◇寒暖の差が大きかった3月
日本の東海上で高気圧が強く、南から暖かい空気が流れ込むときがありました。特に、低気圧や気圧の谷が日本海を進んだ6日から8日と17日から19日は、4月中旬から5月上旬並みの気温になる日が続きました。一方で、偏西風が日本付近で南北に蛇行し、中旬前半と下旬には大陸から寒気が流れ込で気温が低くなるときがあり、気温の変動が大きくなりました。この結果、月平均気温は8.0℃と平年より0.8℃高くなりました。
また、5日から14日にかけては本州付近を低気圧が頻繁に通過し、曇りや雨の日が多くなりました。しかし、月の後半は高気圧におおわれて晴れる日が多くなりました。このため、月の日照時間は172.8時間(平年比97%)と平年並みになりました。一方、低気圧が日本付近で発達することがほとんどなかったため、月降水量は46.5mm(平年比43%)と平年よりかなり少なくなりました。
3月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 8.0 7.2 月降水量(mm) 46.5 107.5 月日照時間(時間) 172.8 178.8
旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 7.8 5.9 中旬 8.2 7.3 下旬 8.1 8.2
旬日照時間(時間) 旬 観測値 平年値 上旬 44.6 57.2 中旬 51.8 60.9 下旬 76.4 60.7
●3月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●3月の日立市役所における日最低気温と日照時間の推移
この冬の気温の推移をみると、去年の12月は中旬にかけて日本付近で偏西風が北へ蛇行して南から暖かい空気が入りやすい状態が続き、気温が高くなりました。1月の中旬から2月の上旬にかけては寒気が南下してきて、気温は平年を下回るようになりました。2月の中旬以降は上層の偏西風が日本付近で北へ蛇行することが多く、寒気は南下しにくくなったものの、オホーツク海に寒冷渦が停滞して時々寒気が入りました。このため、気温の変動が大きくなりました。
3月に入っても気温の変動の大きい状態が続き、2日に最低気温-1.4℃を記録した翌日の3日には最高気温16.5℃と4月中旬並みの陽気となりました。その後は低気圧が日本海を進むことが多く、日立市役所では最低気温が0℃未満となる日(冬日)はありませんでした。この結果、4月以降に冬日となる日がなかった場合、冬日の終日は3月2日となります。これは、観測開始以来2015年の2月21日に次いで早い記録です。また、3月の冬日の日数1日は、2015年と1985年の0日に次いで少ない記録でした。
●2015年12月から2016年3月の日立市役所における日平均気温の推移
●3月の冬日の日数と冬日終日の記録
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※順位は日数の少ない方及び日付の早い方からで、1953年から2016年の統計。
◇3月の日立市内の気温と降水量
3月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなっています。次いで、最も北に位置する十王交流センターが2番目に高くなっています。山間部にある本山、西部支所と標高の高い諏訪広場は気温の低い方になっています。なお、市内7地点の平均気温は6.5℃で、水戸の月平均気温8.3℃よりも1.8℃低くなりました。2月に比べて気温差は大きくなっており、水戸の方が暖候期へ向けての気温の上昇が早いことを示しています
一方、月の降水量の市内平均は41.0mmで、2月の平均降水量28.0mmの1.5倍になったものの、引き続き前年同月より少なくなりました。観測地点の間の差も2月と同様に小さく、最も降水量の多かった日立市役所46.5mmに対して、最も少なかった北部消防署は35.0mmと1.3倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量41.0mmに対して、水戸の月降水量は51.5mmと26%程多くなりました。
●3月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
3月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 8.0 20.7 18 14:10 -1.4 02 05:12 十王交流センター 7.7 21.6 18 14:18 -2.2 02 04:01 北部消防署 6.6 19.7 18 14:20 -2.9 02 03:32 本山(中学校跡) 5.0 18.8 18 13:46 -4.9 02 04:52 西部支所 5.5 19.5 18 14:12 -7.2 02 05:54 諏訪広場 5.7 18.5 18 14:08 -4.5 02 06:22 南部支所 7.3 20.1 18 13:23 -3.6 02 05:51 上記7地点の平均 6.5 - -
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日立会瀬 8.0 20.9 18 14:11 -2.0 02 05:07 水戸(金町) 8.3 21.1 18 14:34 -4.0 02 06:39
