第2部
三. 災害に備える危機管理体制を強化します
近年、有珠山噴火、三宅島噴火、東海豪雨洪水、鳥取県西部地震など多くの被災者を出す大規模災害が続いています。さらに今後、大規模震災の発生も危惧され、地球温暖化などによる環境災害なども懸念されることから、21世紀は「災害の世紀」とも警告されています。災害の観測体制や防災訓練体制などを充実させるとともに、災害後の救助・復旧・再建の各種対策が迅速かつ円滑に実施できるよう危機管理体制を強化します。あわせて、国内外で起きた大災害についても十分な相互支援ができるよう国際的な防災協力体制との連携を強化します。
1. 迅速に対応できる防災体制の確立
(1)災害関係法令等の整備、見直し
災害対策基本法、災害救助法、被災者生活再建支援法など災害関係法令の整備、見直しを行うとともに、被災者の立場に立って迅速かつ柔軟に運用できるよう努めます。また災害予防の観点から、「がけ地近接等危険住宅移転事業」を積極的に推進します。
(2)観測・情報通報システムなどの強化
ハザードマップ(災害予測図)、GPS(全地球測位システム)、GIS(地理情報システム)などの活用をはじめ、高精度の観測機器等による全国観測網体制の強化、さらにITを活用した緊急時の速報体制を整備します。加えて特定地域の予測精度を上げることによる予防的対応を進め、風水害による被災の最小化をめざします。
(3)大型タンカー等の海上災害対策の強化
大型タンカーや天然ガス、石油掘削等に伴う油流出などの海上災害に対応するため、多国間及び二国間条約などの締結を促進し、高速油回収船の整備・拡充、環境脆弱指標(ESI)及びマップの作成など緊急時の油防除体制を確立します。
(4)防災意識の向上と災害ボランティア活動支援のための環境整備
防災意識の向上のために、大規模災害に備えた行政と市民ボランティア・企業などとの連携による防災援助ネットワークの構築を推進します。さらに組織された幅広い災害ボランティアを育成するため、ボランティア・センターを設置するとともに、NPOへの寄付金控除など税制上の支援措置を導入します。また、災害援助ボランティアの登録や受け入れ体制を制度化するとともに、災害救助の際に二次災害に巻き込まれる恐れに備え、災害ボランティアの労災保険制度を検討します。
(5)政府の危機管理機能の強化
火山噴火、地震、台風、豪雨災害などの自然災害に加え、大量交通輸送機関や原子力施設・石油コンビナート・化学工場等の大事故のような人為的な大規模災害に対応するため、政府の安全保障危機管理室の機能を拡充強化します。
2. 災害支援の国際的ネットの整備・拡充
(1)災害ボランティアの国際活動への支援と連携強化
大規模な自然災害が発生した国への緊急援助で、わが国の災害ボランティアが迅速かつ大規模・効果的な活動が展開できるよう支援を強化します。また、諸外国の国際緊急NGOとの連携についても強化を図り、災害時における相互の協力体制を確立します。さらに「人間の安全保障」の見地から、国際ボランティアが人道援助を積極的に行えるようナショナル・センター「国際人道援助センター」の創設を支援します。
(2)国連の国際防災戦略への支援
国連の国際防災戦略(ISDR)の活動を支援するとともに国際協力事業団(JICA)、国際緊急援助隊(JDR)などとの連携強化をはかり、国際防災協力体制を積極的に推進し国際貢献を果たします。
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