◇暖かい師走

　低気圧と高気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わりました。低気圧の通過後は一時的に冬型の気圧配置となりましたが、長続きはしませんでした。上旬の後半から中旬にかけては、時々寒気が入り気温が低くなりました。しかし、それ以外の期間は南から暖気におおわれ気温が高くなりました。このため、月平均気温は8.7℃と平年より1.4℃と高くなりました。これは、12月の気温としては観測開始以来5番目に高い記録です。2011年以降の12月は気温が平年を下回る寒い年が続いていましたが、2015年12月の平均気温8.6℃に引き続いて平年を上回る暖かい師走となりました。

　周期的に低気圧が通過して雨が降ったことから、月の降水量は65.0mm（平年比150％）と平年より多くなりました。しかし、低気圧の通過後は高気圧におおわれて晴れる日が多かったことから、月の日照時間は198.9時間（平年比108％）と平年より多くなりました。

12月の気象観測値 観測要素 観測値 平年値 月平均気温（℃） 8.7 7.3 月降水量（mm） 65.0 43.3 月日照時間（時間） 198.9 184.7

旬平均気温(℃) 旬 観測値 平年値 上旬 10.4 8.7 中旬 7.3 7.1 下旬 8.5 6.2

旬日照時間(時間)s 旬 観測値 平年値 上旬 69.5 56.5 中旬 66.2 59.3 下旬 63.2 68.9

　●12月の日立市役所における日平均気温の推移とつくばにおける500hPaと850hPa気温の推移

　●12月の日立市役所における日最低気温と日照時間の推移

　最初に述べたように、今年の12月は冬型の気圧配置が長続きせず、寒気の影響は限定的でした。また、上旬前半と下旬の前半には日本海を進む低気圧に向かって暖気が入り気温が高くなりました。このため、月平均気温は昨年（2015年）に引き続き、平年よりかなり高くなりました。しかし、6日に低気圧が日本海を進んだ後、17日にかけて周期的に寒気が入りました。このため、冬日の日数は5日と2015年12月の2日より多くなり、ほぼ平年並みになりました。また、冬日初日も12月11日と平年より3日早く、昨年（12月28日）よりも17日早くなりました。

　●日立市役所における12月の気温（℃）の記録

　※順位は数値の大きい方または日付の遅い方からで、1953年から2016年の統計。

　※1958年12月は冬日になる日がなく、初めての冬日は年が明けた1959年1月になってからでした。

◇12月の日立市内の気温と降水量

　12月の日立市内の気温の観測結果を比較すると、平均気温は引き続き日立市役所が最も高く、市内平均より2.4℃高くなりました。次いで気温が高かったのは最も北に位置する十王交流センターで、市役所より0.8℃低くなりました。一方、山間部にある西部支所と本山は気温の低い方になっています。市内7地点の平均気温は6.3℃で、11月より2.7℃低くなりました。また、水戸の月平均気温は6.8℃と日立市の平均よりも0.5℃高く、11月に引き続いて水戸の気温は日立市内平均よりも高くなっています。ただ、その差は小さくなっており、水戸の方が気温の下がり方が大きくなっています。なお、日立市内で水戸よりも平均気温が高かったのは、日立市役所と十王交流センター及び北部消防署の3か所でした。

　一方、月の降水量の市内平均は71.5mmで、11月の平均降水量74.4mmとほぼ同じでした。観測地点の間の差は11月よりもやや大きくなり、最も降水量の多かった本山の87.0mmに対して、最も少なかった南部支所は61.5mmと1.4倍の差でした。また、市内7地点の平均降水量71.5mmに対して、水戸の月降水量は66.5mmとほぼ同じになりました。

　●12月の日立市内と水戸の気温、降水量の観測結果

12月の気温（℃）の記録 観測地点 平均 気温 最高気温 最低気温 気温 日時 気温 日時 日立市役所 8.7 20.1 05 13:18 -1.4 17 03:03 十王交流センター 7.9 20.0 05 11:51 -2.4 17 04:05 北部消防署 7.2 17.7 05 12:47 -2.3 17 03:54 本山（中学校跡） 4.2 15.5 05 12:03 -4.6 17 02:28 西部支所 3.6 16.8 05 12:55 -6.1 17 06:38 諏訪広場 5.9 16.7 05 13:21 -3.5 29 00:46 南部支所 6.4 17.7 05 13:18 -4.7 17 05:08 上記7地点の平均 6.3 - - - - 日立会瀬 8.6 19.4 05 12:54 -2.1 17 02:56 水戸（金町） 6.8 18.4 23 00:23 -4.1 17 06:40