3月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 46.5 16.0 14 2.5 14 20:03 十王交流センター 43.0 14.5 09 5.5 07 09:59 北部消防署 35.0 12.5 09 2.0 23 22:01 本山(中学校跡) 46.0 14.5 07 8.5 07 09:38 西部支所 39.5 10.5 07 5.0 07 09:32 諏訪広場 41.0 14.0 14 2.0 23 22:34 南部支所 36.0 13.0 09 2.5 09 20:40 上記7地点の平均 41.0 - -
- - 日立会瀬 48.5 17.0 14 2.5 14 20:05 水戸(金町) 51.5 21.5 14 4.5 07 06:08
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇上層で西谷が続き、天気がぐずつく(5日〜14日)
昨年の秋頃から、本州付近では偏西風が南北に蛇行して上層の流れが西南西からの流れとなりやすい傾向が続いています。これに対応して、関東地方では南海上に収束線が形成されて、ぐずついた天気の続くときがありました(2015年9月、2015年11月の観測日誌を参照)。3月も、動きの遅い上層の気圧の谷の影響で、5日から14日にかけて天気がぐずつきました。
この期間の日立市役所における天気は、下表のとおりでした。6日と8日及び12日の日中に晴れ間の広がった時があった以外は、曇りや雨の天気が続きました。気圧系の動きを見ると、5日に高気圧が日本の東へ抜けた後、寒冷渦がバイカル湖の南からゆっくりと東へ進み、10日にはカムチャッカの東へ抜けました。さらに、この寒冷渦から南西にのびる上層の気圧の谷が中国東北区で停滞した後、10日にはシベリアから南下してきた別の上層の気圧の谷と一緒になり、12日の夜には東へ抜けました。このため、本州付近の上層では西南西からの流れが続きました。
12日の午後は、関東地方以西の上層では一時的に西北西からの流れになったものの、13日には次の上層の気圧の谷が東シナ海へ進んできて、上層の流れは再び西南西からの流れに変わりました。この気圧の谷は、シベリアから南下してきた寒冷渦の影響を受けて深まりながら本州上を東へ進み、15日の昼には関東地方の東へ抜けました。このため、15日は一時的に冬型の気圧配置となり、久しぶりに日立市では朝から夜にかけて晴れました。
この期間の気象衛星の可視画像を見ると、関東地方には常に雲がかかっていました。この中で、5日は全国的に晴れたのに関東地方と東海、北陸地方には雲が広がりました。東海、北陸地方の雲は、黄海にある低気圧から東へのびる温暖前線の雲です。一方、関東地方にかかる雲は、三陸沖へ進んだ高気圧の西縁を回る南風が関東地方に滞留する冷気にぶつかって発生した雲です。また、13日も周辺地域晴れているのに、関東地方には南海上から北へ広がる雲がかかりました。これは、右の解説図に示すように、関東地方の南海上に中部山岳で分流した大気の流れにより収束線が形成されるためです。この形の収束線は、10月から3月の寒候期において冬型の気圧配置が緩んだときや東西に連なった移動性高気圧の内の一つが東海上へ抜けたときに発生しやすい傾向があります。
例年の冬は晴れて乾燥した天気が続き、月の日照時間は200時間前後になります。しかし、2015年12月から2016年3月にかけては、ぐずついた天気の影響で2月を除いて日照時間は平年を下回りました。また、2月についても、日照時間は平年をわずかに上回った程度でした。近年では、2011年の12月から2012年の3月にかけても日本付近で偏西風の蛇行が大きくなり、上層の流れが西南西からの流れになって天気のぐずつく時がありました。同期間の月日照時間はすべて平年の値を下回り、12月から3月までの日照時間の合計も今回とほぼ同じ値でした。
●3月5日〜14日の天気と日照時間及び降水量
日 天気
日照時間
(時間)降水量
(mm)3月5日 くもり 0.2 - 3月6日 くもり 明け方一時雨 昼一時晴れ 3.3 0.0 3月7日 くもり 未明から昼前 雨 0.0 5.0 3月8日 霧 昼前から晴れ 夕方からくもり 5.9 - 3月9日 くもり 朝から雨 0.0 14.0 3月10日 くもり 0.1 - 3月11日 くもり 0.0 - 3月12日 くもり 朝から昼過ぎ時々晴れ 5.5 - 3月13日 くもり 夜遅くから雨 0.0 0.0 3月14日 雨 0.0 16.0 3月15日 晴れ 未明まで雨 10.5 1.0 ●過去5年間の12月から3月の日照時間(日立市役所)
年 前年
12月1月 2月 3月 合計 2012 177.7 186.4 162.8 173.7 700.6 2013 165.3 223.3 179.6 195.7 763.9 2014 190.4 212.8 154.0 217.9 775.1 2015 187.0 198.7 161.6 208.6 755.9 2016 175.9 178.2 174.9 172.8 701.8 平年値 184.7 191.3 172.1 178.8 726.9 ※灰色の塗りつぶしは、平年より日照時間が少ない月。
●3月4日から15日にかけて気象衛星可視画像
●3月6日、11日及び15日09時の地上天気図と500hPa面高層天気図
※高層天気図において実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。網掛けの部分は、気温と露点温度の差が3℃以下(空気が湿っていることを表す)の領域を表しています。
作成日 2016/04/18
名前 日立市天気相談所