第2部
六 環境共生のエコロジー社会の実現
公明党はこれまで、ダイオキシン汚染など数多くの化学製品が私たちの生命と生活に大きな不安と深刻な影響を生起している現状に歯止めをかけ、失われた良好な環境を取り戻すとともに、環境汚染を未然に防止するために、総合的な環境対策に取り組んでまいりました。
21世紀における持続可能な経済発展をめざし、循環型社会の構築や環境省の機能強化、廃棄物行政の一元化等にかかる実効性のある環境施策等を推進し、環境立国として世界をリードしていける国づくりを進めます。
1 環境省の機能強化と充実
(1)環境行政機能の強化と廃棄物行政の一元化
化学物質の審査及び製造の規制をはじめ、中央省庁再編基本法において環境省が共同で所管するとされた事項について、環境省が強いリーダーシップを発揮できるよう、諸外国の環境省並みに組織・体制を整備します。このうち、特に放射性物質の監視については、十分な体制と予算をもって速やかに実施します。また、廃棄物行政については、環境省への一元化に伴い、循環型社会の構築へ向けて思い切った施策を展開します。環境基本計画については、数値目標等を盛り込んだ実効性あるものに見直します。
(2)環境アセスメント(環境影響評価)法の改正
公共事業を環境共生型のものとするため、代替案の検討を義務づけることや、計画策定の段階から環境影響を予測・評価する「計画アセス」の仕組みを設け、環境アセスメント法に盛り込みます。
(3)森林行政の見直し
近年、わが国の国有林をめぐる情勢は、営利事業というより環境・国土保全に重点を置く立場へと変化しており、国有林野行政のあり方を再検討する必要があります。とりわけ、国立・国定公園の自然を守るための公共施設の整備及び人的配置の推進、拡充をはかります。
(4)水道行政の一元化
内分泌かく乱物質など多種多様な微量化学物質が環境中に存在するようになり、水道水の確保を量ではなく質として問題視しなければ国民の健康は守れません。このような水道水源の保全の問題は水道事業者の努力だけでは対応が困難です。また、水道水源は産業廃棄物の最終処分場に近接していること等もあり、河川、地下水などの水質と上水道の水質を一体として保全するために根本的な対策が求められています。環境省が水道原水の水質管理・水源林の保護と水源から末端の上水道供給まで一元的に担当して自治体と連携を取りながら責任を担うことを明確にします。
(5)ディーゼル車の排出ガス対策を積極的に
ディーゼル車に起因する窒素酸化物(NOx)による酸性雨や光化学スモッグなどの大気汚染問題、また、尼崎公害訴訟に代表されるディーゼル排気微粒子(DEP)による発ガン性やアレルギー疾患、特に気管支喘息、花粉症などの健康被害が、懸念されています。
自動車NOx法の抜本改正により、対象地域の拡大やディーゼル排気微粒子を含む粒子状物質(PM)を規制の対象とするとともに、低燃費・低公害車への代替促進やNOx、ディーゼル排気微粒子の排出を抑制する燃料を含めた技術開発を推進します。
(6)生物多様性の保全
人間活動の急激な拡大による地球温暖化や環境汚染により、地球生物圏の財産というべき、生物多様性がおびやかされている現状を克服するために、必要な生態学的データを集積するとともに、生態系プロセスのモニタリング等科学的知見からの調査研究を推進します。また、生物多様性条約を実効性のあるものとするため、野生生物種の保全、湿地、森林をはじめとする生息地保全、新たな保護区の設定等、国家間協力を積極的に推進します。
(7)河川や湖沼の水質汚濁を防止
“水と空気はタダ”という時代は終わりました。自然環境のなかでも最も生活と関連の深い水の汚染を防ぐことは重要なテーマです。特に河川や湖沼等の水質汚濁を解決するため、合併処理浄化槽の普及を推進するとともに湖沼法を抜本改正し、周辺の土地利用対策や生活排水対策を強化します。
2 ダイオキシン・ゼロ社会の構築
(1)発生源対策の抜本的強化
わが国の大気へのダイオキシン類排出量が、欧米と先進主要国のなかでもっとも多いことが国連環境計画(UNEP)の報告書において明らかになり、わが国のダイオキシン汚染の深刻さを裏付けました。公明党が強力に推進し、成立したダイオキシン類特別措置法を本格的に運用して、大気・水・土壌の環境中の「ダイオキシン・ゼロ」をめざし、安心で安全な食生活を実現します。
主要な発生源であるゴミ焼却施設の排出規制を徹底し、補助の対象施設を一般廃棄物の一日処理能力100トン以下の焼却炉や建屋等をも加えるとともに、補助率のアップと補助対象の拡大を行います。 また、発生源として特定施設に指定されていない施設についても調査・監視体制を強化していきます。
