量の記録(累年)
月降水量(mm)
順位 年月 降水量 1 1989年08月 596.5 2 1994年09月 504.5 3 2004年10月 497.5 4 1991年10月 493.5 5 2012年05月 478.5
日最大降水量(mm)
順位 年月日 降水量 1 2007/07/15 250.0 2 2012/05/03 239.0 3 1989/08/27 231.0 4 1991/09/19 229.5 5 1999/10/27 224.0 ※順位は降水量の多い方からで、1988年から2012年の統計
最初に述べたように、今年の5月は上層に寒気が入りやすく、雷の発生する日が多くありました。日立市でも、6日、9日、17日、18日、28日、29日に雷がありました。特に、6日と29日は積乱雲が発達して強い雷が発生し、日立市役所では落雷による停電がありました。また、落雷により6日は日立市役所で、29日は本山と北部消防署で観測機器の一部が破損しました。なお、6日はつくば市周辺で竜巻による死傷者や建物の損壊などの東が発生しました。
地上天気図から気象状況を見ると、18日に関東地方の東に小さな低気圧が発生した以外は、関東地方の周辺に前線や低気圧はありませんでした。しかし、つくばにおける高層気象観測の結果を見ると、いずれの日も上層(500hPa面)の気温が平年の気温より低く、下層(850hPa面)との温度差も大きくなっていて、大気の状態が不安定になる気象状況でした。また、500hPa面高層天気図を見ると、いずれも日本付近で偏西風が南へ大きく蛇行し、上層の寒気が入り込んでいました。
この他に、3日から4日にかけても寒冷渦が本州付近を東へ進みました。雷の発生はありませんでしたが、寒冷渦の前面に南から暖かく湿った空気が入り雨雲が発達したため、関東地方の西部から北部の山沿いで総降水量が150〜200mmを超えました。また、茨城県北部の多賀山地東側斜面では東寄りの風の影響で総降水量が300mmを超えました。日立市でも、市街地では100mm前後の降水量でしたが、山間部の本山では総降水量が250mmに近くなりました。
5月の雷の発生状況(日立市役所)
日 時間 方向 雷の強度 降水量(mm) 06 12:50〜16:50 西から東へ 雷電、2
13時20分過ぎ
落雷により停電15.5 09 17:50〜18:15 東 雷電、0 10.5 17 20:00〜 北 - 1.0 18 00:25〜01:10
03:00〜03:30北
西から東へ- 28.0 28 14:15〜15:40 西から東へ 雷電、1 12.0 29 16:40〜23:15 南西から南東へ 雷電、2
18時10分過ぎ
落雷により停電85.0
高層観測の気温(℃) 日 つくば09時 850hPa 500hPa 06 12.5 -19.1 09 11.7 -17.6 17 11.3 -14.4 18 6.7 -22.0 28 10.5 -17.2 29 10.2 -17.0 5月の
平年値9.4 -13.4 ※雷の強度:0は、雷鳴があるのを知る程度で、通常遠雷と認められる程度。電光は、ようやく認められる程度で、夜は楽に正視できる程度。2の雷鳴は激しく耳をろうし戸障子が激しくなり人を驚かす。電光は昼は周囲に明るさを感じる程度で、夜は光輝が激しく全身に光を浴びる感じ。1は、0と2の間。-は夜間のため観測していません。
大雨の降った3日及び雷の激しかった6日と29日の天気図を以下に示します。詳しい説明は、こちらをご覧ください。
●参考:5月3日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:5月6日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
●参考:5月29日18時の地上天気図と21時の500hPa面高層天気図
作成日:2012/05/25
訂補日:2013/05/30
名前 日立市天気相談所