12月の降水量（mm）の記録 観測地点 月降水量 日最大降水量 1時間最大降水量 降水量 日 降水量 日時 日立市役所 65.0 22.5 14 12.0 23 01:54 十王交流センター 71.5 26.5 14 13.0 23 01:35 北部消防署 67.5 27.5 14 13.0 23 01:55 本山（中学校跡） 87.0 26.0 14 15.0 23 01:38 西部支所 79.0 23.0 23 14.5 23 01:23 諏訪広場 69.0 25.0 14 13.0 23 01:52 南部支所 61.5 23.0 14 12.5 23 01:48 上記7地点の平均 71.5 - - - - 日立会瀬 74.0 28.5 14 12.0 23 01:51 水戸（金町） 66.5 27.0 14 9.0 14 04:02

　※日立会瀬と水戸（金町）は気象庁の観測地点。

◇寒気の滞留と暖気の滑昇（12月27日）

　27日未明から朝にかけて、前線を伴った低気圧が山陰沖から北陸、関東地方を通過して、昼前には三陸沖へ進みました。この低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んだ影響で、関東地方では南部の沿岸部を中心に南西の風がやや強く吹き、27日の午前中を中心に気温が17℃から20℃近くまで上がりました。一方、内陸部では滞留する寒気の影響で暖気が上層を吹き抜け、南西の風が入らず気温も上がりませんでした。

　気象庁の観測によると、東京都千代田区では27日10時の気温が17.4℃でした。この観測地点から北へ約20km離れている埼玉県越谷における同時刻の気温は7.5℃と10℃近い差がありました。茨城県内でも、南部及び北部の沿岸部とそれ以外の地域で気温に差が出ました。鉾田における27日10時の気温17.1℃に対して、北へ約24km離れた水戸では8.8℃と8℃近い差がありました（下のアメダスによる気温と風の分布を参照）。

　日立市内では、関東地方南部ほど大きな気温差は生じなかったものの、沿岸部と山間部で気温に差がありました。日立市役所における27日10時の風向と気温は西南西の風、14.6℃でした。それに対して、西部支所では東の風、7.1℃でした。また、十王交流センターと北消防署でも27日10時頃にかけて南西の風が吹き、気温が15℃近くまで上がりました。一方、本山、西部支所、諏訪広場、南部支所の4地点では南西の風に変わることがなく、気温も沿岸部ほどは上がりませんでした。

　ただ、26日から27日にかけての気温の推移を見ると、日立市役所と鉾田や東京（千代田区）とでは変化に違いが見られました。日立市役所では、26日の夕方から27日の昼前にかけて南西の風が吹き続けるとともに気温も11℃から14℃前後で推移し、あまり大きくは変化しませんでした。一方、鉾田と東京（千代田区）では風向の変化に伴って、気温が大きく上昇しました。鉾田では27日05時50分から10時50分にかけて南西の風が吹き、10時34分には最高気温17.2℃を記録しました。東京（千代田区）でも27日02時10分から10時30分にかけて南南西の風が吹き、09時40分に最高気温18.4℃を記録しました。なお、風向の変化と気温の上昇が見られなかった水戸、つくば及び越谷では、最高気温は15時から17時にかけて記録しました。

　今回は、低気圧が近づいてくるとともに南から入った暖気の影響を直接受ける関東地方の沿岸部で、低気圧が通過した未明から朝にかけて気温が上がりました。しかし、内陸部では地表に滞留する寒気の影響で暖気が地表付近へ入らず、気温は上がりませんでした。この二つの地域の境界に位置する鉾田や東京（千代田区）では、南西の風に変わって気温が10℃近く上昇する時間帯がありました。日立市役所では風向の変化がなく、26日夕方から27日昼前にかけて気温の高い状態が続きました。今回と同じように滞留する寒気の影響で気温の変化が異なった現象を、2013年11月の観測日誌にも掲載しています。

　●12月27日の気温（℃）

　南西の風に伴う暖気の影響を受けた、日立市役所、十王交流センター及び北部消防署では、南西の風が北寄りの風に変わった9時前から10時過ぎに最高気温を記録した。それ以外の本山。西部支所及び南部支所では、13時過ぎに最高気温を記録した。諏訪広場では風向の変化は見られなかったが、最高気温は10時過ぎに記録した。

　※日立会瀬、水戸（金町）、つくば、鉾田、東京（千代田区）及び越谷は気象庁の観測地点。

　●12月26日〜27日の気温の推移（10分値）

　●12月26日〜27日の日立市内の気温の推移（10分値）

　●12月27日10時の日立市内における気温と風の分布

　●参考：12月27日03時と10時のアメダスによる気温と風の分布

　●参考：2016年12月27日06時の地上天気図と09時の850hPa面高層天気図

※高層天気図において、実線は等高度線を、点線は等温線を表しています。また、観測地点における上段の数値は、その地点の850hPaの高さにおける気温を、下段の数値は、同じ高さにおける気温と露点温度の差を表しています。網掛けの部分は、気温と露点温度の差が3℃以下（空気が湿っていることを表す）の領域を表しています。

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作成日 2017/01/12
名前 日立市天気相談所