◇低気圧が頻繁に通過し、気温の変動が大きく雨量が多くなる
日本付近を低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は周期的に変化しました。上旬は3月に引き続いて南から暖かい空気におおわれ、気温は高くなりました。しかし、上旬の終わりからベーリング海でブロッキング高気圧が発達し、日本付近で偏西風が南へ大きく蛇行するようになりました。この影響で日本付近には10日程度の周期で強い寒気が南下するようになり、気温は低くなりました。このため、上旬の平均気温は12.3℃と平年より1.8℃高くなったものの、中旬及び下旬の平均気温は11.6℃と12.3℃と、それぞれ平年より0.5℃及び1.4℃低くなりました。この結果、月平均気温は12.1℃と平年並みになりました。
一方、月の日照時間は低気圧が頻繁に通過したものの、移動性高気圧におおわれて晴れる日が多かったことから198.4時間(平年比111%)と平年より多くなりました。降水量は、中旬が16.0mm、下旬が64.5mmであったものの、上旬の2日から3日にかけてと6日〜7日にかけて低気圧が本州南岸発達しながら通過して50〜60mmの雨が降ったため、月降水量は200.0mm(平年比152%)と平年より多くなりました。
4月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 12.1 12.1 月降水量(mm) 200.0 131.9 月日照時間(時間) 198.4 178.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 12.3 10.5 中旬 11.6 12.1 下旬 12.3 13.7
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 62.0 61.4 中旬 66.9 55.5 下旬 69.5 61.9
●4月の日立市役所における日平均気温とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
北半球の上層の大気の流れをみると、上旬と中旬、下旬では日本付近の流れに違いがあることがわかります。4月1日から5日の北半球5日平均500hPa高度・偏差図を見ると、日本付近では高度の正偏差域で偏西風は西から東へ流れており、寒気の入りにくい形です。それに対して、4月21日から25日の北半球5日平均500hPa高度・偏差図ではベーリング海に高気圧があり、その西側の日本付近で偏西風が南へ蛇行しています。このため、日本付近は高度の負偏差域に入り寒気の影響を受けやすい形となりました。
●4月1日から5日と21日から25日の北半球5日平均500hPa高度・偏差図
※500hPa高度・偏差図において、実線は等高度線を、破線は平年との偏差を表します。また、縦線で囲まれた部分は平年より高度が低い(負偏差)領域を表しています。
このように、上旬は暖気が入りやすかったことから、3月に引き続き低気圧が発達して強い風の吹く時がありました。2日の夜から3日の昼にかけては、低気圧が発達しながら本州南岸を東へ進みました。このため、日立市役所では3日11時43分に最大瞬間風速26.5m/sの北北東の風を記録しました。6日夜から7日にかけては、二つの低気圧が本州をはさんで発達しながら北東へ進み、8日には千島近海で動きが遅くなりました。このため、日立市では7日には南寄りの風が、8日には西寄りの風が強く吹きました。日立市役所における最大瞬間風速は、7日が01時20分の南南東の風21.6m/s、8日が15時32分の西北西の風19.9m/sでした。
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3日は低気圧が本州南岸をやや発達しながら東北東へ進んだため、関東地方では低気圧が近づいた3日未明から夕方にかけて、沿岸部を中心に北東から北西の風が強く吹きました。関東地方の最大平均風速の記録は、千葉県銚子で12時51分に北の風28.5m/s、東京都羽田で10時29分に北北西の風16.8m/s、栃木県宇都宮で09時47分に北の風15.7m/sでした。茨城県内では沿岸部で北北東の風が、西部で北西の風が強く吹きました。最大平均風速の記録は、水戸で08時44分に北北東の風15.1m/s、日立市役所で11時50分に北北東の風13.3m/s、鹿嶋で12時00分に北の風12.9m/sでした。
