◇ぐずついた天気の続いた7月
6月に引き続き、日本付近で偏西風が南北に蛇行して寒冷渦が頻繁に通過し、ぐずついた天気が多くなりました。特に、上旬は前線が日本海から本州上に停滞したため、曇りや雨の日が続きました。また、下旬はオホーツク海高気圧が発達して北日本から東日本へ張り出し、曇りの日が多くなりました。しかし、低気圧は日本海を進むことが多く、前線の活動も東日本では不活発だったため、月の降水量は43.5mm(平年比27%)と平年よりかなり少なく、7月の降水量としては観測開始以来5番目に少ない記録になりました。一方、月の日照時間は117.7時間(平年比90%)と、ほぼ平年並みになりました。気温の推移をみると、月の前半は南から暖かく湿った空気が流れ込みやすかったことから、上旬から中旬にかけて気温は平年を上回る日が多くなりました。下旬になるとオホーツク海高気圧からの冷たい空気が入り、気温は平年を下回りました。この結果、月平均気温は23.6℃(平年比+0.6℃)と、ほぼ平年並みになりました。
7月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温(℃) 23.6 23.0 月降水量(mm) 43.5 162.5 月日照時間(時間) 117.7 130.2
旬平均気温(℃) 順位 観測値 平年値 上旬 23.3 21.5 中旬 24.0 23.0 下旬 23.5 24.4
旬日照時間(時間) 順位 観測値 平年値 上旬 21.3 35.8 中旬 37.4 36.6 下旬 59.0 57.7
●7月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移
●7月の日立市役所における日最高気温と日照時間の推移
今年の7月は、下旬の前半を除いて気温の高い日が多くなりました。このため、最高気温が25℃以上となった夏日の日数も25日と平年を上回り、2011年7月に記録した29日以来の多い日数となりました。しかし、太平洋高気圧におおわれることがなく、ぐずついた天気が多かったことから最高気温は上がらず、日最高気温30℃以上の真夏日は1日しかありませんでした。これは、7月に真夏日のなかった1982年、1988年、1989年、2003年に次いで少ない記録です。また、月の最高気温も31.1℃と、2007年7月の最高気温30.1℃以来の低い記録でした。 また、最近6年間の7月は月の日照時間が平年を上回る年が続いていました。しかし、今年は太平洋高気圧の張り出しが弱く天気がぐずついたことから、2009年7月の日照時間113.3時間(平年比87%)以来7年ぶりに月の日照時間が平年の値を下回りました。
●過去6年間の7月の気象観測値の比較
観測要素 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 平年値 月平均気温(℃) 25.0 23.6 23.2 23.7 24.6 23.6 23.0 最高気温(℃) 34.4 33.2 32.9 33.9 35.2 31.1 - 最低気温(℃) 17.2 16.2 17.1 18.7 17.3 17.6 - 真夏日の日数(日) 10 11 7 7 12 1 7.1 夏日の日数(日) 29 22 19 23 24 25 19.4 降水量(mm) 215.5 135.0 116.5 146.5 179.5 43.5 162.5 降水量1mm以上の日数 9 12 11 11 12 6 12.1 日照時間(時間) 201.2 171.2 152.2 180.9 148.8 117.7 130.2
●7月の気象の記録
月平均気温(℃) 順位 年 平均気温 1 2001 25.9 2 1955 25.5 3 1978 25.4 省略 23 2016 23.6
真夏日の日数 順位 年 日数 1 1982,1988,1989,
20030 5 1953,1957,1963,
1976,1993,2007,
20161
月降水量(mm) 順位 年 日数 1 1973 15.8 2 1978 21.0 3 1981 40.0 4 2001 41.0 5 2016 43.5 ※順位は気温の高い方または日数の多い方からで、1953年〜201年の統計
◇7月の日立市内の気温と降水量
7月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高くなっています。次いで、最も北に位置する十王交流センターが市役所とほぼ同じ気温でした。一方、山間部にある本山と西部支所及び標高の高い諏訪広場は気温の低い方になっています。なお、市内7地点の平均気温は22.2℃で、水戸の月平均気温24.2℃よりも2.0℃低くなりました。6月に引き続き、水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。
一方、月の降水量の市内平均は44.2mmで、6月の平均降水量162.1mmよりも120mm近く少なくなりました。観測地点の間の差は6月よりもやや大きくなり、最も降水量の多かった本山の51.5mmに対して、最も少なかった諏訪広場は37.5mmと1.4倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量44.2mmに対して、水戸の月降水量は79.5mmと80%ほど多くなりました。これは、14日に水戸でひょうを伴った雷雨により17時11分までの1時間に47.5mmの激しい雨が降ったためです。
●7月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果
7月の気温(℃)の記録 観測地点 平均
気温最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 23.6 31.1 03 13:11 17.6 23 04:47 十王交流センター 23.4 30.6 03 12:15 17.0 23 04:34 北部消防署 22.0 29.3 03 12:44 16.2 23 04:30 本山(中学校跡) 20.3 28.6 03 14:03 12.3 23 04:18 西部支所 21.6 30.5 30 12:23 12.7 23 04:02 諏訪広場 21.3 28.9 03 13:12 13.9 23 04:25 南部支所 23.0 31.1 03 13:51 16.8 23 02:51 上記7地点の平均 22.2 - -