さらに、国民が安心できる産業廃棄物処理施設の円滑な整備のために、公的助成措置を創設します。事業系ゴミや産業廃棄物のダイオキシン対策のための施設投資には、モデル施設設置への補助や無利子の建設譲渡や低利融資を促進します。
(2)ダイオキシン汚染の浄化対策の推進
発生源対策と並んでより重要かつ深刻な問題は、すでに水域や土壌に広く蓄積されてきたダイオキシン類対策です。そのほとんどは焼却行為によるものだけでなく、全国で使用されてきた農薬(ダイオキシン類が混入したCNPやPCP等)によるものです。
一般廃棄物及び産業廃棄物最終処分場には、高濃度のダイオキシン類を含む焼却灰が未処理のまま、大量に投棄され、今日に至っています。こうした最終処分場の再生をはじめ、水域、底質、土壌への蓄積問題に対する法規制及び総合実態調査を行い、ダイオキシン対策を推進します。
(3)化学物質環境安全基本法(ケミカル・コントロール法)の制定
内分泌かく乱物質など化学物質による環境汚染について、自然界が鳴らす警鐘を人類が重く受けとめることが重要です。そのため、PRTR法(化学物質排出管理法)の本格的な運用とともに、内分泌かく乱物質などの化学物質が、従来軽視されていた生態系に与える影響への対応策、食品等への表示の義務づけ、安全性基準の設定、などを推進するため、「化学物質環境安全基本法」(ケミカル・コントロール法)を制定します。 また、国立環境研究所を強化・充実し、国際的に第一級の研究機関とします。
(4)日本版スーパーファンド法「土壌汚染防止法」の制定
有害重金属や化学物質で汚染された土壌や地下水を浄化するとともに汚染の防止をはかるために、農用地、市街地など、すべての地域に適用される日本に合ったスーパーファンド法ともいうべき「土壌汚染防止法」を制定します。
(5)PCBの回収と破壊処理の推進
不要となったPCB含有の電気機器は、廃棄物処理法によって特別管理廃棄物として保有する事業者によって厳重に保管することが義務づけられています。しかし、その義務づけから四半世紀が経過しているにもかかわらず、紛失や不法投棄が後を絶たず、ずさんな保管実態であることが明らかになっています。一方、現在使用中のPCB含有製品は届け出義務が法的に整備されておらず、正確なデータはありません。
これ以上PCB汚染を引き起こさせないために、「PCB回収・処理法」を制定するとともに、廃棄PCBの現在の保管場所と量について国による情報公開を行い、早期回収、無害化処理などを推進します。
3 地球サイズの環境保全協力の推進
(1)地球温暖化防止に関する国際公約の実現
地球全体の環境に深刻な影響を及ぼし、人類生存への脅威となっている地球温暖化を防止するため、京都議定書でわが国に課せられた温室効果ガス排出量の削減目標を達成のための省エネルギーの促進、クリーンエネルギーの加速度的導入、森林保全、ライフスタイルの見直し等、より一層効果のある諸対策を推進します。そのため、議定書の早期批准と関連法案の整備など具体的な実効を促します。また、「京都イニシアティブ」を実効性のあるものとするため、開発により環境被害を引き起こす恐れのある途上国に対し、温暖化防止対策を支援し、持続可能な社会システムの構築に貢献します。
(2)フロンガス回収・破壊システムの法制化
有害な紫外線を吸収し、生命を保護するオゾン層を破壊するフロンガスや強力な地球温暖化の要因になる代替フロンを全面的に回収・破壊するため、「モントリオール議定書」と「第9回モントリオール締約国会議」の全廃スケジュールを遵守するために、わが国のみならず、世界的な取り組みを強力に促進するとともに、関係事業者や利用者、国、自治体が一体となったフロン回収・破壊システムの確立を強力に推進するため、その法制化をめざします。
(3)環境ODAの拡充とグリーンPKOの創設
全人類を環境破壊という地球的規模の問題から救済するため、先進国の一員であり、平和国家を標榜するわが国こそ、この国際公共財である地球環境の保全対策に先頭に立って取り組む責務があります。そういった意味から、環境省のイニシアティブを強化し、政府開発援助(ODA)を通して、開発途上国の環境汚染の軽減や、生態系の保護、環境管理能力の確保等、さらなる環境面での技術的支援や資金援助を進めます。また、専門家やNPOの協力を得て、「緑の平和部隊」(グリーンPKO)を創設し、海洋浄化、砂漠化の緑化等の国際貢献をはかります。また、国連環境計画(UNEP)等の国際機関と連携を取りながら、わが国のみならず、世界各地へ環境保全技術と人材を派遣し、環境先進国としての責務を果たします。
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