日立市役所における風速の推移をみると、3日未明から北東の風がしだいに強くなり、低気圧が最も近づいた昼頃の11時43分に最大瞬間風速26.5m/sを、11時50分に最大平均風速13.3m/sを記録しました。最大風速を記録した後、風は徐々に弱くなっていき夜には平均風速3m/s未満となりました。(日立市では、2011年5月30日と2007年5月11日にも、今回と同じように寒冷渦に伴う南岸低気圧により強い風が吹いています。2011年5月30日の最大平均風速は13.7m/s。2007年5月11日の最大平均風速は13.3m/s。)
一方、水戸では低気圧が近づく前の8時から9時にかけてが最も風が強く、最大平均風速15.1m/sを記録したのは08時44分でした。9時を過ぎると風は弱まり、低気圧が最も近づいた昼頃の平均風速は7m/s前後でした。なお、内陸部に位置する古河では、日立や水戸のように風が強く吹くことはありませんでした。古河における3日の最大平均風速は05時49分に記録した北北東の風5.1m/sで、日中は平均風速4m/s前後で推移しました。
●参考:4月2日〜3日の風速の推移(10分値)
※上のグラフの元データ:130403da.xls(エクセル2000ファイル、597KB)
●参考:4月3日08時と12時のアメダスによる風の分布
●参考:4月3日12時の地上天気図と09時の500hPa面高層天気図
7日は本州をはさんで二つの低気圧が北東へ進み、8日には北海道付近で一つにまとまり動きが遅くなりました。関東地方では、低気圧が近づいてきた6日昼過ぎから南寄りの風が強まり、千葉県から神奈川県にかけては平均風速が15m/sを超えた所がありました。また、低気圧の中心が通過した夜遅くには関東地方南部で局地的に雨雲が発達し、猛烈な雨の降った所がありました。低気圧が通過した後、いったん風は弱まりました。しかし、低気圧が北日本で発達したため、7日の朝から夕方にかけては低気圧へ吹き込む南西の風が強く吹きました。各地の最大平均風速は、東京都江戸川で13時40分に南南西の風21.5m/s、同じく羽田で13時11分に南西の風19.2m/sなど、東京都から茨城県南部にかけて平均風速が15m/sを超えました。
日立市でも、低気圧が通過した6日夜遅くに1時間降水量が30mm前後の強い雨が降りました。しかし、低気圧の速度が速く発達した雨雲もかからなかったため、総降水量は30.5〜81.0mmで100mmを超える大雨になった所はありませんでした。一方、日立市役所における風速の推移をみると、下のグラフのとおり6日の昼前から南寄りの風が強まり、平均風速4m/s前後の風が吹くようになりました。そして、低気圧の中心が通過した7日0時過ぎには一時的に南南東の風が強まり、01時20分には最大瞬間風速21.6m/sの南南東の風を記録しました。その後、2時過ぎには南西の風に変わり、平均風速5m/s前後の風が吹き続けました。低気圧は三陸沖へ進んで一段と発達したため、8時過ぎからは南西の風が徐々に強くなり、13時02分には最大平均風速11.0m/sを記録しました。15時になると前線が通過して風向が北西に変わり一時的に風が強まりましたが、16時過ぎには風は弱まりました。
8日の朝、北海道付近に停滞する寒冷渦から南へのびる上層の気圧の谷が東北地方を通過した後、東北地方では宮城県を中心に西の風が強まりました。宮城県名取では14時17分に西の風26.0m/sの最大平均風速(最大瞬間風速は14時14分、西の風33.4m/s)を記録しました。昼前になると、強風域の南端が茨城県北部にかかるようになりました。日立市役所における風速の推移をみると、朝から徐々に西北西の風が強くなり、10時には平均風速が5m/sを超えるようになりました。その後、13時前から一段と風が強まり、15時33分に最大平均風速12.1m/sの西北西の風を記録しました(最大瞬間風速は15時32分、西北西の風19.9m/s)。夜になると上層の気圧の尾根が本州上へ進んできたため、日立市でも18時過ぎにはやや強い風は収まりました。(日立市では、2004年12月5日にも、今回と同じように低気圧が発達しながら関東地方を進み強い風が吹いています。2004年12月5日の最大平均風速は11.2m/s。)
なお、8日の水戸では日立のように風が強く吹くことはありませんでした。10時頃までは日立市役所と同じ程度の強さの風が吹いていましたが、その後は風はほとんど強まらず、最大平均風速は14時01分の北の風6.2m/sでした。最大風速を記録した後、風はしだいに弱まり16時過ぎには平均風速は3m/s未満になりました。
●参考:4月7日〜8日の風速の推移(10分値)
※上のグラフの元データ:130408da.xls(エクセル2000ファイル、656KB)
●参考:4月7日13時と8日16時のアメダスによる風の分布
●参考:4月7日12時と8日15時の地上天気図及び7日と8日09時の500hPa面高層天気図
作成日 2013/05/13
名前 日立市天気相談所