- -
日立会瀬 23.6 31.2 03 13:13 17.9 05 08:38 水戸(金町) 24.2 32.1 03 16:05 16.2 23 04:53
7月の降水量(mm)の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 43.5 14.5 31 9.0 31 22:18 十王交流センター 50.0 14.0 31 9.0 31 20:44 北部消防署 49.0 12.0 27 7.0 14 16:37 本山(中学校跡) 51.5 13.0 31 8.5 31 20:51 西部支所 40.0 12.5 31 9.0 31 21:14 諏訪広場 37.5 12.5 27 6.0 27 06:12 南部支所 38.0 11.0 27 4.5 27 09:14 上記7地点の平均 44.2 - -
- - 日立会瀬 42.0 12.5 31 8.5 31 22:13 水戸(金町) 79.5 54.0 14 47.5 14 17:11
※日立会瀬と水戸(金町)は気象庁の観測地点。
◇オホーツク海高気圧による低温(7月21日〜25日)
18日に日本海へ進んできた寒冷渦は、20日に北海道の東へ進んだ後動きが遅くなり、やや発達しながら24日にかけてゆっくりと関東の東海上まで南下しました。その後、25日から北へ進み始めて、27日にはサハリン付近で偏西風に取り込まれました。寒冷渦の停滞に伴って千島の東で上層の高気圧が強まり、21日から25日にかけてオホーツク海高気圧が北日本から東日本へ張り出しました。このため、東北地方の太平洋側から関東地方にはオホーツク海高気圧の縁辺を回る北東からの湿った空気が流れ込み、曇りや雨のぐずついた天気となり、気温も平年を下回るようになりました。
日立市では、22日から23日にかけて一段と冷たい空気が下層へ入りました。このため、日立市役所における22日の最高気温は22.8℃と平年より4.7℃低く、6月中旬並みの気温となりました。また、23日朝の最低気温は17.6℃まで下がり、平年より3.5℃低く6月下旬並みの気温でした。寒冷渦は、26日になると三陸沖を北上し始め、27日にはオホーツク海へ進んで弱まりました。これに伴ってオホーツク海高気圧は勢力を弱め、太平洋高気圧に取り込まれていきました。気温も24日以降しだいに上昇し、28日には平年を上回るようになりました。なお、オホーツク海高気圧の影響を受けにくい東日本日本海側の新潟及び西日本の大阪と気温の推移を比較すると、気温の低下が見られない新潟、大阪に比べて関東地方の気温の低下がよく分かります(下の気温推移グラフ参照)。
日立市役所以外の市内の観測地点における気温の推移も、日立市役所と同じように変化しました。特に、山間部に位置する本山は日立市役所よりも平均気温で4℃近く推移しました。また、23日朝の最低気温は12.3℃まで下がり、関東地方のアメダスで最も気温の低くなった栃木県奥日光の11.6℃に次いで低い気温でした。なお、日立市では日中は晴れ間が広がり気温が上がったため、曇り空が続いた内陸部より気温は高くなりました。
例年、この時期はオホーツク海高気圧が張り出してきて気温が低くなることがよくあります。2015年の場合は、8月の下旬からオホーツク海高気圧が張り出してきて、最高気温が25℃未満の日が続くようになりました。また、2014年は7月中旬に、2013年は7月中旬後半から8月上旬にかけてオホーツク海高気圧が張り出してきて気温が低くなりました(下の2013年と2014年7月の気温推移グラフ参照)。
●7月23日の気温(℃)と平年値の比較
地点 | 日平均気温 | 最高気温 | 最低気温 | |||||
気温 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | 気温 | 時刻 | 平年値 | |
日立市役所 | 21.1 | 23.4 | 24.4 | 13:48 | 27.7 | 17.6 | 04:47 | 21.1 |
十王交流センター | 20.6 | − | 24.2 | 15:04 | − | 17.0 | 04:34 | − |
北部消防署 | 19.4 | − | 22.4 | 14:57 | − | 16.2 | 04:30 | − |
本山(中学校跡) | 16.9 | − | 22.3 | 15:13 | − | 12.3 | 04:18 | − |
西部支所 | 18.2 | − | 23.9 | 13:26 | − | 12.7 | 04:02 | − |
諏訪広場 | 18.5 | − | 21.8 | 14:37 | − | 13.9 | 04:25 | − |
南部支所 | 20.6 | − | 23.8 | 12:00 | − | 16.8 | 02:51 | − |
日立会瀬 | 21.2 | − | 25.5 | 13:24 | − | 18.1 | 05:00 | − |
水戸(金町) | 21.3 | 24.4 | 25.9 | 15:03 | 28.6 | 16.2 | 04:53 | 21.2 |
つくば | 21.1 | 24.8 | 25.1 | 15:44 | 29.3 | 17.5 | 01:29 | 21.2 |
※日立会瀬、水戸(金町)、つくばは気象庁の観測地点。
●7月23日のアメダスによる関東地方の最低、最高気温(低い方から)
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●7月19日と23日の空の様子(日立市役所から南を見る)
●7月16日〜31日の日平均気温の比較
●参考:7月19日と23日の地上天気図と気象衛星可視画像
●参考:2013年7月の気温が低かった例
●参考:2014年7月の気温が低かった例
●参考:7月18日から27日の気象衛星水蒸気画像
作成日 2016/08/31
名前 日立市天気相談所